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初めてその姿を見たのは彼がまだパイルドラモンの時だった。まだジョグレスをしたばかりで意識の融合や戦闘時のバランスを取ることが難しく、突如現れた敵に苦戦していたその時。背後に幼年期や成長期のデジモンたちを庇いながら、なんとか攻撃を食い止めていたその時。
一筋の強烈な光が止んだその先に、その背中があった。
「…すごい」
パイルドラモンがあれほど苦戦した相手をたったの一撃で沈めてしまったその圧倒的な力に、彼は魅入られてしまった。両腕に武器をまとい、まるで戦うために生まれたかのような姿。けれどちらと見えた青い瞳は空の色で、マントを翻す姿は騎士そのものだった。その背中が、あんまり綺麗で。
「…お前のそれは勇気ではなく無謀だ」
「え」
白い騎士はそれだけ言い残してパイルドラモンの前から姿を消した。

あれからずっと騎士を探したけれど、終ぞその白を見つけることは叶わないまま、パイルドラモンはやがてインペリアルドラモンへと進化を果たした。ようやくバランスが取れるようになった力は今度は大きすぎるまでに増えてしまって、いつまでたってもあの背中に追いつけない気がした。そんな時だった、イグドラシルから騎士の称号を与えられることになったのは。イグドラシルを訪れた先で探し続けた白を見つけた時、自分の強さはきっとこの時のために授かったのだとさえ思った。
「あ、あの!」
「お前は俺が見る」
「へ、」
どうか貴方に近づくために教えを請いたい。そう思った矢先、先に彼が、オメガモンがそう言うものだから、インペリアルドラモンは少し拍子抜けして返事をし損ねる。
「不服か?」
「え、あ、全然!むしろ嬉しい!」
「そうか、ならいい。大きな力は正しく使えなければ無意味だからな」
淡々と語るオメガモンに対しインペリアルドラモンはどうしようもないほどの胸の高揚を感じてしまう。それを悟られまいと真剣な面持ちを保ちながら、きっとオメガモンがいるなら自分はどこまでも強くなれると、そう確信した。



そう、彼がいたからこその、この姿なのだから。
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