バブ95
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祖父に呼ばれて部屋に足を踏み入れてすぐに、男鹿は立ち尽くす羽目に陥った。
「悪魔の力………?」
声を荒げることはなかったが、問いかける男鹿の口調は、持ち前の傲岸さが少し刃こぼれようにも聞こえた。
「じーさん…なんで、その事…オレ、話してねーぞ?」
「――ふん。そんなもん、見れば分かる。最初に逢(オ)うた時から気づいとったわい」
言い含めるような口調で返した祖父は眼鏡を外し、新聞を折り畳む。
「ずい分、難儀なもんを背負った悪タレじゃとは思ったが…そのわりにのほほんとしてあきれたもんじゃ。ついてきなさい」
「マジか…?」
見事に裏事情を看破されて、男鹿は先程とは別の意味合いで呆気に取られた。
不意に、脳裏に響古の存在が横切る。
「ちょっと待てよ、じーさんが悪魔の力を知ってるって響古は……」
「響古ちゃんには何も言うとらん。むしろ、蝶よ花よと育てられたあの子も結局、こちら側に足を踏み入れるとは……血は争えんのう…」
随分と突っ込んだ会話を交わしている二人。
関係者が聞けば飛び上がって驚きそうな内容だが、誰もいない目立たぬ場所にいるので、断片的に聞こえてもなんら心配はない。
「――ま、次に逢うた時には、ちょっとはマシなツラするようになっとったがの」
浴場に諫冬の控えめな声が響き、響古は咄嗟に答えを返すことができなかった。
何を言われたのか、理解できなかったからだ。
「悪魔って…いさちゃん……見えたの?」
絶句する響古の代わりに、葵が聞き返す。
彼女が口にしたのは確かに、幼い赤ん坊の正体が魔王の血族だと見抜いた言葉。
「…うん、たまに…悪魔に憑かれた人…見た事あるから…」
「悪魔が見える…ねぇ、いさちゃん、それってあらゆるものを見透したり、時には遠い過去や未来さえも映す事ができたりしない?」
響古は戦慄を覚えながら質問した。
「え…そこまで便利じゃないよ…」
「そうなの?」
これもまた、予想外の答えだった。
しかし、予想外の事情だからといって、受け入れるかどうかは別問題だ。
「――…霊媒体質…だったよね…悪魔とかも分かるんだ…」
「…多分…」
二人の視線を集める諫冬の声音に、驚きが混ざる。
「――…でも、あんなにすごいのは初めて見る…なんていうか…今まで見てきたのとは、格が違うっていうか…」
(魔王ですから…)
(魔王だしね…)
葵がちらっと視線を投げ、響古は苦笑を浮かべる。
「あれ…?でも、いさちゃん、お祓いも出来るのよね…?」
「え…?う…うん」
二人の説明を聞いて、響古は頷いた。
霊媒体質でお祓いもできる、かなり便利な能力ではないだろうか。
(あたしの能力とは違うんだな…でも、悪魔とかも分かってお祓いもできるんなら、もしかして退治できるんじゃ……)
すると、弾けるように思いつきを生み出した葵が詰め寄った。
「ねっ!!もしかして、悪魔をやっつける方法とかも知ってるの!?」
「え?」
「だったら教えて!!」
甘えの微塵もない、悪ふざけの欠片もない、今にも斬りつけてきそうな気迫に染まった眼差しだった。
「――…葵…ちゃん…?」
戸惑いに言葉を詰まらせる諫冬とは対照的に、響古は強い意志が込められた彼女の瞳をまっすぐ見つめた。
郊外にそびえ立つ高層マンション。
厳重なオートロックで守られたマンションの出入りは、簡素な一軒家に慣れた古市達には敷居が高かった。
「何してんだ、とっとと入れよ。べつにもてなしゃしねーけどよ」
「こ…ここ…アンタのうち…?ヘリポートあんだけど…」
「あ?こんなしみったれたマンションが家なわけねーだろ。借家だ、借家。高校通ってる間、使ってるだけだよ」
「一人暮らし!?」
エレーベーターに乗り込み、目当ての階まで上がる。
「ネトゲで例のガキ、捜すんだろ?"黒雪姫"ならともかく、てめーらを招き入れんのは不本意だが…ウチなら一通り揃ってるからな」
「どこまで登るのだ…?」
「うむ」
「たかーい」
「けっ…要するに自慢してーだけだろ?小っちぇーやろーだ」
「神崎君ちでだって、出来るもんねぇ」
規則正しく動いて古市達を運ぶエレベーター内で、外の夜景に目を奪われたり、落ち着かない様子でいたり、腕を組んで待つ。
会話の間にもエレベーターランプは無感情に階数を上げていき、25が点灯するまで従順に稼働する。
「着いたぞ」
間の抜けたチャイムが鳴って、目的の階に着いたことを知らせた。
「どの部屋だよ?」
「ゲーム部屋は2501~2505だ」
「は?」
「ほい、カギ」
「おいおい、てめー、まさか…このフロア、丸々てめーのもんとか言うじゃねーだろな!?」
途方に暮れたように突っ立ち、
「つか、ゲーム部屋ってなんだ?」
先程の発言に疑問符を浮かべる。
「バーカ」
だが、姫川は躊躇なく一蹴、とんでもない事実を言い放った。
「こっから上全部だ、ハゲ。とにかく手分けして捜すんだから。数がいんだろ」
このマンションの最上階フロア全ては彼のものだった。
つまりエレベーターホールが玄関ということになる。
他の階なら廊下として使用されているような、しかしここでは玄関として使われているだだっ広い空間に足を踏み入れている。
――…ひくわー。
「これだから、金持ちってやつは…」
一般庶民には理解できない金持ちの考えに、一同は辟易する。
彼が所有する中のゲーム部屋に入り、電気を点ける。
「以前、知り合いとネトゲにハマってた時期があってな。一部屋6人、全部で30人が同時にプレイ出来るようになってる。もう、ほとんど使われてないがな…」
「ちょっ…ちょっと待ってよ!!ネットゲームなんて私、やった事ないわよ?どーやって捜すのかも分かんないし…」
するとここで、寧々が口を挟んだ。
ネットゲームなんてやったことないと申告する。
「あ?」
それに伴い、他の面々も名乗りをあげる。
「あっ…オレもっス」
「ウチもウチも」
「オレもだ」
「はぁ!?」
次々と古市、由加、城山が声をあげ、
「だからネットゲームって何よ?」
そもそも人間ではないラミアはゲームという遊びを知らない。
「てめーら、何しに来たんだよ――…」
「とりあえず、上がろう」
「おじゃましまーす」
遠慮を知らない様子で皆は靴を脱いで中に入り、
「うぉーーー。ここも超たけーー」
窓から一望できる、絶好の見晴らしのよさを眺める。
まるでホテルのスイートルームのような部屋だった。
「――いやいや、姫ちゃん。実際、難しいと思うよー?それはかなり…姫ちゃんがどういうつもりかは知らないけど…」
古市達が夜景を眺める横で夏目は異論を唱え、
「わー、なんもないねー」
「おっ、ハムみっけ」
おもむろに冷蔵庫を開け、それに神崎も加わる。
「匿名が基本のオンラインゲームで、見ず知らずの人間を特定するなんて、ほぼ不可能に近いからね」
言いながら、見た限りの悲惨な冷蔵庫を好き放題に漁る。
「といいつつ、人んちの冷蔵庫あさってんじゃねーよ。盗賊か、てめーら」
「大体、相手がどんなゲームやってるかも分かんないわけでしょ?」
呆れた姫川の言葉を聞き流しながら、夏目は話を続ける。
「一体、世の中にオンラインゲームのタイトルが、いくつあると思ってんの?軽く3桁はいくよ?」
膨大な量のオンラインゲームから、特定の人物だけを見つけるのは至難の業だと告げ、冷蔵庫から取り出したジュース瓶の蓋を開けると、一口飲む。
「――ま、せめてハンドルネームだけでも知ってりゃ別だけどね…」
「ハンドルネームって…?」
「おそらく、運転免許証の事じゃないか?」
オンラインの見当違いな会話をする由加と城山にツッコミを浴びせる。
「ちがうよ。ダメだコイツら。ネット上の名前、ペンネームみたいなもん」
「悪魔の力………?」
声を荒げることはなかったが、問いかける男鹿の口調は、持ち前の傲岸さが少し刃こぼれようにも聞こえた。
「じーさん…なんで、その事…オレ、話してねーぞ?」
「――ふん。そんなもん、見れば分かる。最初に逢(オ)うた時から気づいとったわい」
言い含めるような口調で返した祖父は眼鏡を外し、新聞を折り畳む。
「ずい分、難儀なもんを背負った悪タレじゃとは思ったが…そのわりにのほほんとしてあきれたもんじゃ。ついてきなさい」
「マジか…?」
見事に裏事情を看破されて、男鹿は先程とは別の意味合いで呆気に取られた。
不意に、脳裏に響古の存在が横切る。
「ちょっと待てよ、じーさんが悪魔の力を知ってるって響古は……」
「響古ちゃんには何も言うとらん。むしろ、蝶よ花よと育てられたあの子も結局、こちら側に足を踏み入れるとは……血は争えんのう…」
随分と突っ込んだ会話を交わしている二人。
関係者が聞けば飛び上がって驚きそうな内容だが、誰もいない目立たぬ場所にいるので、断片的に聞こえてもなんら心配はない。
「――ま、次に逢うた時には、ちょっとはマシなツラするようになっとったがの」
浴場に諫冬の控えめな声が響き、響古は咄嗟に答えを返すことができなかった。
何を言われたのか、理解できなかったからだ。
「悪魔って…いさちゃん……見えたの?」
絶句する響古の代わりに、葵が聞き返す。
彼女が口にしたのは確かに、幼い赤ん坊の正体が魔王の血族だと見抜いた言葉。
「…うん、たまに…悪魔に憑かれた人…見た事あるから…」
「悪魔が見える…ねぇ、いさちゃん、それってあらゆるものを見透したり、時には遠い過去や未来さえも映す事ができたりしない?」
響古は戦慄を覚えながら質問した。
「え…そこまで便利じゃないよ…」
「そうなの?」
これもまた、予想外の答えだった。
しかし、予想外の事情だからといって、受け入れるかどうかは別問題だ。
「――…霊媒体質…だったよね…悪魔とかも分かるんだ…」
「…多分…」
二人の視線を集める諫冬の声音に、驚きが混ざる。
「――…でも、あんなにすごいのは初めて見る…なんていうか…今まで見てきたのとは、格が違うっていうか…」
(魔王ですから…)
(魔王だしね…)
葵がちらっと視線を投げ、響古は苦笑を浮かべる。
「あれ…?でも、いさちゃん、お祓いも出来るのよね…?」
「え…?う…うん」
二人の説明を聞いて、響古は頷いた。
霊媒体質でお祓いもできる、かなり便利な能力ではないだろうか。
(あたしの能力とは違うんだな…でも、悪魔とかも分かってお祓いもできるんなら、もしかして退治できるんじゃ……)
すると、弾けるように思いつきを生み出した葵が詰め寄った。
「ねっ!!もしかして、悪魔をやっつける方法とかも知ってるの!?」
「え?」
「だったら教えて!!」
甘えの微塵もない、悪ふざけの欠片もない、今にも斬りつけてきそうな気迫に染まった眼差しだった。
「――…葵…ちゃん…?」
戸惑いに言葉を詰まらせる諫冬とは対照的に、響古は強い意志が込められた彼女の瞳をまっすぐ見つめた。
郊外にそびえ立つ高層マンション。
厳重なオートロックで守られたマンションの出入りは、簡素な一軒家に慣れた古市達には敷居が高かった。
「何してんだ、とっとと入れよ。べつにもてなしゃしねーけどよ」
「こ…ここ…アンタのうち…?ヘリポートあんだけど…」
「あ?こんなしみったれたマンションが家なわけねーだろ。借家だ、借家。高校通ってる間、使ってるだけだよ」
「一人暮らし!?」
エレーベーターに乗り込み、目当ての階まで上がる。
「ネトゲで例のガキ、捜すんだろ?"黒雪姫"ならともかく、てめーらを招き入れんのは不本意だが…ウチなら一通り揃ってるからな」
「どこまで登るのだ…?」
「うむ」
「たかーい」
「けっ…要するに自慢してーだけだろ?小っちぇーやろーだ」
「神崎君ちでだって、出来るもんねぇ」
規則正しく動いて古市達を運ぶエレベーター内で、外の夜景に目を奪われたり、落ち着かない様子でいたり、腕を組んで待つ。
会話の間にもエレベーターランプは無感情に階数を上げていき、25が点灯するまで従順に稼働する。
「着いたぞ」
間の抜けたチャイムが鳴って、目的の階に着いたことを知らせた。
「どの部屋だよ?」
「ゲーム部屋は2501~2505だ」
「は?」
「ほい、カギ」
「おいおい、てめー、まさか…このフロア、丸々てめーのもんとか言うじゃねーだろな!?」
途方に暮れたように突っ立ち、
「つか、ゲーム部屋ってなんだ?」
先程の発言に疑問符を浮かべる。
「バーカ」
だが、姫川は躊躇なく一蹴、とんでもない事実を言い放った。
「こっから上全部だ、ハゲ。とにかく手分けして捜すんだから。数がいんだろ」
このマンションの最上階フロア全ては彼のものだった。
つまりエレベーターホールが玄関ということになる。
他の階なら廊下として使用されているような、しかしここでは玄関として使われているだだっ広い空間に足を踏み入れている。
――…ひくわー。
「これだから、金持ちってやつは…」
一般庶民には理解できない金持ちの考えに、一同は辟易する。
彼が所有する中のゲーム部屋に入り、電気を点ける。
「以前、知り合いとネトゲにハマってた時期があってな。一部屋6人、全部で30人が同時にプレイ出来るようになってる。もう、ほとんど使われてないがな…」
「ちょっ…ちょっと待ってよ!!ネットゲームなんて私、やった事ないわよ?どーやって捜すのかも分かんないし…」
するとここで、寧々が口を挟んだ。
ネットゲームなんてやったことないと申告する。
「あ?」
それに伴い、他の面々も名乗りをあげる。
「あっ…オレもっス」
「ウチもウチも」
「オレもだ」
「はぁ!?」
次々と古市、由加、城山が声をあげ、
「だからネットゲームって何よ?」
そもそも人間ではないラミアはゲームという遊びを知らない。
「てめーら、何しに来たんだよ――…」
「とりあえず、上がろう」
「おじゃましまーす」
遠慮を知らない様子で皆は靴を脱いで中に入り、
「うぉーーー。ここも超たけーー」
窓から一望できる、絶好の見晴らしのよさを眺める。
まるでホテルのスイートルームのような部屋だった。
「――いやいや、姫ちゃん。実際、難しいと思うよー?それはかなり…姫ちゃんがどういうつもりかは知らないけど…」
古市達が夜景を眺める横で夏目は異論を唱え、
「わー、なんもないねー」
「おっ、ハムみっけ」
おもむろに冷蔵庫を開け、それに神崎も加わる。
「匿名が基本のオンラインゲームで、見ず知らずの人間を特定するなんて、ほぼ不可能に近いからね」
言いながら、見た限りの悲惨な冷蔵庫を好き放題に漁る。
「といいつつ、人んちの冷蔵庫あさってんじゃねーよ。盗賊か、てめーら」
「大体、相手がどんなゲームやってるかも分かんないわけでしょ?」
呆れた姫川の言葉を聞き流しながら、夏目は話を続ける。
「一体、世の中にオンラインゲームのタイトルが、いくつあると思ってんの?軽く3桁はいくよ?」
膨大な量のオンラインゲームから、特定の人物だけを見つけるのは至難の業だと告げ、冷蔵庫から取り出したジュース瓶の蓋を開けると、一口飲む。
「――ま、せめてハンドルネームだけでも知ってりゃ別だけどね…」
「ハンドルネームって…?」
「おそらく、運転免許証の事じゃないか?」
オンラインの見当違いな会話をする由加と城山にツッコミを浴びせる。
「ちがうよ。ダメだコイツら。ネット上の名前、ペンネームみたいなもん」