特別番外編
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見上げるのは雲一つない豪快な晴天。
灼熱のごとき照らしつける太陽。
見渡す限り、無限に続く砂漠地帯を歩く者達がいた。
「みんな、天竺までがんばるぞー」
『おーー』
「ダー」
白い法衣を身に纏い、ラクダに乗る三蔵法師(男鹿)とその弟子(響古)。
そして、そんな二人を護衛する悟空(ベル坊)と沙悟浄(葵)、猪八戒(古市)が徒歩で進む。
「――ところで、古市…いや…」
うっかり役名を忘れ、咳払い。
気を取り直して話しかける。
「ブタ…」
いきなり間違われた。
ちなみに、猪八戒は豚ではなく猪 である。
この時点でもう、古市には彼の役割がわかっていた。
男鹿は、間違いなく三蔵法師だ。
「猪八戒な。え?何これ?お前が三蔵法師なの?これで行くの?まじで!?」
この問いに、慈愛とは真逆な顔立ちで男鹿は邪悪に笑う。
「おう、オレの事はお師匠様と呼べよ――で、天竺って何?強いの?」
「今すぐ、そこを降りろぉっっ!!どんだけアホな聖人様なんだよ!!」
自身の役割をさっぱりわかっちゃいない男鹿に、古市は今すぐ法師の役を降りろと喚く。
(※天竺……三蔵法師一行が目指した場所だよ、今のインドあたりだよ)
唐の時代に中国からインドへ渡り仏教の経典を持ち帰った玄奘三蔵一行の長年の旅が描かれた話である。
「それからな……」
それから古市は、ラクダに乗る何故か得意げな響古の姿を眺め、溜め息をついた。
三蔵法師より一回り小さな冠や法衣を纏い、男鹿にぴったりとくっついている。
「響古は誰ですか…?」
「はーい、三蔵法師の1番弟子です!」
なんで弟子、と古市が硬直した中、改めて説明する。
「最初は管理人も配役に迷ったんだけど、辰巳は仮にもお坊さんだし、男女関係はご法度だから弟子という事になったの。しかも1番だよ、1番!」
ぎゅっと男鹿に抱きついている響古は柔らかな太陽のように満面の、どこか誇らしげに告げる。
「響古が三蔵法師だったらオレも納得したよ!」
「それはダメだよ、原作に忠実に再現した結果なんだから」
※メタ発言は控えましょう。
「変わって!今すぐ立ち位置変わって!」
その時、背後にいた男鹿と葵が、
「「あ」」
と声を揃えた。
反射的に仰け反ると、風切り音と共に古市がいた箇所に凄まじい速度の斬撃が走る。
いつの間にか錫杖を握った響古が、先程までの快活な印象とは様変わりし、冷ややかに見下ろしている。
「質問を変えた方がいいよ。首と胴体がつながってほしいなら」
背筋に悪寒が走り、冷や汗が流れる。
「も…もうありません…」
「よし」
力ずくで反論を退けた直後、助けを求める声が届いた。
三蔵法師一行は視線を移す。
「たっ、助けて下さいっ!!」
フリルを散りばめた黒のゴスロリを着たアランドロンが内股気味に駆け寄ってきた。
「ああっ、お坊様っ!!悪い妖怪に追われているんです!!どうか退治を…っ!!」
あまりにもミスマッチな服装での登場に顔を引きつらせる男鹿達。
「悟空、やっておしまい」
「急所を狙うのよ」
「ダー」
師弟の指示でベル坊は一歩踏み出し、如意棒でアランドロンを突く。
「おふんっ」
男が決して強い衝撃を受けてはいけないデリケートな部分を押さえ、アランドロンは崩れ落ちる。
助けを求めるために登場して早々、あまりにひどい仕打ちにアランドロンはうろたえる。
「ちょっ…違います!!私は、ただの村娘でございます!!」
男鹿は不快そうに眉をひそめ、響古は溜め息をつく。
「しぶてーやろうだな。いいや、ベル坊。もうバリバリっとやっちゃえ、バリバリっと」
「村人だったら、まぁわかるけど、娘って…無理があるでしょ、無理が」
「ウー」
すると、ベル坊の小さな身体から電撃が発する。
「あのっ…話聞いてますっ!?」
男鹿は凶悪な笑みを浮かべ、邪険にあしらう。
――オレ様に気安く喋りかけんじゃねぇ、失敗キャラが。
実にいい性格をしている。
目の前で助けを求められたら、善良な人なら手を貸し、普通の人でもだいたいは声をかけるくらいはするだろう。
しかし男鹿は凶悪な顔で冷淡な言い方をする。
その光景に、アランドロンは本当に慈悲深い三蔵法師なのかと疑った。
「あなた三蔵法師ですよねっ!!?」
そのやり取りで完全に不意をつかれた瞬間、真っ二つに割れたアランドロンの中から声が聞こえた。
「…――ちっ」
「もう少し騙せると思ったが…」
そして、何者かがアランドロンの中から姿を現す。
その唐突な出現に、場のざわめきが一気に沈静化し、誰もが目を剥いてその二人に注目する。
その二人とは、太上老君(老子)の炉の番人。
「よく、オレ達の正体に気づいたな」
――金角。
「さすがは三蔵法師といったところか。てめーを喰って、不老不死になってやんぜ」
――銀角。
酒を飲んで酔っ払う、甲冑を纏った金角(姫川)と銀角(神崎)が登場した。
(…超展開…!!)
とんでもない場所からの登場に唖然とする古市は、
「にあってるな」
中国風の鎧に身を包み、悪役にふさわしい姿に驚く。
二人の登場に反応して、男鹿は言う。
「いや、ふつーに助けたくなかっただけだ」
すると、小さな玉をつないで首飾りとし、簡素な僧衣を着た葵が名乗り出る。
「お師匠様…ここは私が…」
「おぉ、沙悟浄邦枝…」
葵が前に出て、厳しい表情と共に言い放つ。
「あなた達!!未成年がお酒なんて飲んでいいと思ってるの!?吐きなさいっ!!」
「ワォ、葵さんらしい真面目な発言」
「いや…邦枝先輩、今はそーゆー話は…」
ところが、姫川と神崎は顔を見合わせ不敵に笑うだけだ。
酒の入っているひょうたんを掲げ、真っ向から反論する。
「ククク、バカめ。こいつはノンアルコールのやつだから、いいんだよ」
「なんですって!?」
法律上では二十歳未満の未成年者も飲むことができるノンアルコールだが、あくまで二十歳以上を想定して開発されたもの。
本物のビールに非常に近い味になっているので、未成年が興味を持ち飲酒のきっかけになる危険性があるため、未成年の方の飲用はやめましょう。
……話が逸れてしまったが、これはアルコール飲料ではないと言い切られ、動揺する葵。
対する二人は勝ち誇った表情だ。
「邦枝…お前こそ、それ、銃刀法違反だぜ?」
敵の言葉に自身が持つ、鋼の芯を込めた宝杖を見つめ、深く考え込む。
「わ…私はなんて物を…」
「めんどくせーな!!なじんで!!」
「葵さん!!もっと柔軟にっ!!」
響古と古市が呼びかけるが、敵の口撃は止まらない。
「しかもなぁ、沙悟浄邦枝!!設定ではてめーは、何人も人を殺しまくってる妖怪なんだぜ!?」
「カマトトぶってんじゃねーよ、ビッチがっ!!」
侮蔑をたっぷりと含んだ口調で、舌を出した下品な形相で沙悟浄の罪を暴く。
――私は…なんて事を――…!!!
天界から流沙河に追放され、そこで人を襲う妖怪となった追い討ちの言葉に、葵は膝をついてうなだれる。
いくら配役とはいえ、さすがに人殺しという罪は重かったらしい。
「もう、あんたが三蔵法師やれよっ!!」
重罪に耐えかねてひどくショックを受ける葵を見て、古市はやけくそ気味に叫んだ。
「ダメだからね!三蔵法師は辰巳なんだからね!上司と部下といい、先生と生徒といい、上下関係の恋って燃えるんだから!!」
「とうとう暴露したな、この色ボケ弟子!!」
慌てたような声をあげる響古の猛反対を、古市は速攻で斬り捨てる。
「ケケッ、今だっ!!いくぜ、銀の字」
「おうよ、金持ちメガネ!!」
二人は互いの意思を確認し、三蔵法師の肉を食らい、不老不死を手に入れるために駆け出した。
「まずいっ!!ごっ…悟空!!オレ戦えねーし」
一応、古市も猪八戒という配役なのだが、これまでの憤慨した表情から一変、オロオロし始める。
「――って悟空、飽きてる!?」
戟 を持ちながらも戦闘要員ではない古市が視線を移すと、
「へんなねかた」
小さな身体を猫のように丸めて熟睡していた。
※ちなみに戟とは、槍の如く長い柄に『矛』と鎌に似た『戈 』を両方つけた武器である。矛で突き、戈で切り裂いて用いる。
さらに、葵も設定のショックから立ち直れず、茫然自失。
「何気に絶体絶命…!!」
ここで、男鹿が動いた。
「やれやれ、どいつもこいつも…響古、いくか」
後ろに跨る響古の手を握ると引っ張って、
「よっこいしょ」
まず自分がラクダから降り、次に弟子を降ろす。
「はい、お師匠!」
男鹿と響古、野生派の師匠と武闘派の弟子は同じ結論に達していた。
二人はお互いをちらりと見合う。
凶悪な笑みと不敵な微笑みが交錯する。
――南無阿弥陀仏!!
断罪の一撃が、二人を襲う。
師弟の飛び蹴りが、凄まじい速度で神崎の後ろにいた姫川も巻き込まれ、押し潰される。
「三蔵法師と弟子、ドロップキックしたーーーーーっ!!!」
守護されるはずの師弟の戦いぶりを見て、古市は愕然とした。
「分かってたけど…オレ達、意味ねぇっっ!!!」
戦いは終わり、残るはただの後始末。
師弟は苦悶に満ちた兄弟に詰め寄る。
「おらっ、起きろ。三蔵なめんなよ、こらっ」
「こちとら、お師匠と旅するために大勢の弟子と戦って勝ち取った武闘派なんだよ」
「あと天竺ってなんだ?」
――かくして三蔵法師達一行の、天竺を探す旅は続く…。
白目を剥く兄弟を見て、男鹿はハッとする。
「まさか…こいつら一足先に…」
「それは天国…!!」
――その頃、牛魔王は――…。
「…遅ぇ。出番なしかよ」
牛魔王(東条)とその妻・羅刹女(ヒルダ)は三蔵法師一行の到着と出番に待ちくたびれていた。
灼熱のごとき照らしつける太陽。
見渡す限り、無限に続く砂漠地帯を歩く者達がいた。
「みんな、天竺までがんばるぞー」
『おーー』
「ダー」
白い法衣を身に纏い、ラクダに乗る三蔵法師(男鹿)とその弟子(響古)。
そして、そんな二人を護衛する悟空(ベル坊)と沙悟浄(葵)、猪八戒(古市)が徒歩で進む。
「――ところで、古市…いや…」
うっかり役名を忘れ、咳払い。
気を取り直して話しかける。
「ブタ…」
いきなり間違われた。
ちなみに、猪八戒は豚ではなく
この時点でもう、古市には彼の役割がわかっていた。
男鹿は、間違いなく三蔵法師だ。
「猪八戒な。え?何これ?お前が三蔵法師なの?これで行くの?まじで!?」
この問いに、慈愛とは真逆な顔立ちで男鹿は邪悪に笑う。
「おう、オレの事はお師匠様と呼べよ――で、天竺って何?強いの?」
「今すぐ、そこを降りろぉっっ!!どんだけアホな聖人様なんだよ!!」
自身の役割をさっぱりわかっちゃいない男鹿に、古市は今すぐ法師の役を降りろと喚く。
(※天竺……三蔵法師一行が目指した場所だよ、今のインドあたりだよ)
唐の時代に中国からインドへ渡り仏教の経典を持ち帰った玄奘三蔵一行の長年の旅が描かれた話である。
「それからな……」
それから古市は、ラクダに乗る何故か得意げな響古の姿を眺め、溜め息をついた。
三蔵法師より一回り小さな冠や法衣を纏い、男鹿にぴったりとくっついている。
「響古は誰ですか…?」
「はーい、三蔵法師の1番弟子です!」
なんで弟子、と古市が硬直した中、改めて説明する。
「最初は管理人も配役に迷ったんだけど、辰巳は仮にもお坊さんだし、男女関係はご法度だから弟子という事になったの。しかも1番だよ、1番!」
ぎゅっと男鹿に抱きついている響古は柔らかな太陽のように満面の、どこか誇らしげに告げる。
「響古が三蔵法師だったらオレも納得したよ!」
「それはダメだよ、原作に忠実に再現した結果なんだから」
※メタ発言は控えましょう。
「変わって!今すぐ立ち位置変わって!」
その時、背後にいた男鹿と葵が、
「「あ」」
と声を揃えた。
反射的に仰け反ると、風切り音と共に古市がいた箇所に凄まじい速度の斬撃が走る。
いつの間にか錫杖を握った響古が、先程までの快活な印象とは様変わりし、冷ややかに見下ろしている。
「質問を変えた方がいいよ。首と胴体がつながってほしいなら」
背筋に悪寒が走り、冷や汗が流れる。
「も…もうありません…」
「よし」
力ずくで反論を退けた直後、助けを求める声が届いた。
三蔵法師一行は視線を移す。
「たっ、助けて下さいっ!!」
フリルを散りばめた黒のゴスロリを着たアランドロンが内股気味に駆け寄ってきた。
「ああっ、お坊様っ!!悪い妖怪に追われているんです!!どうか退治を…っ!!」
あまりにもミスマッチな服装での登場に顔を引きつらせる男鹿達。
「悟空、やっておしまい」
「急所を狙うのよ」
「ダー」
師弟の指示でベル坊は一歩踏み出し、如意棒でアランドロンを突く。
「おふんっ」
男が決して強い衝撃を受けてはいけないデリケートな部分を押さえ、アランドロンは崩れ落ちる。
助けを求めるために登場して早々、あまりにひどい仕打ちにアランドロンはうろたえる。
「ちょっ…違います!!私は、ただの村娘でございます!!」
男鹿は不快そうに眉をひそめ、響古は溜め息をつく。
「しぶてーやろうだな。いいや、ベル坊。もうバリバリっとやっちゃえ、バリバリっと」
「村人だったら、まぁわかるけど、娘って…無理があるでしょ、無理が」
「ウー」
すると、ベル坊の小さな身体から電撃が発する。
「あのっ…話聞いてますっ!?」
男鹿は凶悪な笑みを浮かべ、邪険にあしらう。
――オレ様に気安く喋りかけんじゃねぇ、失敗キャラが。
実にいい性格をしている。
目の前で助けを求められたら、善良な人なら手を貸し、普通の人でもだいたいは声をかけるくらいはするだろう。
しかし男鹿は凶悪な顔で冷淡な言い方をする。
その光景に、アランドロンは本当に慈悲深い三蔵法師なのかと疑った。
「あなた三蔵法師ですよねっ!!?」
そのやり取りで完全に不意をつかれた瞬間、真っ二つに割れたアランドロンの中から声が聞こえた。
「…――ちっ」
「もう少し騙せると思ったが…」
そして、何者かがアランドロンの中から姿を現す。
その唐突な出現に、場のざわめきが一気に沈静化し、誰もが目を剥いてその二人に注目する。
その二人とは、太上老君(老子)の炉の番人。
「よく、オレ達の正体に気づいたな」
――金角。
「さすがは三蔵法師といったところか。てめーを喰って、不老不死になってやんぜ」
――銀角。
酒を飲んで酔っ払う、甲冑を纏った金角(姫川)と銀角(神崎)が登場した。
(…超展開…!!)
とんでもない場所からの登場に唖然とする古市は、
「にあってるな」
中国風の鎧に身を包み、悪役にふさわしい姿に驚く。
二人の登場に反応して、男鹿は言う。
「いや、ふつーに助けたくなかっただけだ」
すると、小さな玉をつないで首飾りとし、簡素な僧衣を着た葵が名乗り出る。
「お師匠様…ここは私が…」
「おぉ、沙悟浄邦枝…」
葵が前に出て、厳しい表情と共に言い放つ。
「あなた達!!未成年がお酒なんて飲んでいいと思ってるの!?吐きなさいっ!!」
「ワォ、葵さんらしい真面目な発言」
「いや…邦枝先輩、今はそーゆー話は…」
ところが、姫川と神崎は顔を見合わせ不敵に笑うだけだ。
酒の入っているひょうたんを掲げ、真っ向から反論する。
「ククク、バカめ。こいつはノンアルコールのやつだから、いいんだよ」
「なんですって!?」
法律上では二十歳未満の未成年者も飲むことができるノンアルコールだが、あくまで二十歳以上を想定して開発されたもの。
本物のビールに非常に近い味になっているので、未成年が興味を持ち飲酒のきっかけになる危険性があるため、未成年の方の飲用はやめましょう。
……話が逸れてしまったが、これはアルコール飲料ではないと言い切られ、動揺する葵。
対する二人は勝ち誇った表情だ。
「邦枝…お前こそ、それ、銃刀法違反だぜ?」
敵の言葉に自身が持つ、鋼の芯を込めた宝杖を見つめ、深く考え込む。
「わ…私はなんて物を…」
「めんどくせーな!!なじんで!!」
「葵さん!!もっと柔軟にっ!!」
響古と古市が呼びかけるが、敵の口撃は止まらない。
「しかもなぁ、沙悟浄邦枝!!設定ではてめーは、何人も人を殺しまくってる妖怪なんだぜ!?」
「カマトトぶってんじゃねーよ、ビッチがっ!!」
侮蔑をたっぷりと含んだ口調で、舌を出した下品な形相で沙悟浄の罪を暴く。
――私は…なんて事を――…!!!
天界から流沙河に追放され、そこで人を襲う妖怪となった追い討ちの言葉に、葵は膝をついてうなだれる。
いくら配役とはいえ、さすがに人殺しという罪は重かったらしい。
「もう、あんたが三蔵法師やれよっ!!」
重罪に耐えかねてひどくショックを受ける葵を見て、古市はやけくそ気味に叫んだ。
「ダメだからね!三蔵法師は辰巳なんだからね!上司と部下といい、先生と生徒といい、上下関係の恋って燃えるんだから!!」
「とうとう暴露したな、この色ボケ弟子!!」
慌てたような声をあげる響古の猛反対を、古市は速攻で斬り捨てる。
「ケケッ、今だっ!!いくぜ、銀の字」
「おうよ、金持ちメガネ!!」
二人は互いの意思を確認し、三蔵法師の肉を食らい、不老不死を手に入れるために駆け出した。
「まずいっ!!ごっ…悟空!!オレ戦えねーし」
一応、古市も猪八戒という配役なのだが、これまでの憤慨した表情から一変、オロオロし始める。
「――って悟空、飽きてる!?」
「へんなねかた」
小さな身体を猫のように丸めて熟睡していた。
※ちなみに戟とは、槍の如く長い柄に『矛』と鎌に似た『
さらに、葵も設定のショックから立ち直れず、茫然自失。
「何気に絶体絶命…!!」
ここで、男鹿が動いた。
「やれやれ、どいつもこいつも…響古、いくか」
後ろに跨る響古の手を握ると引っ張って、
「よっこいしょ」
まず自分がラクダから降り、次に弟子を降ろす。
「はい、お師匠!」
男鹿と響古、野生派の師匠と武闘派の弟子は同じ結論に達していた。
二人はお互いをちらりと見合う。
凶悪な笑みと不敵な微笑みが交錯する。
――南無阿弥陀仏!!
断罪の一撃が、二人を襲う。
師弟の飛び蹴りが、凄まじい速度で神崎の後ろにいた姫川も巻き込まれ、押し潰される。
「三蔵法師と弟子、ドロップキックしたーーーーーっ!!!」
守護されるはずの師弟の戦いぶりを見て、古市は愕然とした。
「分かってたけど…オレ達、意味ねぇっっ!!!」
戦いは終わり、残るはただの後始末。
師弟は苦悶に満ちた兄弟に詰め寄る。
「おらっ、起きろ。三蔵なめんなよ、こらっ」
「こちとら、お師匠と旅するために大勢の弟子と戦って勝ち取った武闘派なんだよ」
「あと天竺ってなんだ?」
――かくして三蔵法師達一行の、天竺を探す旅は続く…。
白目を剥く兄弟を見て、男鹿はハッとする。
「まさか…こいつら一足先に…」
「それは天国…!!」
――その頃、牛魔王は――…。
「…遅ぇ。出番なしかよ」
牛魔王(東条)とその妻・羅刹女(ヒルダ)は三蔵法師一行の到着と出番に待ちくたびれていた。