第百訓
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十二月三十一日、大晦日。
あと数時間で今年が終わりを迎えようとしていた。
「今年も、もう終わりですね」
「あ~、早いわね~」
気がつけば一年ってあっという間に過ぎ去るなぁ、と語る響古と新八に、銀時がこんなことを言う。
「早 ェーな、もう嫌んなっちゃうな。年をとるごとに早くなっていくよ、一年過ぎるのが。この調子じゃ、ジジイになった時はF1カーが通り過ぎる並みのスピードで一年が過ぎるんじゃねーの」
子どもの時と大人になってからの時間のスピードが違いすぎるのは何故なのか。
これは錯覚ではなく、ちゃんとした現象がある。
主観的に記憶される年月の長さを指したもの。
今現在進行している時間の体感速度ではなく、過去を振り返った時に感じる時間の長さの印象なわけ。
「いやいや、恐い事言わないでくださいよ」
「いやいや、俺なんかもうベンジョンソンが走り去る位の速さで来てるからね、もう。来てるからね、そこにベンが」
いつもの調子ですっとぼけたことを言い放つ銀時に対し、響古は真面目に言い聞かせる。
「二人も、若いからって調子に乗るんじゃないわよ」
「調子に乗ってるとスグ来るよ、ベンが」
「まじかヨー、ベン来るのかヨー。私、ベンよりもカールの方がいいネ、カッケーアル」
「まーまー、要は充実した一年を送れたってことじゃないですか」
それを聞いた神楽がまた変なことを言い出し、新八がなだめる。
二人の年長者は落ち着いた様子で今年を締めくくろうとする。
「今年も色々、あったわねー」
「そーさなァ。百回記念ということもあるし、ちょっと振り返ってみるか。ということで、百回記念『あんな事もこんな事も、どんな事もあったね』総集編スペシャルスタート」
とは言ったものの、誰も今年を振り返らず、箸を手にした四人が凝視するのは目の前の鍋。
大量の湯気が立ちのぼり、食欲をそそるダシと醤油の匂いも漂う。
「…ちょっと…総集編って言ったじゃん。振り返ろうって言ったじゃん、誰か振り返れ、オイ」
「いや、でも鍋の加減見なきゃいけないんで、僕、鍋見てるんで三人で振り返っちゃってください」
「鍋は俺が見るから新八、お前いけって。お前、司会向いてるって、自信持てって」
「うれしくねーんだよ、司会向いてるとか言われても。響古さん、この夢小説のヒロインですからやってくださいよ」
「いつも体張ってんだから、たまには休ませてよ。神楽、お願い」
こういう場面で仕切るはずの響古は神楽にバトンタッチ。
いつもなら喜んで彼女のお願いに応えるはずの少女は、きっぱりと告げた。
「いくら響古のお願いでもイヤアル。だって、よそ見している間に肉食べられるモン」
鍋の主役として最もスペースを取る肉を狙う神楽のこの言葉に、三人は固まった。
そして、箸を置いて脱力する。
「ちょっ…もう、ホントさァ、いい加減にしろよ、お前は。そんなさァ、そんなしょうもない事、俺達するワケないだろ。ホントにさァ、年の終わりにさァ、哀しくなるような事言わないでくれない?」
「確かにスキヤキなんてあたし達、滅多に食べれないよね」
銀時は憂いを湛えた表情で抗議し、響古は頬に手を当てて嘆く。
「一年終わりにさァ、奮発して、みんなで楽しくつっつこうって時にさァ、お前って奴は…ホント俺、情けなくなってきたわ」
大勢で鍋を囲むのには独特の楽しさがあるというのに、気まずい空気に包まれる。
「…………」
「…今のは神楽ちゃん悪いよ。ホラ、謝って」
新八にも諭され、神楽は頭を下げて謝った。
「…んだヨ、チキショー。悪かったヨ、ビンボくさい事言っ…」
頭を下げた隙をついて、三人は鍋に箸を突っ込んだ。
三つの箸が勢いよく突っ込んだ結果、具材や汁が飛び散って食べられなくなってしまった。
「あーあ、貴重な肉が四散してしまいましたよ」
「てめーらが、強くひっぱるからだよ。はしゃぎ過ぎなんだよ、スキヤキ如きで」
銀時は二人に呆れた眼差しを向けるが、すぐさま響古がきつめの言葉を投げ返す。
「アンタに言われたくないんだけど。一番がっついてたくせに」
一人、肉の争奪戦に出遅れた神楽は、キッと三人を正面から睨みつける。
「チッキショー、だましやがって。お前らのせいで私の心は、どんどん薄汚くなっていくネ」
「そうやって大人になっていくんだよ。よかったな、また一歩大人になったじゃん。大体、食卓は戦場だって教えたろ。忘れたかコラ」
「銀ちゃんの言うことなんて、もう信じないネ。もう、みんな敵ネ、誰も信じないネ」
「いい心がけだ、もっと俺を憎め。その憎しみのパワーを糧に、この腐った世の中を生き抜いてくんだよ」
開き直ったのか、神楽は強気に言い返す。
「腐ってんのはお前の頭アル」
口喧嘩する銀時と神楽、そして飛び散った肉を片づける響古を見て、新八は顔をしかめる。
――まずいな、やはりこうなったか。
――今の万事屋でスキヤキをやるなんて、ライオンのオリに松島トモ子を、ほうり投げるようなものだ…このままでは、残りの肉も口に入れる前に確実に四散する…。
万事屋ですき焼きをするということの恐ろしさを改めて痛感した。
そんな苦味を伴うつぶやきを心の中に押し留め、ポーカーフェイスを意識する。
――…肉を人より多く食すことより、先 ずは野獣達から肉を保護することから考えるべきだ。
――だが、連中は今、頭に血が上っている。
――下手に止めると逆効果だ…。
そう結論を下した新八は、冷静に三人の動向を観察する。
「そうねェ、タイムセールで半額の値札がついた牛肉をこのまま腐らせるのも、もったいないし……」
「響古、それはちょっと食い意地はり過ぎだろ」
「そーですよ。お肉ならまだありますから」
落ちた食べ物を拾うという行儀の悪さに、銀時と新八は言葉を並べる。
だが、響古はそれを鼻で笑った。
「あら。貧乏人にとって牛肉ほど勝るものはないっていうのに。勿論、二人なんかに食べさせてあげる気はないからね」
まさか、本気で食べるつもりなのかと二人は顔を青ざめた。
容器に確保した肉と、鍋から具をよそって箸でつまんで口に運ぶ。
「あ、なんだ。普通に美味しいじゃない」
あっさり言って、あとはパクパクと普通に食べ始めた。
――なんてことだ。
――悪知恵が響古さんの持ち味だが、まさかこんな方法で攻めてくるとは……。
ショックを隠し切れない新八は愕然とする。
響古の主張するもったいない派と銀時の主張する捨てろ派で言い合う。
「僕、もういいっすわ。喧嘩してまで食べたくないですもん、こんなん情けない」
新八は箸を置き、賭けに出た。
「実は昨日、姉上と二人で焼肉、食べたんですよ。もう飽きたっていうか…いつでも食べれるっていうか…」
未練を断ち切るように、実は妙と焼き肉をしたと嘘をつく。
三人ですき焼きをするよう勧めた。
「どうぞ三人で食べてください」
――…来い!
――乗ってこい。
「しょうがねー。まァ、俺も別に肉食べたかったワケじゃないしィ。みんなに食べてもらおうと思ってやったことだしィ」
最初に動いたのは銀時だった。
もったいぶった口調で箸を置く。
「こんなんなるんだったらやめっか、俺はいいけど。マジいいの?お前ら」
続いて響古が残念そうに眉を下げると、神楽は声を荒げて乱暴に箸を置いた。
「お腹の空いてる人の前で食べるご飯は美味しくないわ」
「上等だヨ、コルァァァ!!私だって別に、肉なんて食べたくないモンね!ベジタリアンだモンね!!」
次々と鍋から離れ、これで終了とばかりにくつろぎ始める。
「やめだやめだ、スキヤキなんて」
「お肉、片づけるわねー」
「やってられっかヨ、チキショー」
――来たっ!!
新八の読みは当たった。
だが、それ以上に食事が終わる雰囲気に包まれたことを危惧する。
――だが思った以上にフリが多すぎたようだ。
――もう、このままおひらきになってしまいそうな勢いだ…マズイな…自分からあんな事を切り出しただけで鍋を再開しようなんて言うのは不自然だ。
――第一、アレだ、恥ずかしい。
ここで鍋を再開しようとか言ったら、絶対恥ずかしいに決まってる。
自分から話を振っておいて、新八は膠着状態で進まない状況に煩悶する。
一方、寝っ転がる銀時はひどく落ち着きながらも、その胸中では思考が渦巻いていた。
――マズイな。
――響古が先に肉を食い、事態の鎮静化をはかるため、あえて新八の案に乗ったが、まさか神楽まで乗ってくるとは…この状況で鍋再開を切り出すのは至難だ。
――恐らく恥ずかしくて穴が存在したら侵入したい気分にかられるだろう。
新八同様、銀時もなかなか鍋を再開しようと言えずにいた。
――だが、このまま状況を放置すれば確実に鍋は終わる。
――まだ始めてもいないのに…それだけは阻止しなければ…。
銀時は虎視眈々と狙って、しかし決定的な機会の到来もないまま、状況を待つ。
そして響古は凛々しくも悠揚迫らざる、風格さえ漂う視線を周囲に投げつける。
まるで、来たるべき次のステップに向けて、静かに蓄えているような……。
――さて、第1ラウンドはあたしの勝ちね。
――もったいない…それは、使わないで無駄にされるモノを惜しいという日本の言葉。
あと数時間で今年が終わりを迎えようとしていた。
「今年も、もう終わりですね」
「あ~、早いわね~」
気がつけば一年ってあっという間に過ぎ去るなぁ、と語る響古と新八に、銀時がこんなことを言う。
「
子どもの時と大人になってからの時間のスピードが違いすぎるのは何故なのか。
これは錯覚ではなく、ちゃんとした現象がある。
主観的に記憶される年月の長さを指したもの。
今現在進行している時間の体感速度ではなく、過去を振り返った時に感じる時間の長さの印象なわけ。
「いやいや、恐い事言わないでくださいよ」
「いやいや、俺なんかもうベンジョンソンが走り去る位の速さで来てるからね、もう。来てるからね、そこにベンが」
いつもの調子ですっとぼけたことを言い放つ銀時に対し、響古は真面目に言い聞かせる。
「二人も、若いからって調子に乗るんじゃないわよ」
「調子に乗ってるとスグ来るよ、ベンが」
「まじかヨー、ベン来るのかヨー。私、ベンよりもカールの方がいいネ、カッケーアル」
「まーまー、要は充実した一年を送れたってことじゃないですか」
それを聞いた神楽がまた変なことを言い出し、新八がなだめる。
二人の年長者は落ち着いた様子で今年を締めくくろうとする。
「今年も色々、あったわねー」
「そーさなァ。百回記念ということもあるし、ちょっと振り返ってみるか。ということで、百回記念『あんな事もこんな事も、どんな事もあったね』総集編スペシャルスタート」
とは言ったものの、誰も今年を振り返らず、箸を手にした四人が凝視するのは目の前の鍋。
大量の湯気が立ちのぼり、食欲をそそるダシと醤油の匂いも漂う。
「…ちょっと…総集編って言ったじゃん。振り返ろうって言ったじゃん、誰か振り返れ、オイ」
「いや、でも鍋の加減見なきゃいけないんで、僕、鍋見てるんで三人で振り返っちゃってください」
「鍋は俺が見るから新八、お前いけって。お前、司会向いてるって、自信持てって」
「うれしくねーんだよ、司会向いてるとか言われても。響古さん、この夢小説のヒロインですからやってくださいよ」
「いつも体張ってんだから、たまには休ませてよ。神楽、お願い」
こういう場面で仕切るはずの響古は神楽にバトンタッチ。
いつもなら喜んで彼女のお願いに応えるはずの少女は、きっぱりと告げた。
「いくら響古のお願いでもイヤアル。だって、よそ見している間に肉食べられるモン」
鍋の主役として最もスペースを取る肉を狙う神楽のこの言葉に、三人は固まった。
そして、箸を置いて脱力する。
「ちょっ…もう、ホントさァ、いい加減にしろよ、お前は。そんなさァ、そんなしょうもない事、俺達するワケないだろ。ホントにさァ、年の終わりにさァ、哀しくなるような事言わないでくれない?」
「確かにスキヤキなんてあたし達、滅多に食べれないよね」
銀時は憂いを湛えた表情で抗議し、響古は頬に手を当てて嘆く。
「一年終わりにさァ、奮発して、みんなで楽しくつっつこうって時にさァ、お前って奴は…ホント俺、情けなくなってきたわ」
大勢で鍋を囲むのには独特の楽しさがあるというのに、気まずい空気に包まれる。
「…………」
「…今のは神楽ちゃん悪いよ。ホラ、謝って」
新八にも諭され、神楽は頭を下げて謝った。
「…んだヨ、チキショー。悪かったヨ、ビンボくさい事言っ…」
頭を下げた隙をついて、三人は鍋に箸を突っ込んだ。
三つの箸が勢いよく突っ込んだ結果、具材や汁が飛び散って食べられなくなってしまった。
「あーあ、貴重な肉が四散してしまいましたよ」
「てめーらが、強くひっぱるからだよ。はしゃぎ過ぎなんだよ、スキヤキ如きで」
銀時は二人に呆れた眼差しを向けるが、すぐさま響古がきつめの言葉を投げ返す。
「アンタに言われたくないんだけど。一番がっついてたくせに」
一人、肉の争奪戦に出遅れた神楽は、キッと三人を正面から睨みつける。
「チッキショー、だましやがって。お前らのせいで私の心は、どんどん薄汚くなっていくネ」
「そうやって大人になっていくんだよ。よかったな、また一歩大人になったじゃん。大体、食卓は戦場だって教えたろ。忘れたかコラ」
「銀ちゃんの言うことなんて、もう信じないネ。もう、みんな敵ネ、誰も信じないネ」
「いい心がけだ、もっと俺を憎め。その憎しみのパワーを糧に、この腐った世の中を生き抜いてくんだよ」
開き直ったのか、神楽は強気に言い返す。
「腐ってんのはお前の頭アル」
口喧嘩する銀時と神楽、そして飛び散った肉を片づける響古を見て、新八は顔をしかめる。
――まずいな、やはりこうなったか。
――今の万事屋でスキヤキをやるなんて、ライオンのオリに松島トモ子を、ほうり投げるようなものだ…このままでは、残りの肉も口に入れる前に確実に四散する…。
万事屋ですき焼きをするということの恐ろしさを改めて痛感した。
そんな苦味を伴うつぶやきを心の中に押し留め、ポーカーフェイスを意識する。
――…肉を人より多く食すことより、
――だが、連中は今、頭に血が上っている。
――下手に止めると逆効果だ…。
そう結論を下した新八は、冷静に三人の動向を観察する。
「そうねェ、タイムセールで半額の値札がついた牛肉をこのまま腐らせるのも、もったいないし……」
「響古、それはちょっと食い意地はり過ぎだろ」
「そーですよ。お肉ならまだありますから」
落ちた食べ物を拾うという行儀の悪さに、銀時と新八は言葉を並べる。
だが、響古はそれを鼻で笑った。
「あら。貧乏人にとって牛肉ほど勝るものはないっていうのに。勿論、二人なんかに食べさせてあげる気はないからね」
まさか、本気で食べるつもりなのかと二人は顔を青ざめた。
容器に確保した肉と、鍋から具をよそって箸でつまんで口に運ぶ。
「あ、なんだ。普通に美味しいじゃない」
あっさり言って、あとはパクパクと普通に食べ始めた。
――なんてことだ。
――悪知恵が響古さんの持ち味だが、まさかこんな方法で攻めてくるとは……。
ショックを隠し切れない新八は愕然とする。
響古の主張するもったいない派と銀時の主張する捨てろ派で言い合う。
「僕、もういいっすわ。喧嘩してまで食べたくないですもん、こんなん情けない」
新八は箸を置き、賭けに出た。
「実は昨日、姉上と二人で焼肉、食べたんですよ。もう飽きたっていうか…いつでも食べれるっていうか…」
未練を断ち切るように、実は妙と焼き肉をしたと嘘をつく。
三人ですき焼きをするよう勧めた。
「どうぞ三人で食べてください」
――…来い!
――乗ってこい。
「しょうがねー。まァ、俺も別に肉食べたかったワケじゃないしィ。みんなに食べてもらおうと思ってやったことだしィ」
最初に動いたのは銀時だった。
もったいぶった口調で箸を置く。
「こんなんなるんだったらやめっか、俺はいいけど。マジいいの?お前ら」
続いて響古が残念そうに眉を下げると、神楽は声を荒げて乱暴に箸を置いた。
「お腹の空いてる人の前で食べるご飯は美味しくないわ」
「上等だヨ、コルァァァ!!私だって別に、肉なんて食べたくないモンね!ベジタリアンだモンね!!」
次々と鍋から離れ、これで終了とばかりにくつろぎ始める。
「やめだやめだ、スキヤキなんて」
「お肉、片づけるわねー」
「やってられっかヨ、チキショー」
――来たっ!!
新八の読みは当たった。
だが、それ以上に食事が終わる雰囲気に包まれたことを危惧する。
――だが思った以上にフリが多すぎたようだ。
――もう、このままおひらきになってしまいそうな勢いだ…マズイな…自分からあんな事を切り出しただけで鍋を再開しようなんて言うのは不自然だ。
――第一、アレだ、恥ずかしい。
ここで鍋を再開しようとか言ったら、絶対恥ずかしいに決まってる。
自分から話を振っておいて、新八は膠着状態で進まない状況に煩悶する。
一方、寝っ転がる銀時はひどく落ち着きながらも、その胸中では思考が渦巻いていた。
――マズイな。
――響古が先に肉を食い、事態の鎮静化をはかるため、あえて新八の案に乗ったが、まさか神楽まで乗ってくるとは…この状況で鍋再開を切り出すのは至難だ。
――恐らく恥ずかしくて穴が存在したら侵入したい気分にかられるだろう。
新八同様、銀時もなかなか鍋を再開しようと言えずにいた。
――だが、このまま状況を放置すれば確実に鍋は終わる。
――まだ始めてもいないのに…それだけは阻止しなければ…。
銀時は虎視眈々と狙って、しかし決定的な機会の到来もないまま、状況を待つ。
そして響古は凛々しくも悠揚迫らざる、風格さえ漂う視線を周囲に投げつける。
まるで、来たるべき次のステップに向けて、静かに蓄えているような……。
――さて、第1ラウンドはあたしの勝ちね。
――もったいない…それは、使わないで無駄にされるモノを惜しいという日本の言葉。