第六十五訓
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豪華な界隈が立ち並ぶ、とある店。
松平は真選組の三人に神妙な面持ちで告げた。
「てめーらを呼んだのは他でもねェ。奴が、ついに動く」
「……とっつぁん、そりゃ確かかィ」
近藤は真面目な顔で聞き返す。
煙草を持った手で頬杖をつく土方ともんじゃ焼きを食べる沖田が両隣に座り、耳を傾ける。
「間違いねェ。奴の周りには、俺の密偵 が張ってる。奴はそれに勘づいてナリひそめてやがったが、我慢比べは俺達、年寄りに分があるってもんよ。我慢できずに動き出しやがった」
部屋の周りには厳重な警護がしてあり、この店特有の大きな鉄板の上で、もんじゃ焼きが美味しそうな音を立てる。
「俺ァ、もう後手に回るつもりはねーよ。幕府 の連中がガタガタ言うなら、腹切る覚悟だ…決戦だよ。奴も、奴の企みも全て潰す」
威厳をもって、秘密裏に動いてきた計画を遂行させる。
葉巻から吐き出される煙越しに、近藤は重々しく頷く。
「…そうか。とっつぁんがそのつもりなら、俺達の命もアンタに預ける」
「フン。頼りにしてるぜ」
松平は鼻を鳴らして席を立つ。
その声には、僅かに満足気なニュアンスが入っていたように感じられた。
三人は頭を下げて見送る。
「……………トシ…総悟。一つ確認しておきたい事がある」
「なんだ?」
近藤は真剣な顔を引きずったまま振り返る。
「………奴って誰かな?」
「しらねーのかよ!!」
翌日、親子連れやカップルで賑わう大江戸遊園地。
アトラクションとパビリオン、レストランや各種店舗などの施設が所狭しと賑やかに軒を連ねている。
そこに、一人の少女が腕にはめた時計を気にしながら相手を待っていた。
栗色の髪を耳の横で切り揃え、ミニスカ丈の着物に黒のニーソックスを履いている。
「おー、栗子。ワリィ、ワリィ、遅れちまって。待ったァ?」
声をかけてきたのは、ドレッドヘアの頭にサングラスをかけ、鼻輪などのピアスをあちこちにつけたチャラ男だった。
服装はというと、毛皮のコートを裸の上から羽織り、虎柄のズボンをだらしなく穿いている。
「いえ、私 も今来たところでござりまする。全然待ってませんでございまする」
「あ、なんだよ、よかった~、実は電車がさァ~………」
特徴的な語尾だが可愛らしい少女――栗子とヘラヘラ笑う男――七兵衛。
仲睦まじく遊園地を回る二人を、憎々しげに覗く人物がいた。
「…野郎…ふざけやがって。栗子はなァ、てめーが来るのを一時間も待ってたんだよ、バカヤロー」
茂みの奥に隠れて恨み言をつぶやく松平は両手にオープンフィンガーグローブをはめ、ライフル銃の焦点を合わせる。
「どーしてくれんだ、俺が手塩にかけて育てた娘の人生を一時間も無駄にしてくれやがって。残りの人生、全てで償ってもらおう」
一般人にライフル銃を構える警察庁長官がこの世に存在していていいのだろうか。
絶対よくない。
確実によくない。
心底よくない。
「オイ、トシ!お前、ちょっと土台になれ」
挙げ句の果てに狙撃の的になれと言われ、土方は激怒する。
「待たんかィィィ!!お前、何ィィィィ!?奴って、アレかァァ!?娘の彼氏ィ!?」
「彼氏じゃねェェ!認めねーよ、あんなチャラ男、パパは絶対、認めねーよ!」
「やかましーわ!!俺はお前を警察庁長官なんて、絶対認めねーよ!」
娘の彼氏が気に食わないという完全な私情で自分達を呼び出し、一般市民にライフル銃を構える警察のトップ。
そんなのは認めないと断言すると、ややこしいことに沖田も混ざった。
「土方さん、俺もアンタが真選組副長なんて、絶対認めねーよ!」
「おめーは黙ってろ!!」
「あなた達が警察だってことを、あたしは一般市民代表として認めてもいいのかしら?」
聞き慣れた声での、毒舌発言。
振り返ると、そこには本来いないはずの黒髪の美女が立っている。
「お前、なんでここにいるのォォォ!?」
「まァ、失礼しちゃう。このあたしがせっかく来たというのに、それはないんじゃない?」
いつもと全く変わらず、芯が通ったごとく背筋を伸ばし、長く艶やかな黒髪を赤いリボンでポニーテールにした響古だった。
「総悟に呼ばれたのよ。謎の任務があるから、来てみないかって」
「いや~、響古がいないと面白くないんでね」
悪魔めいた表情で沖田へ目配せすると、さすがドS同士。
すぐに飲み込んでくれた。
「おもっくそ私情じゃねーか!!」
つっこむ土方を無視し、沖田は気づいた。
女性にしてはすらりと背は高い――が、それでも若干沖田よりも低い身長。
それが、今や同じ目線で自分と並んでいる。
「響古、そーいや背が高くなったような…」
「フフ、気づいた?実はね、身長170cmになったの」
「ひゃっ、170cm!?そっ、それは……」
俺と並んでしまった……と驚愕する沖田だったが、どうにか心を落ち着かせる。
「…………」
松平は奇妙に思った。
あの真選組と親しげに会話する黒髪の美女。
もしや、こいつらの女なのでは――。
それに該当する人物へと視線を向け、にやりと笑って小指を立てた。
「…ずい分と綺麗な娘じゃねーか。トシ、お前のコレか?」
「べっ、別にそんなんじゃ…」
慌てた土方が言いかけようとした時。
「とっつぁん、響古は俺の女ですぜ」
沖田が口を挟んできた。
「ウソついてんじゃねー!」
苦笑を浮かべつつ近藤が紹介する。
「響古さん、この方が警察庁長官の松平片栗虎。通称"松平のとっつぁん"。俺達の上司だ」
響古は松平のヤクザちっくな顔を見やり、
「あ…」
と小さな声をあげた。
以前から聞いていたヤクザな上司が松平ということに気づいたのだろう。
が、その動揺は完璧に押し殺し、人形のように微笑みをキープする。
「初めまして。私、篠木 響古と言います。まさか、警察庁のトップに会えるとは思いませんでした」
丁寧かつ上品な話し方に、真選組は目を見張った。
だが、響古の表情はあくまで優雅に微笑んだままだ。
「…礼儀正しい、いい娘じゃねーか。なァ?」
松平が話しかけると、近藤達は嘆息する。
やたら尊大で冷淡な態度を取るのが響古だが、その気になれば誰とも上手くやれる外交家なのだ。
挨拶も終わったところで、土方は舌打ちして背を向ける。
「冗談じゃねェ。こっちは、仕事休んでまで来てやったってのに、娘のデート邪魔するだァ?やってられねェ、帰る」
「オイ、待て。俺がいつそんな事頼んだ。俺は、ただあの男を抹殺してほしいだけだ」
「もっとできるか」
本気でやりかねない松平のモンスターペアレントっぷりに溜め息が漏れる。
その間、響古は呼ばれた理由を沖田に訊ねていた。
「ねェ、総悟。今回は一体どんな理由で、こんな場所に?」
「とっつぁんの娘のデートを邪魔する任務ですね、こりゃ」
「……………へー、どんな子かしら」
途端、凛々しい美貌が豹変し、妖艶に口の端をつり上げる。
「響古?」
彼女の口許に浮かぶ笑みが、その雰囲気の違いを浮き彫りにしていた。
「あんなチャラ男が栗子を幸せにできると思うか?」
「別に結婚するわけじゃないですから、そんなに躍起になる必要もないと思いますよ。まだ子供なんですから」
警察庁長官を相手に言葉に詰まることもなく、しっかりとした口ぶりで自分の考えを流暢に語る。
また、上品な微笑みも絶やさず、さすが響古という猫かぶりを惜しげもなく見せ続ける。
「ホントの幸せ考えるなら、黙って見守りましょう。あの年の女の子は、好きな人と一緒にいるだけで幸せですから」
空気の読めない松平は諦め悪く言い放つ。
「響古ちゃん、俺だってなァ、娘の好きになった奴は認めてやりてーよ。悩んで…色々考えた…それで…抹殺しかねーなっていう結論に…」
「色々考えすぎだろ!マフィアかお前は!」
「警察なんて、ほとんどマフィアみたいなモンだよ」
「長官がとんでもねー事言ったよ」
これを聞いて、思わず土方は本気で警察なのかと疑い、響古は面白げにつぶやく。
「確かに『実録警察24時』とかでヤクザと対決してる警察は、どっちがヤクザかわかんないもん」
「それになァ、娘のためなら仏にもマフィアにも、なるのが父親ってもんよ」
「近藤さんよォ、この親バカになんとか言ってやってくれ」
全く話を聞かない警察庁長官に降参の白旗をあげ、近藤に声をかける。
「誰が近藤だ」
だが、返ってきたのはガチャガチャ組み立てる音。
切れ長の瞳を向けた瞬間、サングラスとグローブを装着する近藤がいた。
「殺し屋、ゴリラ13 と呼べ」
肩にライフル銃を担ぎ、殺し屋と名乗る。
「何やってんの、アンタ…13ってなんだよ?」
「不吉の象徴、今年に入って13回女に振られた」
なんとも女運が悪い。
大方、妙にフラれたのだろう。
「オイ、とっつぁん、俺も手伝うぜ。栗子ちゃんは小さい頃から見知って、俺も妹のように思ってる、あんな男にやれん」
小さい頃から可愛がってきた少女の彼氏がチャラ男……それが許せなくて、松平の意見に同意する。
「俺は男のくせに、チャラチャラ着飾った軟弱者が大嫌いなんだ。栗子ちゃんは、俺みたいな質実剛健な男が似合ってる気がする」
「いや、お前みたいな奴はいやだ」
「栗子ちゃんは、俺みたいな、豪放磊落 な男が似合ってる気がする」
「いや、お前みたいな奴はいやだ」
何、どさくさに紛れて自分を売り込んでるんですか、近藤さん。
しかも、全て拒否されてます。
松平は真選組の三人に神妙な面持ちで告げた。
「てめーらを呼んだのは他でもねェ。奴が、ついに動く」
「……とっつぁん、そりゃ確かかィ」
近藤は真面目な顔で聞き返す。
煙草を持った手で頬杖をつく土方ともんじゃ焼きを食べる沖田が両隣に座り、耳を傾ける。
「間違いねェ。奴の周りには、俺の
部屋の周りには厳重な警護がしてあり、この店特有の大きな鉄板の上で、もんじゃ焼きが美味しそうな音を立てる。
「俺ァ、もう後手に回るつもりはねーよ。
威厳をもって、秘密裏に動いてきた計画を遂行させる。
葉巻から吐き出される煙越しに、近藤は重々しく頷く。
「…そうか。とっつぁんがそのつもりなら、俺達の命もアンタに預ける」
「フン。頼りにしてるぜ」
松平は鼻を鳴らして席を立つ。
その声には、僅かに満足気なニュアンスが入っていたように感じられた。
三人は頭を下げて見送る。
「……………トシ…総悟。一つ確認しておきたい事がある」
「なんだ?」
近藤は真剣な顔を引きずったまま振り返る。
「………奴って誰かな?」
「しらねーのかよ!!」
翌日、親子連れやカップルで賑わう大江戸遊園地。
アトラクションとパビリオン、レストランや各種店舗などの施設が所狭しと賑やかに軒を連ねている。
そこに、一人の少女が腕にはめた時計を気にしながら相手を待っていた。
栗色の髪を耳の横で切り揃え、ミニスカ丈の着物に黒のニーソックスを履いている。
「おー、栗子。ワリィ、ワリィ、遅れちまって。待ったァ?」
声をかけてきたのは、ドレッドヘアの頭にサングラスをかけ、鼻輪などのピアスをあちこちにつけたチャラ男だった。
服装はというと、毛皮のコートを裸の上から羽織り、虎柄のズボンをだらしなく穿いている。
「いえ、
「あ、なんだよ、よかった~、実は電車がさァ~………」
特徴的な語尾だが可愛らしい少女――栗子とヘラヘラ笑う男――七兵衛。
仲睦まじく遊園地を回る二人を、憎々しげに覗く人物がいた。
「…野郎…ふざけやがって。栗子はなァ、てめーが来るのを一時間も待ってたんだよ、バカヤロー」
茂みの奥に隠れて恨み言をつぶやく松平は両手にオープンフィンガーグローブをはめ、ライフル銃の焦点を合わせる。
「どーしてくれんだ、俺が手塩にかけて育てた娘の人生を一時間も無駄にしてくれやがって。残りの人生、全てで償ってもらおう」
一般人にライフル銃を構える警察庁長官がこの世に存在していていいのだろうか。
絶対よくない。
確実によくない。
心底よくない。
「オイ、トシ!お前、ちょっと土台になれ」
挙げ句の果てに狙撃の的になれと言われ、土方は激怒する。
「待たんかィィィ!!お前、何ィィィィ!?奴って、アレかァァ!?娘の彼氏ィ!?」
「彼氏じゃねェェ!認めねーよ、あんなチャラ男、パパは絶対、認めねーよ!」
「やかましーわ!!俺はお前を警察庁長官なんて、絶対認めねーよ!」
娘の彼氏が気に食わないという完全な私情で自分達を呼び出し、一般市民にライフル銃を構える警察のトップ。
そんなのは認めないと断言すると、ややこしいことに沖田も混ざった。
「土方さん、俺もアンタが真選組副長なんて、絶対認めねーよ!」
「おめーは黙ってろ!!」
「あなた達が警察だってことを、あたしは一般市民代表として認めてもいいのかしら?」
聞き慣れた声での、毒舌発言。
振り返ると、そこには本来いないはずの黒髪の美女が立っている。
「お前、なんでここにいるのォォォ!?」
「まァ、失礼しちゃう。このあたしがせっかく来たというのに、それはないんじゃない?」
いつもと全く変わらず、芯が通ったごとく背筋を伸ばし、長く艶やかな黒髪を赤いリボンでポニーテールにした響古だった。
「総悟に呼ばれたのよ。謎の任務があるから、来てみないかって」
「いや~、響古がいないと面白くないんでね」
悪魔めいた表情で沖田へ目配せすると、さすがドS同士。
すぐに飲み込んでくれた。
「おもっくそ私情じゃねーか!!」
つっこむ土方を無視し、沖田は気づいた。
女性にしてはすらりと背は高い――が、それでも若干沖田よりも低い身長。
それが、今や同じ目線で自分と並んでいる。
「響古、そーいや背が高くなったような…」
「フフ、気づいた?実はね、身長170cmになったの」
「ひゃっ、170cm!?そっ、それは……」
俺と並んでしまった……と驚愕する沖田だったが、どうにか心を落ち着かせる。
「…………」
松平は奇妙に思った。
あの真選組と親しげに会話する黒髪の美女。
もしや、こいつらの女なのでは――。
それに該当する人物へと視線を向け、にやりと笑って小指を立てた。
「…ずい分と綺麗な娘じゃねーか。トシ、お前のコレか?」
「べっ、別にそんなんじゃ…」
慌てた土方が言いかけようとした時。
「とっつぁん、響古は俺の女ですぜ」
沖田が口を挟んできた。
「ウソついてんじゃねー!」
苦笑を浮かべつつ近藤が紹介する。
「響古さん、この方が警察庁長官の松平片栗虎。通称"松平のとっつぁん"。俺達の上司だ」
響古は松平のヤクザちっくな顔を見やり、
「あ…」
と小さな声をあげた。
以前から聞いていたヤクザな上司が松平ということに気づいたのだろう。
が、その動揺は完璧に押し殺し、人形のように微笑みをキープする。
「初めまして。私、篠木 響古と言います。まさか、警察庁のトップに会えるとは思いませんでした」
丁寧かつ上品な話し方に、真選組は目を見張った。
だが、響古の表情はあくまで優雅に微笑んだままだ。
「…礼儀正しい、いい娘じゃねーか。なァ?」
松平が話しかけると、近藤達は嘆息する。
やたら尊大で冷淡な態度を取るのが響古だが、その気になれば誰とも上手くやれる外交家なのだ。
挨拶も終わったところで、土方は舌打ちして背を向ける。
「冗談じゃねェ。こっちは、仕事休んでまで来てやったってのに、娘のデート邪魔するだァ?やってられねェ、帰る」
「オイ、待て。俺がいつそんな事頼んだ。俺は、ただあの男を抹殺してほしいだけだ」
「もっとできるか」
本気でやりかねない松平のモンスターペアレントっぷりに溜め息が漏れる。
その間、響古は呼ばれた理由を沖田に訊ねていた。
「ねェ、総悟。今回は一体どんな理由で、こんな場所に?」
「とっつぁんの娘のデートを邪魔する任務ですね、こりゃ」
「……………へー、どんな子かしら」
途端、凛々しい美貌が豹変し、妖艶に口の端をつり上げる。
「響古?」
彼女の口許に浮かぶ笑みが、その雰囲気の違いを浮き彫りにしていた。
「あんなチャラ男が栗子を幸せにできると思うか?」
「別に結婚するわけじゃないですから、そんなに躍起になる必要もないと思いますよ。まだ子供なんですから」
警察庁長官を相手に言葉に詰まることもなく、しっかりとした口ぶりで自分の考えを流暢に語る。
また、上品な微笑みも絶やさず、さすが響古という猫かぶりを惜しげもなく見せ続ける。
「ホントの幸せ考えるなら、黙って見守りましょう。あの年の女の子は、好きな人と一緒にいるだけで幸せですから」
空気の読めない松平は諦め悪く言い放つ。
「響古ちゃん、俺だってなァ、娘の好きになった奴は認めてやりてーよ。悩んで…色々考えた…それで…抹殺しかねーなっていう結論に…」
「色々考えすぎだろ!マフィアかお前は!」
「警察なんて、ほとんどマフィアみたいなモンだよ」
「長官がとんでもねー事言ったよ」
これを聞いて、思わず土方は本気で警察なのかと疑い、響古は面白げにつぶやく。
「確かに『実録警察24時』とかでヤクザと対決してる警察は、どっちがヤクザかわかんないもん」
「それになァ、娘のためなら仏にもマフィアにも、なるのが父親ってもんよ」
「近藤さんよォ、この親バカになんとか言ってやってくれ」
全く話を聞かない警察庁長官に降参の白旗をあげ、近藤に声をかける。
「誰が近藤だ」
だが、返ってきたのはガチャガチャ組み立てる音。
切れ長の瞳を向けた瞬間、サングラスとグローブを装着する近藤がいた。
「殺し屋、ゴリラ
肩にライフル銃を担ぎ、殺し屋と名乗る。
「何やってんの、アンタ…13ってなんだよ?」
「不吉の象徴、今年に入って13回女に振られた」
なんとも女運が悪い。
大方、妙にフラれたのだろう。
「オイ、とっつぁん、俺も手伝うぜ。栗子ちゃんは小さい頃から見知って、俺も妹のように思ってる、あんな男にやれん」
小さい頃から可愛がってきた少女の彼氏がチャラ男……それが許せなくて、松平の意見に同意する。
「俺は男のくせに、チャラチャラ着飾った軟弱者が大嫌いなんだ。栗子ちゃんは、俺みたいな質実剛健な男が似合ってる気がする」
「いや、お前みたいな奴はいやだ」
「栗子ちゃんは、俺みたいな、
「いや、お前みたいな奴はいやだ」
何、どさくさに紛れて自分を売り込んでるんですか、近藤さん。
しかも、全て拒否されてます。