バブ23
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バブ23
登場!!
「ただいまー」
『古市』と表札が掲げられた自宅に帰ってきたのは、南の島にバカンスに行ってきた彼の家族であった。
「はーー、疲れた。やっぱり、こっちは蒸し暑いわねー」
すっかり重くなった荷物や土産の袋を置き、母親は息子を呼ぶ。
「貴之ーー、貴之!!いるんでしょ!?降りてきなさい」
しかし、いくら呼びかけても、なんの返事も反応もこない。
不思議に思った父、母、妹は居間へと入っていった。
そこに、古市の姿を確認する。
「何だ、いるんじゃない。電気もつけないで」
「お前なー、心配したんだぞ。いきなり一人で、帰ったりして…」
「お兄ちゃんの荷物、私が持ってきたんだよ!?」
既に南の島から帰った古市が出迎えてくれた。
「…お…」
「お帰りなさいませ」
正座して話しかける――のだが、何故かその声はぎこちない。
アランドロンは泰然自若 として、帰ってきた古市の家族に微笑みかける。
――誰!?
我が物顔でソファに座る謎のおっさんに、両親と妹は大口を開けて目を剥いた。
アランドロンは、ヒルダが男鹿家に訪れた行動を彷彿とさせるように正座したまま三つ指をつき、深々と頭を下げる。
「――改めまして、今日から、こちらでお世話になります。バティム・ド・エムナ・アランドロンと申します。ふつつか者ですが、よろしくお願いします」
居間は微妙な緊迫の雰囲気に包まれた。
古市はダラダラと冷や汗を流して、誤解を招くような挨拶を止めさせようとする。
「この国では、こうするものだと聞きました」
どこからか仕入れてきた情報なのか一切不明だが、古市は即座に言い返す。
「まてって!!まったく意味がわからんだろーが!!しねーよ!!お世話なんて!!何言ってんの!!帰れ!!」
大声をあげて断言するが、アランドロンは余裕の笑みで言い放つ。
「フフフ…何を今さら……あんな事までしていおて…」
「あんな事ってなんだーーっっ!!?タチわりーな、お前」
ここまで意味が違うとは、日本語って恐ろしい。
「見ろっ!!全員、固まるどころか、おびえてるだろーが」
見れば、両親も妹も顔を青ざめて倫理的に不適切な関係を邪推する。
家族から注がれる視線が痛かった。
(一人だけ、先に帰って…)
(一体、何を…)
息子の将来を不安に感じる両親。
「違うからっ!!」
(タチ…)
知りたくもなかった、兄の同性恋愛に怯える妹。
いやらしいものを見まいとする、潔癖症の乙女のような仕草なのが凄く気になる。
「そーゆうんじゃないから!!最悪の想像やめてっっ!!」
不埒な想像をする家族に向けて、古市は必死に訴える。
微妙に緊迫した雰囲気を強引にスルーして、アランドロンが口を開く。
「――いえね…我々がこちらに来て、早、数か月。私も、そろそろどこかに腰をおちつけねば…と」
にこやかに微笑みながら話す。
だが、何故だろう。
ちっともピンチを脱した気がしない。
「しかし…主君と同じ家に暮らすなど畏れ多い。そう思っていた矢先…先日、あなたが私の中に入ってきた時に、感じたのです」
――南の島にいた古市を、次元転送によって自分の身体に取り込み、日本へと連れていった時、アランドロンは確信した。
――彼にだったら、自分の秘密が知られているし、一緒に暮らしていいかもしれない。
「あぁ、この人になら、この身を預けてもいいのでは…と」
ぽっと頬を赤く染めながら言葉を紡ぐアランドロン。
その一瞬で、古市は致命傷を負わされた。
完全に男同士の爛れた展開に両親と妹は大量の汗を流し、どん引き。
『…………っ』
もう、とても収拾はつきそうになかった。
「ぶっ殺すぞ、てめーー!!!」
古市の魂の叫びがご近所にも響き渡る。
BL疑惑が浮上する古市家で、人の不幸を娯楽にする妖しい微笑みを浮かべていた人物がいた。
「んっふふふ、来て正解だった…」
漆黒の相貌を愉悦に染めている美少女――響古が木の幹に腰かけ、先程の一部始終をしっかり見ていた。
そう、冒頭のアランドロンの挨拶は響古が仕組んだことだった。
事の発端はプールからの帰途、アランドロンが響古に相談をしてきた。
「――え?住む家を探してほしいって?」
響古が住むアパートにやって来たアランドロンは部屋に入るなり、いきなり正座をして深々と頭を下げる。
「はい。我々がこちらに来て早、数か月。私も、そろそろどこかに腰をおちつけねば…と。しかし…主君と同じ家に暮らすなど畏れ多い」
「はぁ……」
やたら畏まった口調で言われ、響古は覇気のない返事をした。
そして溜め息をつく。
(仕方ない)
彼はただの人間ではない――悪魔だ。
頼る相手が極端に少なく、しかも限られている。
こうまで言われて、断るわけにはいかない。
「……わかった。できる限りの協力はする」
「ありがとうございます。篠木殿」
ほっと安堵の溜め息をつくアランドロン。
義侠心 に駆られて請け合ったが、さてどうするかと考える。
ふと、響古の脳裏にある人物の顔が浮かんだ。
自分と関わりのある少年で、おまけに最適だ。
「――…もう一人、とっておきの適任がいたわ」
響古が小声でつぶやいた。
これは、人を弄ぶ悪魔の囁きだ。
男鹿に見せる可愛らしい仕草とは真逆の、不適な笑顔。
響古の口許に浮かぶ微笑みが、彼女の意地悪さを浮き彫りにしていた。
彼を追いつめ、困らせることが愉 しいのだ。
そして冒頭に至る。
蝉の鳴き声が鬱陶しいくらいに響く中、男鹿はソファの上で寝転び、響古は団扇で、隣に寝転ぶベル坊と自分に風を送っている。
「………あつい…あついあついあつい…」
三人とも、既に汗だくでダウンしていた。
「なーに?この異様な暑さは」
「まだ午前中だってのに…つーか、うるせぇ、セミ。ぶっ殺すぞ」
手の中のリモコンを動かそうとして、画面に表示された室内温度に仰天する。
「エアコンもききやしねぇ…――って38℃!?マジで!!?」
「ウソでしょ!?エアコンでさえもダメなの!?」
つられて響古も覗き込み、規格外の温度にびっくりする。
男鹿は強烈な気温の上昇にめまいを覚え、これも地球温暖化の影響かと考える。
「――…あれか。地球温暖化ってやつか…こりゃ、魔王何もしなくても、人間滅ぶな」
「頼みの綱が扇風機かぁー」
「今さら、扇風機って古くね?誰が使ってんだよ」
「えー。管理人が使ってるよ。『エアコンって身体に悪そーだし。何より、そんなの買うお金ないから』だってさ」
(ちょっとちょっと、何、人の個人事情バラしてんですか。by.管理人)
すると、響古はおもむろに立ち上がって居間を出ていった。
しばらくして意気揚々と持ってきたのは、先程会話に出てきた扇風機である。
「じゃーん!」
「うおっ!?何でオレん家に扇風機が!?」
「アランドロンの次元転送で、ウチの実家から持って来たんだー」
言って、響古は豊かな胸を張る。
「そういえば…お前ん家って、すげー古いところに住んでるっけ?」
実際に見たことはないが、終戦間もない頃に建て直した築数十年という古い家、すぐ裏手には広大な山と森……というのが響古から聞いた話だ。
両親の反対を押し切って、不良校の石矢魔高校に入学し、今はアパートで暮らしている。
「あの次元転送、結構便利だったよ」
コードをプラグに差し、ボタンを押すと、涼しい風が響古に当たる。
「ああ~、涼しい~」
「……おお、涼しい」
男鹿も街灯に引き寄せられる夏の虫のように、ふらふらと扇風機に寄っていく。
扇風機からもたらされる涼しい風に、ほっと表情を緩ませる響古。
そして、そこに誤算があった。
涼しさに気を取られて、周囲の目を気にすることなく、服の乱れに無頓着になっているのだ。
涼しい風にひらひらさせ、前屈みになって胸元から風を中に取り入れようとしたり、服をまくり上げ、お腹の方から空気を取り入れようとする。
それは実にチラチラとチラリズム溢れる光景だった。
「……蝶が舞ってるように見える」
「――え?何か言った、辰巳?」
「い、いや…なんでもない」
慌てて首を横に振る男鹿だが、その響古が見逃すわけがなかった。
「隠さなくてもいいんだから。あ、そっちの方が涼しいから、もっとくっついてもいい?」
いいかと聞きながらも答えを待たず、さらに密着してくる。
胡座をかく男鹿の上に座り直し、豊かな胸をぴったりと押しつけてきた。
危険を察知した時は、もう遅かった。
響古は両手を、男鹿の首に絡めてきた。
「そういう悪ふざけはやめろって何度も言ってるじゃねーか!つーか最近、激しすぎだぞ!?」
「ふざけてないよ。恋人同士で、愛を確かめ合おうってだけじゃない。それだけ辰巳への愛が深いって事だよ」
こちらの反駁 など無視。
普段は意識しないように努めているが、響古は恐ろしくスタイルがいい。
細身のくせに、出るべきところは目の遣り場に困るほど出ている。
ずしりと重そうな胸のふくらみは見事に実った果実のようだし、細い腰から続く曲線の丸みと張りときたら、もはや犯罪と言っていいほど、扇情的だ。
そんな少女と密着し、熱い体温を感じている。
(この状況に流されてはいけない!)
これは自制心との戦いである。
そう決心した男鹿は、猛然と引き離そうと、全力を振り絞る。
しかし、その黒髪の少女は涼しい顔で易々 と抱きつき、それどころか愛しげに頬をすり寄せる。
したい放題だ。
「おはよー。あっついわねー」
「おう、姉き」
「おはようございます、美咲さん」
間延びした挨拶と共に入ってきた姉の美咲は、居間の異様な熱気に飛びのく。
「おはよう、響古ちゃん――って、うおっ!!何、この部屋!!さらに暑っっ」
「あん?」
次に、傍から見ればいちゃつく大胆なカップルに視線を移す。
「……熱いわね」
どことは言いませんが、確かにアツアツです。
恋人を膝に乗せて、人目を気にせず仲睦まじくするバカップル。
今の二人はそうとしか形容できない状態であった。
「おはようございます。どうしました?」
そこに、寝ぼけまなこで、ふわぁ、とあくびをするヒルダが起きてきた。
「ヒルダちゃん」
居間に入った瞬間、あまりの暑さに眠気など吹っ飛んだ。
「――って、暑っっ!!」
「だよね」
眠気も吹っ飛ぶような暑さに叫ぶと美咲が頷き、男鹿と響古は顔を見合わせた。
登場!!
「ただいまー」
『古市』と表札が掲げられた自宅に帰ってきたのは、南の島にバカンスに行ってきた彼の家族であった。
「はーー、疲れた。やっぱり、こっちは蒸し暑いわねー」
すっかり重くなった荷物や土産の袋を置き、母親は息子を呼ぶ。
「貴之ーー、貴之!!いるんでしょ!?降りてきなさい」
しかし、いくら呼びかけても、なんの返事も反応もこない。
不思議に思った父、母、妹は居間へと入っていった。
そこに、古市の姿を確認する。
「何だ、いるんじゃない。電気もつけないで」
「お前なー、心配したんだぞ。いきなり一人で、帰ったりして…」
「お兄ちゃんの荷物、私が持ってきたんだよ!?」
既に南の島から帰った古市が出迎えてくれた。
「…お…」
「お帰りなさいませ」
正座して話しかける――のだが、何故かその声はぎこちない。
アランドロンは
――誰!?
我が物顔でソファに座る謎のおっさんに、両親と妹は大口を開けて目を剥いた。
アランドロンは、ヒルダが男鹿家に訪れた行動を彷彿とさせるように正座したまま三つ指をつき、深々と頭を下げる。
「――改めまして、今日から、こちらでお世話になります。バティム・ド・エムナ・アランドロンと申します。ふつつか者ですが、よろしくお願いします」
居間は微妙な緊迫の雰囲気に包まれた。
古市はダラダラと冷や汗を流して、誤解を招くような挨拶を止めさせようとする。
「この国では、こうするものだと聞きました」
どこからか仕入れてきた情報なのか一切不明だが、古市は即座に言い返す。
「まてって!!まったく意味がわからんだろーが!!しねーよ!!お世話なんて!!何言ってんの!!帰れ!!」
大声をあげて断言するが、アランドロンは余裕の笑みで言い放つ。
「フフフ…何を今さら……あんな事までしていおて…」
「あんな事ってなんだーーっっ!!?タチわりーな、お前」
ここまで意味が違うとは、日本語って恐ろしい。
「見ろっ!!全員、固まるどころか、おびえてるだろーが」
見れば、両親も妹も顔を青ざめて倫理的に不適切な関係を邪推する。
家族から注がれる視線が痛かった。
(一人だけ、先に帰って…)
(一体、何を…)
息子の将来を不安に感じる両親。
「違うからっ!!」
(タチ…)
知りたくもなかった、兄の同性恋愛に怯える妹。
いやらしいものを見まいとする、潔癖症の乙女のような仕草なのが凄く気になる。
「そーゆうんじゃないから!!最悪の想像やめてっっ!!」
不埒な想像をする家族に向けて、古市は必死に訴える。
微妙に緊迫した雰囲気を強引にスルーして、アランドロンが口を開く。
「――いえね…我々がこちらに来て、早、数か月。私も、そろそろどこかに腰をおちつけねば…と」
にこやかに微笑みながら話す。
だが、何故だろう。
ちっともピンチを脱した気がしない。
「しかし…主君と同じ家に暮らすなど畏れ多い。そう思っていた矢先…先日、あなたが私の中に入ってきた時に、感じたのです」
――南の島にいた古市を、次元転送によって自分の身体に取り込み、日本へと連れていった時、アランドロンは確信した。
――彼にだったら、自分の秘密が知られているし、一緒に暮らしていいかもしれない。
「あぁ、この人になら、この身を預けてもいいのでは…と」
ぽっと頬を赤く染めながら言葉を紡ぐアランドロン。
その一瞬で、古市は致命傷を負わされた。
完全に男同士の爛れた展開に両親と妹は大量の汗を流し、どん引き。
『…………っ』
もう、とても収拾はつきそうになかった。
「ぶっ殺すぞ、てめーー!!!」
古市の魂の叫びがご近所にも響き渡る。
BL疑惑が浮上する古市家で、人の不幸を娯楽にする妖しい微笑みを浮かべていた人物がいた。
「んっふふふ、来て正解だった…」
漆黒の相貌を愉悦に染めている美少女――響古が木の幹に腰かけ、先程の一部始終をしっかり見ていた。
そう、冒頭のアランドロンの挨拶は響古が仕組んだことだった。
事の発端はプールからの帰途、アランドロンが響古に相談をしてきた。
「――え?住む家を探してほしいって?」
響古が住むアパートにやって来たアランドロンは部屋に入るなり、いきなり正座をして深々と頭を下げる。
「はい。我々がこちらに来て早、数か月。私も、そろそろどこかに腰をおちつけねば…と。しかし…主君と同じ家に暮らすなど畏れ多い」
「はぁ……」
やたら畏まった口調で言われ、響古は覇気のない返事をした。
そして溜め息をつく。
(仕方ない)
彼はただの人間ではない――悪魔だ。
頼る相手が極端に少なく、しかも限られている。
こうまで言われて、断るわけにはいかない。
「……わかった。できる限りの協力はする」
「ありがとうございます。篠木殿」
ほっと安堵の溜め息をつくアランドロン。
ふと、響古の脳裏にある人物の顔が浮かんだ。
自分と関わりのある少年で、おまけに最適だ。
「――…もう一人、とっておきの適任がいたわ」
響古が小声でつぶやいた。
これは、人を弄ぶ悪魔の囁きだ。
男鹿に見せる可愛らしい仕草とは真逆の、不適な笑顔。
響古の口許に浮かぶ微笑みが、彼女の意地悪さを浮き彫りにしていた。
彼を追いつめ、困らせることが
そして冒頭に至る。
蝉の鳴き声が鬱陶しいくらいに響く中、男鹿はソファの上で寝転び、響古は団扇で、隣に寝転ぶベル坊と自分に風を送っている。
「………あつい…あついあついあつい…」
三人とも、既に汗だくでダウンしていた。
「なーに?この異様な暑さは」
「まだ午前中だってのに…つーか、うるせぇ、セミ。ぶっ殺すぞ」
手の中のリモコンを動かそうとして、画面に表示された室内温度に仰天する。
「エアコンもききやしねぇ…――って38℃!?マジで!!?」
「ウソでしょ!?エアコンでさえもダメなの!?」
つられて響古も覗き込み、規格外の温度にびっくりする。
男鹿は強烈な気温の上昇にめまいを覚え、これも地球温暖化の影響かと考える。
「――…あれか。地球温暖化ってやつか…こりゃ、魔王何もしなくても、人間滅ぶな」
「頼みの綱が扇風機かぁー」
「今さら、扇風機って古くね?誰が使ってんだよ」
「えー。管理人が使ってるよ。『エアコンって身体に悪そーだし。何より、そんなの買うお金ないから』だってさ」
(ちょっとちょっと、何、人の個人事情バラしてんですか。by.管理人)
すると、響古はおもむろに立ち上がって居間を出ていった。
しばらくして意気揚々と持ってきたのは、先程会話に出てきた扇風機である。
「じゃーん!」
「うおっ!?何でオレん家に扇風機が!?」
「アランドロンの次元転送で、ウチの実家から持って来たんだー」
言って、響古は豊かな胸を張る。
「そういえば…お前ん家って、すげー古いところに住んでるっけ?」
実際に見たことはないが、終戦間もない頃に建て直した築数十年という古い家、すぐ裏手には広大な山と森……というのが響古から聞いた話だ。
両親の反対を押し切って、不良校の石矢魔高校に入学し、今はアパートで暮らしている。
「あの次元転送、結構便利だったよ」
コードをプラグに差し、ボタンを押すと、涼しい風が響古に当たる。
「ああ~、涼しい~」
「……おお、涼しい」
男鹿も街灯に引き寄せられる夏の虫のように、ふらふらと扇風機に寄っていく。
扇風機からもたらされる涼しい風に、ほっと表情を緩ませる響古。
そして、そこに誤算があった。
涼しさに気を取られて、周囲の目を気にすることなく、服の乱れに無頓着になっているのだ。
涼しい風にひらひらさせ、前屈みになって胸元から風を中に取り入れようとしたり、服をまくり上げ、お腹の方から空気を取り入れようとする。
それは実にチラチラとチラリズム溢れる光景だった。
「……蝶が舞ってるように見える」
「――え?何か言った、辰巳?」
「い、いや…なんでもない」
慌てて首を横に振る男鹿だが、その響古が見逃すわけがなかった。
「隠さなくてもいいんだから。あ、そっちの方が涼しいから、もっとくっついてもいい?」
いいかと聞きながらも答えを待たず、さらに密着してくる。
胡座をかく男鹿の上に座り直し、豊かな胸をぴったりと押しつけてきた。
危険を察知した時は、もう遅かった。
響古は両手を、男鹿の首に絡めてきた。
「そういう悪ふざけはやめろって何度も言ってるじゃねーか!つーか最近、激しすぎだぞ!?」
「ふざけてないよ。恋人同士で、愛を確かめ合おうってだけじゃない。それだけ辰巳への愛が深いって事だよ」
こちらの
普段は意識しないように努めているが、響古は恐ろしくスタイルがいい。
細身のくせに、出るべきところは目の遣り場に困るほど出ている。
ずしりと重そうな胸のふくらみは見事に実った果実のようだし、細い腰から続く曲線の丸みと張りときたら、もはや犯罪と言っていいほど、扇情的だ。
そんな少女と密着し、熱い体温を感じている。
(この状況に流されてはいけない!)
これは自制心との戦いである。
そう決心した男鹿は、猛然と引き離そうと、全力を振り絞る。
しかし、その黒髪の少女は涼しい顔で
したい放題だ。
「おはよー。あっついわねー」
「おう、姉き」
「おはようございます、美咲さん」
間延びした挨拶と共に入ってきた姉の美咲は、居間の異様な熱気に飛びのく。
「おはよう、響古ちゃん――って、うおっ!!何、この部屋!!さらに暑っっ」
「あん?」
次に、傍から見ればいちゃつく大胆なカップルに視線を移す。
「……熱いわね」
どことは言いませんが、確かにアツアツです。
恋人を膝に乗せて、人目を気にせず仲睦まじくするバカップル。
今の二人はそうとしか形容できない状態であった。
「おはようございます。どうしました?」
そこに、寝ぼけまなこで、ふわぁ、とあくびをするヒルダが起きてきた。
「ヒルダちゃん」
居間に入った瞬間、あまりの暑さに眠気など吹っ飛んだ。
「――って、暑っっ!!」
「だよね」
眠気も吹っ飛ぶような暑さに叫ぶと美咲が頷き、男鹿と響古は顔を見合わせた。