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マーシフルが今の世界に降り立って周りから聞いた話では、ディフィートというのは随分と凶暴なデジモンであるらしいということだった。もちろんそれはディフィートがウイルスを体内に誤って撮りこんでしまったからであって、暴走しているのは元のワクチン種としての血がウイルスと反発している証拠に他ならない。元々世界を守護する存在であったのだから、どれだけ自我が失われようともその本能がまだ残っているのだろう。けれどそれは他の多くのデジモンから見れば理解できる事ではなくて、だから結果的に自分たちの目で見た暴走状態のディフィートが、彼らの認識になってしまう。
ディフィートがどれほどの苦しみを感じているのか、それを理解するデジモンはいない。まったくいない、というわけではない。マーシフルが体を借りているこの世界のオメガモンだけが、ディフィートを救う手立てを探していた。だからこそ、マーシフルはオメガモンの前に姿を見せることができたわけで。
「…もとより、孤独だったのだろうな」
ロイヤルナイツとは別に、世界の守護のためだけに生きてきた。それが本来のディフィートの姿。マーシフルには、今はもう会えずとも信頼を寄せる仲間が確かにいた。けれどディフィートには、生まれた瞬間からそんなものはいなかった。ただ一人与えられた使命のためだけに生きるというのは、どれほどの孤独だろう。
「だから救いたいのだ」
きっと望まれている救済はこれではない。そんなことはマーシフルも分かっている。けれどマーシフルだって、孤独を理解できないわけではないから。同じ痛みでなくとも、誰よりも理解できるから。殺してしまう方がいいのだろう、ディフィートもそれを望んでいるだろう。だけどもう、誰一人にだって救済のための死なんてものを、与えたくないのだ。死という名の救済は、どうしようもなく胸が痛むから。
「共にいる。それが救いになると、願っている」


だからこそ、マーシフルは自分の世界と共に散る運命から離れ、この世界へ降り立ったのだ。
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