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口下手というわけではなくとも一般的に見てあまり喋る方ではない曹操は、誰かと雑談を交わしたりだとか日常的な会話を長く続けることはあまりしない。あまり、というかほぼしない。幼少期からその傾向はあったし、ブルーウィングの代表となってからはさらに顕著に見られるようになった。別にそれによって部下が何か不満を抱いているわけではないし困ることもないのだが、一つ気になると言えば、最近よくやってくるようになった劉備という青年は曹操とは反対によく喋る方であるから、その差が目立つのだ。彼らが互いに好意を抱いていることももうそれを打ち明け合っていることもみんな知っている。部下は皆祝福したし、若干一人激怒し泣きながらも手を離した者もいたが、その関係は良好と言えた。現状も良好だと言うことはわかっているのだが。
「…なーんかいっつもあいつが喋ってるとこしか見ねぇんだけどよ」
「まぁ、曹操様はあまり喋るタイプではないからな」
曹操と劉備が楽し気に話す様子を遠目に眺めていた夏侯淵と夏候惇は、少し複雑そうな顔でそう会話を交わす。例のごとく劉備ばかりが喋っているものだから、あれでいつか愛想をつかされたりはしないだろうかと一抹の不安があった。あの曹操様がまさか愛想をつかされるなど、とは思うが、それでも可能性は捨てきれない。
複雑そうに眺める先で、ふと曹操が劉備の顔をじっと見つめそっと顔を近付ける。それに気づいた劉備は少し驚いてぎゅっと目をつむった。ああ、まさか目の前で、なんて思っていたら、曹操は劉備の額に手を伸ばして何かしらを払う動作をした。夏侯淵たちがぽかんとなれば、同じく劉備もぽかんと目を開いて曹操を見つめ返す。
「ゴミを払おうとしただけだったんだが、キスのほうが良かったか?」
「え、あっ、曹操さんいじわるだ!」
「お前にだけだ」

(えっ、愛想つかされるとかありえねぇなあれ)
(俺たちは何の心配をしていたんだ…)
後に体調不良を訴えた夏侯淵と夏候惇は、重度の胸やけを起こしていたという。
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