ガンダムビルドファイターズSEED
「わかった。その勝負、受けるよ」
そう言ったキラの目に、もう迷いは無い。迷いは、アスランが断ち切ってくれたから。
「へえ、お前以外と度胸はあるんだな。なら早いとこやっちまおうぜ」
シャニはそう言って部室の真ん中に鎮座するバトルシステムに向かった。キラもその反対側に行き、バトルシステムを起動する。
『Please,Set you're GP-Base』
《BUILDER:KIRA YAMATO
FIGHTER:KIRA YAMATO
ZGMF-X1OA2 FREEDUM GUNDAM VER.2.0》
《BUILDER:SHANI ANDRAS
FIGHTER:SHANI ANDRAS
GAT-X252 FORBIDDEN GUNDAM》
『Beginning plavsky particle dispersal』
『Field:Heliopolis』
『Please,Set you're GUN-PLA』
キラは深呼吸して気を落ち着かせる。――大丈夫、やれる。
後ろをちらと見ると、アスランがいる。――アスランが励ましてくれたんだ。怖くない。
『Battle Start』
「キラ・ヤマト!フリーダム2.0、行きますっ!」
「シャニ・アンドラス。フォビドゥン、出るよ」
そう二人が同時に言い、戦いは始まった。キラはまず、相手の出方を見ようと後方に下がろうとした。その矢先――
「うわっ…いきなり!?」
キラのそれよりも速く、フォビドゥンがフリーダムに突進してきた。間一髪で避けたがそのせいでバランスを大きく崩し、膝を付いてしまう。その隙を見逃さず、フォビドゥンは鋭い鎌でフリーダムを狙う。
「あんまり傷つけたくないんだ。抵抗するなよ!」
「…っ、このっ!」
シールドで何とかフォビドゥンの攻撃を防ぎきり、距離をとってライフルで応戦する。だが自分の腕では機体に当てることなど出来るはずも無く、逆にフォビドゥンのレールガンがフリーダムのボディに当たってしまった。幸い少し掠った程度だったが、攻撃は未だ雨のように続いている。このまま耐え続けていたらシールドの限界が来てしまう。そうなったら終わりだ。そう考えたキラは、体勢を立て直すため一度この場を離れようとバーニアを吹かして飛翔した――が、
「うわあっ!」
フリーダムのあまりの移動速度に操作が追いつかず、勢いあまって前方のビルに激突してしまった。
「何やってんだよ、だっせーな!」
「あ…ッ」
気づいた頃には目の前に鎌を構えたフォビドゥンが威圧するように立っていた。
――駄目だ。逃げられない。
せっかくアスランが励ましてくれたのに、こんなにもあっけなく負けてしまうなんて。キラは自分を恨めしく思った。もっと自分が強ければ、こんなことにはならなかったのに。フリーダムが奪われては自分の夢も叶わなくなる。模型部も終わりだ。それもこれも、自分が弱いせいなんだ。キラは目の前が真っ暗になっていくのを感じ、全てを諦めそうになった、その時だった。
「代わって」
「えっ…」
突然スペースを取られ何事かと目を向けると、そこには操縦桿を握る幼馴染の姿があった。一体これはどういうことだろう。アスランはガンプラバトルなんてこれまでに一度もしたことが無いはずだ。それなのに何故こんなことを?
「何っ…!?」
次にシャニの驚いたような声が聞こえモニターに目を移すと、フリーダムがフォビドゥンに蹴りを入れ、フォビドゥンを突き放していた。フォビドゥンがひるんだ隙にフリーダムは後ろに跳躍して距離を取る。鮮やかな一連のこの流れ、まさかアスランがやったのか。
「ちょ、え、あ、アスラン!?ななな、何してるの君!何でっ…」
「キラ、少し落ち着け」
「そんなことっ…」
「大丈夫だから、な?」
そう言って笑うアスランは、まるで俺を信じろ、と言っているようだった。その優しい言葉と表情にキラは一瞬絆されそうになったが、今回はそれよりも混乱が勝った。キラは頭を振ってアスランに何か言おうと口を開いたが、そうする前にアスランに隣のオペレータースペースに押し込まれてしまっていた。
「ちょっと、アスランっ…」
何するの、と続けたかったその言葉は、アスランを見た瞬間今度こそ消え失せてしまった。アスランは目の前のモニターに映るフォビドゥンをじっと見据え、操縦桿を構えている。その瞳には、普段あまり見ることの無い本気の色が混じっていた。――彼は、勝つ気でいるのだ。
そんな彼の表情は、ぞくりとするほど格好良くて。こんなときなのに、キラは自分の顔にうっすらと熱が集まっていくのを感じた。
「こいつ…馬鹿にしやがって!」
ハッとしてモニターを見やるとフォビドゥンがこちらに迫ってきていた。いけない、まだ戦闘は続いている。集中しなければ。まだ色々と混乱しているが、コックピットスペースを追いやられてしまってはどうしようもない。
「アスラン、危ないっ!」
キラがそう叫ぶと同時にフォビドゥンが鎌を振り下ろす。だがアスランはそれをあっさりとかわしてフォビドゥンの腕のあたりへ的確にビームライフルを照射した。それによりバランスが崩れたフォビドゥンは、鎌を落として大きく仰け反った。
「キラ、近接武器は!」
「あ、えっと、二番のスロット!ビームサーベルが二つ!」
そう聞くとアスランはすばやく二刀のビームサーベルに武器を換装し、フォビドゥンに猛進する。その姿は力強く、アスランの自信を感じさせた。
「速すぎる…何なんだよ、お前!」
シャニはフリーダムから逃れようとしたが、スピードが段違いだ。気づいた頃にはフリーダムはフォビドゥンの目の前でサーベルを振りかざしていた。そのまますれ違いざまにフォビドゥンのボディに刃を入れる。
フォビドゥンはなすすべも無く上半身と下半身が真っ二つに切れ、フリーダムの後ろで大きな音を立てて爆発した。
『Battle Ended』
無機質な機会音声と共にCGが消え、その先にジョイントが壊れて真っ二つになっているフォビドゥンと、それを信じられないという顔で見つめているシャニ。そして、目立った外傷もなくビームサーベルを持った体制で静止しているフリーダムが見えた。
「…もしかして、勝った?」
「ああ、お前の勝ちだ、キラ。」
アスランはそう言って微笑んだ。
「本当に…本当に、勝てたの…?僕のフリーダムで…?」
「そうだ。お前のガンプラで、あいつに勝ったんだ」
「……や…やったあっ!やった、やったよ!アスラン!」
「うわ…っと」
そう言葉にした瞬間、言いようの無い幸福感が湧き上がり、思わずキラはアスランにひしと抱きついていた。アスランは突然のことに少しよろめいたがそれも一瞬のことで、よかったな、とキラの頭を優しい手つきで撫でてくれた。
そう言ったキラの目に、もう迷いは無い。迷いは、アスランが断ち切ってくれたから。
「へえ、お前以外と度胸はあるんだな。なら早いとこやっちまおうぜ」
シャニはそう言って部室の真ん中に鎮座するバトルシステムに向かった。キラもその反対側に行き、バトルシステムを起動する。
『Please,Set you're GP-Base』
《BUILDER:KIRA YAMATO
FIGHTER:KIRA YAMATO
ZGMF-X1OA2 FREEDUM GUNDAM VER.2.0》
《BUILDER:SHANI ANDRAS
FIGHTER:SHANI ANDRAS
GAT-X252 FORBIDDEN GUNDAM》
『Beginning plavsky particle dispersal』
『Field:Heliopolis』
『Please,Set you're GUN-PLA』
キラは深呼吸して気を落ち着かせる。――大丈夫、やれる。
後ろをちらと見ると、アスランがいる。――アスランが励ましてくれたんだ。怖くない。
『Battle Start』
「キラ・ヤマト!フリーダム2.0、行きますっ!」
「シャニ・アンドラス。フォビドゥン、出るよ」
そう二人が同時に言い、戦いは始まった。キラはまず、相手の出方を見ようと後方に下がろうとした。その矢先――
「うわっ…いきなり!?」
キラのそれよりも速く、フォビドゥンがフリーダムに突進してきた。間一髪で避けたがそのせいでバランスを大きく崩し、膝を付いてしまう。その隙を見逃さず、フォビドゥンは鋭い鎌でフリーダムを狙う。
「あんまり傷つけたくないんだ。抵抗するなよ!」
「…っ、このっ!」
シールドで何とかフォビドゥンの攻撃を防ぎきり、距離をとってライフルで応戦する。だが自分の腕では機体に当てることなど出来るはずも無く、逆にフォビドゥンのレールガンがフリーダムのボディに当たってしまった。幸い少し掠った程度だったが、攻撃は未だ雨のように続いている。このまま耐え続けていたらシールドの限界が来てしまう。そうなったら終わりだ。そう考えたキラは、体勢を立て直すため一度この場を離れようとバーニアを吹かして飛翔した――が、
「うわあっ!」
フリーダムのあまりの移動速度に操作が追いつかず、勢いあまって前方のビルに激突してしまった。
「何やってんだよ、だっせーな!」
「あ…ッ」
気づいた頃には目の前に鎌を構えたフォビドゥンが威圧するように立っていた。
――駄目だ。逃げられない。
せっかくアスランが励ましてくれたのに、こんなにもあっけなく負けてしまうなんて。キラは自分を恨めしく思った。もっと自分が強ければ、こんなことにはならなかったのに。フリーダムが奪われては自分の夢も叶わなくなる。模型部も終わりだ。それもこれも、自分が弱いせいなんだ。キラは目の前が真っ暗になっていくのを感じ、全てを諦めそうになった、その時だった。
「代わって」
「えっ…」
突然スペースを取られ何事かと目を向けると、そこには操縦桿を握る幼馴染の姿があった。一体これはどういうことだろう。アスランはガンプラバトルなんてこれまでに一度もしたことが無いはずだ。それなのに何故こんなことを?
「何っ…!?」
次にシャニの驚いたような声が聞こえモニターに目を移すと、フリーダムがフォビドゥンに蹴りを入れ、フォビドゥンを突き放していた。フォビドゥンがひるんだ隙にフリーダムは後ろに跳躍して距離を取る。鮮やかな一連のこの流れ、まさかアスランがやったのか。
「ちょ、え、あ、アスラン!?ななな、何してるの君!何でっ…」
「キラ、少し落ち着け」
「そんなことっ…」
「大丈夫だから、な?」
そう言って笑うアスランは、まるで俺を信じろ、と言っているようだった。その優しい言葉と表情にキラは一瞬絆されそうになったが、今回はそれよりも混乱が勝った。キラは頭を振ってアスランに何か言おうと口を開いたが、そうする前にアスランに隣のオペレータースペースに押し込まれてしまっていた。
「ちょっと、アスランっ…」
何するの、と続けたかったその言葉は、アスランを見た瞬間今度こそ消え失せてしまった。アスランは目の前のモニターに映るフォビドゥンをじっと見据え、操縦桿を構えている。その瞳には、普段あまり見ることの無い本気の色が混じっていた。――彼は、勝つ気でいるのだ。
そんな彼の表情は、ぞくりとするほど格好良くて。こんなときなのに、キラは自分の顔にうっすらと熱が集まっていくのを感じた。
「こいつ…馬鹿にしやがって!」
ハッとしてモニターを見やるとフォビドゥンがこちらに迫ってきていた。いけない、まだ戦闘は続いている。集中しなければ。まだ色々と混乱しているが、コックピットスペースを追いやられてしまってはどうしようもない。
「アスラン、危ないっ!」
キラがそう叫ぶと同時にフォビドゥンが鎌を振り下ろす。だがアスランはそれをあっさりとかわしてフォビドゥンの腕のあたりへ的確にビームライフルを照射した。それによりバランスが崩れたフォビドゥンは、鎌を落として大きく仰け反った。
「キラ、近接武器は!」
「あ、えっと、二番のスロット!ビームサーベルが二つ!」
そう聞くとアスランはすばやく二刀のビームサーベルに武器を換装し、フォビドゥンに猛進する。その姿は力強く、アスランの自信を感じさせた。
「速すぎる…何なんだよ、お前!」
シャニはフリーダムから逃れようとしたが、スピードが段違いだ。気づいた頃にはフリーダムはフォビドゥンの目の前でサーベルを振りかざしていた。そのまますれ違いざまにフォビドゥンのボディに刃を入れる。
フォビドゥンはなすすべも無く上半身と下半身が真っ二つに切れ、フリーダムの後ろで大きな音を立てて爆発した。
『Battle Ended』
無機質な機会音声と共にCGが消え、その先にジョイントが壊れて真っ二つになっているフォビドゥンと、それを信じられないという顔で見つめているシャニ。そして、目立った外傷もなくビームサーベルを持った体制で静止しているフリーダムが見えた。
「…もしかして、勝った?」
「ああ、お前の勝ちだ、キラ。」
アスランはそう言って微笑んだ。
「本当に…本当に、勝てたの…?僕のフリーダムで…?」
「そうだ。お前のガンプラで、あいつに勝ったんだ」
「……や…やったあっ!やった、やったよ!アスラン!」
「うわ…っと」
そう言葉にした瞬間、言いようの無い幸福感が湧き上がり、思わずキラはアスランにひしと抱きついていた。アスランは突然のことに少しよろめいたがそれも一瞬のことで、よかったな、とキラの頭を優しい手つきで撫でてくれた。