第七訓
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真選組の襲撃を受けた一悶着の後、四人は取り調べをされた。
なお、指名手配犯の桂は既に逃げ、およそ三日間の取り調べは心身共に疲弊していた。
警察所の看板を乱暴に蹴って、銀時が愚痴をこぼす。
「命張って、爆弾処理してやったのによォ。三日間も取り調べやがって、腐れポリ公」
「もういいじゃないですか。テロリストの嫌疑 も晴れたことだし」
厳しい詰問から解放されて伸びをする新八が言うが、銀時は納得いかない様子。
「どーもスッキリしねェ、ションベンかけていこう」
「やるわね。じゃあ、あたしは壁一面に悪口を書いてやるわ。腕が鳴るわね」
「なんだ?誹謗中傷の落書き?精神攻撃できたな」
「よっしゃ。私、ゲロ吐いちゃるよ」
銀時はズボンのベルトを外し、篠木は黒(油性)のマジックペンを持ち、神楽は口内に指を突っ込む。
「器の小さいテロすんじゃねェェ!!」
糾弾する新八の前には、嬉々として小細工を弄している三人の姿があった。
「アンタらに、かまってたら何回捕まってもキリないよ。響古さん。僕、先に帰ります」
「気をつけてね」
「ハイ!ちゃんと真っすぐ家帰れよ、バカコンビ!!」
捨て台詞を吐きながら帰っていく新八を、響古は手を振って見送る。
「オイオイ。ツッコミいなかったら、この小説成立しねーぞ…しゃーねーな。今回は俺がツッコミでいくか」
「銀、そのセリフにすでにツッコミが必要。それに、新八よりマシなツッコミしなさいよね」
ツッコミ役の新八がいなくなったことにより、銀時がツッコミ役かと思いきや、逆に響古につっこまれてしまう。
「えっ?今回は響古がツッコミ!?ってか、今、俺の心に何かがグサッと…」
その時、ビチャビチャと何かを撒き散らす音が聞こえてきた。
「オェ!」
視線を落とすと、神楽が足元に吐瀉物を吐いている。
「おまっ…どこにゲロ、吐いて…くさっ!!」
「神楽、止めなさ…くさっ!!」
有言実行した神楽を止めようとするが、酸っぱい臭いに鼻をつまんで後ずさる。
その時、警察所から鳴り響く警笛に顔を上げると、塀の上から一人の男が飛び降りてきた。
「ん?」
「ワォ」
二人は真横に着地した男に目を向ける。
次の瞬間、足を滑らせて後頭部が地面とぶつかる。
「ゔえ゙!!」
男は打ちつけた頭を押さえ、漂ってくる酸っぱい臭いに顔をしかめる。
「いだだだだだだ!!それに、くさっ!!」
続けて、警笛を鳴らして役人が警察所から現れる。
「オイ、そいつ止めてくれ!!脱獄犯だ、くさっ!!」
同じく顔をしかめる辺り、すっかり酸の効 いた匂いが周囲に広まっている。
「「はィ?」」
「ちっ」
男は舌打ちすると、近くにいた神楽の首に手を回す。
「来るんじゃねェ!!このチャイナ娘がどーなってもいいのか」
「貴様!!」
人質を取られ、迂闊に手が出せない状態。
何故こうも緊張感があるのか、今の状況を全くわかっていない二人。
状況に取り残されて突っ立っていると、男が振り向いて聞いてきた。
「オイ。そこの白髪と美人のねーちゃん、免許もってるか?」
「普通免許は…」
「もってっけど」
それから数分後。
警察御用達のパトカーに乗って、銀時達は公道をひた走る。
「なんでこ~なるの?」
「あたしだって聞きたいよ…」
運転席には銀時、響古は助手席に乗り込んだ。
後部座席には、脱獄した男と口から涎を垂らして寝ている神楽が座る。
「巻き込まれ体質のよーね、あたし達」
「………なんか否定できないのが悲しいな…」
憂鬱そうな溜め息を一つ。
凛々しい美貌を曇らせて告げる響古に、銀時も気だるい目を細める。
そして、フロントガラス越しに初老の脱獄犯を覗き込む。
「おじさーん、こんな事してホント、逃げ切れると思ってんの?」
「いいから、右曲がれ」
「今時、脱獄完遂なんざ、宝クジの一等当てるより難しいって」
「大体、テレビとかでやってますけど、そんなに当たるもんですか」
銀時の言葉を引き継ぐように、響古が言った。
「逃げ切るつもりなんてねェ…今日一日だ。今日一日、自由になればそれでいい」
男は、いきなりこう切り出した。
脱獄した結果としての言葉もない。
率直といえば率直な態度だが、二人はそこに余裕のなさを見た。
「特別な日なんだ、今日は…」
二人は無言で次の言葉を待つと、彼は遠い目で続ける。
≪みなさーん、今日はお通のライブに来てくれて、ありがとうきびウンコ!≫
アイドルの寺門 通がマイクを握って話しかけると、観客席が異様な盛り上がりを見せる。
『とうきびウンコォォ!!』
最大注目のアイドルでにぎわうコンサート会場。
銀時と響古だけは呆然とステージを見つめ、神楽も観客と一緒に声援を送る。
その環視を受ける快感の中、スポットライトを浴びて興奮状態の少女が、片方に結った髪を振り乱すように声を張り上げる。
≪今日はみんな、浮世の事なんて忘れて楽しんでいってネクロマンサー!!≫
応えて、圧倒的な歓声がステージをビリビリと震わせる。
『ネクロマンサー』
「じゃあ一曲目『お前の母ちゃん何人!?』!!」
拍手と口笛と共に迎えられて、お通は一曲目を歌い始める。
ボケッと立ち尽くしたまま銀時が口を開く。
「…なんだよ、コレ」
「今、人気沸騰中のアイドル寺門 通ちゃんの初ライブだ」
「てめェェェ、人生を何だと思ってんだ!!」
怒りに眉をつり上げた銀時の放った踵落としが、男の脳天に突き刺さった。
目を剥いて倒れる男へ、冷ややかな眼差しで断言する。
「アイドル如きのために脱獄だ?一時の享楽のために、人生棒にふるつもりか?そんなんだからブタ箱にぶち込まれんだ、バカヤロー」
珍しく銀時が激昂する横で、神楽は気持ちよさそうに歌っていた。
「一瞬で人生を棒にふるった俺だからこそ、人生には見落としてならない大事な一瞬があることを知ってるのさ」
そう思っていると、本人からそれを認める言葉が放たれた。
むくりと起き上がり、恐ろしいまでの歓声を飛ばす。
「さァ、ねーちゃんも楽しもう!!L・O・V・E・お・つ・う!!L・O・V・E…」
猛烈なかけ声とエールを送る男に、これには二人も呆れてしまう。
いつもはボケに走る響古だか、今回は奉行所での取り調べ+aをされたもので(精神的に)疲れてボケる気もなかった。
「やってらんねェ。帰るぞ響古、神楽」
「そうだね…」
そんな二人とは対照的に、神楽はすっかり会場と一体化してしまった。
「え~。もうちょっと見たいきんたまむし」
「「影響されてんじゃねェェェ!!」」
改めて見渡すと、どれも皆、オタクのオーラを醸し出している。
場内の中に充満しているのは熱気と汗の臭い。
が、その濃度は普通ではない。
「ほとんど宗教じみてやがるな。なんか空気があつくてくさい気がする」
「人より余分に二酸化炭素発散して地球温暖化促進させて、見た目の暑苦しさから周囲の人の体感温度を引き上げまくってるのに、これ以上迷惑かけないでほしいわね」
響古はさらっと、全世界の太った人を敵に回す発言をする。
実はかなり怒ってるらしいです。
すると、視界の端に見覚えのある人物が飛び込んで、ある場所を指差した。
「銀、あそこ見て」
「ん?」
響古が指差した先に、銀時も視線を移す。
視線の先には揃いの羽織を纏い、
『L・O・V・E・お・つ・う』
「もっと大きい声で!!」
額にハチマキを巻いた集団が声出しをしていた。
その集団の前で、誰よりも物凄い気迫を纏った新八が指揮を取る。
「オイ、そこ何ボケッとしてんだ!声張れェェェ!!」
「すんません、隊長ォォォ!!」
いつもの物腰柔らかい少年にしては珍しい大声だった。
「オイ。いつから隊長になったんだオメーは」
「俺は生まれた時から、お通ちゃんの親衛隊隊長だァァ!!」
そう決め台詞を放つ新八だったが、後ろから現れた二人に仰天する。
これで、いつもの新八に戻りました。
「って…ギャアアアアア、銀さん、響古さん!?なんでこんな所に!?」
「こっちがききたいわよ。先に帰ったと思ったら、まさかアンタにこーゆー趣味があったとは…」
「てめー、こんな軟弱なもんに傾倒してやがったとは。てめーの姉ちゃんに何て謝ればいいんだ」
容姿が平凡で常識人な少年がアイドルに熱狂している。
その取り合わせの意外さに銀時は眉をひそめ、響古自身も驚く。
「僕が何しようと勝手だろ!!ガキじゃねーんだよ!!」
口汚く言い放った新八は鬼の形相で、
「あん、コラ」
二人を睨みつける。
ここぞとばかりに吠え立てる新八を前にして、響古は微妙な表情をする。
「ワォ。キャラまで違うよ」
ふと気づけば、マネージャーらしき女性がやって来た。
細いフレームの眼鏡をかけている、きつい顔立ちだった。
「ちょっと、そこのアナタ達。ライブ中にフラフラ歩かないで下さい、他のお客様の御迷惑になります」
キッと銀時達を睨むマネージャーの横で、
『L・O・V・E・お・つ・う。L・O・V・E・お・つ・う』
どこまでも響く親衛隊のかけ声が湧き上がる。
「スンマセン、マネージャーさん。俺が締め出しとくんで」
マネージャーからの注意を受けて、親衛隊の代表として表情を引き締める。
「やってみろやコラ」
「無理よ」
聞き捨てならない発言に銀時は睨み、響古は怜悧な眼差しで言う。
(ウン、無理だネ。新八なんかに銀ちゃんと響古は締め出せないアル。by神楽)
「あぁ、親衛隊の方?お願いするわ。今日はあの娘 の初ライブなんだから、必ず成功させなくては…」
「L・O・V・E・お・つ・う。L・O・V・E・お・つ・う」
「………!!」
不意にマネージャーはお通に声援を送る男を見つけ、驚愕の声を漏らす。
「アナタ…?」
男がマネージャーの声に振り返って、顔色を変えた。
溢れかえる声援の中、二人の空間だけが静寂に包まれる。
一方、強気な態度で言い放った新八は銀時に前髪を掴まれ、響古に足を踏まれていた。
なお、指名手配犯の桂は既に逃げ、およそ三日間の取り調べは心身共に疲弊していた。
警察所の看板を乱暴に蹴って、銀時が愚痴をこぼす。
「命張って、爆弾処理してやったのによォ。三日間も取り調べやがって、腐れポリ公」
「もういいじゃないですか。テロリストの
厳しい詰問から解放されて伸びをする新八が言うが、銀時は納得いかない様子。
「どーもスッキリしねェ、ションベンかけていこう」
「やるわね。じゃあ、あたしは壁一面に悪口を書いてやるわ。腕が鳴るわね」
「なんだ?誹謗中傷の落書き?精神攻撃できたな」
「よっしゃ。私、ゲロ吐いちゃるよ」
銀時はズボンのベルトを外し、篠木は黒(油性)のマジックペンを持ち、神楽は口内に指を突っ込む。
「器の小さいテロすんじゃねェェ!!」
糾弾する新八の前には、嬉々として小細工を弄している三人の姿があった。
「アンタらに、かまってたら何回捕まってもキリないよ。響古さん。僕、先に帰ります」
「気をつけてね」
「ハイ!ちゃんと真っすぐ家帰れよ、バカコンビ!!」
捨て台詞を吐きながら帰っていく新八を、響古は手を振って見送る。
「オイオイ。ツッコミいなかったら、この小説成立しねーぞ…しゃーねーな。今回は俺がツッコミでいくか」
「銀、そのセリフにすでにツッコミが必要。それに、新八よりマシなツッコミしなさいよね」
ツッコミ役の新八がいなくなったことにより、銀時がツッコミ役かと思いきや、逆に響古につっこまれてしまう。
「えっ?今回は響古がツッコミ!?ってか、今、俺の心に何かがグサッと…」
その時、ビチャビチャと何かを撒き散らす音が聞こえてきた。
「オェ!」
視線を落とすと、神楽が足元に吐瀉物を吐いている。
「おまっ…どこにゲロ、吐いて…くさっ!!」
「神楽、止めなさ…くさっ!!」
有言実行した神楽を止めようとするが、酸っぱい臭いに鼻をつまんで後ずさる。
その時、警察所から鳴り響く警笛に顔を上げると、塀の上から一人の男が飛び降りてきた。
「ん?」
「ワォ」
二人は真横に着地した男に目を向ける。
次の瞬間、足を滑らせて後頭部が地面とぶつかる。
「ゔえ゙!!」
男は打ちつけた頭を押さえ、漂ってくる酸っぱい臭いに顔をしかめる。
「いだだだだだだ!!それに、くさっ!!」
続けて、警笛を鳴らして役人が警察所から現れる。
「オイ、そいつ止めてくれ!!脱獄犯だ、くさっ!!」
同じく顔をしかめる辺り、すっかり酸の
「「はィ?」」
「ちっ」
男は舌打ちすると、近くにいた神楽の首に手を回す。
「来るんじゃねェ!!このチャイナ娘がどーなってもいいのか」
「貴様!!」
人質を取られ、迂闊に手が出せない状態。
何故こうも緊張感があるのか、今の状況を全くわかっていない二人。
状況に取り残されて突っ立っていると、男が振り向いて聞いてきた。
「オイ。そこの白髪と美人のねーちゃん、免許もってるか?」
「普通免許は…」
「もってっけど」
それから数分後。
警察御用達のパトカーに乗って、銀時達は公道をひた走る。
「なんでこ~なるの?」
「あたしだって聞きたいよ…」
運転席には銀時、響古は助手席に乗り込んだ。
後部座席には、脱獄した男と口から涎を垂らして寝ている神楽が座る。
「巻き込まれ体質のよーね、あたし達」
「………なんか否定できないのが悲しいな…」
憂鬱そうな溜め息を一つ。
凛々しい美貌を曇らせて告げる響古に、銀時も気だるい目を細める。
そして、フロントガラス越しに初老の脱獄犯を覗き込む。
「おじさーん、こんな事してホント、逃げ切れると思ってんの?」
「いいから、右曲がれ」
「今時、脱獄完遂なんざ、宝クジの一等当てるより難しいって」
「大体、テレビとかでやってますけど、そんなに当たるもんですか」
銀時の言葉を引き継ぐように、響古が言った。
「逃げ切るつもりなんてねェ…今日一日だ。今日一日、自由になればそれでいい」
男は、いきなりこう切り出した。
脱獄した結果としての言葉もない。
率直といえば率直な態度だが、二人はそこに余裕のなさを見た。
「特別な日なんだ、今日は…」
二人は無言で次の言葉を待つと、彼は遠い目で続ける。
≪みなさーん、今日はお通のライブに来てくれて、ありがとうきびウンコ!≫
アイドルの寺門 通がマイクを握って話しかけると、観客席が異様な盛り上がりを見せる。
『とうきびウンコォォ!!』
最大注目のアイドルでにぎわうコンサート会場。
銀時と響古だけは呆然とステージを見つめ、神楽も観客と一緒に声援を送る。
その環視を受ける快感の中、スポットライトを浴びて興奮状態の少女が、片方に結った髪を振り乱すように声を張り上げる。
≪今日はみんな、浮世の事なんて忘れて楽しんでいってネクロマンサー!!≫
応えて、圧倒的な歓声がステージをビリビリと震わせる。
『ネクロマンサー』
「じゃあ一曲目『お前の母ちゃん何人!?』!!」
拍手と口笛と共に迎えられて、お通は一曲目を歌い始める。
ボケッと立ち尽くしたまま銀時が口を開く。
「…なんだよ、コレ」
「今、人気沸騰中のアイドル寺門 通ちゃんの初ライブだ」
「てめェェェ、人生を何だと思ってんだ!!」
怒りに眉をつり上げた銀時の放った踵落としが、男の脳天に突き刺さった。
目を剥いて倒れる男へ、冷ややかな眼差しで断言する。
「アイドル如きのために脱獄だ?一時の享楽のために、人生棒にふるつもりか?そんなんだからブタ箱にぶち込まれんだ、バカヤロー」
珍しく銀時が激昂する横で、神楽は気持ちよさそうに歌っていた。
「一瞬で人生を棒にふるった俺だからこそ、人生には見落としてならない大事な一瞬があることを知ってるのさ」
そう思っていると、本人からそれを認める言葉が放たれた。
むくりと起き上がり、恐ろしいまでの歓声を飛ばす。
「さァ、ねーちゃんも楽しもう!!L・O・V・E・お・つ・う!!L・O・V・E…」
猛烈なかけ声とエールを送る男に、これには二人も呆れてしまう。
いつもはボケに走る響古だか、今回は奉行所での取り調べ+aをされたもので(精神的に)疲れてボケる気もなかった。
「やってらんねェ。帰るぞ響古、神楽」
「そうだね…」
そんな二人とは対照的に、神楽はすっかり会場と一体化してしまった。
「え~。もうちょっと見たいきんたまむし」
「「影響されてんじゃねェェェ!!」」
改めて見渡すと、どれも皆、オタクのオーラを醸し出している。
場内の中に充満しているのは熱気と汗の臭い。
が、その濃度は普通ではない。
「ほとんど宗教じみてやがるな。なんか空気があつくてくさい気がする」
「人より余分に二酸化炭素発散して地球温暖化促進させて、見た目の暑苦しさから周囲の人の体感温度を引き上げまくってるのに、これ以上迷惑かけないでほしいわね」
響古はさらっと、全世界の太った人を敵に回す発言をする。
実はかなり怒ってるらしいです。
すると、視界の端に見覚えのある人物が飛び込んで、ある場所を指差した。
「銀、あそこ見て」
「ん?」
響古が指差した先に、銀時も視線を移す。
視線の先には揃いの羽織を纏い、
『L・O・V・E・お・つ・う』
「もっと大きい声で!!」
額にハチマキを巻いた集団が声出しをしていた。
その集団の前で、誰よりも物凄い気迫を纏った新八が指揮を取る。
「オイ、そこ何ボケッとしてんだ!声張れェェェ!!」
「すんません、隊長ォォォ!!」
いつもの物腰柔らかい少年にしては珍しい大声だった。
「オイ。いつから隊長になったんだオメーは」
「俺は生まれた時から、お通ちゃんの親衛隊隊長だァァ!!」
そう決め台詞を放つ新八だったが、後ろから現れた二人に仰天する。
これで、いつもの新八に戻りました。
「って…ギャアアアアア、銀さん、響古さん!?なんでこんな所に!?」
「こっちがききたいわよ。先に帰ったと思ったら、まさかアンタにこーゆー趣味があったとは…」
「てめー、こんな軟弱なもんに傾倒してやがったとは。てめーの姉ちゃんに何て謝ればいいんだ」
容姿が平凡で常識人な少年がアイドルに熱狂している。
その取り合わせの意外さに銀時は眉をひそめ、響古自身も驚く。
「僕が何しようと勝手だろ!!ガキじゃねーんだよ!!」
口汚く言い放った新八は鬼の形相で、
「あん、コラ」
二人を睨みつける。
ここぞとばかりに吠え立てる新八を前にして、響古は微妙な表情をする。
「ワォ。キャラまで違うよ」
ふと気づけば、マネージャーらしき女性がやって来た。
細いフレームの眼鏡をかけている、きつい顔立ちだった。
「ちょっと、そこのアナタ達。ライブ中にフラフラ歩かないで下さい、他のお客様の御迷惑になります」
キッと銀時達を睨むマネージャーの横で、
『L・O・V・E・お・つ・う。L・O・V・E・お・つ・う』
どこまでも響く親衛隊のかけ声が湧き上がる。
「スンマセン、マネージャーさん。俺が締め出しとくんで」
マネージャーからの注意を受けて、親衛隊の代表として表情を引き締める。
「やってみろやコラ」
「無理よ」
聞き捨てならない発言に銀時は睨み、響古は怜悧な眼差しで言う。
(ウン、無理だネ。新八なんかに銀ちゃんと響古は締め出せないアル。by神楽)
「あぁ、親衛隊の方?お願いするわ。今日はあの
「L・O・V・E・お・つ・う。L・O・V・E・お・つ・う」
「………!!」
不意にマネージャーはお通に声援を送る男を見つけ、驚愕の声を漏らす。
「アナタ…?」
男がマネージャーの声に振り返って、顔色を変えた。
溢れかえる声援の中、二人の空間だけが静寂に包まれる。
一方、強気な態度で言い放った新八は銀時に前髪を掴まれ、響古に足を踏まれていた。