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例えば自力でどうにかできるのならば、オメガモンは迷わず実行している。たとえそれで自分の命がいくら削られようとも、自分一人でどうにかできることならばためらう必要がない。それで世界が救われると言うのなら安いものだろうと思っているからだ。しかしながら、現実はそう甘くはない。
オメガモンがその能力によって見えるのは、戦闘における自分の未来だけだ。世界の命運も他者の運命も決して見ることは叶わない。そして、自分の未来ですら自由に見ることができるわけではない。戦闘においては凡そ先読みをすることができるが、それだけだ。そして彼が見る未来は、決して変えられない。けれど時折、自分の運命が世界と交差する時、世界の断片を見る。その断片に、オメガモンは先の未来で自分と共に並び立つ14の影を見た。いつか世界を救う鍵となる、仲間の姿を垣間見た。嬉しいと、素直に思う。しかしその影の小ささに、不安は募った。オメガモンは決して小さな者たちを前線に出したいとは思っていない。まだ成長途中の者を前線に出すくらいならば、自分のような成長しきってしまったデジモンが戦う方が余程いい。まだ成長の余地があるデジモンは、これから先デジタルワールドを導いていくものなのだから。だから戸惑った。仲間にしていいものか、未来を否定するべきか。
「…見えてしまったからな」
わかっている。オメガモンが見た未来は、唯の予知ではない。それは変わることのない不変の未来。それが見えてしまった時点で、オメガモンに選択肢などありはしないのだ。どれだけ心苦しくとも、成長期の彼らを、成熟期の彼らを、完全体の彼らを。オメガモンはこれから、前線へと押しやってしまうしかないのだ。
「…せめて、」
せめて、自分の命に代えても、守ろうと思った。まだ並び立つ影しか見えていない。誰かが散る未来はまだ、見えていない。ならば可能性はある。未来を見た者として、先導者として。
「彼らの全てを、私は守ろう」
それはまだ見ぬ大切な仲間への、誰にも知られぬ誓い。
オメガモンがその能力によって見えるのは、戦闘における自分の未来だけだ。世界の命運も他者の運命も決して見ることは叶わない。そして、自分の未来ですら自由に見ることができるわけではない。戦闘においては凡そ先読みをすることができるが、それだけだ。そして彼が見る未来は、決して変えられない。けれど時折、自分の運命が世界と交差する時、世界の断片を見る。その断片に、オメガモンは先の未来で自分と共に並び立つ14の影を見た。いつか世界を救う鍵となる、仲間の姿を垣間見た。嬉しいと、素直に思う。しかしその影の小ささに、不安は募った。オメガモンは決して小さな者たちを前線に出したいとは思っていない。まだ成長途中の者を前線に出すくらいならば、自分のような成長しきってしまったデジモンが戦う方が余程いい。まだ成長の余地があるデジモンは、これから先デジタルワールドを導いていくものなのだから。だから戸惑った。仲間にしていいものか、未来を否定するべきか。
「…見えてしまったからな」
わかっている。オメガモンが見た未来は、唯の予知ではない。それは変わることのない不変の未来。それが見えてしまった時点で、オメガモンに選択肢などありはしないのだ。どれだけ心苦しくとも、成長期の彼らを、成熟期の彼らを、完全体の彼らを。オメガモンはこれから、前線へと押しやってしまうしかないのだ。
「…せめて、」
せめて、自分の命に代えても、守ろうと思った。まだ並び立つ影しか見えていない。誰かが散る未来はまだ、見えていない。ならば可能性はある。未来を見た者として、先導者として。
「彼らの全てを、私は守ろう」
それはまだ見ぬ大切な仲間への、誰にも知られぬ誓い。