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人間CP

石田ヤマトという人間は、金色の髪に青い瞳と日本では所謂イケメンと呼ばれる部類に入りその見目は女性から好評で同じ男からは若干疎まれるものがあるが、しかしそれはあくまで日本での話である。例えばスーパーヒーローなどが広く知られているアメリカなんかでは、体格の良さも含めて外見を見られるもので、そういう点でヤマトという人の外見を見ると、かっこいい、よりは可愛い、に近い感想を持たれるのだ。まぁガタイのいい外人から見れば大抵の日本人は可愛いに分類されるのだろう。イケメンというなら猶更。
だから宇宙飛行士という夢をようやく掴み取ったヤマトが、アメリカ人の同僚からこういうことを言われるのは、別段不思議なことでもなんでもないのだ。

「ヤマトは見た目が綺麗だから可愛がられそうだなぁ」
「はぁ?」
からかうように笑いながら突然そう言ってきた同僚に、ヤマトは怪訝な顔をして見せる。突然言われたということを差し引いても、ヤマトには言われた内容がよく理解できなかった。同僚はそれでも楽しそうに笑ってそんな怖い顔すんなよ、なんて言うものだから、ヤマトの眉間のしわが更に濃くなってしまう。
「喧嘩なら買うが」
「そういうことじゃねぇよ!相変わらず短気だな」
短気と言われると、ヤマトは言い返せなかった。昔よりも随分大人の対応ができるようにはなっているが、根底の部分は変わらない。昔からよくクールで冷静だと思われてきたが、実際のヤマトはもっと熱血なところがあったりなかなか情緒が安定しなかったり、それが本来のヤマトだ。この同僚はそれをよく理解してくれているから、ヤマトを短気だと言うのだけれど。理解されていることは嬉しいことだが、どうにも腑に落ちないなとヤマトは少しだけ不服だった。
「ほら、こっちは顔が良けりゃ体格もいいやつがいるだろ?顔だけ綺麗だとさ、そういうのに好かれたりとか、よくあるんだよ」
「よくあるのか…」
「自由の国だからな」
別にこの同僚を褒めたわけでもなんでもない、そもそも褒めてすらいないのにどうして自信ありげに胸を張るのだろうか。ヤマトは少し呆れた。
ヤマトだって聞いたことがないわけではない。日本とは違って様々な人種が入り乱れ様々な思想が受け入れられているアメリカにおいて、同性愛というのは珍しい話ではない。実際ヤマトも時々声をかけられた経験があるからよくわかっている。まさか同性からナンパを受けるとは思っていなかったヤマトは、アメリカの地で初めてそれを経験した時怖いというよりも妙に納得できるものがあった。それに、同性愛という面だけ見れば、彼は全く関係ないわけではないから。同時に思い出す。今頃世界中を飛び回り忙しくしているのだろう彼を。
「お、なんだヤマト、にやにやして気持ち悪いな」
「お前ほんと失礼だな」
「気を許している証拠だ」
「親しき中にも礼儀ありって知ってるか?」
少し強めに言えば、同僚はそれ以上は煽ろうとはしなかった。これもいつものことだ。ヤマトは彼とのそんなやり取りが決して嫌いではなかった。ほんの少し、少しだけ、似ているなと感じるから。
「で?どうしたんだよ」
「ああ…いや、可愛がられるは間違ってるなと思って」
「は?」
今度は同僚の方が怪訝な顔をする。そういえばこいつにはまだ言っていなかったなと思い出したヤマトは、そのまま綺麗に笑って返した。

「俺が可愛がられるんじゃない、俺が、可愛がってやってるんだ」
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