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800字ss

「なぁ諸葛亮、俺が悪かったってば」
「いいんだよ別に、全然、全然怒ってないから」
「怒ってるじゃん!」
心底申し訳なさそうに謝る劉備と、怒っていないと言いながら明らかに怒っている諸葛亮。こんな光景、そういえば初めて会った時も見たなぁと呆れながら張飛は思う。もう同じようなやりとりをさっきからずっと繰り返している二人に、この茶番はいつになったら終わるのだろうかと大きくため息をついた。
そもそも発端はなんだったのだろう。張飛が気付いた時には諸葛亮はもう怒っていたようだったからその原因がわかっていないのだが、どうも劉備が諸葛亮の地雷を踏み抜いたらしく、ああやってずっと謝っている。多分本人も悪いことを言ったという自覚があるのだろう。いつまでも機嫌を直さない諸葛亮に懸命に誠意を見せる姿は大したものだ。俺だったら早々に諦めるだろうなと張飛はなぜか劉備に感心した。
「うう、諸葛亮〜、ほんとにごめんってば、許してくれよ」
見れば劉備はほんのちょっと泣きそうになっていて、もうどちらに非があるのかわからなくなってしまった。そうまでして許さない理由はなんなのかと少し咎めるように視線を諸葛亮へ向ければ、その顔は怒っているというよりは楽しそうで。
(……あいつ)
ようやく気づく。諸葛亮はおそらくもう怒ってなくて、あれはただ単純に劉備の様子を楽しんでいるだけだ。劉備があんまり素直なものだから、ああやってからかって遊んでいる。
(どうせ困ってる顔も可愛いとか思ってんだろうな)
まぁ気持ちはわからなくもないが、などと思いながら関わると面倒臭そうだなと思った張飛は、結局そのまま傍観を決め込んだ。

さて、張飛の感はあながち間違ってもおらず。
泣きそうな劉備を可愛いなと思いながらそこに高揚を感じた諸葛亮は、好きな子ほどなんとやらという感情をまさか自分が抱くことになろうとはと思いながら、もう少しだけ現状を楽しむことにした。
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