バブ12
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ある日の午後、男鹿と響古は自分達の手の甲を見て驚いた。
「…これは」
男鹿の方は、腕まで伸びていた蠅王紋はすっかり初期段階である手の甲に刻まれて、
「…ワォ」
響古の方はすっかり消えてしまっていた。
男鹿は嬉々として、腕を高々と突き上げる。
――もどった、もどった!!
――もどったよーー!!
そこに、大量の箱を抱えたヒルダがいつもの無表情で見ていた。
「――…何を小躍りしておる」
箱を降ろして訊ねると、男鹿は得意げに自分と響古の手の甲を見せる。
「フフッ。見てのとーりよ」
「え~と、ごめんね。ヒルダ…」
途端、彼女の顔色が変わった。
「貴様…せっかく増えた蠅王紋を…響古まで…」
「わっはっはっ!!」
喜びを隠しきれない笑い声をあげて顎に手を添え、うんうん、と共感しながら続ける。
「――ま、なんつーの?オレ達って、やっぱ善良な一市民ってやつですから?大人しくしてりゃ、ざっとこんなもんよ!!」
かっかっかっ、と哄笑する男鹿と申し訳なさそうな響古の腕をヒルダはじっと観察し、口を開いた。
「………大人しく?」
「あぁ!!一週間、家に引きこもってゲームしてたぜ!!」
親指を突き立てた途端、ゴシャ、という音がして視線を落とすと、黒いソックスに包まれた足がゲーム機を真っ二つにしていた。
さらに、辛辣な言葉を投げつける。
「――この、クソニートが」
「オレの一週間の結晶があぁあっっ!!」
ゲーム機を真っ二つにされた暴挙に絶叫する男鹿は、やっとの思いで倒したボスの討伐時間を返せと訴える。
「てめえ、こら、ふざけんなよっ!!返せ!!オレのミルドラースとデスタムーアとオルゴデミーラ…返せ!!」
「ヒルダ、ひどいよ!!辰巳と協力しながらボスの攻略を作戦して、やっと倒したのに!!」
「魔王なら、もう育てておるだろう」
ヒルダは淡々と指摘する。
「知ってんの!?ドラクエ…」
「ウソ!ヒルダでさえ知ってるの!?あたし、今まで全然知らなかったのに!!」
金髪の悪魔が某ファンタジーRPGを知っているとは思わなかったので、二人は驚きを隠せなかった。
「――…というか、お前一切、ゲームなんてやった事なかったよな」
なんと、響古は人生の中でゲームという娯楽を知らなかったらしい。
男鹿は住む世界の格差を痛感した。
この少女はあれで、名門武家のご令嬢なのだ。
生まれと受けた教育は完璧なお嬢様、究極の大和撫子。
聞けば聞くほど、異次元の住人に思えてくる。
それなのに、あんなふうに自由奔放に行動するところが彼女の厄介なところである。
「……それで響古、足の方は大丈夫か?」
「うん。病院で見てもらったら歩くには支障ないけど、走ったり、無理な運動は絶対しない方がいいって言われたから。当分の間は、辰巳の家に泊まる事になったけど」
「そうか……」
ヒルダは幾分か、表情を和らげて微笑んだ。
しかし、不意を討たれたように声を漏らした。
「……………泊まり?」
そんな彼女の心中を知ってか知らずか、響古はなんともいうこともなく続ける。
「うん。一週間」
ヒルダは素早く響古の顔を覗き込み、それから室内を一瞥し、動かし続けた視線を男鹿を合わせると止めた。
いかにも不審な行動を取るヒルダに、男鹿は訝しげに眉をひそめる。
「何だよ?」
その問いに答えず、ヒルダは何度も二人を見比べて、真剣な眼差しで見た。
「な、何だよ?」
「……貴様も男だな。女に恥をかかせるものではないという事を知っておる」
「ハァ?」
ヒルダがよくわからないことを言うのはいつものことで、いつもなら流すかつっこむの二択だったが、やけに真摯な表情に押されて強く出られない。
響古も、どうして彼女がそんな表情をしているのか。
その理由がまるで見当たらず、どう対応すればよいのか戸惑っていた。
そして、ヒルダは語る。
「あの時、さすがの私も言葉を失う程の響古の発言は凄まじいものだったよ」
「いやー!やめてー!その事はもう忘れてー!」
途端、真っ赤になった響古が駆け寄る。
ここで何故、響古がこんなに慌てているのか、彼女の台詞を一部抜粋してみよう。
(――「誰が辰巳のヨメなのよ!!もし、その言葉を口にしたなら制裁が飛ぶから、覚悟しなさい!!」――)
それは、ぎょっとするほど、誰が聞いても、これはやばいくらい惚れ込んでいるんだなと理解せざるを得ないほど、胸の奥まで突き刺さって離れないほどの強烈な想い。
( ――「男鹿辰巳は……あたしの彼氏なんだから!!」――)
にやりと笑うヒルダに、男鹿はなんだか嫌な予感に汗を流す。
「いくら根性が足りない貴様でも、これはもう……がばっ!といったんじゃないのか?」
響古の唇から、あうあう……みたいな小さなつぶやきが漏れた。
ヒルダの笑みはますます深まり、そんな彼女の耳に顔を寄せ、囁いた。
「で、いたした感想は?」
「――っ!」
次の瞬間、響古の表情が揺れ、その頬が、かーっと、火を噴くように一気に真っ赤になる。
「い、い、い……」
「ん……?」
「いやーー!!ダメなんだもんダメなんだもん、こんなところでえっちなのはダメなんだもん!」
顔を真っ赤に染め上げた響古の叫び声が部屋中に響き渡り、男鹿とヒルダはびっくりする。
「まだお昼だし、ベル坊だっているし、とにかくダメったらダメなの!ヒルダのえっち!すけっちわんたっち!」
彼女を知る者が聞いたら、およそ全員が耳を疑うだろう発言。
いつもマイペースな響古が壊れました。
本邦初公開、手で顔を覆い、ぶんぶんと首を横に振り乱す……恥ずかしがって錯乱真っ最中の響古。
何やら、触れてはいけない部分に触れてしまったらしい。
「まあ、あの時の事は封印したい歴史なのはわかる気がするよ……」
ひたすら首を振り、かつてない様子の響古を抱きしめ、背中をぽんぽんしながら慰める男鹿が納得顔で頷く。
響古が恥ずかしがっている。
響古がこれ以上ないほど、恥ずかしがっている。
なんだか………すごく可愛いです。
ヒルダも頬を染めている。
もう鼻血出そうでしたからね。
響古的には笑い事じゃあないんでしょうが。
なんとか興奮を堪えると、一度咳払いをしてから言い放つ。
「響古、私が悪かった。だから、そんなに可愛くわめかないでくれ。そんな物より、もっとよいおもちゃを持ってきてやった」
「あ?」
「おもちゃ?」
対処が終わった男鹿と、どうやら少し落ち着いたらしい響古が聞いてきた。
「坊っちゃまと一緒に遊べる、魔界のおもちゃだ。取りに帰るのに少々、時間がかかったな。いろいろあるぞ」
ヒルダは持ってきた箱の中から何やら取り出す。
「魔界に帰ってたのかよ。そーいや、いねぇと思ったら」
「ふむ。組み立てが必要らしい。おい、手伝え」
「あ゙ぁ!?」
「坊っちゃまが寝ている間に作るぞ」
スピー、と寝息を立てながら熟睡するベル坊が起きる前に、三人は玩具を組み立てる。
言われるがままに玩具を組み立てる男鹿は、ふと頭に浮かんだ疑問をぶつけた。
「――で、聞くがよ」
「む?」
「こりゃあ、何を作ってんだ?」
「ふむ」
響古も組み立てに手伝う傍ら、ヒルダは玩具の取り扱い説明書を読んでいた。
「説明書が、どうにも不親切でな。何か、簡易遊戯ルームの様な物だと思うのだが…む、ここだな」
説明書のページには、不可解な文字が羅列している。
「へぇー。これって、もしかして魔界の文字?やっぱり、魔界の文字って不思議だねー。どう見ても、記号にしか見えないや」
「簡易遊戯ルームねぇー。これで、最後っと」
「……これは…」
完成した瞬間、三人を囲むように、凄まじい力が流れ込んできた。
幾何学的にも自然物にも見える曲線に乗って走る力は、その勢いをそのまま、速さと威力に変えた魔力として発動する。
否、三人の真下、組み立てた玩具が既に発動してしまった。
「なっ、何!?」
「なんだ、なんだ!?」
「まずいっ!!」
その時、ヒルダが顔色を変えるが、それは一瞬にして透明なガラスとなり、三人を閉じ込めた。
「………うむ。どうやら、閉じこめられてしまった様だな」
すぐにいつもの無表情に戻ったヒルダに、二人は一斉に抗議する。
「何、しれっと言ってんだ!!今、まずいっつってただろ、てめーっ!!あ゙ぁ!?」
「何なの、これ!?閉じこめられたって、どーゆー事!?」
「ちゃんと説明しろや」
苦悩の表情で、ヒルダが思考に耽り始める。
「…うむ。響古ならすぐに理解するだろうが、貴様に説明したとして…何の意味が…?」
「オレに気を使えって言ってんだ!!そして何故、響古は違う!?」
「響古は貴様と違って、強さだけでなく美貌もあり、頭の回転も早い。これ以上、何を比べようと言うのだ」
フン、と鼻で笑う始末。
文句を言い立てながらも、その口調は愉しげだった。
「う…うるせー!オレには響古がいるから、いいんだよ!」
若干涙目で、男鹿は響古を抱きしめる。
「なんの話……?」
話の内容がわからない響古のつぶやきは、二人には届かなかった。
改めて、ヒルダは玩具の説明書を見る。
「つまるところ、どうやら、これは人間界でいう所の虫カゴみたいなものらしい」
「「虫カゴ?」」
「うむ」
説明書に書かれている内容は、次の通り。
――今日は家族で魔境をピクニック。
――ところが、そこで偶然、レア魔獣を発見!!
――捕獲したいけど…なーんて事、あるよね!!
二人は説明書につっこむ。
「ねーよ」
「ないわよ」
そもそも、場所からしてここは人間界。
魔獣なんているわけがない。
――そんな時は、これ!!簡単組み立て式「どこでも魔獣捕獲籠」。
――魔界一と噂されつつある鉱物、硬化アクマタイトを使用しているので、強度も抜群。
――どんな魔獣も逃がしません。
「魔獣捕獲籠だぁー?」
「…これは」
男鹿の方は、腕まで伸びていた蠅王紋はすっかり初期段階である手の甲に刻まれて、
「…ワォ」
響古の方はすっかり消えてしまっていた。
男鹿は嬉々として、腕を高々と突き上げる。
――もどった、もどった!!
――もどったよーー!!
そこに、大量の箱を抱えたヒルダがいつもの無表情で見ていた。
「――…何を小躍りしておる」
箱を降ろして訊ねると、男鹿は得意げに自分と響古の手の甲を見せる。
「フフッ。見てのとーりよ」
「え~と、ごめんね。ヒルダ…」
途端、彼女の顔色が変わった。
「貴様…せっかく増えた蠅王紋を…響古まで…」
「わっはっはっ!!」
喜びを隠しきれない笑い声をあげて顎に手を添え、うんうん、と共感しながら続ける。
「――ま、なんつーの?オレ達って、やっぱ善良な一市民ってやつですから?大人しくしてりゃ、ざっとこんなもんよ!!」
かっかっかっ、と哄笑する男鹿と申し訳なさそうな響古の腕をヒルダはじっと観察し、口を開いた。
「………大人しく?」
「あぁ!!一週間、家に引きこもってゲームしてたぜ!!」
親指を突き立てた途端、ゴシャ、という音がして視線を落とすと、黒いソックスに包まれた足がゲーム機を真っ二つにしていた。
さらに、辛辣な言葉を投げつける。
「――この、クソニートが」
「オレの一週間の結晶があぁあっっ!!」
ゲーム機を真っ二つにされた暴挙に絶叫する男鹿は、やっとの思いで倒したボスの討伐時間を返せと訴える。
「てめえ、こら、ふざけんなよっ!!返せ!!オレのミルドラースとデスタムーアとオルゴデミーラ…返せ!!」
「ヒルダ、ひどいよ!!辰巳と協力しながらボスの攻略を作戦して、やっと倒したのに!!」
「魔王なら、もう育てておるだろう」
ヒルダは淡々と指摘する。
「知ってんの!?ドラクエ…」
「ウソ!ヒルダでさえ知ってるの!?あたし、今まで全然知らなかったのに!!」
金髪の悪魔が某ファンタジーRPGを知っているとは思わなかったので、二人は驚きを隠せなかった。
「――…というか、お前一切、ゲームなんてやった事なかったよな」
なんと、響古は人生の中でゲームという娯楽を知らなかったらしい。
男鹿は住む世界の格差を痛感した。
この少女はあれで、名門武家のご令嬢なのだ。
生まれと受けた教育は完璧なお嬢様、究極の大和撫子。
聞けば聞くほど、異次元の住人に思えてくる。
それなのに、あんなふうに自由奔放に行動するところが彼女の厄介なところである。
「……それで響古、足の方は大丈夫か?」
「うん。病院で見てもらったら歩くには支障ないけど、走ったり、無理な運動は絶対しない方がいいって言われたから。当分の間は、辰巳の家に泊まる事になったけど」
「そうか……」
ヒルダは幾分か、表情を和らげて微笑んだ。
しかし、不意を討たれたように声を漏らした。
「……………泊まり?」
そんな彼女の心中を知ってか知らずか、響古はなんともいうこともなく続ける。
「うん。一週間」
ヒルダは素早く響古の顔を覗き込み、それから室内を一瞥し、動かし続けた視線を男鹿を合わせると止めた。
いかにも不審な行動を取るヒルダに、男鹿は訝しげに眉をひそめる。
「何だよ?」
その問いに答えず、ヒルダは何度も二人を見比べて、真剣な眼差しで見た。
「な、何だよ?」
「……貴様も男だな。女に恥をかかせるものではないという事を知っておる」
「ハァ?」
ヒルダがよくわからないことを言うのはいつものことで、いつもなら流すかつっこむの二択だったが、やけに真摯な表情に押されて強く出られない。
響古も、どうして彼女がそんな表情をしているのか。
その理由がまるで見当たらず、どう対応すればよいのか戸惑っていた。
そして、ヒルダは語る。
「あの時、さすがの私も言葉を失う程の響古の発言は凄まじいものだったよ」
「いやー!やめてー!その事はもう忘れてー!」
途端、真っ赤になった響古が駆け寄る。
ここで何故、響古がこんなに慌てているのか、彼女の台詞を一部抜粋してみよう。
(――「誰が辰巳のヨメなのよ!!もし、その言葉を口にしたなら制裁が飛ぶから、覚悟しなさい!!」――)
それは、ぎょっとするほど、誰が聞いても、これはやばいくらい惚れ込んでいるんだなと理解せざるを得ないほど、胸の奥まで突き刺さって離れないほどの強烈な想い。
( ――「男鹿辰巳は……あたしの彼氏なんだから!!」――)
にやりと笑うヒルダに、男鹿はなんだか嫌な予感に汗を流す。
「いくら根性が足りない貴様でも、これはもう……がばっ!といったんじゃないのか?」
響古の唇から、あうあう……みたいな小さなつぶやきが漏れた。
ヒルダの笑みはますます深まり、そんな彼女の耳に顔を寄せ、囁いた。
「で、いたした感想は?」
「――っ!」
次の瞬間、響古の表情が揺れ、その頬が、かーっと、火を噴くように一気に真っ赤になる。
「い、い、い……」
「ん……?」
「いやーー!!ダメなんだもんダメなんだもん、こんなところでえっちなのはダメなんだもん!」
顔を真っ赤に染め上げた響古の叫び声が部屋中に響き渡り、男鹿とヒルダはびっくりする。
「まだお昼だし、ベル坊だっているし、とにかくダメったらダメなの!ヒルダのえっち!すけっちわんたっち!」
彼女を知る者が聞いたら、およそ全員が耳を疑うだろう発言。
いつもマイペースな響古が壊れました。
本邦初公開、手で顔を覆い、ぶんぶんと首を横に振り乱す……恥ずかしがって錯乱真っ最中の響古。
何やら、触れてはいけない部分に触れてしまったらしい。
「まあ、あの時の事は封印したい歴史なのはわかる気がするよ……」
ひたすら首を振り、かつてない様子の響古を抱きしめ、背中をぽんぽんしながら慰める男鹿が納得顔で頷く。
響古が恥ずかしがっている。
響古がこれ以上ないほど、恥ずかしがっている。
なんだか………すごく可愛いです。
ヒルダも頬を染めている。
もう鼻血出そうでしたからね。
響古的には笑い事じゃあないんでしょうが。
なんとか興奮を堪えると、一度咳払いをしてから言い放つ。
「響古、私が悪かった。だから、そんなに可愛くわめかないでくれ。そんな物より、もっとよいおもちゃを持ってきてやった」
「あ?」
「おもちゃ?」
対処が終わった男鹿と、どうやら少し落ち着いたらしい響古が聞いてきた。
「坊っちゃまと一緒に遊べる、魔界のおもちゃだ。取りに帰るのに少々、時間がかかったな。いろいろあるぞ」
ヒルダは持ってきた箱の中から何やら取り出す。
「魔界に帰ってたのかよ。そーいや、いねぇと思ったら」
「ふむ。組み立てが必要らしい。おい、手伝え」
「あ゙ぁ!?」
「坊っちゃまが寝ている間に作るぞ」
スピー、と寝息を立てながら熟睡するベル坊が起きる前に、三人は玩具を組み立てる。
言われるがままに玩具を組み立てる男鹿は、ふと頭に浮かんだ疑問をぶつけた。
「――で、聞くがよ」
「む?」
「こりゃあ、何を作ってんだ?」
「ふむ」
響古も組み立てに手伝う傍ら、ヒルダは玩具の取り扱い説明書を読んでいた。
「説明書が、どうにも不親切でな。何か、簡易遊戯ルームの様な物だと思うのだが…む、ここだな」
説明書のページには、不可解な文字が羅列している。
「へぇー。これって、もしかして魔界の文字?やっぱり、魔界の文字って不思議だねー。どう見ても、記号にしか見えないや」
「簡易遊戯ルームねぇー。これで、最後っと」
「……これは…」
完成した瞬間、三人を囲むように、凄まじい力が流れ込んできた。
幾何学的にも自然物にも見える曲線に乗って走る力は、その勢いをそのまま、速さと威力に変えた魔力として発動する。
否、三人の真下、組み立てた玩具が既に発動してしまった。
「なっ、何!?」
「なんだ、なんだ!?」
「まずいっ!!」
その時、ヒルダが顔色を変えるが、それは一瞬にして透明なガラスとなり、三人を閉じ込めた。
「………うむ。どうやら、閉じこめられてしまった様だな」
すぐにいつもの無表情に戻ったヒルダに、二人は一斉に抗議する。
「何、しれっと言ってんだ!!今、まずいっつってただろ、てめーっ!!あ゙ぁ!?」
「何なの、これ!?閉じこめられたって、どーゆー事!?」
「ちゃんと説明しろや」
苦悩の表情で、ヒルダが思考に耽り始める。
「…うむ。響古ならすぐに理解するだろうが、貴様に説明したとして…何の意味が…?」
「オレに気を使えって言ってんだ!!そして何故、響古は違う!?」
「響古は貴様と違って、強さだけでなく美貌もあり、頭の回転も早い。これ以上、何を比べようと言うのだ」
フン、と鼻で笑う始末。
文句を言い立てながらも、その口調は愉しげだった。
「う…うるせー!オレには響古がいるから、いいんだよ!」
若干涙目で、男鹿は響古を抱きしめる。
「なんの話……?」
話の内容がわからない響古のつぶやきは、二人には届かなかった。
改めて、ヒルダは玩具の説明書を見る。
「つまるところ、どうやら、これは人間界でいう所の虫カゴみたいなものらしい」
「「虫カゴ?」」
「うむ」
説明書に書かれている内容は、次の通り。
――今日は家族で魔境をピクニック。
――ところが、そこで偶然、レア魔獣を発見!!
――捕獲したいけど…なーんて事、あるよね!!
二人は説明書につっこむ。
「ねーよ」
「ないわよ」
そもそも、場所からしてここは人間界。
魔獣なんているわけがない。
――そんな時は、これ!!簡単組み立て式「どこでも魔獣捕獲籠」。
――魔界一と噂されつつある鉱物、硬化アクマタイトを使用しているので、強度も抜群。
――どんな魔獣も逃がしません。
「魔獣捕獲籠だぁー?」