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曹操さん、と嬉しそうに笑って名前を呼び駆け寄ってくる姿はなんとも可愛らしいものだなと、特定の誰かに対してそういった感情を持ったことがない曹操でも、それくらいは思ったりする。曹操の周りは彼が幼いころから何かと殺伐としていて、それはもちろんトリニティの供給問題であったり派閥の問題であったり様々で、曹操に力があったということでもあるのだが。ここまで純粋に好意だけを持って向かってくる相手は初めてなのではないかとすら思った。それを邪険に扱うほど曹操も人間ができていないわけではない。むしろその存在こそが、今は何よりも曹操の心を癒した。
「それでね、曹操さん」
ブルーウィングで劉備の姿が見られるのももう日常となってしまった。曹操と劉備がいるのは自室ではなくて、今は客室にいる。本当は自室に行きたかったのだが、どうしても今日中に終わらせてくれなければ困るという仕事を夏候惇が持ってきたものだから、仕方なく客室を使っていた。まぁだから、そこには二人だけではなく夏候惇たちも何人かいるわけで。
「まだ曹操さんほどではないけど、前よりは強くなれたかなって。それで、…曹操さん、あの、もしかしてお仕事邪魔してる…?」
常に一緒にいるわけではないから、劉備はいつも来るたびによく喋る。近況を語ったり修行の成果を語ったり。とても1日で語り切れるものではないとわかっていても、その口を止めることをしない。逆に曹操は話を聞きはするがあまり喋り出したりしないから、傍から見れば一方的に話しかけてるだけにも見える。そして時々、それにふと気づいた劉備はこうやって自分が邪魔になっていないかを聞くのだけれど。
「そんなに焦らなくても逃げたりしないから、好きなように話せ」
目を細め、あんまり優しく笑ってそう言われるから、いつも劉備は嬉しくなってまた喋り始めるのだ。


(ところでさっきから仕事の手が止まってるんですがね曹操様…!)
まさか二人のそんな雰囲気をぶち壊せるわけもなく、部下は今日も頭を抱えるのだった。
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