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見る世界が同じであるならば、きっと自分は今この姿にはなっていないだろうなとインペリアルドラモンは一人、誰もいない空間で秘かに自嘲する。
インペリアルドラモンはかつて尊敬し慕っていたオメガモンと相棒と呼べる関係を築いていて、それなりに同じ景色を並んで見られるようにはなったのではないかと思っていた時期があった。彼が一番最初に目指した目標であり、道標であり、光だった。大きな力を持っているくせにろくに使いこなせていない頃は、よく呆れながらもインペリアルドラモンを守ってくれた。いつかその隣に並び立つのだと誓っていた。いつか守られた分と同じだけ、守れるようになるのだと、それほどに強くなるのだと意気込んでいた。同じ景色が見たかった。彼より強い者などいないのではないかというほどに圧倒的な力とバランスを兼ね備えたオメガモンが、普段目にしているものと同じものが見たかった。インペリアルドラモンは、どうしようもなく、オメガモンを好いていたから。運命だとさえ思っていたから。
「お前は焦らなくていい、いずれ強くなる」
いずれ。いずれとはいつなのだろう。どれだけ強くなっても力をうまく扱えるようになっても、インペリアルドラモンにはオメガモンに追いつける未来など見えやしなかった。きっと彼より強くなれることはないのだろうと何の根拠もなく思っていた。だけどそれでもいい、本当は守れるほどに強くなれれば一番いいが、それでも隣に並び立つ権利を与えられるのなら、ずっと共に戦えるのなら。

いつか、いずれ、同じ世界が見えるだろうと。

何を根拠にそんなことを思っていたのだろう。オメガモンが見ていた世界は、他の誰にも見ることができない世界だった。彼だけがわかる、彼だけが見える世界があった。きっとずっと前からわかっていたのだ、彼は。インペリアルドラモンは真に強くなれること。そしてその代償として、自分が散るということも。そんな世界を、どうやって見れると言うのだろう。
するりと剣を撫でる。どんな世界が見えていたのかと問いかけても、剣は何も答えてはくれなかった。
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