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この世界には、もう誰一人覚えていないけれど確かに一度世界を救った存在がいた。もともと広く知られていた存在で、世界を守護する存在の一人だった。全員で12人が所属するその組織で、トップを争うほどの強さを持っていた。だけれど今はもう神でさえ彼を覚えていない。かつて壊れてしまう寸前だった世界を、その身をもって救い上げた天使が確かにいたのに。
「…もう俺しか覚えてないけれど」
かつて世界が崩壊しかけた時、そう呟く彼は今のような力を持っていなかった。否、力は持っていたけれど、その力を使うことを許されなかった。彼は、ロイヤルナイツの抑止力であるアルファモンは、世界の崩壊時に何もできなかったことを再生した今の世界でもずっと悔いている。前の世界のことを覚えているのが、たとえ自分だけになってしまったとしても。
アルファモンには自分の対を成す存在がいた。そしてその彼こそが、世界を救い消えてしまったオメガモンだった。誰もアルファモンのことを知らない中、唯一アルファモンのことを把握し認識している存在で、だからアルファモンにとって彼は特別だった。彼がいてくれれば、自分が力を振るうことがなくても、たとえ誰にも認識されずともそれでいいとさえ思っていた。だって自分が必要とされないという事は、世界に平穏が満ちているという証のはずだったのだ。
「今じゃ俺もロイヤルナイツの一員だ」
失われた空白の席に、今はアルファモンが座っている。かつては対が座していた場所。誰も理由がわからないまま空いてしまった席を、アルファモンが加わることでなんとか埋めている。だから多くのデジモンに今では知られているけれど、一番いてほしい存在はどこを探しても見つからなかった。
「…どこに消えたんだよ」
その背中に翼を背負い、涙の蒼を纏いながらかつての世界と共に消えてしまった彼を。
自分以外の誰からも忘れ去られ、まるで最初からいなかったかのように消えてしまった彼を。
「オメガモン」
アルファモンは今でもずっと、探している。
「…もう俺しか覚えてないけれど」
かつて世界が崩壊しかけた時、そう呟く彼は今のような力を持っていなかった。否、力は持っていたけれど、その力を使うことを許されなかった。彼は、ロイヤルナイツの抑止力であるアルファモンは、世界の崩壊時に何もできなかったことを再生した今の世界でもずっと悔いている。前の世界のことを覚えているのが、たとえ自分だけになってしまったとしても。
アルファモンには自分の対を成す存在がいた。そしてその彼こそが、世界を救い消えてしまったオメガモンだった。誰もアルファモンのことを知らない中、唯一アルファモンのことを把握し認識している存在で、だからアルファモンにとって彼は特別だった。彼がいてくれれば、自分が力を振るうことがなくても、たとえ誰にも認識されずともそれでいいとさえ思っていた。だって自分が必要とされないという事は、世界に平穏が満ちているという証のはずだったのだ。
「今じゃ俺もロイヤルナイツの一員だ」
失われた空白の席に、今はアルファモンが座っている。かつては対が座していた場所。誰も理由がわからないまま空いてしまった席を、アルファモンが加わることでなんとか埋めている。だから多くのデジモンに今では知られているけれど、一番いてほしい存在はどこを探しても見つからなかった。
「…どこに消えたんだよ」
その背中に翼を背負い、涙の蒼を纏いながらかつての世界と共に消えてしまった彼を。
自分以外の誰からも忘れ去られ、まるで最初からいなかったかのように消えてしまった彼を。
「オメガモン」
アルファモンは今でもずっと、探している。