胸焼けするような愛を
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戸を叩く音で目を覚ます。こちらを伺うようなノックでドアの前にいるのが彼だとわかった。
「アカギ、ちょっと待っててね」
言葉はない。彼は僕に返事する価値も見いだせないみたい。いつもの事だからもう諦めてはいるけれど、たまにはなにか言ってくれたっていいんじゃないか、なんて言ったら彼はもう二度とここへは来てくれないだろう。寂しいなんて言わない。
「遅い」
「ごめんね。さっきまで寝てたんだ。ごめん...」
文句をひとつ残して彼はソファに座る。家主である僕に何かを言う権利はない。彼を失いたくないなら、ただ静観するしかない。
「寂しい...」ボソッ
「なんか言った?」
「え、なっ何も...」
「そう、ならいいけど」
親を失ってから1人だった僕にできた友達であってそうではないような人、それがアカギ君だった。
今では時々訪れてくれる彼の機嫌を損なわせないように頑張って、友達でいてもらっている。優しいアカギ君は僕のために仕方なくビールを飲みに来てくれる。
今日もいつも通りに彼の前に缶ビールを3つ置いた。いつもと違ったのは、それが僕の前にも置いてあることだ。今日は何故かヤケになって、ついアカギ君の前なのに飲み始めてしまった。
「珍しいね、俺の前で飲むなんて」
「たまにはいいじゃん、いつも1人で飲んでるんだから」
つい冷たい口調になってしまう。今までの疑問、不安、寂しさが一気に押し寄せてきた。吐き出してしまえば終わり。だから今日も僕は酒で飲み込んで押さえつける。
「ササキってさ、いつも1人だよね」
「う、うん。それがどうしたの?」
「俺と一緒にいるためにわざわざこんなことするなんてかわ「やめて、言わないで...」......」
言ってしまった。せっかく彼が話しかけてくれたのに遮ってしまった。
でも、それだけは聞きたくない。"可哀想"という言葉を聞いてしまえば、僕たちはもう友達ではいられない。呪いの言葉。哀れみを含む関係なんていらない。
_____捨てられるぐらいなら
「アカギ君、今までありがとう。アカギ君と過ごした時間は楽しかったよ。でも、今日で終わりでいいよ。もう僕の家に来なくていいから...言い出しっぺが何言ってんだって思うかもしれないけど、もう無理して来なくていいか...ら......」
その時のアカギ君の顔はとても印象的だった。普段のすました顔が嘘だったかのように、顔を顰めて、こちらを怒りとも悲しみとも取れない瞳で見つめていた。というか多分怒りの方が7割だと思う。
「本気で言ってるの、それ」
「うん、もう大丈夫、だから」
「へー、今度は誰のところに行くの。先輩?同僚?」
「え、何を言ってるの?僕そんなこと」
「俺から離れるってことは代わりを見つけたんでしょ?誰、さっさと言って」
「痛い、痛いよアカギ君、やめてっ!!」
手首を掴まれて壁に押し付けられる。抜け出そうとしても僕がアカギ君に勝てる訳もなく、抵抗できずに見上げることしか出来ない。アカギ君がなぜ怒っているのかわからない。わからないから余計に怖くなった。
「あぁそう、言えないんだ。俺に言う必要も無いって思ってんの?」
「そ、そんなのじゃない...」
「はぁ、もうなんだっていいよ。もうソイツのとこに行くことはないんだから」
アカギ君は多分僕が他の人に乗り換えようとしている、と思っているらしい。僕には頼れる人なんていないのに、アカギ君しかいないのに!!
「うぅ、ぐずっ」
「泣けば許されると思ってんの。俺をこんなふうにさせて、その上俺を捨てようだなんて言っておいて」
「違う、のにっ...僕にはアカギ君しかいないのに酷いよっ!!僕アカギ君に同情されてるって思っただけなのに、それでっ友達やめようって言っただけ、なのに!僕がアカギ君以外についてくわけないじゃん!!」
「え、同情?」
アカギ君が間の抜けた声で聞き返す。その時の僕はもう限界で、今まで言いたかったことが堰が切れたように流れ出した。
「アカギ君は僕にいっつも話しかけてくれないし、お酒だけ飲んでどこか行っちゃうし、友達だって思ってくれてなかったって僕、思っちゃって...」
「ふーん、そう思ってたんだ」
「俺はササキのこと好きだったのに、突然いらないなんて言われて驚いてた」
「へ、好き...?」
「そう、ササキ裕香のことが好き。なにか問題でも?」
「え、えぇ//僕たち男だよ?!」
「性別なんて関係ない」
「でも、でも...」
「それでササキは?俺の事好き?」
「えと、嫌いではない、けど...」
「じゃあ好きなんだな」
「う、極端なんだよ...//」
結局僕はそのまま流されて、アカギ君と付き合うことになった。僕が言ってしまったおかげで、アカギ君は積極的に話しかけてくれるようになったし、結果オーライなのかもしれない。スキンシップは程々にしてほしいけど。
結局あの時の"かわ"という言葉の続きがなんだったのか僕は知らない。
「アカギ、ちょっと待っててね」
言葉はない。彼は僕に返事する価値も見いだせないみたい。いつもの事だからもう諦めてはいるけれど、たまにはなにか言ってくれたっていいんじゃないか、なんて言ったら彼はもう二度とここへは来てくれないだろう。寂しいなんて言わない。
「遅い」
「ごめんね。さっきまで寝てたんだ。ごめん...」
文句をひとつ残して彼はソファに座る。家主である僕に何かを言う権利はない。彼を失いたくないなら、ただ静観するしかない。
「寂しい...」ボソッ
「なんか言った?」
「え、なっ何も...」
「そう、ならいいけど」
親を失ってから1人だった僕にできた友達であってそうではないような人、それがアカギ君だった。
今では時々訪れてくれる彼の機嫌を損なわせないように頑張って、友達でいてもらっている。優しいアカギ君は僕のために仕方なくビールを飲みに来てくれる。
今日もいつも通りに彼の前に缶ビールを3つ置いた。いつもと違ったのは、それが僕の前にも置いてあることだ。今日は何故かヤケになって、ついアカギ君の前なのに飲み始めてしまった。
「珍しいね、俺の前で飲むなんて」
「たまにはいいじゃん、いつも1人で飲んでるんだから」
つい冷たい口調になってしまう。今までの疑問、不安、寂しさが一気に押し寄せてきた。吐き出してしまえば終わり。だから今日も僕は酒で飲み込んで押さえつける。
「ササキってさ、いつも1人だよね」
「う、うん。それがどうしたの?」
「俺と一緒にいるためにわざわざこんなことするなんてかわ「やめて、言わないで...」......」
言ってしまった。せっかく彼が話しかけてくれたのに遮ってしまった。
でも、それだけは聞きたくない。"可哀想"という言葉を聞いてしまえば、僕たちはもう友達ではいられない。呪いの言葉。哀れみを含む関係なんていらない。
_____捨てられるぐらいなら
「アカギ君、今までありがとう。アカギ君と過ごした時間は楽しかったよ。でも、今日で終わりでいいよ。もう僕の家に来なくていいから...言い出しっぺが何言ってんだって思うかもしれないけど、もう無理して来なくていいか...ら......」
その時のアカギ君の顔はとても印象的だった。普段のすました顔が嘘だったかのように、顔を顰めて、こちらを怒りとも悲しみとも取れない瞳で見つめていた。というか多分怒りの方が7割だと思う。
「本気で言ってるの、それ」
「うん、もう大丈夫、だから」
「へー、今度は誰のところに行くの。先輩?同僚?」
「え、何を言ってるの?僕そんなこと」
「俺から離れるってことは代わりを見つけたんでしょ?誰、さっさと言って」
「痛い、痛いよアカギ君、やめてっ!!」
手首を掴まれて壁に押し付けられる。抜け出そうとしても僕がアカギ君に勝てる訳もなく、抵抗できずに見上げることしか出来ない。アカギ君がなぜ怒っているのかわからない。わからないから余計に怖くなった。
「あぁそう、言えないんだ。俺に言う必要も無いって思ってんの?」
「そ、そんなのじゃない...」
「はぁ、もうなんだっていいよ。もうソイツのとこに行くことはないんだから」
アカギ君は多分僕が他の人に乗り換えようとしている、と思っているらしい。僕には頼れる人なんていないのに、アカギ君しかいないのに!!
「うぅ、ぐずっ」
「泣けば許されると思ってんの。俺をこんなふうにさせて、その上俺を捨てようだなんて言っておいて」
「違う、のにっ...僕にはアカギ君しかいないのに酷いよっ!!僕アカギ君に同情されてるって思っただけなのに、それでっ友達やめようって言っただけ、なのに!僕がアカギ君以外についてくわけないじゃん!!」
「え、同情?」
アカギ君が間の抜けた声で聞き返す。その時の僕はもう限界で、今まで言いたかったことが堰が切れたように流れ出した。
「アカギ君は僕にいっつも話しかけてくれないし、お酒だけ飲んでどこか行っちゃうし、友達だって思ってくれてなかったって僕、思っちゃって...」
「ふーん、そう思ってたんだ」
「俺はササキのこと好きだったのに、突然いらないなんて言われて驚いてた」
「へ、好き...?」
「そう、ササキ裕香のことが好き。なにか問題でも?」
「え、えぇ//僕たち男だよ?!」
「性別なんて関係ない」
「でも、でも...」
「それでササキは?俺の事好き?」
「えと、嫌いではない、けど...」
「じゃあ好きなんだな」
「う、極端なんだよ...//」
結局僕はそのまま流されて、アカギ君と付き合うことになった。僕が言ってしまったおかげで、アカギ君は積極的に話しかけてくれるようになったし、結果オーライなのかもしれない。スキンシップは程々にしてほしいけど。
結局あの時の"かわ"という言葉の続きがなんだったのか僕は知らない。
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