バブ49
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放課後の鐘が鳴り、眠りを誘う授業を乗り越え、終礼を済ませた生徒達が教室から次々と出ていく。
寸暇を惜しんで楽しみ遊ぶ高校生にとって、放課後は最高のプレゼントである。
その進行方向とは逆に向かう足音が響き、階段の踊り場の壁に貼られた紙『石矢魔高校特別クラス』を見つめる。
「――…ここか…石ヤバ高校…」
彼――山村 和也は神妙な面持ちで、ひそかに揶揄される学校名を囁く。
「ハァーーッ!!やっと終わった!!」
突如、開かれた引き戸と疲れに弾ける声に驚き、慌てて身を潜める。
「もー、最悪の面子!授業になりゃしない」
「でも"黒雪姫"と同じクラスなんて、ラッキーですよ!」
他愛ない会話を繰り広げながら階段を降りようとして、何故か再び戻る。
――あれは、関東最凶のレディース、烈怒帝瑠!!
「姐さんっ!!何してんスか。帰りますよ」
「葵姐さんー」
視線の先には、葵を呼ぶ寧々と構成員の女子、鞄を持つ千秋がいた。
どうやら、教室に居残る葵を待っているらしい。
――す…すげぇ、いきなり大物だ。
(どうする!?いくか!?)
――いや、まだだ…まだ、あの人達が来てない。
女で構成された集団――いきなりの大物に動揺するが、彼の目当ては彼女達ではなく、もっと有名なあの二人。
「早く出てこい」
抑えきれない緊張、高まる興奮に、ごくりと喉が動いた。
飲み込むべき水分は、口内に残っていなかった。
手が震えてないのを、自分で褒めてやりたい、と思う。
「何が?」
すると、頭頂部で黒髪を二つに結った――ツインテールの髪型の少女が無邪気な笑顔で隣にいた。
(~~っっ、があっ、梓っっ!!)
「なになにー?何が出てくるのー?」
少女――梓はこちらの思惑などお構いなしに話しかけてくるので、彼は口許に指を当てて彼女の身体を後ろに押しやる。
(し~~~~~~っっ!!バカヤロウ、てめぇ、何勝手についてきてんだ!!ここが、どういう場所か、わかってんのかっ)
「えー、知ってるよー」
(声がでかいっ!!)
静かに、と言われ、梓も口許に手を当てて小声で注意する。
「和君こそ、いけないんだよー。ここは、ゴロツキクソヤローのたまり場だから、絶対近づくなって先生に言われてるのにー」
「うっ…」
教師としてはあり得ない言葉の使い方だが、図星を刺され、言葉に詰まる。
しばらく黙り込んだ後、念を押して打ち明ける。
「梓…幼なじみのお前にだから言うがな」
「はいはい。あっ、えーっとね…」
梓は途中で言い淀み、今さら幼馴染み……と思い直し、頭を掻いて照れくさそうに視線を逸らした。
「今時、幼なじみって…恥ずかしくない?」
「そこはいいーんだよ、今はっ!!」
重大な話を打ち明けるにもかかわらず、照れる箇所が違う梓に、山村は大声でつっこんだ。
「――つまりだ。オレは、はっきり言って――…不良というものに憧れている」
校舎裏に場所を移し、教室で言えなかった本音を打ち明ける。
「言っちまった…」
所々に垣間見える悔恨と羞恥が、本音を雄弁に物語っていた。
「あー。知ってるよー。和君、急に髪の毛染めて、ピアスつけてきたもんねー。みんな言ってるよー、夏休みデビューって…」
この時期になると、垢抜けた生徒が増える。
いわゆる、夏デビューという。
夏休みを境に今までの自分を変え、大胆なイメチェンを果たす者が出てくる。
夏前まで、冴えなかった者達がイメージを新たに二学期を迎えようとするわけだ。
「夏休みデビューってねー、今まで普通だった人が…」
「もういい、黙れ」
律儀に説明する口を手で塞ぎ、建物の影に隠れる。
そこに、城山と夏目を引き連れた神崎が現れた。
「あー。だりーなー」
気だるい声をあげて、本来は立ち寄ってはいけない場所に向かおうとする神崎を、城山は困ったふうに注意する。
「どこ行くんですか?神崎さん。そっちは、オレ達が入っちゃダメな校舎ですよ?」
「いや、むこーの方にヨーグルッチの自販機がよぉ…確かあったと思うんだ」
好物の飲料を探して歩く神崎達の後ろ姿を一瞥し、有名な四人のうちの一人と当てはめる。
――あれは…石矢魔東邦神姫の一人、神崎 一!!
(すげぇ、本物だ…)
不良の存在感と貫禄に圧倒される山村に口を塞がれ、もがもが、となる梓。
ようやく解放され、梓は口を開く。
「怖そうな人達だねー。和君もあんな風になりたいの?」
「フッ…バーカ…オレの目当ては男鹿さんだぜ?もっと、すげーに決まってんだろ。見たコトないケド」
「オガさん?」
「なんだ、知らねーのか。しょーがねーな、教えてやるよ。それと"黒雪姫"も有名だぜ」
一気に登場してきた二人の名前に疑問符を浮かべる梓へ、山村はどこか興奮気味に語る。
「男鹿さんってのはなぁー…」
「ぶぇっくしっ!!!」
豪快なくしゃみをして、男鹿は鼻をすする。
「あーっ、やべぇな、これは…風邪か!!」
「バカのくせして、何言ってやがる」
「古市、それは間違いだよ」
(珍しく)凛々しい表情で断言する男鹿に、古市は素っ気ない態度で突き放し、響古はその発言を訂正する。
「響古、お前がそう言いたい気持ちはわかるけど」
「バカは風邪を引かないというけど、それは"風邪を引いた事にさえ気づかない"っていう意味だから、辰巳はバカじゃない!」
「え、いや……そうだったっけ?」
びしっ、と凛々しく決めつけられた。
珍しく、古市はうろたえる。
さすがの古市も、響古相手に口論できない。
当の男鹿は首を傾げ、きょとんとしていた。
そして、人間界に帰って以降、身体の不調を訴える。
「いやー、魔界から帰ってから、こっち調子悪くてよー。ほらっ、オレって意外とデリカットだろ?」
「デリケートな。そこを間違ってる時点で、デリケートじゃねぇ」
古市はきっぱりと断言する。
男鹿 辰巳という男は『人間性の根本が動物的で大雑把である』なのだ。
「つーか、なんだ?意外とデリカットって…妙にゴロがいいな。アホなドラマのタイトルみてー」
「あー」
「メガネの外タレが意外と頑張るみたいな」
「意外とな」
男同士の気楽な会話についていけない響古は、両腕に抱くベル坊を堪能する。
(このほっぺときたら、ぷっくりのぷにぷにでぇ!お人形さんみたいに小っちゃい手が、指が、足が……ああもう、あたしはたまらないよ!)
満面の笑顔でベル坊中毒な響古へと、小さな手を伸ばしてくる。
「ダー」
「んー、どしたの?」
目線の高さまで抱き上げ、ぐっと近づかせて訊ねると、その白い頬に、ぴったりと自分の頬を合わせて寄り添ってくる。
響古の胸が高鳴った。
「やーん、カワイイぃぃ!」
「ダー!」
ベル坊は、それはもう元気よく返事をする。
三人のいる歩道橋の、橋の袂 辺りから少し離れた支柱の影で、山村と梓が固まって観察している。
「…なんか、あんまり怖くないねー。本当にあの人なの?赤ちゃんだー」
「………」
軽く笑って言う梓の頭上、山村は不安げな顔を覗かせる。
――襲いかかる不良共をなぎ倒し、土下座させて喜ぶ暴君、アダ名はデーモン。
重なり合う屍の山を踏んで、恐るべき偉業を成し遂げた男鹿は真の魔王と称される。
もしくは『破壊魔』の称号を与えたい。
――群雄割拠の石矢魔高校をたった一人でまとめあげた、伝説の一年生…!!
「なんだよね」
「――のはずだ…」
二人の反応を見ても、男鹿に対する悪い噂の数々が浮き彫りになってくる。
『男鹿 辰巳=恐怖の大魔王』くらいの認識でいたのは間違いない。
感じ入ったような口調で、梓が言う。
「それにしても、あの女の人が"黒雪姫"……すごいキレイだなぁ。顔小さいし、髪サラサラだし、手足長いし……」
158センチの身長以外はどんな美貌のモデルにも負けない容姿を持つ響古の後ろ姿だけで、梓は頬を赤く染める。
ほんのり赤くして、視線を僅かに逸らし、照れ笑いを浮かべる。
派手に赤面されるより、かえって気恥ずかしさを覚える反応だった。
「………」
――まさに美少女という印象を与えるが、その外見とは裏腹に、武闘派鉄拳で喧嘩では男鹿に負けないほどの実力。
――漆黒の髪に黒い瞳、黒一色の制服……全てが黒に染まりながらも、肌だけは雪のように白い容姿から、呼び名は"黒雪姫"。
倒れた男達の中に立つ、小柄な、しかし力に満ちた体躯。
漆黒を点す長い髪が、黒寂びたブレザーが、喧嘩の余韻になびき、揺れていた。
すると、少女がこちらを向いた。
その動きに取り残されるように、黒のスカートが翻る。
振り向いた、その双眸までもが煌めく漆黒。
――一見、美女と野獣のようなこの凸凹コンビ、否カップルは『最凶彼氏と最強彼女』と呼ばれて恐れられている。
様々な噂が飛び交う二人に好奇心を刺激され、そして憧れ、尾行している実感に思考が巡る。
――いや、あの二人で間違いねぇはずだ…子連れ番長…確か、そんなあだ名も聞 ーた事がある。
「とにかく、追うぞ。本物か、どーか確かめるんだ!!」
「よしきた!」
改めて、二人が本物かどうかの確認を決意し、尾行を続ける。
寸暇を惜しんで楽しみ遊ぶ高校生にとって、放課後は最高のプレゼントである。
その進行方向とは逆に向かう足音が響き、階段の踊り場の壁に貼られた紙『石矢魔高校特別クラス』を見つめる。
「――…ここか…石ヤバ高校…」
彼――山村 和也は神妙な面持ちで、ひそかに揶揄される学校名を囁く。
「ハァーーッ!!やっと終わった!!」
突如、開かれた引き戸と疲れに弾ける声に驚き、慌てて身を潜める。
「もー、最悪の面子!授業になりゃしない」
「でも"黒雪姫"と同じクラスなんて、ラッキーですよ!」
他愛ない会話を繰り広げながら階段を降りようとして、何故か再び戻る。
――あれは、関東最凶のレディース、烈怒帝瑠!!
「姐さんっ!!何してんスか。帰りますよ」
「葵姐さんー」
視線の先には、葵を呼ぶ寧々と構成員の女子、鞄を持つ千秋がいた。
どうやら、教室に居残る葵を待っているらしい。
――す…すげぇ、いきなり大物だ。
(どうする!?いくか!?)
――いや、まだだ…まだ、あの人達が来てない。
女で構成された集団――いきなりの大物に動揺するが、彼の目当ては彼女達ではなく、もっと有名なあの二人。
「早く出てこい」
抑えきれない緊張、高まる興奮に、ごくりと喉が動いた。
飲み込むべき水分は、口内に残っていなかった。
手が震えてないのを、自分で褒めてやりたい、と思う。
「何が?」
すると、頭頂部で黒髪を二つに結った――ツインテールの髪型の少女が無邪気な笑顔で隣にいた。
(~~っっ、があっ、梓っっ!!)
「なになにー?何が出てくるのー?」
少女――梓はこちらの思惑などお構いなしに話しかけてくるので、彼は口許に指を当てて彼女の身体を後ろに押しやる。
(し~~~~~~っっ!!バカヤロウ、てめぇ、何勝手についてきてんだ!!ここが、どういう場所か、わかってんのかっ)
「えー、知ってるよー」
(声がでかいっ!!)
静かに、と言われ、梓も口許に手を当てて小声で注意する。
「和君こそ、いけないんだよー。ここは、ゴロツキクソヤローのたまり場だから、絶対近づくなって先生に言われてるのにー」
「うっ…」
教師としてはあり得ない言葉の使い方だが、図星を刺され、言葉に詰まる。
しばらく黙り込んだ後、念を押して打ち明ける。
「梓…幼なじみのお前にだから言うがな」
「はいはい。あっ、えーっとね…」
梓は途中で言い淀み、今さら幼馴染み……と思い直し、頭を掻いて照れくさそうに視線を逸らした。
「今時、幼なじみって…恥ずかしくない?」
「そこはいいーんだよ、今はっ!!」
重大な話を打ち明けるにもかかわらず、照れる箇所が違う梓に、山村は大声でつっこんだ。
「――つまりだ。オレは、はっきり言って――…不良というものに憧れている」
校舎裏に場所を移し、教室で言えなかった本音を打ち明ける。
「言っちまった…」
所々に垣間見える悔恨と羞恥が、本音を雄弁に物語っていた。
「あー。知ってるよー。和君、急に髪の毛染めて、ピアスつけてきたもんねー。みんな言ってるよー、夏休みデビューって…」
この時期になると、垢抜けた生徒が増える。
いわゆる、夏デビューという。
夏休みを境に今までの自分を変え、大胆なイメチェンを果たす者が出てくる。
夏前まで、冴えなかった者達がイメージを新たに二学期を迎えようとするわけだ。
「夏休みデビューってねー、今まで普通だった人が…」
「もういい、黙れ」
律儀に説明する口を手で塞ぎ、建物の影に隠れる。
そこに、城山と夏目を引き連れた神崎が現れた。
「あー。だりーなー」
気だるい声をあげて、本来は立ち寄ってはいけない場所に向かおうとする神崎を、城山は困ったふうに注意する。
「どこ行くんですか?神崎さん。そっちは、オレ達が入っちゃダメな校舎ですよ?」
「いや、むこーの方にヨーグルッチの自販機がよぉ…確かあったと思うんだ」
好物の飲料を探して歩く神崎達の後ろ姿を一瞥し、有名な四人のうちの一人と当てはめる。
――あれは…石矢魔東邦神姫の一人、神崎 一!!
(すげぇ、本物だ…)
不良の存在感と貫禄に圧倒される山村に口を塞がれ、もがもが、となる梓。
ようやく解放され、梓は口を開く。
「怖そうな人達だねー。和君もあんな風になりたいの?」
「フッ…バーカ…オレの目当ては男鹿さんだぜ?もっと、すげーに決まってんだろ。見たコトないケド」
「オガさん?」
「なんだ、知らねーのか。しょーがねーな、教えてやるよ。それと"黒雪姫"も有名だぜ」
一気に登場してきた二人の名前に疑問符を浮かべる梓へ、山村はどこか興奮気味に語る。
「男鹿さんってのはなぁー…」
「ぶぇっくしっ!!!」
豪快なくしゃみをして、男鹿は鼻をすする。
「あーっ、やべぇな、これは…風邪か!!」
「バカのくせして、何言ってやがる」
「古市、それは間違いだよ」
(珍しく)凛々しい表情で断言する男鹿に、古市は素っ気ない態度で突き放し、響古はその発言を訂正する。
「響古、お前がそう言いたい気持ちはわかるけど」
「バカは風邪を引かないというけど、それは"風邪を引いた事にさえ気づかない"っていう意味だから、辰巳はバカじゃない!」
「え、いや……そうだったっけ?」
びしっ、と凛々しく決めつけられた。
珍しく、古市はうろたえる。
さすがの古市も、響古相手に口論できない。
当の男鹿は首を傾げ、きょとんとしていた。
そして、人間界に帰って以降、身体の不調を訴える。
「いやー、魔界から帰ってから、こっち調子悪くてよー。ほらっ、オレって意外とデリカットだろ?」
「デリケートな。そこを間違ってる時点で、デリケートじゃねぇ」
古市はきっぱりと断言する。
男鹿 辰巳という男は『人間性の根本が動物的で大雑把である』なのだ。
「つーか、なんだ?意外とデリカットって…妙にゴロがいいな。アホなドラマのタイトルみてー」
「あー」
「メガネの外タレが意外と頑張るみたいな」
「意外とな」
男同士の気楽な会話についていけない響古は、両腕に抱くベル坊を堪能する。
(このほっぺときたら、ぷっくりのぷにぷにでぇ!お人形さんみたいに小っちゃい手が、指が、足が……ああもう、あたしはたまらないよ!)
満面の笑顔でベル坊中毒な響古へと、小さな手を伸ばしてくる。
「ダー」
「んー、どしたの?」
目線の高さまで抱き上げ、ぐっと近づかせて訊ねると、その白い頬に、ぴったりと自分の頬を合わせて寄り添ってくる。
響古の胸が高鳴った。
「やーん、カワイイぃぃ!」
「ダー!」
ベル坊は、それはもう元気よく返事をする。
三人のいる歩道橋の、橋の
「…なんか、あんまり怖くないねー。本当にあの人なの?赤ちゃんだー」
「………」
軽く笑って言う梓の頭上、山村は不安げな顔を覗かせる。
――襲いかかる不良共をなぎ倒し、土下座させて喜ぶ暴君、アダ名はデーモン。
重なり合う屍の山を踏んで、恐るべき偉業を成し遂げた男鹿は真の魔王と称される。
もしくは『破壊魔』の称号を与えたい。
――群雄割拠の石矢魔高校をたった一人でまとめあげた、伝説の一年生…!!
「なんだよね」
「――のはずだ…」
二人の反応を見ても、男鹿に対する悪い噂の数々が浮き彫りになってくる。
『男鹿 辰巳=恐怖の大魔王』くらいの認識でいたのは間違いない。
感じ入ったような口調で、梓が言う。
「それにしても、あの女の人が"黒雪姫"……すごいキレイだなぁ。顔小さいし、髪サラサラだし、手足長いし……」
158センチの身長以外はどんな美貌のモデルにも負けない容姿を持つ響古の後ろ姿だけで、梓は頬を赤く染める。
ほんのり赤くして、視線を僅かに逸らし、照れ笑いを浮かべる。
派手に赤面されるより、かえって気恥ずかしさを覚える反応だった。
「………」
――まさに美少女という印象を与えるが、その外見とは裏腹に、武闘派鉄拳で喧嘩では男鹿に負けないほどの実力。
――漆黒の髪に黒い瞳、黒一色の制服……全てが黒に染まりながらも、肌だけは雪のように白い容姿から、呼び名は"黒雪姫"。
倒れた男達の中に立つ、小柄な、しかし力に満ちた体躯。
漆黒を点す長い髪が、黒寂びたブレザーが、喧嘩の余韻になびき、揺れていた。
すると、少女がこちらを向いた。
その動きに取り残されるように、黒のスカートが翻る。
振り向いた、その双眸までもが煌めく漆黒。
――一見、美女と野獣のようなこの凸凹コンビ、否カップルは『最凶彼氏と最強彼女』と呼ばれて恐れられている。
様々な噂が飛び交う二人に好奇心を刺激され、そして憧れ、尾行している実感に思考が巡る。
――いや、あの二人で間違いねぇはずだ…子連れ番長…確か、そんなあだ名も
「とにかく、追うぞ。本物か、どーか確かめるんだ!!」
「よしきた!」
改めて、二人が本物かどうかの確認を決意し、尾行を続ける。