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うちの子がこんなに可愛い!!!

黒可というテイマーの持つデジモンたちが暮らすデジタウンは、頻繁にメンバーの入れ替えがされる。時には彼女のお気に入りのデジモンで埋め尽くされることもあるが、最近は専ら彼女が育成しようと思っているデジモンで編成されることが多い。つい最近卵から孵した、アルフォースブイドラモンへ進化するエアロブイドラモンや、いずれアポカリモンに進化するピエモン。ガンクゥモンに進化するデスメラモンや、カオスデュークモンへ進化するブラックメガログラウモン。そして彼女の現パートナーであるオメガモンX。どことなく全体的に禍々しいが、友情度の兼ね合いであったり進化コードの持ち合わせから、そういう編成になっている。もちろん彼女が育成したがっているデジモンはこの限りではないので、定期的にメンバーの入れ替えはされているのだけれど。
それでも時々、育成などガン無視で編成され直されることもある。それは彼女がお気に入りのデジモンがデジタウンで遊ぶ様子を見たがったり、お気に入りのデジモンを永遠に眺めていたいなどといった私欲によってそうなるのだが、そうなるとデジタウンの容量は一気に減っていく。
何せ彼女のお気に入りと言えばオメガモン系譜6体分で、更にそこにデュークモンCMやウォーグレイモンXなどの究極体以上ばかりが揃うので、容量がなくなるのも無理はない。

その日は、たまたまデジタウンのメンバーが彼女の好きなデジモンで編成されていた日だった。オメガモン系譜6体と、まだ進化していないがいずれオメガモンになるウォーグレイモン、そしてデュークモンCM。彼女は彼らにいつものように好物やらを与えながら、楽し気にデジタウンの様子を眺めているだけだった。
ふとタウンの中央に鎮座する孵化カプセルが通知音を鳴らす。それは彼女が手に入れた少し特殊なデジタマが入っていて、それがもうすぐ孵化するという通知だった。うまくいけば究極体まで進化できるデジモンが生まれるはずだ。できれば今まで手にできたことのないデジモンが生まれることを祈ってあたたかくなったデジタマを撫でる。それをマーシフルやデュークモンCMは傍で楽しそうに見守っていた。
数回撫でる。ぴきり、卵に入るヒビ。強い光と共に一瞬目をつむり、ゆっくりと目を開ければ、彼女もよく知る、小さな幼年期のデジモンの姿。瞬間、叫んだ。
「誰かオメガモン抑えて!!!!!!!!!」
「承知」
テイマーの焦ったような声にすかさず動いたのはデュークモンCMだ。今にもガルルキャノンをぶっ放そうとせんばかりの戦闘態勢に入っている通常のオメガモンを後ろから羽交い絞めにして抑え込む。

テイマーの腕の中に生まれた新たなデジモンは、クラモンだった。

その後、テイマーによって早急にデジタウンのメンバーが編成され直した。今のところデジタウンにはオメガモンXしか系譜の姿は見えない。テイマーはかなり焦っていた。彼女もまさかタウンのメンバーをオメガモンで集中させているこのタイミングでクラモンが生まれるなど思ってもみなかったのだ。
通常のオメガモンが咄嗟にクラモンへ戦闘態勢を取ったのは、もはや本能とも言えた。マーシフルなどの亜種は別にクラモンに対して危機感を覚えるようなことはないので、編成を外す必要はなかったのだが、念のためということでパートナーのオメガモンX以外には外れてもらっている。オメガモンに非はないのだ。そういう本能なのだからもうこれは仕方がない。編成したばかりでまだまだ世話も何もできなかったが、クラモンが無事成長期に進化するまでは彼が表に出てくることはないだろう。とはいえ、2、3日程度の話だけれど。オメガモンは去り際にテイマーへ少し申し訳なさそうな目をしていたが、テイマーの彼女こそオメガモンに対して申し訳ない気持ちが強かった。なのでまぁ、デュークモンCMがオメガモンと並んでいた先程の場面を目に焼き付けたことは、怒らせるだろうから黙っておくとする。彼女はデジモンたちを大事にしている一方で、自分の欲に大変忠実であった。悲しいことに。
「パートナーを変えなくていいのか?」
「エックスはクラモンに対してそういうのないだろうしええよ別に」
生まれたばかりのクラモンはデジタウンで楽しそうに遊んでいる。無邪気な姿だ、可愛い。あれが成長するとあれになるのか、うちの子は誰になるのかな、なんて思ったりもするが、今のところ無害なので良しとしよう。クッキーが欲しいと言うので持ち物の中からクッキーを渡す。美味しそうに食べる姿が可愛いのでキャンディーも上げた。オメガモンXは複雑そうな顔をしていた。
という、そこそこの溺愛の甲斐あってか、次の日にはクラモンはツメモンへと進化していた。幼年期の段階ではまだツメモンがどこまで進化するのかは分からないし、何になるのかも分からない。なのでまだオメガモンを編成に戻すことはできず、今のところデジタウンの編成は彼女が育成している途中のデジモンたちが占めている。いつも以上に頻繁に顔を見せるテイマーに不思議に思ったオメガモンXは尋ねたが、彼女曰く。
「目を離した隙にツメちゃん消えてそうだから…」
さすがに編成を無視してツメモンを消そうとするほどオメガモンは短慮ではないと思うが、という感想は大人しく胸にしまっておいた。また妙な呼び方をしているテイマーに小さく溜息を吐く。もうどうしようもないなとは、言葉にしない。ツメモンは何も知らずに楽しそうにデジタウンを駆け回っているので、オメガモンXはできればその子があの破壊神以外に進化してくれることを密かに願った。

後日ツメモンは無事ピコデビモンへと進化しデジタウンの編成から外れ、オメガモンもまたメンバーに編成し直された。お詫びと称してテイマーが異常にケーキを勧めたが、これ以上はいらないとオメガモンに拒否されて項垂れる姿があったらしい。ズワルトはよくあのテイマーと長いこと付き合ってきたなと、オメガモンXは改めて思うのだった。
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