第九十九訓
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雪降る夜を、マフラーに厚着と防寒対策をした銀時と響古はコンビニを巡っていた。
真冬の夜なので、勿論寒い。
「う~、寒い!てゆーか、なんであたしまで行かなきゃならないの!」
寒さで身を丸める響古に、熱い視線が注がれる。
「生足もいいけど…黒タイツにも趣 があるな。脚の形が強調されて……なんか幻想的な美しさだな、影みたいで」
銀髪の彼氏の視線に、響古は別の意味で震え居心地悪そうにする。
「なんだか、体が熱くなってきたわ」
まあ、憎からず思っている相手にここまで見られたら、なんかもやもやしますよね。
冬の時期になると、響古の美脚はお休みです。
まあ、寒いですからね。
がっ!
でっすっがっ!
ブーツに素足ではなく黒タイツを穿いてます。
響古の武器である美脚を際立たせつつも、防寒を両立しています。
「そこにあるのにないような、触れられそうで触れられないような……」
そんな素敵というか馬鹿なつぶやきを漏らす銀時。
しっかり聞こえています。
「キモい顔で近づくんじゃねーよ、この変態天パがっ!」
「げふぅ!」
胡乱につぶやきながら近づく銀時の顔面に、響古の拳がめり込んだ。
カウンター気味に入った一撃に膝をつきながら、しっかり肉まんの入った袋を持つ。
「――で、なんであたしまで行かなきゃならないの?」
「響古が余計なこというからだぞ。サンタはいるの」
「あたし、嘘は言ってないわ」
事の発端は、サンタはいるかいないか。
メルヘンの代名詞として、誰もが一度は憧れた存在ある『サンタクロース』について、今でも存在していると信じて疑わない人もいる。
「大体、何だよ。プレゼントくれる奴はみんなサンタって…サンタってのは子供に夢や希望を与えるもんだろ」
そうしたメルヘンチックな存在に憧れや希望をもつ銀時の意見に、響古は眉を寄せる。
「バカ銀。サンタが与えるのは夢と希望じゃなくてプレゼントだって。プレゼントあげるくらいしか能ないじゃん」
大人になれば純粋に物事を信じられなくなるもの。
世間を知ることで、見えてくるものが多すぎるからだ。
「サンタごときが夢、希望?頭、大丈夫?夢見すぎよ、アンタ」
「…うん、もういい」
無機質な声でつっこまれ、銀時はへこんだ。
響古の叱責は、夢や希望ではなく非情な現実感という類のものであった。
「大体、なんでこんな寒い日にこんな所まで。肉まん位おいとけや、腹立つな~」
そんなわけで、神楽に頼まれて肉まんを探すこととなった。
ところが、コンビニに肉まんを置いている店が少なく、時間だけが過ぎていった。
「あっ。あんまんも買っときゃよかった。俺、肉まんあんまり…」
次の瞬間、地面の凍結した部分で滑った銀時は仰向けになって転んだ。
「何やってんのよ…普通、尻もちとかじゃない?なんで体全体で転んでんのよ」
どけられた尻の下に、買ったばかりの袋が敷かれていた。
立ち上がって中身を確認するが、やはりというか、柔らかいその中身は無惨に押し潰されてぺしゃんこになっていた。
「…あーあ。潰れちまったよ」
泥に塗れたビニール袋の中で潰れているのは、買ったばかりの肉まん。
「あーあ、潰れちまったよ!」
その時、同じ台詞が聞こえた。
視線を向けると、赤い服を着た老人と動物が口論している。
「どーすんのコレ!お前のせいだよコレ!!こんな、ソリ、メチャメチャにしちゃってさァ!!もう、今年終わりだコレ!全部、お前のせいだからなコレ!!」
「ふっざけんなよ、クソジジー!坂道下る時は必ず、ソリから降りるっていう約束だっただろーがァ!!」
立派な角に赤い鼻。
二足歩行で立つトナカイの怪物は怪我した膝を押さえている。
その近くには、無惨にも壊れたソリがあった。
「こっちはもう、ソリを引いているというより追われてるカンジだったんだよ。スネにガンガン、ソリがあたってんだよ!血だらけなんだよ、もう!」
「そんなもん、お前がソリを上回る速さで走ればいい話だろーが!!トナカイだろーが!!あん!?お前の親父は、そりゃあスゴかったよ!坂道でもグングン、ソリを引っぱってさ、そりゃあ立派なトナカイだった!」
でっぷり太った老人。
白髪で白いひげ。
トレードマークは赤い衣装。
現代において、冬の風物詩ともいえるサンタクロースが目の前にいた。
ところが、サンタはトナカイと喧嘩の真っ最中。
「アンタ、えらい親父を気に入ってるようだけどな。親父は家で、アンタの悪口ばっか言ったから!言っとくけど!!」
「ウソつくんじゃねェ、カールと俺は主従をこえた戦友だぞ!!」
銀時と響古は驚いたように立ち止まり、サンタとトナカイの喧嘩を眺める。
「イヤ、マジ言ってたって!遺言が『アイツ、ホントはヒゲ、茶色』だったから!!」
「てめェェェェ!!デケー声で言うんじゃねェ!!クリスマスの時だけ、白く染めてるなんてしれたら事だろーがァ!!」
「テメー全部バラしてるだろーが!!」
サンタの一般的なイメージを崩壊しかねない秘密を暴露され、トナカイ――ベンの首を絞める。
「オイオイ、ちょっとちょっと。おちつけって、何やってんだ、アンタら」
彼らの口論は掴み合うほどにヒートアップし始め、慌てた銀時が仲裁に入る。
二人を説得しようとして、逆に殴られてしまう銀時。
「いだっ!!てめェェェ、何しやがんだ!!」
あっという間にキレた銀時が怒鳴り声をあげて、その喧嘩に拳を構えて乱入するのであった。
このまま放っておくと近所迷惑になりそうなので、河川敷の堤防にひっそりと営業している屋台に場所を移す。
「…ったく、いい加減にしなさい。こんな夜中に、近所迷惑も考えなさいよ」
「何があったのか、しらんけどさァ」
二人は呆れ顔でサンタとベンの仲裁に入る。
ちなみに響古は銀時の後ろに一人で座っている。
勿論、サンタとベンの隣を避けたかったからだ。
「いや、アンタにボコボコにされたんだけど」
腕っ節の強い銀時に返り討ちにされ、老人の頬は赤く腫れてしまっている。
「とりあえず、飲みましょうや」
「つーか、おたくら誰?」
「ただの通りすがりのだけど。何、その変態的な格好は?」
ベンが訊ねると、響古は形のよい眉を歪めてそんな台詞を吐く。
初対面の人間から変態と罵られて、無意識の内に顔面が笑みの形を取ってしまう。
「へ、変態って……俺はちゃんとしたトナカイで……」
「口答えするんじゃねー、この変質者が」
彼女の冷徹な視線と容赦ない罵倒が、ベンをさらに興奮させる。
「酒は、人間関係を円滑にするための潤滑油って、かの徳川家康も言ってたような気がしたけど気のせいだわ」
銀時の物言いはツッコミどころが多すぎて、抗議する気にもならない。
周囲の反応も同様だった。
突如現れた銀髪の男の異様な姿に、サンタとベンが怪訝そうな顔つきになる。
だが、彼はそれを華麗にスルーして熱燗とおでんを注文する。
「オイ親父、熱燗四本、あとオデン適当に。お代は、このヒゲからもらう」
「へい」
当たり前のように代金は支払わない。
「ヒゲって誰、まさか俺」
「へい」
「もう剃っちまうかな~。こんなヒゲ」
ヒゲを気にして落ち込むサンタに、響古が厳しく指摘する。
「やめなさい。キャラ薄くなるわよ」
「で、何?なんであんな喧嘩してたの?つーか、おたくら何?」
「え?」
意外すぎる申し出に動揺するサンタに気づかず、銀時は質問を続ける。
「運送業か何かやってる方ですか?」
「いや…え?けっこう丸出しじゃ」
「丸出し?…あ、ボロボロのオッさん?」
身体中に切り傷をつくり、ボロボロな姿を見た響古は思いつくままに発言した。
「いや、ボロボロなのはそっちの人にやられたから。違うから。あの…規則であんまハッキリ言えないんだけど、ソリに乗って子供達に夢を届ける…」
ここまで言えば、誰もがわかる老人の正体。
だがこの二人、本気でわからないらしい。
「子供に夢?何ソレ、そんなのいたっけ」
首を捻る響古の代わりに、銀時は言う。
「義賊っぽいカンジ?」
「そーそーそー。そーいうカンジで、それで『サ』のつくアレ」
「サタン?」
「惜しい!!けど遠い!!意味合い的には!」
すると、店主は答えがわかったらしくヒントを出した。
「フフッ、旦那、姐御、余計な口挟んですいやせんが、俺はもうわかりましたよ。ホラ、あれですよ。ヒントは股の間にぶらさがってる…」
「違うから!!何そのヒント?一体どんな答えに結びつくわけ!?」
なんら関係ないヒントを出す店主に、サンタは慌てて言い返す。
ヒントに導かれて答えを言ってしまっては下ネタになりかねない。
「まァ、まァいいや。サンコンでもサンタでも」
答えが出そうにない議論を打ち切るように発言した銀時に、サンタは勢いよく顔を向けた。
「いや、今、言ったよ、今一回、正解言ったよ」
「要するに、夜中にあのソリ乗って子供達に何かするオッさんか」
プレゼントを与える老人慈善家の姿を思い浮かべると、サンタは嫌そうに顔をしかめる。
「そうだけど。なんかヤなんだけど、その言い方」
男達の会話を聞いた店主は再び、口を開く。
「旦那、姐御。余計な口挟むようですが、俺はもうわかりましたよ。ホラ、この方達はソリに乗って通り過ぎ様に恥部を露出する、あの方達ですよ」
「違ェェって言ってんだろ!お前、何!?ダンディな顔して頭ん中、そればっかか!!」
頭の中が下ネタで埋め尽くされている店主につっこんでから、サンタは観念したように酒を飲んで打ち明ける。
「プレゼント!プレゼントだよ。ソリに乗ってよい子のみんなにね、プレゼントを配るのが仕事なわけ」
そう言って、サンタは後ろを見るよう示す。
そこには、無惨に壊れたソリがあった。
「でも、そのソリがさァ、大破しちゃってさ。どーにもこーにも」
響古は間近で見る本物のサンタに目をまばたきする。
「え、アンタ、子供達にプレゼントを配る、あのサンタクロース?」
「そう!ソレ!ソレが正解!」
真冬の夜なので、勿論寒い。
「う~、寒い!てゆーか、なんであたしまで行かなきゃならないの!」
寒さで身を丸める響古に、熱い視線が注がれる。
「生足もいいけど…黒タイツにも
銀髪の彼氏の視線に、響古は別の意味で震え居心地悪そうにする。
「なんだか、体が熱くなってきたわ」
まあ、憎からず思っている相手にここまで見られたら、なんかもやもやしますよね。
冬の時期になると、響古の美脚はお休みです。
まあ、寒いですからね。
がっ!
でっすっがっ!
ブーツに素足ではなく黒タイツを穿いてます。
響古の武器である美脚を際立たせつつも、防寒を両立しています。
「そこにあるのにないような、触れられそうで触れられないような……」
そんな素敵というか馬鹿なつぶやきを漏らす銀時。
しっかり聞こえています。
「キモい顔で近づくんじゃねーよ、この変態天パがっ!」
「げふぅ!」
胡乱につぶやきながら近づく銀時の顔面に、響古の拳がめり込んだ。
カウンター気味に入った一撃に膝をつきながら、しっかり肉まんの入った袋を持つ。
「――で、なんであたしまで行かなきゃならないの?」
「響古が余計なこというからだぞ。サンタはいるの」
「あたし、嘘は言ってないわ」
事の発端は、サンタはいるかいないか。
メルヘンの代名詞として、誰もが一度は憧れた存在ある『サンタクロース』について、今でも存在していると信じて疑わない人もいる。
「大体、何だよ。プレゼントくれる奴はみんなサンタって…サンタってのは子供に夢や希望を与えるもんだろ」
そうしたメルヘンチックな存在に憧れや希望をもつ銀時の意見に、響古は眉を寄せる。
「バカ銀。サンタが与えるのは夢と希望じゃなくてプレゼントだって。プレゼントあげるくらいしか能ないじゃん」
大人になれば純粋に物事を信じられなくなるもの。
世間を知ることで、見えてくるものが多すぎるからだ。
「サンタごときが夢、希望?頭、大丈夫?夢見すぎよ、アンタ」
「…うん、もういい」
無機質な声でつっこまれ、銀時はへこんだ。
響古の叱責は、夢や希望ではなく非情な現実感という類のものであった。
「大体、なんでこんな寒い日にこんな所まで。肉まん位おいとけや、腹立つな~」
そんなわけで、神楽に頼まれて肉まんを探すこととなった。
ところが、コンビニに肉まんを置いている店が少なく、時間だけが過ぎていった。
「あっ。あんまんも買っときゃよかった。俺、肉まんあんまり…」
次の瞬間、地面の凍結した部分で滑った銀時は仰向けになって転んだ。
「何やってんのよ…普通、尻もちとかじゃない?なんで体全体で転んでんのよ」
どけられた尻の下に、買ったばかりの袋が敷かれていた。
立ち上がって中身を確認するが、やはりというか、柔らかいその中身は無惨に押し潰されてぺしゃんこになっていた。
「…あーあ。潰れちまったよ」
泥に塗れたビニール袋の中で潰れているのは、買ったばかりの肉まん。
「あーあ、潰れちまったよ!」
その時、同じ台詞が聞こえた。
視線を向けると、赤い服を着た老人と動物が口論している。
「どーすんのコレ!お前のせいだよコレ!!こんな、ソリ、メチャメチャにしちゃってさァ!!もう、今年終わりだコレ!全部、お前のせいだからなコレ!!」
「ふっざけんなよ、クソジジー!坂道下る時は必ず、ソリから降りるっていう約束だっただろーがァ!!」
立派な角に赤い鼻。
二足歩行で立つトナカイの怪物は怪我した膝を押さえている。
その近くには、無惨にも壊れたソリがあった。
「こっちはもう、ソリを引いているというより追われてるカンジだったんだよ。スネにガンガン、ソリがあたってんだよ!血だらけなんだよ、もう!」
「そんなもん、お前がソリを上回る速さで走ればいい話だろーが!!トナカイだろーが!!あん!?お前の親父は、そりゃあスゴかったよ!坂道でもグングン、ソリを引っぱってさ、そりゃあ立派なトナカイだった!」
でっぷり太った老人。
白髪で白いひげ。
トレードマークは赤い衣装。
現代において、冬の風物詩ともいえるサンタクロースが目の前にいた。
ところが、サンタはトナカイと喧嘩の真っ最中。
「アンタ、えらい親父を気に入ってるようだけどな。親父は家で、アンタの悪口ばっか言ったから!言っとくけど!!」
「ウソつくんじゃねェ、カールと俺は主従をこえた戦友だぞ!!」
銀時と響古は驚いたように立ち止まり、サンタとトナカイの喧嘩を眺める。
「イヤ、マジ言ってたって!遺言が『アイツ、ホントはヒゲ、茶色』だったから!!」
「てめェェェェ!!デケー声で言うんじゃねェ!!クリスマスの時だけ、白く染めてるなんてしれたら事だろーがァ!!」
「テメー全部バラしてるだろーが!!」
サンタの一般的なイメージを崩壊しかねない秘密を暴露され、トナカイ――ベンの首を絞める。
「オイオイ、ちょっとちょっと。おちつけって、何やってんだ、アンタら」
彼らの口論は掴み合うほどにヒートアップし始め、慌てた銀時が仲裁に入る。
二人を説得しようとして、逆に殴られてしまう銀時。
「いだっ!!てめェェェ、何しやがんだ!!」
あっという間にキレた銀時が怒鳴り声をあげて、その喧嘩に拳を構えて乱入するのであった。
このまま放っておくと近所迷惑になりそうなので、河川敷の堤防にひっそりと営業している屋台に場所を移す。
「…ったく、いい加減にしなさい。こんな夜中に、近所迷惑も考えなさいよ」
「何があったのか、しらんけどさァ」
二人は呆れ顔でサンタとベンの仲裁に入る。
ちなみに響古は銀時の後ろに一人で座っている。
勿論、サンタとベンの隣を避けたかったからだ。
「いや、アンタにボコボコにされたんだけど」
腕っ節の強い銀時に返り討ちにされ、老人の頬は赤く腫れてしまっている。
「とりあえず、飲みましょうや」
「つーか、おたくら誰?」
「ただの通りすがりのだけど。何、その変態的な格好は?」
ベンが訊ねると、響古は形のよい眉を歪めてそんな台詞を吐く。
初対面の人間から変態と罵られて、無意識の内に顔面が笑みの形を取ってしまう。
「へ、変態って……俺はちゃんとしたトナカイで……」
「口答えするんじゃねー、この変質者が」
彼女の冷徹な視線と容赦ない罵倒が、ベンをさらに興奮させる。
「酒は、人間関係を円滑にするための潤滑油って、かの徳川家康も言ってたような気がしたけど気のせいだわ」
銀時の物言いはツッコミどころが多すぎて、抗議する気にもならない。
周囲の反応も同様だった。
突如現れた銀髪の男の異様な姿に、サンタとベンが怪訝そうな顔つきになる。
だが、彼はそれを華麗にスルーして熱燗とおでんを注文する。
「オイ親父、熱燗四本、あとオデン適当に。お代は、このヒゲからもらう」
「へい」
当たり前のように代金は支払わない。
「ヒゲって誰、まさか俺」
「へい」
「もう剃っちまうかな~。こんなヒゲ」
ヒゲを気にして落ち込むサンタに、響古が厳しく指摘する。
「やめなさい。キャラ薄くなるわよ」
「で、何?なんであんな喧嘩してたの?つーか、おたくら何?」
「え?」
意外すぎる申し出に動揺するサンタに気づかず、銀時は質問を続ける。
「運送業か何かやってる方ですか?」
「いや…え?けっこう丸出しじゃ」
「丸出し?…あ、ボロボロのオッさん?」
身体中に切り傷をつくり、ボロボロな姿を見た響古は思いつくままに発言した。
「いや、ボロボロなのはそっちの人にやられたから。違うから。あの…規則であんまハッキリ言えないんだけど、ソリに乗って子供達に夢を届ける…」
ここまで言えば、誰もがわかる老人の正体。
だがこの二人、本気でわからないらしい。
「子供に夢?何ソレ、そんなのいたっけ」
首を捻る響古の代わりに、銀時は言う。
「義賊っぽいカンジ?」
「そーそーそー。そーいうカンジで、それで『サ』のつくアレ」
「サタン?」
「惜しい!!けど遠い!!意味合い的には!」
すると、店主は答えがわかったらしくヒントを出した。
「フフッ、旦那、姐御、余計な口挟んですいやせんが、俺はもうわかりましたよ。ホラ、あれですよ。ヒントは股の間にぶらさがってる…」
「違うから!!何そのヒント?一体どんな答えに結びつくわけ!?」
なんら関係ないヒントを出す店主に、サンタは慌てて言い返す。
ヒントに導かれて答えを言ってしまっては下ネタになりかねない。
「まァ、まァいいや。サンコンでもサンタでも」
答えが出そうにない議論を打ち切るように発言した銀時に、サンタは勢いよく顔を向けた。
「いや、今、言ったよ、今一回、正解言ったよ」
「要するに、夜中にあのソリ乗って子供達に何かするオッさんか」
プレゼントを与える老人慈善家の姿を思い浮かべると、サンタは嫌そうに顔をしかめる。
「そうだけど。なんかヤなんだけど、その言い方」
男達の会話を聞いた店主は再び、口を開く。
「旦那、姐御。余計な口挟むようですが、俺はもうわかりましたよ。ホラ、この方達はソリに乗って通り過ぎ様に恥部を露出する、あの方達ですよ」
「違ェェって言ってんだろ!お前、何!?ダンディな顔して頭ん中、そればっかか!!」
頭の中が下ネタで埋め尽くされている店主につっこんでから、サンタは観念したように酒を飲んで打ち明ける。
「プレゼント!プレゼントだよ。ソリに乗ってよい子のみんなにね、プレゼントを配るのが仕事なわけ」
そう言って、サンタは後ろを見るよう示す。
そこには、無惨に壊れたソリがあった。
「でも、そのソリがさァ、大破しちゃってさ。どーにもこーにも」
響古は間近で見る本物のサンタに目をまばたきする。
「え、アンタ、子供達にプレゼントを配る、あのサンタクロース?」
「そう!ソレ!ソレが正解!」