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かつての大きな過ちで、とっくに人間らしい感情は失ってしまったものだと思っていた。もう平和の為に尽力するのはやめよう、もうこの力を他人の為に使うのはやめよう。私一人が出しゃばったところで、この世界は変わらない。何も変えられない。自分のこの両の腕は、誰一人だって救えやしないのだから。ずっとずっとそう思ってきた。私はもう、誰のためにも力を使いたくなかった。もう二度と、あんな凄惨な光景を目にしたくはなかったから。
だというのに。そう決心してきたのに。初めて彼を目にした時から、誰よりも綺麗な瞳をしていた。苦しみを知らないわけではない。痛みを知らないわけではない。けれどそれでも尚、誰かのためになろうと力を振るうその姿が、あまりにも綺麗だった。純粋な正義を宿した瞳が、酷く眩しかった。だから最初はただの気まぐれで、その輝きを目にしたかっただけで。私と彼の道が交わることはないからと、高を括っていた。彼らがついに私を探しに来た時、その背中について行きたいと思うと同時に、頼むから関わってくれるなとも思った。もうあの痛みを背負いたくなかったから。私は今までずっと逃げてきた。今さら覚悟を持つこと等、できやしないのに。
「お前の全てを背負ってやる」
大きな覚悟を宿した瞳が私を捉えて離さなかった。その瞳に魅入られた瞬間、きっともう私にはその道しか残されていなかった。きっとまた大きな痛みを抱えていくのだろう。とりこぼしていく命もあるのだろう。けれど、この人がいるなら、この人のその背中を、守ることができるのなら。
「私の力を、貴方の正義の為にお使いください」
その瞳から逃れようなどとは微塵も思わなかった。きっと私は、この瞬間のために生きてきた。私の力は、この人の役に立つために与えられたのだ。
「孔明」
彼の口が私の名前を紡ぐ。
その日、私はようやく己の運命と出会った。
だというのに。そう決心してきたのに。初めて彼を目にした時から、誰よりも綺麗な瞳をしていた。苦しみを知らないわけではない。痛みを知らないわけではない。けれどそれでも尚、誰かのためになろうと力を振るうその姿が、あまりにも綺麗だった。純粋な正義を宿した瞳が、酷く眩しかった。だから最初はただの気まぐれで、その輝きを目にしたかっただけで。私と彼の道が交わることはないからと、高を括っていた。彼らがついに私を探しに来た時、その背中について行きたいと思うと同時に、頼むから関わってくれるなとも思った。もうあの痛みを背負いたくなかったから。私は今までずっと逃げてきた。今さら覚悟を持つこと等、できやしないのに。
「お前の全てを背負ってやる」
大きな覚悟を宿した瞳が私を捉えて離さなかった。その瞳に魅入られた瞬間、きっともう私にはその道しか残されていなかった。きっとまた大きな痛みを抱えていくのだろう。とりこぼしていく命もあるのだろう。けれど、この人がいるなら、この人のその背中を、守ることができるのなら。
「私の力を、貴方の正義の為にお使いください」
その瞳から逃れようなどとは微塵も思わなかった。きっと私は、この瞬間のために生きてきた。私の力は、この人の役に立つために与えられたのだ。
「孔明」
彼の口が私の名前を紡ぐ。
その日、私はようやく己の運命と出会った。
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