バブ21~22
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彼女のお尻は、大きい。
丸々っとした、若々しさと成熟さを持ち合わせた響古のお尻には、染みなんて一つもない。
勿論そのままでも素晴らしいけど、下着やタイトなジーンズなんかを穿いて、ぱんっ、と布地を張りつめているのもたまらなくて……ううん、もう、ただのスカートであっても、その魅力は隠しきれるものじゃない。
ぶっちゃけ、近頃の男鹿は響古のお尻にめろりんきゅー。
勿論、響古の柔らかい胸に飽きたという意味ではない。
そんなのあり得ない。
なんというか、彼女の新たな魅力に気づいたと言いますか。
まあ、ただ単に男鹿がえっちになっただけ、というのも否定できないのですが!
(認めたくないものだな……自分自身の若さゆえのいやらしさというものを……)
例えば制服の短いスカート、私服のお尻が窮屈そうなパンツルックを着て、そんな格好で男鹿の前を歩いたり、階段を昇ったり、一緒に部屋でまったりしている時、無意識に四つんばいになってお尻を突き出したりしても、思わず胸を高鳴らせて凝視なんかしないような……だけど、そんなの無理。
(だって、あまりに素敵すぎるから……って、あれ?もしかして、響古にオレの熱視線、気づかれてた?)
気づかれてたんだろうな――。
「辰巳ー」
ばさりと、黒髪が覆いかぶさってきて、響古の顔が逆さに大写しになった。
「のわっ!?」
逆さになってこちらを見る響古が鼻がつきそうなくらい、顔の近い彼女がいつにも増して可愛く見えるから重傷だ。
「ボーッとしてるみたいだけど、何か考え事でもしてるの?」
彼女の細い両腕が男鹿の肩に回され、頭にはボリュームと弾力たっぷりの熱い質感が押しつけられる。
これの正体については深く考えまいと、男鹿は誓った。
とりあえず、響古から離れてもらい、男鹿は一つ咳払いをして言う。
「じゃあ……前にも言った通り……夏休み、我々はプールに行きます!」
男鹿が宣言すると、響古は拳を上に突き上げた。
「夏休み、プールに行くぞー!」
「ダー!」
わかっているのかいないのか、ベル坊も拳を突き上げる。
すると、響古が袋の中をあさり始め、何かを取り出した。
「じゃーん。先日買ってきた水着」
着てもいないのに、水着だけで鼻血を出してしまいそうだった。
「今日のプールで見せてあげるからね」
響古は可愛らしく微笑んだ。
彼方まで晴れ渡った、素晴らしい青空。
ここの陽射しは日本の夏とは感じが違い、嫌なじめじめさがなくて、清々しく感じられた――実際のところは熱帯気候であり、湿度はかなり高いのだけれど。
ホテルは、南の島にそびえ立つ、近代的な感じの建物だ。
「フー…」
そのホテルのプライベート・ビーチで、古市はサングラスをかけ、トロピカルジュースを飲み、優雅にくつろいでいた。
(みなさん、こんにちは。古市です。ようやく、夏休みに入り、あの不良学校からも一時 解放され、オレは今、家族と南の島に来ています)
夏休みを利用して訪れた南国の地。
見事に晴れ渡った青空。
そして、喧嘩に明け暮れる不良生活とは無縁な素晴らしい光景が目の前には広がっている。
――え?
――男鹿はどうしたって?
――ははは、知るか。
サングラスをかけた視線の先には、二人の女性が楽しそうにボールを投げ合っていた。
――大体、そろそろ、あのむさ苦しい不良 共の(男鹿含む)、アホアホ勢力争いにもあきてきた頃でしょ?
――いや、オレはもう正直、うんざりです。
石矢魔のヤンキー生徒と比べて、真面目な一般生徒の古市。
(てなわけで、今回は――…)
すると、宙を飛ぶボールが古市の足元に転がり、それを取る。
――古市貴之、15才。
――夏、「アバンチュールな恋の予感」をお送りしたいとお。
「すいませーん」
声をかける女性の背後には、背泳ぎで浮かぶ、見覚えのある顔が目に飛び込んできた。
――お、大きな、おっさん。
カールした髪の毛にたくわえた髭。
タンクトップに半ズボンという、かなりラフすぎる格好で、アランドロンと目が合った。
彼の表情が消え、たちまち真っ青になる。
いきなり始まった、壮絶な追いかけっこ。
必死に逃げる古市と笑顔で追いかけるアランドロン。
――前略、おふくろさん。
アランドロンの身体が真っ二つに割れた瞬間、身体が吸い込まれる。
南の島に一人の少年の絶叫が轟いた。
次元転送によって強制的に連れて来られた場所は国境を越えて、日本――しかも、自分の自宅であった。
「お、きたきた」
そこで待ち構えていた人物は男鹿、響古、ベル坊といういつもの面子。
「古市!!市民プール、行こうぜ!!」
爽やかな笑顔で親指を突き立てる男鹿と、その背中で微笑むベル坊と、申し訳なさそうな響古。
――友達って、何ですか?
せっかくのバカンスが一転、いつもの日常へと戻ってしまったことにうなだれる古市とは裏腹に、男鹿は大きな浮き輪を持ち、アランドロンは一仕事終えたかのように満足げだった。
バブ21
夏といえばコレでしょう
プールに入館するために、受け付けの係員に声をかける。
「学生3枚」
「はい」
係員から入場券を受け取り、二人分の料金を払う。
――って、何故、オレが男鹿の分まで…。
苛立つように振り返ると、その本人は苛つくほどに文句を述べていた。
「まだかーー。あちーよ」
ちなみに、響古はちゃんと自分の料金を払っている。
溜め息をつきながら、古市はのろのろと力なく歩き始める。
その時、響古が小さく耳打ちした。
「ごめんね、古市。のんびり過ごしていたのに、いきなり日本に戻ってきて…」
「いや、いいんだよ、響古。全て悪いのはあいつだ」
ぶつぶつとこぼれる古市の恨み言に、さすがの響古も反論の余地がないようだった。
どこまでも青い空。
燦々と輝く太陽。
防水を施された床面。
そこは、幅五十メートルを超すプールに囲まれた広大な遊水施設である。
じりじりと照りつける太陽から身を守るためのタオルを頭に被せて、古市はつぶやいた。
「――…すげー人だな…あらためて聞くが…これは何の拷問だ?」
「あ?何って…夏といえば、プールだろ?」
木陰の場所に寝そべりながら腕を組む男鹿の隣には、サングラスをかけたベル坊が真似している。
「あぁ、まぁ、確かに。確かにね?それは、そうなんだけどね」
男鹿の台詞に、古市は頬を引きつらせながらも言葉を紡ぐ。
「高級リゾートのプールサイドにいた、このオレが、なんで、こんなすしづめ状態の、むし風呂みたいな市民プールにいなければならんのかと。オレは聞いているのだ」
まるで、爆発のような歓声の塊が耳に飛び込んでくる。
今、大勢の人達が絶叫と水音の中、屋外プール場で揉み合って遊んでいた。
「なんかムカつくから」
「直球だな!!つーか、これ、お前も楽しくねーだろ!!」
「ん?オレは、だってほら、お前のがっかりした顔が見られたら、それで満足だから」
真面目顔できっぱりと言い切る男鹿。
古市の胸に殺意が湧いた。
――何言ってんの、こいつ!?
(真面目な顔で言ってのける男鹿はSだと思いました。by.古市)
「――おお!」
突然、疲れていた古市の目が、きらりと輝いた。
(そうだ!そうだ!忘れていたよ!)
プールではなく更衣室の方を見やって、歓声に近い声をあげる。
「響古ーー、こっちーー!」
男鹿も古市も、結局のところ、健全な十代の男の子なわけでして。
更衣室から歩いてくるのは水着姿の響古で、軽く肩をすくめた。
「ごめん、待たせちゃった」
白を基本色にしてフリルのついた可愛らしいビキニである。
響古のスタイルの良さは充分に見て取れ、長い黒髪は白いリボンでポニーテールに結っており、陽光を滑らせてきらきらと光っている。
両手を後ろに回し、響古は少しばかりはにかむような表情。
「いや、大丈夫。それはいいけど――」
古市は何やらびっくりしたような面持ちで、響古の水着姿をじっと眺めた。
「へえ……響古って、やっぱり着痩せするタイプか」
意味深めのストレート発言に、響古の顔が真っ赤になる。
勿論、愛しい彼女が他の男にまじまじと見つめられるのは、非常に嫌な気分になるので。
「じろじろ見るな!」
「古市の変態!」
身体を腕で抱くように隠し、身じろぎする響古。
男鹿の繰り出した右ストレートが炸裂する。
「なんで殴られるの!?」
哀れ、古市。
男鹿の一撃でKOされた古市は木陰にぐったりと寝かされていた。
自分もプールに入ろうとしたところ、ぽん、と白い小さな容器――日焼け止めクリームを手渡された。
「はい、辰巳、塗って」
「これって……」
「そ、日焼け止めクリーム」
首を傾げる男鹿に、響古は笑いかける。
「ほら、普段焼けてないのにさ、こーんな強い日差しの中、日焼け止めも塗らずにいたら、肌、真っ赤っ赤になっちゃって。あとですっごく痛い思いしちゃうよ?もうヤケドだよ、ヤケド」
「な、なるほど」
響古が座ったまま男鹿に背を向け、水着を緩め、背中の紐を解く。
そのため、背中越しからでも揺れる柔らかな胸が覗け――。
「な、なにしてるんだ!」
慌てて周りを確認する。
古市は殴られて気絶、人々はビーチバレーや冷たいプールで泳いで夢中。
(よし、今なら誰も見ていない、チャンスだ!)
何かを期待しているような気配を覗かせるが、すぐさま我に返った。
――じゃなくて!
頬を染める男鹿の表情に、動揺が駆け抜ける。
「こんな、大勢の場所で肌を露になんか!」
「あれ?じゃあ、みんなの前じゃなきゃいいの?」
男鹿は答えに困った。
「気にしすぎだって、辰巳……ほら、こういうのは、塗り残しがあったら意味がないでしょう?」
言葉を失った男鹿に向かい、響古は胸を隠しながら告げる。
「だから、隅々まで塗ろうとしているだけであって……これをえっちと感じるなら、それは感じる方がえっちなんだよ。ね?」
「じゃ…じゃあ!男鹿の代わりに、オレが塗ってやろーか?」
「ダメに決まってんだろ。てゆーか、指の動きからして変なところ触るの丸わかり」
両手の指を卑猥に動かせる古市の誘いを、響古は笑顔では突き放した。
断られた古市は肩をすくめながら二人から離れ、しゃがみ込む。
――冷たいところもイイ!
男鹿の疑問はつきねど、響古は背を丸め、黒髪を流して背中を向けてくる。
「大丈夫。前はちゃんと水着で隠してるから」
彼女の笑顔に観念し、クリームを手に落とし、何度か手に馴染ませる。
その後、クリームを伸ばしながら肌に塗り込むようにして触れていく。
――あーっ、クソ!
――やっぱ、響古の肌ってスゴイ!
声が出ない。
違う。
声が出ないのではなく、出さないだけだ。
自分で誤魔化しても仕方がない。
(スベスベして、オレの手までスベスベになりそうな感じだ!)
正直、響古から頼まれたこの行為を止めたくなかった。
(しかも触れている全てが柔らかすぎて、手に張りついてきそうだ!肌をなぞるたび、指先に集めた神経が最高級の弾力を得て喜んでいる!)
背中を満遍なく、むしろ無駄とも思えるほど堪能していく。
「あ、はは、やだ、くすぐったーい」
響古が身悶え、背を反らす。
「が、我慢しろよな……」
塗りつける度、響古は身をくねらせ、笑い声も止まらない。
そういう反応を見せられると、男鹿の手の動きは、ついついエロなものへと変わってしまう。
男鹿 辰巳という男は、意外とむっつりスケベなのだった。
なんともいえない夢心地な表情で感触を楽しむ。
なに、今すぐ止めるのはもったいない。
据え膳食わぬは男の恥とまでは言わないが、合意の上なのだからちょっとくらい――。
丸々っとした、若々しさと成熟さを持ち合わせた響古のお尻には、染みなんて一つもない。
勿論そのままでも素晴らしいけど、下着やタイトなジーンズなんかを穿いて、ぱんっ、と布地を張りつめているのもたまらなくて……ううん、もう、ただのスカートであっても、その魅力は隠しきれるものじゃない。
ぶっちゃけ、近頃の男鹿は響古のお尻にめろりんきゅー。
勿論、響古の柔らかい胸に飽きたという意味ではない。
そんなのあり得ない。
なんというか、彼女の新たな魅力に気づいたと言いますか。
まあ、ただ単に男鹿がえっちになっただけ、というのも否定できないのですが!
(認めたくないものだな……自分自身の若さゆえのいやらしさというものを……)
例えば制服の短いスカート、私服のお尻が窮屈そうなパンツルックを着て、そんな格好で男鹿の前を歩いたり、階段を昇ったり、一緒に部屋でまったりしている時、無意識に四つんばいになってお尻を突き出したりしても、思わず胸を高鳴らせて凝視なんかしないような……だけど、そんなの無理。
(だって、あまりに素敵すぎるから……って、あれ?もしかして、響古にオレの熱視線、気づかれてた?)
気づかれてたんだろうな――。
「辰巳ー」
ばさりと、黒髪が覆いかぶさってきて、響古の顔が逆さに大写しになった。
「のわっ!?」
逆さになってこちらを見る響古が鼻がつきそうなくらい、顔の近い彼女がいつにも増して可愛く見えるから重傷だ。
「ボーッとしてるみたいだけど、何か考え事でもしてるの?」
彼女の細い両腕が男鹿の肩に回され、頭にはボリュームと弾力たっぷりの熱い質感が押しつけられる。
これの正体については深く考えまいと、男鹿は誓った。
とりあえず、響古から離れてもらい、男鹿は一つ咳払いをして言う。
「じゃあ……前にも言った通り……夏休み、我々はプールに行きます!」
男鹿が宣言すると、響古は拳を上に突き上げた。
「夏休み、プールに行くぞー!」
「ダー!」
わかっているのかいないのか、ベル坊も拳を突き上げる。
すると、響古が袋の中をあさり始め、何かを取り出した。
「じゃーん。先日買ってきた水着」
着てもいないのに、水着だけで鼻血を出してしまいそうだった。
「今日のプールで見せてあげるからね」
響古は可愛らしく微笑んだ。
彼方まで晴れ渡った、素晴らしい青空。
ここの陽射しは日本の夏とは感じが違い、嫌なじめじめさがなくて、清々しく感じられた――実際のところは熱帯気候であり、湿度はかなり高いのだけれど。
ホテルは、南の島にそびえ立つ、近代的な感じの建物だ。
「フー…」
そのホテルのプライベート・ビーチで、古市はサングラスをかけ、トロピカルジュースを飲み、優雅にくつろいでいた。
(みなさん、こんにちは。古市です。ようやく、夏休みに入り、あの不良学校からも
夏休みを利用して訪れた南国の地。
見事に晴れ渡った青空。
そして、喧嘩に明け暮れる不良生活とは無縁な素晴らしい光景が目の前には広がっている。
――え?
――男鹿はどうしたって?
――ははは、知るか。
サングラスをかけた視線の先には、二人の女性が楽しそうにボールを投げ合っていた。
――大体、そろそろ、あのむさ苦しい
――いや、オレはもう正直、うんざりです。
石矢魔のヤンキー生徒と比べて、真面目な一般生徒の古市。
(てなわけで、今回は――…)
すると、宙を飛ぶボールが古市の足元に転がり、それを取る。
――古市貴之、15才。
――夏、「アバンチュールな恋の予感」をお送りしたいとお。
「すいませーん」
声をかける女性の背後には、背泳ぎで浮かぶ、見覚えのある顔が目に飛び込んできた。
――お、大きな、おっさん。
カールした髪の毛にたくわえた髭。
タンクトップに半ズボンという、かなりラフすぎる格好で、アランドロンと目が合った。
彼の表情が消え、たちまち真っ青になる。
いきなり始まった、壮絶な追いかけっこ。
必死に逃げる古市と笑顔で追いかけるアランドロン。
――前略、おふくろさん。
アランドロンの身体が真っ二つに割れた瞬間、身体が吸い込まれる。
南の島に一人の少年の絶叫が轟いた。
次元転送によって強制的に連れて来られた場所は国境を越えて、日本――しかも、自分の自宅であった。
「お、きたきた」
そこで待ち構えていた人物は男鹿、響古、ベル坊といういつもの面子。
「古市!!市民プール、行こうぜ!!」
爽やかな笑顔で親指を突き立てる男鹿と、その背中で微笑むベル坊と、申し訳なさそうな響古。
――友達って、何ですか?
せっかくのバカンスが一転、いつもの日常へと戻ってしまったことにうなだれる古市とは裏腹に、男鹿は大きな浮き輪を持ち、アランドロンは一仕事終えたかのように満足げだった。
バブ21
夏といえばコレでしょう
プールに入館するために、受け付けの係員に声をかける。
「学生3枚」
「はい」
係員から入場券を受け取り、二人分の料金を払う。
――って、何故、オレが男鹿の分まで…。
苛立つように振り返ると、その本人は苛つくほどに文句を述べていた。
「まだかーー。あちーよ」
ちなみに、響古はちゃんと自分の料金を払っている。
溜め息をつきながら、古市はのろのろと力なく歩き始める。
その時、響古が小さく耳打ちした。
「ごめんね、古市。のんびり過ごしていたのに、いきなり日本に戻ってきて…」
「いや、いいんだよ、響古。全て悪いのはあいつだ」
ぶつぶつとこぼれる古市の恨み言に、さすがの響古も反論の余地がないようだった。
どこまでも青い空。
燦々と輝く太陽。
防水を施された床面。
そこは、幅五十メートルを超すプールに囲まれた広大な遊水施設である。
じりじりと照りつける太陽から身を守るためのタオルを頭に被せて、古市はつぶやいた。
「――…すげー人だな…あらためて聞くが…これは何の拷問だ?」
「あ?何って…夏といえば、プールだろ?」
木陰の場所に寝そべりながら腕を組む男鹿の隣には、サングラスをかけたベル坊が真似している。
「あぁ、まぁ、確かに。確かにね?それは、そうなんだけどね」
男鹿の台詞に、古市は頬を引きつらせながらも言葉を紡ぐ。
「高級リゾートのプールサイドにいた、このオレが、なんで、こんなすしづめ状態の、むし風呂みたいな市民プールにいなければならんのかと。オレは聞いているのだ」
まるで、爆発のような歓声の塊が耳に飛び込んでくる。
今、大勢の人達が絶叫と水音の中、屋外プール場で揉み合って遊んでいた。
「なんかムカつくから」
「直球だな!!つーか、これ、お前も楽しくねーだろ!!」
「ん?オレは、だってほら、お前のがっかりした顔が見られたら、それで満足だから」
真面目顔できっぱりと言い切る男鹿。
古市の胸に殺意が湧いた。
――何言ってんの、こいつ!?
(真面目な顔で言ってのける男鹿はSだと思いました。by.古市)
「――おお!」
突然、疲れていた古市の目が、きらりと輝いた。
(そうだ!そうだ!忘れていたよ!)
プールではなく更衣室の方を見やって、歓声に近い声をあげる。
「響古ーー、こっちーー!」
男鹿も古市も、結局のところ、健全な十代の男の子なわけでして。
更衣室から歩いてくるのは水着姿の響古で、軽く肩をすくめた。
「ごめん、待たせちゃった」
白を基本色にしてフリルのついた可愛らしいビキニである。
響古のスタイルの良さは充分に見て取れ、長い黒髪は白いリボンでポニーテールに結っており、陽光を滑らせてきらきらと光っている。
両手を後ろに回し、響古は少しばかりはにかむような表情。
「いや、大丈夫。それはいいけど――」
古市は何やらびっくりしたような面持ちで、響古の水着姿をじっと眺めた。
「へえ……響古って、やっぱり着痩せするタイプか」
意味深めのストレート発言に、響古の顔が真っ赤になる。
勿論、愛しい彼女が他の男にまじまじと見つめられるのは、非常に嫌な気分になるので。
「じろじろ見るな!」
「古市の変態!」
身体を腕で抱くように隠し、身じろぎする響古。
男鹿の繰り出した右ストレートが炸裂する。
「なんで殴られるの!?」
哀れ、古市。
男鹿の一撃でKOされた古市は木陰にぐったりと寝かされていた。
自分もプールに入ろうとしたところ、ぽん、と白い小さな容器――日焼け止めクリームを手渡された。
「はい、辰巳、塗って」
「これって……」
「そ、日焼け止めクリーム」
首を傾げる男鹿に、響古は笑いかける。
「ほら、普段焼けてないのにさ、こーんな強い日差しの中、日焼け止めも塗らずにいたら、肌、真っ赤っ赤になっちゃって。あとですっごく痛い思いしちゃうよ?もうヤケドだよ、ヤケド」
「な、なるほど」
響古が座ったまま男鹿に背を向け、水着を緩め、背中の紐を解く。
そのため、背中越しからでも揺れる柔らかな胸が覗け――。
「な、なにしてるんだ!」
慌てて周りを確認する。
古市は殴られて気絶、人々はビーチバレーや冷たいプールで泳いで夢中。
(よし、今なら誰も見ていない、チャンスだ!)
何かを期待しているような気配を覗かせるが、すぐさま我に返った。
――じゃなくて!
頬を染める男鹿の表情に、動揺が駆け抜ける。
「こんな、大勢の場所で肌を露になんか!」
「あれ?じゃあ、みんなの前じゃなきゃいいの?」
男鹿は答えに困った。
「気にしすぎだって、辰巳……ほら、こういうのは、塗り残しがあったら意味がないでしょう?」
言葉を失った男鹿に向かい、響古は胸を隠しながら告げる。
「だから、隅々まで塗ろうとしているだけであって……これをえっちと感じるなら、それは感じる方がえっちなんだよ。ね?」
「じゃ…じゃあ!男鹿の代わりに、オレが塗ってやろーか?」
「ダメに決まってんだろ。てゆーか、指の動きからして変なところ触るの丸わかり」
両手の指を卑猥に動かせる古市の誘いを、響古は笑顔では突き放した。
断られた古市は肩をすくめながら二人から離れ、しゃがみ込む。
――冷たいところもイイ!
男鹿の疑問はつきねど、響古は背を丸め、黒髪を流して背中を向けてくる。
「大丈夫。前はちゃんと水着で隠してるから」
彼女の笑顔に観念し、クリームを手に落とし、何度か手に馴染ませる。
その後、クリームを伸ばしながら肌に塗り込むようにして触れていく。
――あーっ、クソ!
――やっぱ、響古の肌ってスゴイ!
声が出ない。
違う。
声が出ないのではなく、出さないだけだ。
自分で誤魔化しても仕方がない。
(スベスベして、オレの手までスベスベになりそうな感じだ!)
正直、響古から頼まれたこの行為を止めたくなかった。
(しかも触れている全てが柔らかすぎて、手に張りついてきそうだ!肌をなぞるたび、指先に集めた神経が最高級の弾力を得て喜んでいる!)
背中を満遍なく、むしろ無駄とも思えるほど堪能していく。
「あ、はは、やだ、くすぐったーい」
響古が身悶え、背を反らす。
「が、我慢しろよな……」
塗りつける度、響古は身をくねらせ、笑い声も止まらない。
そういう反応を見せられると、男鹿の手の動きは、ついついエロなものへと変わってしまう。
男鹿 辰巳という男は、意外とむっつりスケベなのだった。
なんともいえない夢心地な表情で感触を楽しむ。
なに、今すぐ止めるのはもったいない。
据え膳食わぬは男の恥とまでは言わないが、合意の上なのだからちょっとくらい――。