人間CP
即興二次創作
お題:あいつの月
制限時間:15分
石田ヤマトを分かりやすいもので例えるのなら、彼は月だと人は言う。
あまり感情の起伏が大きくなく、常に冷静で、沈着で、けれど決して存在感を鈍らせることなく静かに輝いている月。彼はそんな人だと周りは言った。人づてにそのような話を聞いた時、ヤマトは少しばかり呆れたものだ。田舎は噂話がすぐに広まってしまう。誰かが勝手に言い始めたことなのに、もう誰もがそんな話を知っていた。
最初はやめてほしいと思った。なかなか詩的な表現だとは思うが、その対象が自分だと言うなら嬉しくもなんともない。了承を得ているならまだしも、他人の評価を勝手に広められて嬉しいと思う人間がいるだろうか。月、だなんて印象は、了承を得たとしてもまっぴらだとは思うけれど。自分はそんな綺麗な人間ではない。ヤマトは月の光をよく知っている。夜の闇を優しく照らし出し人に安息を与える、そんな輝き。彼が住む場所は都会のように街灯が明々と輝いてはいないから、夜の月光は子供ながらに安心するものだとヤマトは思っていた。だからこそ、自分を月だと評価する声に納得がいかない。自分は誰かを照らし安心させるような人間ではない。極力人と深くかかわりを持たず、人に深入りさせない。そんな人間が、綺麗なものか。
ヤマトはずっと嫌いだった。誰かが言う、月という印象が、心底嫌いだった。
けれどそれが嫌いでなくなったのは、いつからだっただろう。
彼は太陽のような人だった。強すぎるほどの光でじりじりと人を照らし、けれど安心をもたらし、そして勇気を与えてくれる。彼はそんな人だった。そんな人だと、ヤマトは思っている。こんな自分にも、変わらず接してきてくれた。こんな自分にも、当たり前にその光を分けてくれた。時折暑すぎるそれは、けれどヤマトは心地良いとさえ思った。
きっとそれからだ、自分が月だということに嫌悪感を抱かなくなったのは。
月は太陽の光を受けて輝く。月が輝く間は、太陽も少しの間休息ができる。月は太陽がなければ輝かない。太陽がいなければ、月は月なり得ない。
太一がいるから、ヤマトはヤマト足り得るのだ。
「太一、俺の太陽。俺の、ただ一つの、勇気」
太一が太陽なら、俺は月でいい。太一が太陽なら、俺は太一にとっての月でいたい。
周りの評価はいらない。周りの声はいらない。ヤマトは、太一にとって、共に並び立つ月でいたかった。
「俺は月でいい。誰のものでもない、太一だけの、太一のための月だ」
石田ヤマトを分かりやすいもので例えるなら、彼は月だと人は言う。そして彼も、それを今は受け入れている。
石田ヤマトは、彼が認めたたった一人の太陽のためだけの月なのだ。
お題:あいつの月
制限時間:15分
石田ヤマトを分かりやすいもので例えるのなら、彼は月だと人は言う。
あまり感情の起伏が大きくなく、常に冷静で、沈着で、けれど決して存在感を鈍らせることなく静かに輝いている月。彼はそんな人だと周りは言った。人づてにそのような話を聞いた時、ヤマトは少しばかり呆れたものだ。田舎は噂話がすぐに広まってしまう。誰かが勝手に言い始めたことなのに、もう誰もがそんな話を知っていた。
最初はやめてほしいと思った。なかなか詩的な表現だとは思うが、その対象が自分だと言うなら嬉しくもなんともない。了承を得ているならまだしも、他人の評価を勝手に広められて嬉しいと思う人間がいるだろうか。月、だなんて印象は、了承を得たとしてもまっぴらだとは思うけれど。自分はそんな綺麗な人間ではない。ヤマトは月の光をよく知っている。夜の闇を優しく照らし出し人に安息を与える、そんな輝き。彼が住む場所は都会のように街灯が明々と輝いてはいないから、夜の月光は子供ながらに安心するものだとヤマトは思っていた。だからこそ、自分を月だと評価する声に納得がいかない。自分は誰かを照らし安心させるような人間ではない。極力人と深くかかわりを持たず、人に深入りさせない。そんな人間が、綺麗なものか。
ヤマトはずっと嫌いだった。誰かが言う、月という印象が、心底嫌いだった。
けれどそれが嫌いでなくなったのは、いつからだっただろう。
彼は太陽のような人だった。強すぎるほどの光でじりじりと人を照らし、けれど安心をもたらし、そして勇気を与えてくれる。彼はそんな人だった。そんな人だと、ヤマトは思っている。こんな自分にも、変わらず接してきてくれた。こんな自分にも、当たり前にその光を分けてくれた。時折暑すぎるそれは、けれどヤマトは心地良いとさえ思った。
きっとそれからだ、自分が月だということに嫌悪感を抱かなくなったのは。
月は太陽の光を受けて輝く。月が輝く間は、太陽も少しの間休息ができる。月は太陽がなければ輝かない。太陽がいなければ、月は月なり得ない。
太一がいるから、ヤマトはヤマト足り得るのだ。
「太一、俺の太陽。俺の、ただ一つの、勇気」
太一が太陽なら、俺は月でいい。太一が太陽なら、俺は太一にとっての月でいたい。
周りの評価はいらない。周りの声はいらない。ヤマトは、太一にとって、共に並び立つ月でいたかった。
「俺は月でいい。誰のものでもない、太一だけの、太一のための月だ」
石田ヤマトを分かりやすいもので例えるなら、彼は月だと人は言う。そして彼も、それを今は受け入れている。
石田ヤマトは、彼が認めたたった一人の太陽のためだけの月なのだ。