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すでにアキバマーケットではその存在が当たり前に思われているオメガモンだが、彼が住むのはその街ではなく、街から少し離れた樹海の中だ。そこに彼自身が生み出したデジタルスぺースがあり、オメガモンはその中を住処としている。それはもともと他の誰とも極力関わらないようにするためのものであったが、今ではすっかりただ寝るためだけの場所で、スペースに閉じこもっている時間は減ってしまった。けれどそこが住処であることに変わりはないから、オメガモンはアキバマーケットを訪れても最後には必ず住処である樹海へ戻っていってしまう。それが、デュークモンはほんの少し不服だった。
「…綺麗な月だな」
遥か上空で明々と輝く月を見上げながら、デュークモンはぽつりと1人呟く。夜のアキバマーケットは昼間とは打って変わって静寂が広がるばかりだ。どうせ誰もいないというのならこの月をオメガモンと見ることができればよかったなと思ったデュークモンは、やはり毎回彼を帰らせてしまうのは勿体ないと感じた。いっそ自分の店に住まわせてしまえればいいのだが、それとなく誘って見てもオメガモンはいつもかわしてしまうから。
「…同じ月を見ているだろうか」
共に見れないのなら、せめて同じものをどこかで見ていてほしい。それだけ呟いて、デュークモンは店の中へと戻った。

「昨日は月が綺麗だったな」
だから、翌日アキバマーケットにやってきたオメガモンが開口一番にそう言った時、デュークモンは夢だとさえ思ってしまった。目を見開いて固まるデュークモンに、何も知らないオメガモンは首を傾げる。
「何かおかしなことを言っただろうか?」
「は、あ、いや、そうではない!」
尋ねるオメガモンがほんの少し寂しそうな瞳をするものだから、デュークモンは慌てて首を横に振る。まさか同じものを見ていたらいいなどと考えていたなんて言えるわけもなくて、デュークモンはただ小さな声で「そうだな」と返すしかなかった。
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