バブ5
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彼方まで晴れ渡った、素晴らしい青空。
光を反射する、広大な海のまばゆさに目を細める。
「海…か」
目の前に広がる大パノラマの水平線を眺める男鹿は、顔だけ海面から出た状態で浮かんでいた。
「えー…何コレ、夢?」
これが夢じゃなかったら、一体なんなのだろう。
「夢だな、絶対…あれだ。目が覚めると、ベル坊が横でおねしょしてるとか、そんなオチだ。よしっ。目覚めろ、オレっ!!そしてベル坊にせっかんを!!」
覚悟を決めて目を覚め、眼前に広がる光景は、お漏らしでは通じないほどの大量の水が部屋に溢れ出ていた。
「………………」
部屋の中の衣服や本はプカプカと浮かんでおり、溢れ出た水流は窓を突き抜けて、外に放流する。
「えー…何コレ…」
驚きすら通り越して、呆れるしかないつぶやき。
すると、窓の向こうから声がかけられた。
「目が覚めたか…?」
そこにいたのは、大振りの枝の上に佇む響古と傘を差すヒルダ。
響古は長い黒髪をポニーテールに結っている。
「よい朝だな。坊っちゃまも豪快におもらししておる」
「辰巳、おはよう~」
呑気に手を振る響古に、水が轟々と流れる光景に感嘆するヒルダ。
――おもらし…………。
顔だけ出た状態、呑み込まれたままの男鹿は愕然とする。
「案ずるな。汚いものではない。むしろ、神聖な魔力を秘めた、ありがたいお小水だ」
ヒルダが現象を説明する傍ら、響古は部屋の中に溢れる水を不思議そうに、ほぇー…と眺める。
「毎年、この時期に迎える排尿期は魔界でも風物詩でな…街一つ飲みこんだその後には、肥沃 な大地が…」
「モンスーンか、こらっ…!!」
夏の季節によって風の吹く方角が変わり、その地域は雨季となる。
洪水のような小水から避難するように、木の枝にいる黒と金の組み合わせにつっこむ。
「ってか、なんで響古がお前の所にいんだよ!!」
「何、ちょっと訳有りでな。人間を滅ぼす為の第一歩だな。フフフ」
「笑えねーよ!!おねしょで人類滅亡てっ…てめーもいつまで、のんきに寝てんだ、コラッ」
男鹿はいい加減、熟睡しているベル坊を殴ることで起こす。
「ミ゙ャッ」
外ではベル坊のおねしょが、まるで豪雨のように水浸しになっていた。
そこを通りかかった古市は傘を差す手を下ろして顔を青ざめる。
なんとか部屋の中の水を抜いたところで、股間に紐を結んだベル坊は身体をプルプルと震わせる。
「――というわけでな、事態は一刻を争うのだ。オレの素晴らしい機転により、一時的に沈静化はしたものの、依然、ベル坊ダムは決壊寸前、予断を許さぬ状況だ。幸い、今日はうちに誰もいねぇ」
着替えた男鹿は端折 った説明をする。
すると響古が頷きかけてくる。
「って事は、今のうちに全て収拾するには、どーすればいいかって事よね」
「全員、頭をひきちぎれ!!」
頭をひきちぎれって、そんなことしたら死にますよ。
「知恵をふりしぼれ…な」
古市が弱々しい声で訂正を加えるが、男鹿は強情に言い張る。
「ひきちぎれっ!!」
「――フン。何を、的はずれな話をしておる。問題は、どの街から沈めるであろう」
ヒルダは鼻で笑うと、腕を組んで堂々と言い放った。
「よーし。お前、もうしゃべるな。そこで、腕立てふせでもしてろ」
「えーと…いいか?」
「はい、古市君」
「何度もいうけど、オレをまきこむなって。響古と一緒に話し合えよ」
最近になって発覚した、喧嘩だけでなく知謀の才能もある響古。
美人で気だてが良くて頭も良くてスタイルも(多分)良くて全身全霊で愛してくれる。
これ以上、何を望むんだちくしょーって感じだ。
古市的には、響古の欠点は目の前の男鹿に惚れていること以外は見つからない。
「……って、そーいえば何であいつと朝、一緒にいたんだ?」
「え?あぁ、それはね……」
響古は話す途中で一旦、言葉を切った。
「話すと長いから、回想シーンにまとめるね」
「ままま、待て。待ってくれ。話の進み方がおかしい、おかしすぎる!」
こちらの待ったを無視して、男鹿が促す。
「オレは別にいーぞ。長い話は嫌いだから」
「オッケー」
二人のマイペースぶりに古市は必死に抗おうとしたが、諦めた。
もう収拾がつかない。
(やっぱり、この二人って自由奔放だ!!)
そして回想――…窓からの陽射しがまぶしくて、響古は思わず、
「――ん……」
うっすら目を開けた。
いつもと変わらない朝、いつも通りの風景。
ぱたん、と布団が跳ね上げられて、響古は半身を起こした。
「……ん~~~っ!」
寝ぼけ眼 を擦って、全身に強い力を行き渡らせるように伸びをする。
そして、本邦初公開の響古のパジャマ!
水色のパジャマで、普段の黒一色の装いからは想像もできない、無防備な可憐さが匂い立っている。
「今日、学校は………ないか…辰巳に会えない」
やや憂鬱そうにつぶやく。
「………テンション下がるわ~」
彼氏に会えないという理由だけで、こんなにも朝からテンション下がる人っていませんよ。
「はぁぁ――って、へ?」
溜め息をつきながらベッドを降りた響古は、とてつもない違和感を覚えて、間抜けな声を漏らした。
何か……そう、空気がいつもと違う。
なんだろうと思い、ぐるりと室内を見渡す。
響古は横を振り向いて、凍りついた。
自分の部屋に誰かがいる。
その唇から、呆然としたつぶやきがこぼれた。
「……………なんで?」
「起きたか、響古」
当たり前のように、部屋に正座するヒルダ。
響古はごしごしと目を擦った。
ぎゅう、と自分の手の甲をつねった。
ぱん、と頬を叩いた。
夢ではなかった。
「どうした?」
響古は驚きのあまり、目を見開く。
「いや、どうしたもこうしたも……何でヒルダが朝早くから、あたしの部屋に?」
「あぁ。それはな、迎えに来たからだ」
「迎え、に……?」
「窓の外を見てみろ」
疑問符を浮かべながらもヒルダに促され、カーテンに手をかけて窓を開ける。
「なっ……何コレ…」
今までのやり取りで十分に驚嘆していた響古だが、今度は己の正気を疑う羽目になった。
だが、仕方ないではないか。
豪雨を遥かに凌 ぐ、水浸しになっている住宅街。
そんな光景がいきなり目の前に現れたのだから。
その脳内では、ある方程式ができていた。
ヒルダがここにいる+この状況(非日常)。
ならば考えられることは、ただ一つ。
「これは、ベル坊が?」
ヒルダは、その言葉が正解であるといったふうに説明する。
「毎年、この時期に迎える排尿期でな。街一つ飲みこんだその後には、肥沃な大地が…」
「いや、そんな説明いらないし!のんびりしてる暇ないじゃん!」
響古は慌ててパジャマを脱ぎ始める。
そして着替え終了。
長い髪を一つに結び、Tシャツに細い脚を剥き出しにしたカットジーンズを穿く。
「では早速、坊っちゃまの所へと向かうか」
「えっ…でも、どうやって?」
ヒルダはおもむろに、窓を横目に見る。
「これに乗ってだ」
極めつけで無茶苦茶で理解不能なその光景に、響古は目を剥いて驚愕した。
「うっそー?」
何しろ、窓の向こう、アパートの屋根の上には、あの怪鳥がいたのだから。
「グゲゲゲ」
翼長 でいえば、おそらく数十メートルはある巨躯が奇怪な鳴き声をあげる。
「紹介が遅れたな。アクババだ」
「グエッ」
「あ……うん」
響古は呆然と見上げた。
(そー言えば、辰巳にやられてたっけ…)
※アクババは登場時、男鹿の蹴りによって一発K.Oされました。
(詳しくはバブ1を読んでね)
「で、ヒルダ…これに乗って、辰巳の家に行くの?」
「ああ。行くぞ」
ヒルダは響古に手を差し述べる。
そして、響古とヒルダを乗せたアクババは空の彼方へと飛んでいった。
――回想終了。
(響古のパジャマ姿……見てみたい気が)
この話を聞いた男鹿、意外と健全な男の子です。
(響古のパジャマ…それも見たい気もするが、サービスシーンはないのかよ!!)
そして古市、やっぱりそこですか。
「ん……そーいや響古、よくあれにビビらなかったな。正直、怖かっただろ?」
「そんな事ないよ。むしろ、ヒルダよりも格下に見られてると思ったから、なんかムカついて調教して飼い馴らしたよ」
古市には、そう言ってにっこりと笑う彼女が恐ろしく感じた。
相当、今の微笑みの素敵さと台詞のギャップが怖かったらしい。
なんか動物的な本能で、響古に逆らってはいけないと感じたんでしょう。
どうやら、あの僅かな時間に群れの序列をはっきりさせたようです。
話が逸れてきたので、ここで本題に入ろう。
このままでは、ベル坊の放尿によって街が呑み込まれてしまう。
この件に全力で取り組む決意を固めて、男鹿は詰め寄る。
「お前だけがたよりだ!!!なんか、いいアイデア出たのか!!」
「出てねーし、出す気もねーよ」
「出せよっ!!出そーよ!!早く出さねーと、出ちまうぜ!!」
今すぐアイデアを出さないと、縛る紐が解けて大量の水が出てしまう。
どや顔になる男鹿に、古市は苛立ちを募らせて怒鳴る。
「うまくねーよ、ムカつくな!!なんだ、そのどや顔」
「ばかやろう古市!!てめぇ、このまま日本が尿に沈んでもいいのか!?」
「うるせーよっ!!てめーも親なら、オムツくらいはかせろやっ!!」
今になって気づき、考えもしなかった事実に直面した途端、男鹿は響古と顔を見合わせてからベル坊を見る。
――それだあっっ!!
ベル坊を片手に、きょとんとしている響古の手を引き、部屋の外へと向かう男鹿。
「家の事はまかせた!!」
「おい、待て、こらっ!!まかせたって…どーすんのこれ!!」
「元通りにしてくれ」
「無理だろ」
部屋の後片付けを古市に押しつけて、男鹿は部屋を飛び出して階段を降りていった。
光を反射する、広大な海のまばゆさに目を細める。
「海…か」
目の前に広がる大パノラマの水平線を眺める男鹿は、顔だけ海面から出た状態で浮かんでいた。
「えー…何コレ、夢?」
これが夢じゃなかったら、一体なんなのだろう。
「夢だな、絶対…あれだ。目が覚めると、ベル坊が横でおねしょしてるとか、そんなオチだ。よしっ。目覚めろ、オレっ!!そしてベル坊にせっかんを!!」
覚悟を決めて目を覚め、眼前に広がる光景は、お漏らしでは通じないほどの大量の水が部屋に溢れ出ていた。
「………………」
部屋の中の衣服や本はプカプカと浮かんでおり、溢れ出た水流は窓を突き抜けて、外に放流する。
「えー…何コレ…」
驚きすら通り越して、呆れるしかないつぶやき。
すると、窓の向こうから声がかけられた。
「目が覚めたか…?」
そこにいたのは、大振りの枝の上に佇む響古と傘を差すヒルダ。
響古は長い黒髪をポニーテールに結っている。
「よい朝だな。坊っちゃまも豪快におもらししておる」
「辰巳、おはよう~」
呑気に手を振る響古に、水が轟々と流れる光景に感嘆するヒルダ。
――おもらし…………。
顔だけ出た状態、呑み込まれたままの男鹿は愕然とする。
「案ずるな。汚いものではない。むしろ、神聖な魔力を秘めた、ありがたいお小水だ」
ヒルダが現象を説明する傍ら、響古は部屋の中に溢れる水を不思議そうに、ほぇー…と眺める。
「毎年、この時期に迎える排尿期は魔界でも風物詩でな…街一つ飲みこんだその後には、
「モンスーンか、こらっ…!!」
夏の季節によって風の吹く方角が変わり、その地域は雨季となる。
洪水のような小水から避難するように、木の枝にいる黒と金の組み合わせにつっこむ。
「ってか、なんで響古がお前の所にいんだよ!!」
「何、ちょっと訳有りでな。人間を滅ぼす為の第一歩だな。フフフ」
「笑えねーよ!!おねしょで人類滅亡てっ…てめーもいつまで、のんきに寝てんだ、コラッ」
男鹿はいい加減、熟睡しているベル坊を殴ることで起こす。
「ミ゙ャッ」
外ではベル坊のおねしょが、まるで豪雨のように水浸しになっていた。
そこを通りかかった古市は傘を差す手を下ろして顔を青ざめる。
なんとか部屋の中の水を抜いたところで、股間に紐を結んだベル坊は身体をプルプルと震わせる。
「――というわけでな、事態は一刻を争うのだ。オレの素晴らしい機転により、一時的に沈静化はしたものの、依然、ベル坊ダムは決壊寸前、予断を許さぬ状況だ。幸い、今日はうちに誰もいねぇ」
着替えた男鹿は
すると響古が頷きかけてくる。
「って事は、今のうちに全て収拾するには、どーすればいいかって事よね」
「全員、頭をひきちぎれ!!」
頭をひきちぎれって、そんなことしたら死にますよ。
「知恵をふりしぼれ…な」
古市が弱々しい声で訂正を加えるが、男鹿は強情に言い張る。
「ひきちぎれっ!!」
「――フン。何を、的はずれな話をしておる。問題は、どの街から沈めるであろう」
ヒルダは鼻で笑うと、腕を組んで堂々と言い放った。
「よーし。お前、もうしゃべるな。そこで、腕立てふせでもしてろ」
「えーと…いいか?」
「はい、古市君」
「何度もいうけど、オレをまきこむなって。響古と一緒に話し合えよ」
最近になって発覚した、喧嘩だけでなく知謀の才能もある響古。
美人で気だてが良くて頭も良くてスタイルも(多分)良くて全身全霊で愛してくれる。
これ以上、何を望むんだちくしょーって感じだ。
古市的には、響古の欠点は目の前の男鹿に惚れていること以外は見つからない。
「……って、そーいえば何であいつと朝、一緒にいたんだ?」
「え?あぁ、それはね……」
響古は話す途中で一旦、言葉を切った。
「話すと長いから、回想シーンにまとめるね」
「ままま、待て。待ってくれ。話の進み方がおかしい、おかしすぎる!」
こちらの待ったを無視して、男鹿が促す。
「オレは別にいーぞ。長い話は嫌いだから」
「オッケー」
二人のマイペースぶりに古市は必死に抗おうとしたが、諦めた。
もう収拾がつかない。
(やっぱり、この二人って自由奔放だ!!)
そして回想――…窓からの陽射しがまぶしくて、響古は思わず、
「――ん……」
うっすら目を開けた。
いつもと変わらない朝、いつも通りの風景。
ぱたん、と布団が跳ね上げられて、響古は半身を起こした。
「……ん~~~っ!」
寝ぼけ
そして、本邦初公開の響古のパジャマ!
水色のパジャマで、普段の黒一色の装いからは想像もできない、無防備な可憐さが匂い立っている。
「今日、学校は………ないか…辰巳に会えない」
やや憂鬱そうにつぶやく。
「………テンション下がるわ~」
彼氏に会えないという理由だけで、こんなにも朝からテンション下がる人っていませんよ。
「はぁぁ――って、へ?」
溜め息をつきながらベッドを降りた響古は、とてつもない違和感を覚えて、間抜けな声を漏らした。
何か……そう、空気がいつもと違う。
なんだろうと思い、ぐるりと室内を見渡す。
響古は横を振り向いて、凍りついた。
自分の部屋に誰かがいる。
その唇から、呆然としたつぶやきがこぼれた。
「……………なんで?」
「起きたか、響古」
当たり前のように、部屋に正座するヒルダ。
響古はごしごしと目を擦った。
ぎゅう、と自分の手の甲をつねった。
ぱん、と頬を叩いた。
夢ではなかった。
「どうした?」
響古は驚きのあまり、目を見開く。
「いや、どうしたもこうしたも……何でヒルダが朝早くから、あたしの部屋に?」
「あぁ。それはな、迎えに来たからだ」
「迎え、に……?」
「窓の外を見てみろ」
疑問符を浮かべながらもヒルダに促され、カーテンに手をかけて窓を開ける。
「なっ……何コレ…」
今までのやり取りで十分に驚嘆していた響古だが、今度は己の正気を疑う羽目になった。
だが、仕方ないではないか。
豪雨を遥かに
そんな光景がいきなり目の前に現れたのだから。
その脳内では、ある方程式ができていた。
ヒルダがここにいる+この状況(非日常)。
ならば考えられることは、ただ一つ。
「これは、ベル坊が?」
ヒルダは、その言葉が正解であるといったふうに説明する。
「毎年、この時期に迎える排尿期でな。街一つ飲みこんだその後には、肥沃な大地が…」
「いや、そんな説明いらないし!のんびりしてる暇ないじゃん!」
響古は慌ててパジャマを脱ぎ始める。
そして着替え終了。
長い髪を一つに結び、Tシャツに細い脚を剥き出しにしたカットジーンズを穿く。
「では早速、坊っちゃまの所へと向かうか」
「えっ…でも、どうやって?」
ヒルダはおもむろに、窓を横目に見る。
「これに乗ってだ」
極めつけで無茶苦茶で理解不能なその光景に、響古は目を剥いて驚愕した。
「うっそー?」
何しろ、窓の向こう、アパートの屋根の上には、あの怪鳥がいたのだから。
「グゲゲゲ」
「紹介が遅れたな。アクババだ」
「グエッ」
「あ……うん」
響古は呆然と見上げた。
(そー言えば、辰巳にやられてたっけ…)
※アクババは登場時、男鹿の蹴りによって一発K.Oされました。
(詳しくはバブ1を読んでね)
「で、ヒルダ…これに乗って、辰巳の家に行くの?」
「ああ。行くぞ」
ヒルダは響古に手を差し述べる。
そして、響古とヒルダを乗せたアクババは空の彼方へと飛んでいった。
――回想終了。
(響古のパジャマ姿……見てみたい気が)
この話を聞いた男鹿、意外と健全な男の子です。
(響古のパジャマ…それも見たい気もするが、サービスシーンはないのかよ!!)
そして古市、やっぱりそこですか。
「ん……そーいや響古、よくあれにビビらなかったな。正直、怖かっただろ?」
「そんな事ないよ。むしろ、ヒルダよりも格下に見られてると思ったから、なんかムカついて調教して飼い馴らしたよ」
古市には、そう言ってにっこりと笑う彼女が恐ろしく感じた。
相当、今の微笑みの素敵さと台詞のギャップが怖かったらしい。
なんか動物的な本能で、響古に逆らってはいけないと感じたんでしょう。
どうやら、あの僅かな時間に群れの序列をはっきりさせたようです。
話が逸れてきたので、ここで本題に入ろう。
このままでは、ベル坊の放尿によって街が呑み込まれてしまう。
この件に全力で取り組む決意を固めて、男鹿は詰め寄る。
「お前だけがたよりだ!!!なんか、いいアイデア出たのか!!」
「出てねーし、出す気もねーよ」
「出せよっ!!出そーよ!!早く出さねーと、出ちまうぜ!!」
今すぐアイデアを出さないと、縛る紐が解けて大量の水が出てしまう。
どや顔になる男鹿に、古市は苛立ちを募らせて怒鳴る。
「うまくねーよ、ムカつくな!!なんだ、そのどや顔」
「ばかやろう古市!!てめぇ、このまま日本が尿に沈んでもいいのか!?」
「うるせーよっ!!てめーも親なら、オムツくらいはかせろやっ!!」
今になって気づき、考えもしなかった事実に直面した途端、男鹿は響古と顔を見合わせてからベル坊を見る。
――それだあっっ!!
ベル坊を片手に、きょとんとしている響古の手を引き、部屋の外へと向かう男鹿。
「家の事はまかせた!!」
「おい、待て、こらっ!!まかせたって…どーすんのこれ!!」
「元通りにしてくれ」
「無理だろ」
部屋の後片付けを古市に押しつけて、男鹿は部屋を飛び出して階段を降りていった。