バブ107~109
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「いいか?悪魔の力を人間が使う場合の図式は、こうだ」
そう言って、早乙女は木の棒で地面に男鹿とベル坊を描き出す。
ベル坊から与えられる魔力を己の体内で変換し、初めて力を発揮する。
簡単な図を描いてわかりやすく説明し、キヨ子もそれに加わる。
「当然、悪魔と人間のシンクロ度合が高ければ高い程、引き出す魔力も大きくなる」
「だが、一つ気をつけなくちゃならねぇ事がある」
早乙女はそこで言葉を切ると、キヨ子が頷いて孫娘に話しかける。
「響古、おぬしは実際に経験してわかると思うが、契約の仕組みもわからず未熟なまま悪魔の力を使えばどうなる?」
「……はい。悪魔の力は契約者の思いに応えるため、魔力を送り込みます。それこそ、契約者の身体と精神が壊れても」
一瞬、言いにくそうに口ごもってから響古は答える。
「あたしも何度か、力に呑まれて暴走した事があります」
さらに早乙女とキヨ子は念のため付け足す。
「――…シンクロ度合いが上がるという事は」
「……そう。それだけ悪魔に近くなるという事だ」
これこそが特別コーチに選ばれた二人が悪魔の力の使い方を教えた理由。
注ぎ込まれ増大された魔力が契約者の魂と同化して、いずれその存在を喰らう。
「お前、紋章が全身に広がった事があると言ったな」
「あ?」
それは聖石矢魔とのバレーボール勝負後に起こった出来事。
帝毛を引きつれて乱入した霧矢を全力のゼブルブラストで一網打尽。
その時、男鹿の右手と響古の左手から取り巻いて回り、高速で腕を侵食していった蠅王紋は、二人の顔にまで達していた。
「そりゃ、本物の危険信号だ。悪魔化が進めば人間に戻れなくなってたトコだぞ」
「本来、それを悪魔に魂を売るという事じゃ」
「オレらが今から教える『紋章術』ってのは、そうならない為の術と言ってもいい」
ここからが本番だと告げる特別コーチに、男鹿と響古は表情を引き締める。
「アダ」
横で、ベル坊が顎に手を当てて神妙な表情で頷く。
「ダブダダ、アダーダ」
「δθБ?」
神妙な表情で告げるベル坊に、分身は読解不能な言葉で問いかける。
「ダダダブー、ブー」
そう言って、ベル坊は木の棒で地面に下手くそな絵を描き出す。
「ダブダブ、ダ…」
男鹿と早乙女を真似した二人のやり取りに、漂っていた緊張感が一気に霧散する。
二人のベル坊は別に邪魔しているつもりはない。
それでも傍にいると調子が狂いそうになるので、離れて遊ばせるよう言い聞かせる。
「今、大事な話してるから、ね」
「むこう行って遊んでろ」
「ダッ」
ベル坊は素直に頷くと、わーーっ、と走って分身と遊び始めた。
それを見た早乙女とキヨ子は怪訝な顔つきになった。
「しかし…えらいなついたな…オレは『倒せ』っつったんだぞ?」
「一体、何をしたのじゃ、おぬしらは…?」
「いや…何って…」
「ねぇ…?」
二人は顔を見合わせてから、分身がここまでひどくなついた理由を説明する。
「なんか、ベル坊の分身に羽とか尻尾とか急に生えたから」
「むしったら」
早乙女とキヨ子は知らない。
喧嘩っ早くバカップルな二人に、常識が通じないということを。
「「むしったの!?」」
真面目な話だと思ったのに、いきなり右斜め上へ話が進んだことで、思わずつっこんでしまう。
「なんか…こうなった…」
なんでこうなったのか困惑しているのは二人も同じのようで、眉をひそめている。
親代わりの二人も含め、いまいちこの状況を理解していない。
ベル坊と分身は楽しそうに追いかけっこをしていた。
バブ107
オレとこいつが…
悪魔とのシンクロ率を防ぐための紋章術を、男鹿が独自に編み出した新必殺技"魔王の烙印"。
それは、殴りたい相手にゼブルスペルを刻み込んでしこたま殴ると、殴ったぶんだけ爆発力が増すという凶悪な技であった。
そして――ヘカドスは戦闘不能に陥り、意識は完全に暗闇に落ちた。
とてつもない大威力にヒルダでさえも忘我する。
――す…すげぇ…これが男鹿の新必殺技かよ…!!今までフワフワやってたのとはわけが違うぜ…!!
古市は息を呑む。
最初見た時は、残虐かつ非道な技かと思ったが……それでも柱師団の一人を倒しただけで掛け値なしの賞賛と驚愕に値することである。
――こいつ…マジでマジメに修業してきやがった…!!
「ダッ」
「いぇい」
ヘカドスを倒したにもかかわらず嬉しがる素振りを見せない男鹿の横で、響古とベル坊は陽気にハイタッチする。
――これまで散々、響古のスゴイところを見てきたが……初めてだ、刀を戦う姿なんて。
――アレって間違いなく本物だよな…模造刀とかじゃなくて……。
刀の柄に手をかけ、いつでも抜き打てる構えを崩さない。
一瞬の油断で一刀両断される。
息を呑むような達人技に、暴力的なまでの必殺技。
つけ入る隙のない両者の絶妙な連携。
ヒルダは人知れず、男鹿に視線を投げた。
――…この短期間で、ここまで坊っちゃまの力を使いこなすとは――…やはり、この男…計り知れん。
この短期間で、ここまでベル坊の力を使いこなす男鹿のポテンシャルに軽く面食らいながらも、ひそかにおののく。
古市が笑顔をつくって、二人のもとへ駆け寄った。
「男鹿っ、やったな、おいっ、頼もしいじゃねーか!!」
「おう」
「つか、もう人間じゃねーだろ、お前っ!!」
「もうっ、古市ってば失礼ねっ。あたしと辰巳はれっきとした人間だから」
言い切る直前、ラミアが響古の胸に飛び込んだ。
安心しきったように、魔界の少女は麗しき姉に体重を預ける。
「お姉様……っ」
「ラ、ラミアちゃん…!?」
響古は混乱しているのか、胸の中の少女と男鹿の顔をせわしなく見比べていた。
男鹿がやれやれといった調子で頷いてやると、踏ん切りがついたように、ぎゅっと強く抱きしめ返す。
「――フン。まぁまぁね…ヒルダ姉様一人でも勝てたけど」
ラミアは顔を上げると、男鹿の方を気にする素振りを見せた。
が、すぐに顔を背けて皮肉と共に告げる。
「てゆーか、遅いのよ!!バーカ」
まぁ、実を言えば。
強くなったことは理解できなくもない。
だが、認めるのはどうも気恥ずかしい。
「そりゃ悪かったな」
「ダー」
「ハハ」
だから、男鹿達はわざと気づかないふりをした。
「石矢魔の連中がお前らの為にいろいろ頑張ってくれたんだぜ」
「あん?」
「石矢魔の連中が?」
古市の思いがけない言葉。
二人は驚いた。
「お前と響古と邦枝先輩がやられたって聞いて目の色変えて――…」
と言ってから、彼は二人と一緒に修業をしに行った葵の行方を聞き出す。
「――ってそーだよ、二人とも!!邦枝先輩はっっっ!!?」
「声、でけーな…」
業を煮やして怒鳴りつけるような古市の声に、男鹿は顔をしかめた。
「どこ!?どこよ!!一緒じゃないの!!?」
「オレと響古だけ先にアランドロンで来たんだよ」
手摺から身を乗り出して必死に葵を探す古市がこちらを向いた。
「おう、なんだ、そのカオ」
「ムカつくわね。人がせっかく来たってのに」
その顔は冷めたような、期待外れの表情していて、
「新必殺技叩きこむぞコラ」
ムカついた二人は静かな怒りを込める。
「お喋りはそこまでだ」
その時、遅れて二人のもとにやって来たヒルダが諫める。
「見ろ。奴が動くぞ」
「ちっ。油断しやがって…」
仲間が一人倒されたというのにナーガは表情一つ動かさず、グラフェルは舌打ちをする。
「"水竜王"ナーガ。あの小さい方に気をつけろ」
いかにも凶悪そうなグラフェルではなく、小柄なナーガに視線を見据えたまま警告する。
見かけは幼い少年だが、中身はベヘモット柱師団に所属する悪魔だ。
「奴は柱爵。柱将ヘカドスや横のグラフェルとは比べ物にならん。柱師団が武闘派と恐れらる理由が、すぐに判ろう。ここは三人で――…」
そう言って、早乙女は木の棒で地面に男鹿とベル坊を描き出す。
ベル坊から与えられる魔力を己の体内で変換し、初めて力を発揮する。
簡単な図を描いてわかりやすく説明し、キヨ子もそれに加わる。
「当然、悪魔と人間のシンクロ度合が高ければ高い程、引き出す魔力も大きくなる」
「だが、一つ気をつけなくちゃならねぇ事がある」
早乙女はそこで言葉を切ると、キヨ子が頷いて孫娘に話しかける。
「響古、おぬしは実際に経験してわかると思うが、契約の仕組みもわからず未熟なまま悪魔の力を使えばどうなる?」
「……はい。悪魔の力は契約者の思いに応えるため、魔力を送り込みます。それこそ、契約者の身体と精神が壊れても」
一瞬、言いにくそうに口ごもってから響古は答える。
「あたしも何度か、力に呑まれて暴走した事があります」
さらに早乙女とキヨ子は念のため付け足す。
「――…シンクロ度合いが上がるという事は」
「……そう。それだけ悪魔に近くなるという事だ」
これこそが特別コーチに選ばれた二人が悪魔の力の使い方を教えた理由。
注ぎ込まれ増大された魔力が契約者の魂と同化して、いずれその存在を喰らう。
「お前、紋章が全身に広がった事があると言ったな」
「あ?」
それは聖石矢魔とのバレーボール勝負後に起こった出来事。
帝毛を引きつれて乱入した霧矢を全力のゼブルブラストで一網打尽。
その時、男鹿の右手と響古の左手から取り巻いて回り、高速で腕を侵食していった蠅王紋は、二人の顔にまで達していた。
「そりゃ、本物の危険信号だ。悪魔化が進めば人間に戻れなくなってたトコだぞ」
「本来、それを悪魔に魂を売るという事じゃ」
「オレらが今から教える『紋章術』ってのは、そうならない為の術と言ってもいい」
ここからが本番だと告げる特別コーチに、男鹿と響古は表情を引き締める。
「アダ」
横で、ベル坊が顎に手を当てて神妙な表情で頷く。
「ダブダダ、アダーダ」
「δθБ?」
神妙な表情で告げるベル坊に、分身は読解不能な言葉で問いかける。
「ダダダブー、ブー」
そう言って、ベル坊は木の棒で地面に下手くそな絵を描き出す。
「ダブダブ、ダ…」
男鹿と早乙女を真似した二人のやり取りに、漂っていた緊張感が一気に霧散する。
二人のベル坊は別に邪魔しているつもりはない。
それでも傍にいると調子が狂いそうになるので、離れて遊ばせるよう言い聞かせる。
「今、大事な話してるから、ね」
「むこう行って遊んでろ」
「ダッ」
ベル坊は素直に頷くと、わーーっ、と走って分身と遊び始めた。
それを見た早乙女とキヨ子は怪訝な顔つきになった。
「しかし…えらいなついたな…オレは『倒せ』っつったんだぞ?」
「一体、何をしたのじゃ、おぬしらは…?」
「いや…何って…」
「ねぇ…?」
二人は顔を見合わせてから、分身がここまでひどくなついた理由を説明する。
「なんか、ベル坊の分身に羽とか尻尾とか急に生えたから」
「むしったら」
早乙女とキヨ子は知らない。
喧嘩っ早くバカップルな二人に、常識が通じないということを。
「「むしったの!?」」
真面目な話だと思ったのに、いきなり右斜め上へ話が進んだことで、思わずつっこんでしまう。
「なんか…こうなった…」
なんでこうなったのか困惑しているのは二人も同じのようで、眉をひそめている。
親代わりの二人も含め、いまいちこの状況を理解していない。
ベル坊と分身は楽しそうに追いかけっこをしていた。
バブ107
オレとこいつが…
悪魔とのシンクロ率を防ぐための紋章術を、男鹿が独自に編み出した新必殺技"魔王の烙印"。
それは、殴りたい相手にゼブルスペルを刻み込んでしこたま殴ると、殴ったぶんだけ爆発力が増すという凶悪な技であった。
そして――ヘカドスは戦闘不能に陥り、意識は完全に暗闇に落ちた。
とてつもない大威力にヒルダでさえも忘我する。
――す…すげぇ…これが男鹿の新必殺技かよ…!!今までフワフワやってたのとはわけが違うぜ…!!
古市は息を呑む。
最初見た時は、残虐かつ非道な技かと思ったが……それでも柱師団の一人を倒しただけで掛け値なしの賞賛と驚愕に値することである。
――こいつ…マジでマジメに修業してきやがった…!!
「ダッ」
「いぇい」
ヘカドスを倒したにもかかわらず嬉しがる素振りを見せない男鹿の横で、響古とベル坊は陽気にハイタッチする。
――これまで散々、響古のスゴイところを見てきたが……初めてだ、刀を戦う姿なんて。
――アレって間違いなく本物だよな…模造刀とかじゃなくて……。
刀の柄に手をかけ、いつでも抜き打てる構えを崩さない。
一瞬の油断で一刀両断される。
息を呑むような達人技に、暴力的なまでの必殺技。
つけ入る隙のない両者の絶妙な連携。
ヒルダは人知れず、男鹿に視線を投げた。
――…この短期間で、ここまで坊っちゃまの力を使いこなすとは――…やはり、この男…計り知れん。
この短期間で、ここまでベル坊の力を使いこなす男鹿のポテンシャルに軽く面食らいながらも、ひそかにおののく。
古市が笑顔をつくって、二人のもとへ駆け寄った。
「男鹿っ、やったな、おいっ、頼もしいじゃねーか!!」
「おう」
「つか、もう人間じゃねーだろ、お前っ!!」
「もうっ、古市ってば失礼ねっ。あたしと辰巳はれっきとした人間だから」
言い切る直前、ラミアが響古の胸に飛び込んだ。
安心しきったように、魔界の少女は麗しき姉に体重を預ける。
「お姉様……っ」
「ラ、ラミアちゃん…!?」
響古は混乱しているのか、胸の中の少女と男鹿の顔をせわしなく見比べていた。
男鹿がやれやれといった調子で頷いてやると、踏ん切りがついたように、ぎゅっと強く抱きしめ返す。
「――フン。まぁまぁね…ヒルダ姉様一人でも勝てたけど」
ラミアは顔を上げると、男鹿の方を気にする素振りを見せた。
が、すぐに顔を背けて皮肉と共に告げる。
「てゆーか、遅いのよ!!バーカ」
まぁ、実を言えば。
強くなったことは理解できなくもない。
だが、認めるのはどうも気恥ずかしい。
「そりゃ悪かったな」
「ダー」
「ハハ」
だから、男鹿達はわざと気づかないふりをした。
「石矢魔の連中がお前らの為にいろいろ頑張ってくれたんだぜ」
「あん?」
「石矢魔の連中が?」
古市の思いがけない言葉。
二人は驚いた。
「お前と響古と邦枝先輩がやられたって聞いて目の色変えて――…」
と言ってから、彼は二人と一緒に修業をしに行った葵の行方を聞き出す。
「――ってそーだよ、二人とも!!邦枝先輩はっっっ!!?」
「声、でけーな…」
業を煮やして怒鳴りつけるような古市の声に、男鹿は顔をしかめた。
「どこ!?どこよ!!一緒じゃないの!!?」
「オレと響古だけ先にアランドロンで来たんだよ」
手摺から身を乗り出して必死に葵を探す古市がこちらを向いた。
「おう、なんだ、そのカオ」
「ムカつくわね。人がせっかく来たってのに」
その顔は冷めたような、期待外れの表情していて、
「新必殺技叩きこむぞコラ」
ムカついた二人は静かな怒りを込める。
「お喋りはそこまでだ」
その時、遅れて二人のもとにやって来たヒルダが諫める。
「見ろ。奴が動くぞ」
「ちっ。油断しやがって…」
仲間が一人倒されたというのにナーガは表情一つ動かさず、グラフェルは舌打ちをする。
「"水竜王"ナーガ。あの小さい方に気をつけろ」
いかにも凶悪そうなグラフェルではなく、小柄なナーガに視線を見据えたまま警告する。
見かけは幼い少年だが、中身はベヘモット柱師団に所属する悪魔だ。
「奴は柱爵。柱将ヘカドスや横のグラフェルとは比べ物にならん。柱師団が武闘派と恐れらる理由が、すぐに判ろう。ここは三人で――…」