慈悲と巡りて君を愛す
あんな夢を見たから、今日はずっと眠たくてしょうがなかった。あの時のオメガモンが夢に現れたことを誰かに相談しようとして、結局誰にも何も言わなかった。ヒカリだけは、何か気付いたのか俺の様子を心配してくれたけれど。
感情の読み取れない、あの青い瞳が忘れられない。彼はあの後、どうしただろうか。黒く染まってしまった翼は、元に戻ったのだろうか。俺が戻してやることはできるだろうか。そこまで考えて、笑うしかなかった。俺が汚してしまったのに、どうやって戻してやるというのだろう。そもそも俺は、彼にどうしてほしいのだろう。違う、わかっている。きっと俺は、夢でいいから、殺してほしかった。俺という存在を、全て消し去ってほしかった。あの剣で、あの刀で切られたら、痛いのかな。けどオルディネモンの時と同じなら、痛みを感じることもなく死んでしまえるのだろう。多分、これは俺の憶測でしかないけれど、オメガモンのあの姿は、そのためのものだったのだろう。今日、授業で出てきた言葉を思い出す。道徳のような授業だった。やる意味があるのかどうか、俺にはわからなかったけれど、その中で聞いた「安楽死」という言葉。オルディネモンに苦しむ暇も与えず、その圧倒的強さで斬殺したあの攻撃は、オルディネモンを、メイクーモンをあれ以上苦しめないための慈悲だったのかもしれない。無慈悲にも思える攻撃は、けれどきっと、メイクーモンを苦しみから解放したものだった。
「…そんなの、俺に言える資格、ねぇだろ」
また逃げてしまう。甘えてしまう。あの攻撃が本当に慈悲による攻撃だったとして、俺はそれを肯定してはいけないはずだ。最初に決意したのは望月だったかもしれない。だけど決断を下したのは俺なのだ。
波の音がする。家に帰る気にならなくて、なんとなく歩いていれば、気づけば目の前には海が広がっていた。真っ暗な海じゃない、青空と、青く煌めく海。なんだかひどく眩しかった。
オメガモンに、会えないかなぁ。意味もなくそんなことを思う。ああ、でも、本当に眠いな。このまま、眠ってしまいたい。ずっと、ずっと。そうして、目覚めることなく、海に溶けて、消えてしまいたい。
『駄目だ』
閉じかけていた瞼を開く。はっとして見上げれば、あのオメガモンがそこにいた。青く煌めく海も空も、夢と同じ、真っ暗に染まっている。オメガモンの翼も、まだ先の方が黒いままだった。
「どう、して。だって」
『お前は、本当に消えたいのか。本当に、私に殺してほしいのか』
「…だって、だって、俺、わかんねぇよ」
相変わらずオメガモンの瞳は青く綺麗で、でも感情何てこれっぽっちもわからない。知らない声で、本当に死にたいのかなんて聞かれたって、だって俺には、もう何もわからない。決意したはずなのに決断したはずなのに、俺はリーダーなのに。まだ怖いんだ。全部。ニュースでデジモンが悪く言われているのをまともに聞けないんだ。半分は事実かもしれないけど、そう言ったけれど、やっぱりそんなの認めたくなくて。誰かが死んだニュース、俺、見れないんだ。だって目の前で死んでしまった人がいた。救えたかもしれない命を踏み台にして俺は生きている。俺、俺は、未来を託されたんだから、前を向いて歩いて行かなきゃいけない。俺にはパートナーが戻ってきてくれた。だけど望月のパートナーはもう戻ってこない。俺は幸せなんだ。そうやって、俺より不幸な人がいる。俺よりずっと辛くて泣きたい人間がいるのに、俺なんか悩む資格もないはずなのに。仲間が俺をどう思ってるのか、怖いんだ。ヒカリに許さないと言われた時、本当は怖かったんだ。おれ、わかんないよ、なんにもわかんないんだ、オメガモン。
『…私は慈悲の体現者。そう、データをプログラムされている。あの時、私はメイクーモンを殺すことが慈悲であると判断されたからあの姿になった。相対する者があの子だったから、私にはあの強さが与えられた』
涙が止まらない。オメガモンの言葉を、ただ俯いて聞いている。慈悲の体現者。なら、俺を、今すぐたすけて。こんな汚くて醜い心、俺ごと消してしまって。
『……ねぇ、君には今、僕が誰に見えるの?』
聞こえた声に、勢いよく顔を上げた。白く輝く翼をもったオメガモンの姿はもうそこにはなくて、目の前にいるのは、俺の大事な。
「……あぐ、もん…?」
『…その姿に見えるんだね、太一』
そう言って、オメガモンだったはずのアグモンは優しく微笑んだ。俺の知っているアグモンと同じ姿なのに、その表情は似ても似つかない。きっと俺のアグモンは、あんな表情はしない。
『言ったでしょ?僕は慈悲のプログラム。今相対する君を、救うための姿が、これなんだよ』
「…アグモンが、俺への、慈悲」
不思議と違和感はなかった。気付けば溢れていた涙は止まっていた。海が、少しだけ青く見える。冷たい水は、どこか温かく感じた。
『君は本当に強いね。僕、知ってるよ。本当に強い人は、友だちの痛みを、一緒に分かち合ってくれるんだよ。ね、太一。君が、そうでしょう?』
「…そんな、綺麗なもんじゃない。俺が勝手に痛いんだ。俺、昔っから、本当は強くないんだ、怖いんだよ、アグモン」
『それはきっと、君が気付いていないだけ。そうやって、人の痛みは分かち合えるのに、自分の痛みを分かち合おうとはしないのは、君が優しいからだ』
アグモンじゃないはずなのに、だけど姿も声もアグモンと同じだから、全てぶつけてしまう。俺は、ずっと、この痛みを誰かに分かってほしかった。
『それにね、そうやって一人で抱えなくていいんだよ。君は独りじゃないでしょ?大事な仲間の他に、もっと大事な子がいるでしょう?』
言われて思い出す。そうだ、俺がこの夢を見るようになって、一番俺を心配してくれたのは誰だっただろう。何度も俺に大丈夫か聞いてきて、俺が大丈夫って言っても不安そうな顔をして、ずっとは傍にいられなくても、可能な限り、隣にいてくれたやつが、俺にはいたはずだ。
「…アグモン」
『…太一、僕は……私は、ずっとそばにいる。ただのデータでも、傍にいることはできるから。けれど、私でなくても、本当の救いは、君のすぐ隣に、いつだっているでしょ?この姿で、この声で』
アグモンの声とオメガモンの声が重なる。さっきよりも薄いけれど、アグモンのその後ろに、オメガモンの姿があった。その瞳は、随分と優しい。
『どんなに恐怖しても、どんなに憎まれても。それでも、いつだって、絶対君の味方でいてくれる存在が、隣にいるんだから』
『……生んでくれてありがとう。もう、もう2度と、私に出会うことがないように祈っている』
アグモンとオメガモンが、笑ってそう言った。次第に離れていく姿を、思わず追いかけ手を伸ばす。
「待って、アグモン、オメガモンっ」
『忘れないで、見失わないで』
待って、まだ何も言えていない。お礼だって言えていない。君は、だから俺の前に姿を見せてくれたのか。俺を救うためだけに、現れてくれたのか。
必死に手を伸ばす。掴もうとして、だけど空を切った。その時。
「たいちッ!!!」
どん、という衝撃と、聞き慣れた声に、息が止まった。腹部を見下ろせば、大切な黄色が、俺を止めるように抱き着いている。よく見れば足元が濡れていて、足首まで海の中だった。ようやく冷たさを感じて顔を上げれば、暗い海ではなくて、いつもの青い海。
「…アグモン」
「たいち、たいち。ねぇ、どこにも行かないでよ。僕をおいてかないでよ。僕も、ちゃんとつれてってよ」
今にも泣き出しそうな声だった。
「もう絶対忘れないから。たいちのこと忘れないよ僕。ずっといっしょにいるよ。お腹すいても、がまんするよ。だれかがたいちのことを嫌いって言っても、ぼくはずっとたいちがだいすきだよ。ぼく、ずっとたいちのみかただよ」
「だから、おねがい、ひとりで行こうとしないで」
ああ、ああ!
俺にはこんなにも、誰より俺を思ってくれる大事な半身がいたのに、こんなに必死に引き留めてくれるこいつが、今までだってずっと隣にいてくれたはずなのに!忘れていた、見ないようにしていた。かけがえのない、大事な、パートナーなのに!
「アグモン、アグモン…ッ」
抱き着くその小さな体を強く抱きしめる。死んでしまいたいなんて嘘だ。消えてしないたいなんて嘘だ。そんなの全部嘘だ。俺はずっとこいつといたい。忘れられてしまっても、何度だってこいつと出会いたい。消えたくない、こいつを1人残していけない。だって、俺はきっと、アグモンと同じ、アグモンに出会うために生まれてきた。
「ごめん、ごめんな…!俺、お前のこと、忘れて、勝手に、悩んでっ、」
「いいんだよ、ね、たいち。悩んでいいよ。僕もいっしょに悩むよ。たいちだけ悩んじゃいけないなんておかしいよ。僕の前では、もっとなやんでよ。もっと泣いてよ。ぼく、むりして笑ってほしく、ないんだよ」
「うん、うん…っ!!」
あの時やっと出会えた。忘れられてもまた取り戻した。俺の大事なパートナー。俺のかけがえのない半身。
お前がいてくれるだけで、きっと俺はなんだって乗り越えられる。また別れてしまう時が来てしまっても、きっとまた会える。お前が信じてくれるなら、俺はまだ、戦える。もう怖くない。怖くないよ、アグモン。
涙は止まらなかった。だけどもう、溢れる涙を堪えようとは、思わなかった。
『忘れないで。君の隣に』
(ああ、いたよ。ちゃんといたよ、オメガモン。俺にはこいつが、アグモンが、いてくれたよ)
遠いどこかで、あのオメガモンが、笑ったような気がした。
だから今、俺はここにいる。大切な、アグモンの隣に。
感情の読み取れない、あの青い瞳が忘れられない。彼はあの後、どうしただろうか。黒く染まってしまった翼は、元に戻ったのだろうか。俺が戻してやることはできるだろうか。そこまで考えて、笑うしかなかった。俺が汚してしまったのに、どうやって戻してやるというのだろう。そもそも俺は、彼にどうしてほしいのだろう。違う、わかっている。きっと俺は、夢でいいから、殺してほしかった。俺という存在を、全て消し去ってほしかった。あの剣で、あの刀で切られたら、痛いのかな。けどオルディネモンの時と同じなら、痛みを感じることもなく死んでしまえるのだろう。多分、これは俺の憶測でしかないけれど、オメガモンのあの姿は、そのためのものだったのだろう。今日、授業で出てきた言葉を思い出す。道徳のような授業だった。やる意味があるのかどうか、俺にはわからなかったけれど、その中で聞いた「安楽死」という言葉。オルディネモンに苦しむ暇も与えず、その圧倒的強さで斬殺したあの攻撃は、オルディネモンを、メイクーモンをあれ以上苦しめないための慈悲だったのかもしれない。無慈悲にも思える攻撃は、けれどきっと、メイクーモンを苦しみから解放したものだった。
「…そんなの、俺に言える資格、ねぇだろ」
また逃げてしまう。甘えてしまう。あの攻撃が本当に慈悲による攻撃だったとして、俺はそれを肯定してはいけないはずだ。最初に決意したのは望月だったかもしれない。だけど決断を下したのは俺なのだ。
波の音がする。家に帰る気にならなくて、なんとなく歩いていれば、気づけば目の前には海が広がっていた。真っ暗な海じゃない、青空と、青く煌めく海。なんだかひどく眩しかった。
オメガモンに、会えないかなぁ。意味もなくそんなことを思う。ああ、でも、本当に眠いな。このまま、眠ってしまいたい。ずっと、ずっと。そうして、目覚めることなく、海に溶けて、消えてしまいたい。
『駄目だ』
閉じかけていた瞼を開く。はっとして見上げれば、あのオメガモンがそこにいた。青く煌めく海も空も、夢と同じ、真っ暗に染まっている。オメガモンの翼も、まだ先の方が黒いままだった。
「どう、して。だって」
『お前は、本当に消えたいのか。本当に、私に殺してほしいのか』
「…だって、だって、俺、わかんねぇよ」
相変わらずオメガモンの瞳は青く綺麗で、でも感情何てこれっぽっちもわからない。知らない声で、本当に死にたいのかなんて聞かれたって、だって俺には、もう何もわからない。決意したはずなのに決断したはずなのに、俺はリーダーなのに。まだ怖いんだ。全部。ニュースでデジモンが悪く言われているのをまともに聞けないんだ。半分は事実かもしれないけど、そう言ったけれど、やっぱりそんなの認めたくなくて。誰かが死んだニュース、俺、見れないんだ。だって目の前で死んでしまった人がいた。救えたかもしれない命を踏み台にして俺は生きている。俺、俺は、未来を託されたんだから、前を向いて歩いて行かなきゃいけない。俺にはパートナーが戻ってきてくれた。だけど望月のパートナーはもう戻ってこない。俺は幸せなんだ。そうやって、俺より不幸な人がいる。俺よりずっと辛くて泣きたい人間がいるのに、俺なんか悩む資格もないはずなのに。仲間が俺をどう思ってるのか、怖いんだ。ヒカリに許さないと言われた時、本当は怖かったんだ。おれ、わかんないよ、なんにもわかんないんだ、オメガモン。
『…私は慈悲の体現者。そう、データをプログラムされている。あの時、私はメイクーモンを殺すことが慈悲であると判断されたからあの姿になった。相対する者があの子だったから、私にはあの強さが与えられた』
涙が止まらない。オメガモンの言葉を、ただ俯いて聞いている。慈悲の体現者。なら、俺を、今すぐたすけて。こんな汚くて醜い心、俺ごと消してしまって。
『……ねぇ、君には今、僕が誰に見えるの?』
聞こえた声に、勢いよく顔を上げた。白く輝く翼をもったオメガモンの姿はもうそこにはなくて、目の前にいるのは、俺の大事な。
「……あぐ、もん…?」
『…その姿に見えるんだね、太一』
そう言って、オメガモンだったはずのアグモンは優しく微笑んだ。俺の知っているアグモンと同じ姿なのに、その表情は似ても似つかない。きっと俺のアグモンは、あんな表情はしない。
『言ったでしょ?僕は慈悲のプログラム。今相対する君を、救うための姿が、これなんだよ』
「…アグモンが、俺への、慈悲」
不思議と違和感はなかった。気付けば溢れていた涙は止まっていた。海が、少しだけ青く見える。冷たい水は、どこか温かく感じた。
『君は本当に強いね。僕、知ってるよ。本当に強い人は、友だちの痛みを、一緒に分かち合ってくれるんだよ。ね、太一。君が、そうでしょう?』
「…そんな、綺麗なもんじゃない。俺が勝手に痛いんだ。俺、昔っから、本当は強くないんだ、怖いんだよ、アグモン」
『それはきっと、君が気付いていないだけ。そうやって、人の痛みは分かち合えるのに、自分の痛みを分かち合おうとはしないのは、君が優しいからだ』
アグモンじゃないはずなのに、だけど姿も声もアグモンと同じだから、全てぶつけてしまう。俺は、ずっと、この痛みを誰かに分かってほしかった。
『それにね、そうやって一人で抱えなくていいんだよ。君は独りじゃないでしょ?大事な仲間の他に、もっと大事な子がいるでしょう?』
言われて思い出す。そうだ、俺がこの夢を見るようになって、一番俺を心配してくれたのは誰だっただろう。何度も俺に大丈夫か聞いてきて、俺が大丈夫って言っても不安そうな顔をして、ずっとは傍にいられなくても、可能な限り、隣にいてくれたやつが、俺にはいたはずだ。
「…アグモン」
『…太一、僕は……私は、ずっとそばにいる。ただのデータでも、傍にいることはできるから。けれど、私でなくても、本当の救いは、君のすぐ隣に、いつだっているでしょ?この姿で、この声で』
アグモンの声とオメガモンの声が重なる。さっきよりも薄いけれど、アグモンのその後ろに、オメガモンの姿があった。その瞳は、随分と優しい。
『どんなに恐怖しても、どんなに憎まれても。それでも、いつだって、絶対君の味方でいてくれる存在が、隣にいるんだから』
『……生んでくれてありがとう。もう、もう2度と、私に出会うことがないように祈っている』
アグモンとオメガモンが、笑ってそう言った。次第に離れていく姿を、思わず追いかけ手を伸ばす。
「待って、アグモン、オメガモンっ」
『忘れないで、見失わないで』
待って、まだ何も言えていない。お礼だって言えていない。君は、だから俺の前に姿を見せてくれたのか。俺を救うためだけに、現れてくれたのか。
必死に手を伸ばす。掴もうとして、だけど空を切った。その時。
「たいちッ!!!」
どん、という衝撃と、聞き慣れた声に、息が止まった。腹部を見下ろせば、大切な黄色が、俺を止めるように抱き着いている。よく見れば足元が濡れていて、足首まで海の中だった。ようやく冷たさを感じて顔を上げれば、暗い海ではなくて、いつもの青い海。
「…アグモン」
「たいち、たいち。ねぇ、どこにも行かないでよ。僕をおいてかないでよ。僕も、ちゃんとつれてってよ」
今にも泣き出しそうな声だった。
「もう絶対忘れないから。たいちのこと忘れないよ僕。ずっといっしょにいるよ。お腹すいても、がまんするよ。だれかがたいちのことを嫌いって言っても、ぼくはずっとたいちがだいすきだよ。ぼく、ずっとたいちのみかただよ」
「だから、おねがい、ひとりで行こうとしないで」
ああ、ああ!
俺にはこんなにも、誰より俺を思ってくれる大事な半身がいたのに、こんなに必死に引き留めてくれるこいつが、今までだってずっと隣にいてくれたはずなのに!忘れていた、見ないようにしていた。かけがえのない、大事な、パートナーなのに!
「アグモン、アグモン…ッ」
抱き着くその小さな体を強く抱きしめる。死んでしまいたいなんて嘘だ。消えてしないたいなんて嘘だ。そんなの全部嘘だ。俺はずっとこいつといたい。忘れられてしまっても、何度だってこいつと出会いたい。消えたくない、こいつを1人残していけない。だって、俺はきっと、アグモンと同じ、アグモンに出会うために生まれてきた。
「ごめん、ごめんな…!俺、お前のこと、忘れて、勝手に、悩んでっ、」
「いいんだよ、ね、たいち。悩んでいいよ。僕もいっしょに悩むよ。たいちだけ悩んじゃいけないなんておかしいよ。僕の前では、もっとなやんでよ。もっと泣いてよ。ぼく、むりして笑ってほしく、ないんだよ」
「うん、うん…っ!!」
あの時やっと出会えた。忘れられてもまた取り戻した。俺の大事なパートナー。俺のかけがえのない半身。
お前がいてくれるだけで、きっと俺はなんだって乗り越えられる。また別れてしまう時が来てしまっても、きっとまた会える。お前が信じてくれるなら、俺はまだ、戦える。もう怖くない。怖くないよ、アグモン。
涙は止まらなかった。だけどもう、溢れる涙を堪えようとは、思わなかった。
『忘れないで。君の隣に』
(ああ、いたよ。ちゃんといたよ、オメガモン。俺にはこいつが、アグモンが、いてくれたよ)
遠いどこかで、あのオメガモンが、笑ったような気がした。
だから今、俺はここにいる。大切な、アグモンの隣に。