第百二十七~百二十八訓
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「すいません。明日、私仕事休ませてもらってエエですか?」
その日、スナック『すまいる』は誰にとっても苦行となった。
次々とキャバ嬢が夏風邪でダウンしてしまい、花子も咳払いをして欠勤の理由を伝える。
「え?何?花子ちゃんもカゼ?」
「すんません」
どこかぼうっとした感じの花子が風邪を引いたことは、マスクをつけていることから容易に察することができる。
ゴホゴホ、と咳き込み赤らんだ顔をしかめる。
「熱は微熱やねんけど、咳が止まらんくて…お客さんに、うつしてもアレやし」
「あーわかったわかった。とにかく今日は、もう帰ってゆっくり養生してよ」
「ホンマすんません」
事情を聞いた店長はそれ以上何も言わずに花子を帰らせた。
「厚着して、ポカリいっぱい飲んでいっぱい汗かくんだよ」
「はい」
「微熱ナメたら恐いからね!!お大事に!!」
「はい」
頭を下げる花子が視界から消えた後、振っていた店長の手はピタッと止まり、傍らの黒服に話しかける。
「………まずいね」
「まずいですね」
「夏カゼ蔓延」
「すっかり葬式みたいになっちゃいましたね」
夏風邪の猛威でキャバ嬢全員が寝込んでしまい、店は静まり返っていた。
このままの状態が続けばいずれ店の経営に関わる……しかも、明日は大事な予定が入っている。
「明日は大事な上客が来るってのに」
「確か、幕府の重鎮とか…」
招待する準備は進められるとしても、接待してくれるキャバ嬢は誰一人として欠勤なわけで、残り時間を計算すれば――文字通りハードなスケジュールだ。
「まずいね」
「まずいですね」
「いや、マジマズイね」
「いや、マジマズイですね」
「使えそうな娘は、もう残ってないの?」
店長の質問に黒服は一呼吸置いて、おそるおそる答える。
「……あの…一人だけ」
彼は黒服が指し示した場所を見て絶句した。
第百二十七訓
クーラーはタイマーで切れるようにしてから寝ないと風邪ひくよ
辺りに散乱した空き瓶とつまみ系の皿、ソファに片足を乗せて爆睡する妙。
この有り様を見て、二人は冷や汗を流す。
「………まずいね」
「まずいですね」
「いや、お前が思ってるより全然まずいね」
「いや、お前が思ってるより全然まずいね」
明日は上客の予約、しかも妙一人では到底開店できない、という辺りに深刻さが窺える。
「なんでよりによって」
「バカはカゼひかないって言…」
不審げというよりむしろ不満げにつぶやく黒服に、店長は半眼にしてぼそりとつぶやく。
次の瞬間、飛んできた空き瓶が顔面に直撃し、彼は床に突っ伏した。
「……すいません。明日僕、休ませてもらえますか?」
「白装束着て睡眠薬いっぱい飲んで寝るんですよ」
「はい」
「女ナメたら恐いですからね」
店長が酔っ払ってぐーすか寝る妙を半眼で見ながら繰り出した台詞の部分は、彼女にもちゃんと伝わっていた。
酒のせいで赤らんでいる顔に微笑みを貼りつける妙の反応が、そのことを雄弁に語っていた。
つい最近の"ペットにかこつけて女子アナと浮気しかけた"事件以来、ようやく響古の怒りが覚めてきた頃、銀時は今の平穏を噛みしめるように笑みを浮かべていた。
今、その四人が万事屋で何をしているかというと、銀時がソファに寝っ転がってジャンプを読んで、響古はその膝枕。
新八はテレビを鑑賞中。
神楽は定春と戯れている。
細いくせに柔らかい太ももと肌のぬくもりを感じながら、銀時はふと最近の出来事を思い返した。
それは、響古からのお仕置きという……壮絶な仕打ち。
ハッキリ言えば、彼は死にかけた。
表情こそ怒ってないとは言え、響古からの甘美なお仕置きをまともに食らい、腰砕けに。
次に現れたのが新八と神楽。
非常につやつやした顔の響古と色々搾り取られた銀時の姿に生温かい眼差しを送られた。
心が死にかけた。
さすがの銀時も、これは堪 えた。
3日間寝込むくらいキツかった。
だが、それらの障害を乗り越えたからこそ……今の幸せが目の前に広がっている。
その時、唐突に電話が鳴った。
「――あら、電話だわ」
「いでっ!」
ゴトッ!と銀時の頭を落として立ち上がった響古は電話に出る。
なんて間の悪い……と、銀時は悔しさに顔を歪める。
「はい、もしもし………妙?………えっ?」
突然、響古の口調が疑問形に変わった。
反射的に彼女へ視線を移した銀時は、電話片手に目を丸くする響古に首を傾げる。
それと同時に感じた、嫌な予感。
つい眉を寄せてしまった。
「……うん……うん……わかった」
そうして会話を終えた響古は電話を切ると、銀時達に向き直って言った。
「アンタ達、依頼が来たわよ」
「え、誰からですか?」
「妙から」
「姐御から依頼アルか?」
「えぇ……正確に言えば…」
途端、響古はどう説明したらものか迷うように右手の人差し指を揺らしてから告げる。
「キャバクラからの…出張要請?」
ジャンプを握る手に力がこもり、銀時はひくりと頬を引きつらせた。
幕府の重鎮という上客が来るはずなのに、キャバ嬢全員が夏風邪を引いて休んでしまい、唯一出勤できるのが妙一人。
困り果てた店長が考えたのが、人脈の広い万事屋に依頼。
さらには以前、臨時として働いたことのある響古に助っ人を頼もうとした(詳しくは第七十四訓を読んでね)。
「恋は病って言うだろうがよ。男を恋煩 いに侵すはずのキャバ嬢が揃いも揃って夏カゼって…プロの意識のカケラもねーな、オメーらはよォ、コノヤロー」
ただ店長の頼みでは、銀時は簡単に納得できることはできない。
微かに眉をひそめ、頬を引きつらせ、不機嫌丸出しでぶつぶつとつぶやく。
だが、そんな銀時の言葉に被せるように。
「仕方ないわよ。夏カゼってなかなか治らないし……時には、カゼをひかすんじゃなくて、カゼをひきたい時もあるのよ」
「響古、色々間違ってるからね」
当然のことながら、響古の笑顔は悪魔的に満ちていた。
ノリノリなのは本人だけで、銀時は顔をしかめている。
「それにしてもお前はやっぱ、たいしたもんだな。ピンピンしてんじゃねーか。やっぱ、バカは…」
そう言って妙に視線を移すと、凄まじい握力によってテーブルに叩きつけられる。
「いやー、面目ない。キャバ嬢一人じゃ店をひらくこともままらなくてね。前に響古ちゃんが来てくれた時は大盛況だったから、お願いしようと思ってね」
強張った笑みを浮かべながら、店長は響古へと話しかける。
そんなこと、銀髪の恋人が許すはずもないのに……彼は失念していた。
すっかり銀時の存在を忘れていたのだ。
「響古なら貨さねーぞ」
「なんとかならんかね、銀さん。アンタ万事屋だろ、顔も広いじゃない。カワイイ娘の二人、三人スグ紹介できるでしょ?」
「カワイイ娘がいるなら、俺が紹介してほしいよ」
「カワイイ娘ならここにいるヨ」
すると、ジュースを飲む神楽が名乗りをあげた。
「今夜はウチによく来る松平様の知り合い、幕府のお偉いさんが店に来る事になっててね」
「オイ、無視してんじゃねーぞ」
「それで響古ちゃんにも頼んでるけど。こんな上客が掴めるチャンスは滅多にないのよ、報酬もはずむよ」
「オイ、ヒゲコラ」
「店長さん、その依頼受けますわ」
神楽の意思をことごとく無視する店長へ、おもむろに響古が言った。
「えェ!?」
「はァ!?」
驚く店長は軽い興奮を見せるが、銀時は別だ。
血相を変えて詰め寄る。
「ちょっ…正気か!?なんでお前がキャバ嬢なんてエロイこと…!」
「キャバ嬢エロくない」
「どうしましょう。響古さんを一から仕込むと考えたら、胸が高鳴るわ」
すかさず口を挟んだ妙が満面な笑みの中で期待に瞳を輝かせるのを、銀時は胡乱そうにつっこむ。
「仕込むって何を?兵器とか?」
戸惑う銀時に向き直り、響古はにやりと笑う。
「男に媚びるだけで札束が飛ぶのよ……こんな美味しい話、呑まないバカはいないわ」
その言葉が男にとって恐ろしすぎる。
それを目の当たりにした銀時は、
「また腹黒い事を……」
と言いたげな顔をしていた。
新八は心配そうな憂い顔だ。
「さて店長さん、これでキャバ嬢は二人。今日は店を貸し切りにすれば、大盛況よ?」
「いや~、助かるよ!響古ちゃんなら、いくらでも男を誑 かせるって」
ドS光臨。
隣で神楽と妙がキラキラしている。
どうして女性陣は皆、この状態(ドS)と化した響古に憧れるのだろう。
「よし、話もまとまった事だし…残りの人数も早急に決めないと。銀、アンタもテンパ並にくるくる絡まってる脳ミソで考えなさい」
「カワイイ娘か~。思いあたるフシがねーな。響古を基準にしてるからおかしいのか?」
銀時の知り合いの中で、抜きん出て綺麗な女性は響古である。
目を閉じて考え込む銀時に、先程から名乗りをあげる神楽が迫る。
「オイ!!ココ!目をあけるネ、探し物はスグ近くにあるアルヨ」
憤慨を露にする神楽を、銀時は内面の知れぬポーカーフェイスを維持することで聞き流す。
「ツラはともかく、性格がマズイのが多くてなァ~。あっ!アイツいた」
「そう!アイツアイツ」
「あっ、やっぱダメだ。触角と左手に仕込んだサイコガンさえなければな~」
「誰アルか、それェ!!ほとんど化物だろーがァ!」
確かに神楽の指摘する通り、銀時がサラリとした口調で綴った辛辣な評価はよほど遠慮のない言い草だと言える。
すると、妙が遠慮がちに友達を呼ぼうかと言ってきた。
「あの…私の友達でよければ呼びましょうか?カワイイ娘いますよ」
しかし、銀時は妙の申し出を却下する。
「ダメだ。女の言うカワイイ娘は信用ならねェ、大体自分よりランク下の奴、連れてくんだよ」
「経験談か。生々しいわね」
その日、スナック『すまいる』は誰にとっても苦行となった。
次々とキャバ嬢が夏風邪でダウンしてしまい、花子も咳払いをして欠勤の理由を伝える。
「え?何?花子ちゃんもカゼ?」
「すんません」
どこかぼうっとした感じの花子が風邪を引いたことは、マスクをつけていることから容易に察することができる。
ゴホゴホ、と咳き込み赤らんだ顔をしかめる。
「熱は微熱やねんけど、咳が止まらんくて…お客さんに、うつしてもアレやし」
「あーわかったわかった。とにかく今日は、もう帰ってゆっくり養生してよ」
「ホンマすんません」
事情を聞いた店長はそれ以上何も言わずに花子を帰らせた。
「厚着して、ポカリいっぱい飲んでいっぱい汗かくんだよ」
「はい」
「微熱ナメたら恐いからね!!お大事に!!」
「はい」
頭を下げる花子が視界から消えた後、振っていた店長の手はピタッと止まり、傍らの黒服に話しかける。
「………まずいね」
「まずいですね」
「夏カゼ蔓延」
「すっかり葬式みたいになっちゃいましたね」
夏風邪の猛威でキャバ嬢全員が寝込んでしまい、店は静まり返っていた。
このままの状態が続けばいずれ店の経営に関わる……しかも、明日は大事な予定が入っている。
「明日は大事な上客が来るってのに」
「確か、幕府の重鎮とか…」
招待する準備は進められるとしても、接待してくれるキャバ嬢は誰一人として欠勤なわけで、残り時間を計算すれば――文字通りハードなスケジュールだ。
「まずいね」
「まずいですね」
「いや、マジマズイね」
「いや、マジマズイですね」
「使えそうな娘は、もう残ってないの?」
店長の質問に黒服は一呼吸置いて、おそるおそる答える。
「……あの…一人だけ」
彼は黒服が指し示した場所を見て絶句した。
第百二十七訓
クーラーはタイマーで切れるようにしてから寝ないと風邪ひくよ
辺りに散乱した空き瓶とつまみ系の皿、ソファに片足を乗せて爆睡する妙。
この有り様を見て、二人は冷や汗を流す。
「………まずいね」
「まずいですね」
「いや、お前が思ってるより全然まずいね」
「いや、お前が思ってるより全然まずいね」
明日は上客の予約、しかも妙一人では到底開店できない、という辺りに深刻さが窺える。
「なんでよりによって」
「バカはカゼひかないって言…」
不審げというよりむしろ不満げにつぶやく黒服に、店長は半眼にしてぼそりとつぶやく。
次の瞬間、飛んできた空き瓶が顔面に直撃し、彼は床に突っ伏した。
「……すいません。明日僕、休ませてもらえますか?」
「白装束着て睡眠薬いっぱい飲んで寝るんですよ」
「はい」
「女ナメたら恐いですからね」
店長が酔っ払ってぐーすか寝る妙を半眼で見ながら繰り出した台詞の部分は、彼女にもちゃんと伝わっていた。
酒のせいで赤らんでいる顔に微笑みを貼りつける妙の反応が、そのことを雄弁に語っていた。
つい最近の"ペットにかこつけて女子アナと浮気しかけた"事件以来、ようやく響古の怒りが覚めてきた頃、銀時は今の平穏を噛みしめるように笑みを浮かべていた。
今、その四人が万事屋で何をしているかというと、銀時がソファに寝っ転がってジャンプを読んで、響古はその膝枕。
新八はテレビを鑑賞中。
神楽は定春と戯れている。
細いくせに柔らかい太ももと肌のぬくもりを感じながら、銀時はふと最近の出来事を思い返した。
それは、響古からのお仕置きという……壮絶な仕打ち。
ハッキリ言えば、彼は死にかけた。
表情こそ怒ってないとは言え、響古からの甘美なお仕置きをまともに食らい、腰砕けに。
次に現れたのが新八と神楽。
非常につやつやした顔の響古と色々搾り取られた銀時の姿に生温かい眼差しを送られた。
心が死にかけた。
さすがの銀時も、これは
3日間寝込むくらいキツかった。
だが、それらの障害を乗り越えたからこそ……今の幸せが目の前に広がっている。
その時、唐突に電話が鳴った。
「――あら、電話だわ」
「いでっ!」
ゴトッ!と銀時の頭を落として立ち上がった響古は電話に出る。
なんて間の悪い……と、銀時は悔しさに顔を歪める。
「はい、もしもし………妙?………えっ?」
突然、響古の口調が疑問形に変わった。
反射的に彼女へ視線を移した銀時は、電話片手に目を丸くする響古に首を傾げる。
それと同時に感じた、嫌な予感。
つい眉を寄せてしまった。
「……うん……うん……わかった」
そうして会話を終えた響古は電話を切ると、銀時達に向き直って言った。
「アンタ達、依頼が来たわよ」
「え、誰からですか?」
「妙から」
「姐御から依頼アルか?」
「えぇ……正確に言えば…」
途端、響古はどう説明したらものか迷うように右手の人差し指を揺らしてから告げる。
「キャバクラからの…出張要請?」
ジャンプを握る手に力がこもり、銀時はひくりと頬を引きつらせた。
幕府の重鎮という上客が来るはずなのに、キャバ嬢全員が夏風邪を引いて休んでしまい、唯一出勤できるのが妙一人。
困り果てた店長が考えたのが、人脈の広い万事屋に依頼。
さらには以前、臨時として働いたことのある響古に助っ人を頼もうとした(詳しくは第七十四訓を読んでね)。
「恋は病って言うだろうがよ。男を
ただ店長の頼みでは、銀時は簡単に納得できることはできない。
微かに眉をひそめ、頬を引きつらせ、不機嫌丸出しでぶつぶつとつぶやく。
だが、そんな銀時の言葉に被せるように。
「仕方ないわよ。夏カゼってなかなか治らないし……時には、カゼをひかすんじゃなくて、カゼをひきたい時もあるのよ」
「響古、色々間違ってるからね」
当然のことながら、響古の笑顔は悪魔的に満ちていた。
ノリノリなのは本人だけで、銀時は顔をしかめている。
「それにしてもお前はやっぱ、たいしたもんだな。ピンピンしてんじゃねーか。やっぱ、バカは…」
そう言って妙に視線を移すと、凄まじい握力によってテーブルに叩きつけられる。
「いやー、面目ない。キャバ嬢一人じゃ店をひらくこともままらなくてね。前に響古ちゃんが来てくれた時は大盛況だったから、お願いしようと思ってね」
強張った笑みを浮かべながら、店長は響古へと話しかける。
そんなこと、銀髪の恋人が許すはずもないのに……彼は失念していた。
すっかり銀時の存在を忘れていたのだ。
「響古なら貨さねーぞ」
「なんとかならんかね、銀さん。アンタ万事屋だろ、顔も広いじゃない。カワイイ娘の二人、三人スグ紹介できるでしょ?」
「カワイイ娘がいるなら、俺が紹介してほしいよ」
「カワイイ娘ならここにいるヨ」
すると、ジュースを飲む神楽が名乗りをあげた。
「今夜はウチによく来る松平様の知り合い、幕府のお偉いさんが店に来る事になっててね」
「オイ、無視してんじゃねーぞ」
「それで響古ちゃんにも頼んでるけど。こんな上客が掴めるチャンスは滅多にないのよ、報酬もはずむよ」
「オイ、ヒゲコラ」
「店長さん、その依頼受けますわ」
神楽の意思をことごとく無視する店長へ、おもむろに響古が言った。
「えェ!?」
「はァ!?」
驚く店長は軽い興奮を見せるが、銀時は別だ。
血相を変えて詰め寄る。
「ちょっ…正気か!?なんでお前がキャバ嬢なんてエロイこと…!」
「キャバ嬢エロくない」
「どうしましょう。響古さんを一から仕込むと考えたら、胸が高鳴るわ」
すかさず口を挟んだ妙が満面な笑みの中で期待に瞳を輝かせるのを、銀時は胡乱そうにつっこむ。
「仕込むって何を?兵器とか?」
戸惑う銀時に向き直り、響古はにやりと笑う。
「男に媚びるだけで札束が飛ぶのよ……こんな美味しい話、呑まないバカはいないわ」
その言葉が男にとって恐ろしすぎる。
それを目の当たりにした銀時は、
「また腹黒い事を……」
と言いたげな顔をしていた。
新八は心配そうな憂い顔だ。
「さて店長さん、これでキャバ嬢は二人。今日は店を貸し切りにすれば、大盛況よ?」
「いや~、助かるよ!響古ちゃんなら、いくらでも男を
ドS光臨。
隣で神楽と妙がキラキラしている。
どうして女性陣は皆、この状態(ドS)と化した響古に憧れるのだろう。
「よし、話もまとまった事だし…残りの人数も早急に決めないと。銀、アンタもテンパ並にくるくる絡まってる脳ミソで考えなさい」
「カワイイ娘か~。思いあたるフシがねーな。響古を基準にしてるからおかしいのか?」
銀時の知り合いの中で、抜きん出て綺麗な女性は響古である。
目を閉じて考え込む銀時に、先程から名乗りをあげる神楽が迫る。
「オイ!!ココ!目をあけるネ、探し物はスグ近くにあるアルヨ」
憤慨を露にする神楽を、銀時は内面の知れぬポーカーフェイスを維持することで聞き流す。
「ツラはともかく、性格がマズイのが多くてなァ~。あっ!アイツいた」
「そう!アイツアイツ」
「あっ、やっぱダメだ。触角と左手に仕込んだサイコガンさえなければな~」
「誰アルか、それェ!!ほとんど化物だろーがァ!」
確かに神楽の指摘する通り、銀時がサラリとした口調で綴った辛辣な評価はよほど遠慮のない言い草だと言える。
すると、妙が遠慮がちに友達を呼ぼうかと言ってきた。
「あの…私の友達でよければ呼びましょうか?カワイイ娘いますよ」
しかし、銀時は妙の申し出を却下する。
「ダメだ。女の言うカワイイ娘は信用ならねェ、大体自分よりランク下の奴、連れてくんだよ」
「経験談か。生々しいわね」