第六十四訓
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えいりあん騒ぎが収束し、日もすっかり暮れた夜、皆は『スナックお登勢』に集まった。
ウンターに突っ伏した響古と消沈した様子の新八。
そこに、失業してしまった長谷川が同席する。
「そーかィ。あのチャイナ娘、ホントに星に帰っちまったのか」
「…ええ。僕も止めたんですけど…銀さんと響古さんが、やっぱり親の元にいるのが一番いいって」
「そーさな。あんな根無し草の所にいるよりは、マシだわな」
怠惰な銀髪の男を思い出して長谷川がぼやくと、まとめるようにお登勢は言う。
「フン、うるさいガキだったけど、いなくなったらいなくなったでさびしいもんがあるね。響古、大丈夫かィ?」
響古はカウンターに突っ伏したまま力なく答える。
「…だいじょーぶでーす」
「どこがだい。まったく、そんなに落ちこむんだったら、止めればよかったんじゃないか」
「そーですよ。響古さんが言えば……」
新八も同感だった。
確かに彼女が言えば、きっと考え直してくれるはず。
「い~の」
二人の意見を一蹴した響古はコップの酒を呷 る。
「…………これで、よかったの」
そうして再び突っ伏すと、店の中は物悲しい雰囲気に包まれる。
いつもは飲みにくる中年の客達で賑わっているここも、今日ばかりは貸し切り状態。
響古達の沈んだ様子を窓から覗く、小さな影が一つ。
――ムフフ…みんな、スッカリおちこんじゃって。
――私がいないとそんなに、さびしいアルか。
――しばらくこのまま、捨て置いてくれるわ。
星海坊主と一緒に帰ることなく、神楽は帰ってきていた。
だが、なんとなく普通に帰るのは腹正しい。
――思いしるがいいネ、お前達にとって、私がいかに大切な存在であったかを!
――そうすれば…響古だって、もっと可愛がってくれるヨ!
自分の存在を思い知ればいいのだ。
耳に届く声、ひそかに見つめる先の沈んだ様子に笑みをこぼす。
神楽はにやける笑みをそのままに目線を動かしては、ある人物を探していた。
――それにしても、一番肝心な奴がいないネ。
――どこ行った、あのモジャモジャ?
そんな空気の中、ガラリと開いたのは厠の戸。
――厠か、さては…便所で一人、悲しみにうちひしがれ、泣いていたアルか。
厠から出てきた銀時は悲壮感に打ちひしがれる。
「あーーー。なんで、こんな事になっちまったかな」
――眼でも腫れたアルか?
ぷぷっ、と笑いを堪える神楽は次の瞬間、後ろにひっくり返った。
「やべーよ、オイ。やっぱ、あきらかに腫れてるみたいなんだけど、大事なとこが」
真剣な顔で股間を押さえる銀時に、新八は眉をひそめる。
「え~~。汚い手でさわったんじゃないスか、アンタ」
「お前と一緒にするな。年幾つだと思ってんだ」
「病気か?誰かにうつされたか、オイ」
「お前と一緒にするな、危ない橋は、俺は渡らねー。大体、俺は響古一筋だっつーの」
恋人がいる手前、銀時はすぐさま否定する。
すると、響古が微笑みながら言った。
「んっふふ。あたしの許可なく他の女に手を出すってことは、執行猶予抜きで超死刑即殺だからね」
艶やかで、悪魔的で、本能的な恐怖を刺激されて堪らない笑み。
その笑みと言葉に恐怖に打ち震えつつ、銀時は響古と長谷川の間に座る。
――あの野郎 ォォ、人がいなくなったってのに、どこ腫らしてんだァァ。
悲しみに暮れていると思いきや、大事な部分が腫れて悩む銀時。
神楽は柵を両手で握りしめ、怒気を剥き出しにする。
「気のせいじゃないスか?元々、そういう大きさだったとか」
――話を元に戻せ。
「違ーよ。アイツは、もっとこう、謙虚な奴だったよな。こんな大きさ、響古に突っ込んでる時しかなんねーよ」
故郷に帰った少女のことなどすっかり忘れ、股間の腫れで話が進む。
――オイ、いい加減にするアル。
――ってか、響古に振るな!
夜の情事を話に出され、響古は顔を歪めた。
「人が酒を飲んでる前で下ネタ言わないでちょうだい……あたしが思うに、そこそこある方だと思うけど」
――えぇぇ、答えちゃうのォ!!
昔からの言い伝えでは、ミミズに尿をかけると腫れると信じられている。
お登勢はそう思って訊ねた。
「どっかでミミズに小便でも、ひっかけてきたんじゃないかィ?腫れるっていうよね」
「何言っちゃってんの。迷信だろ、そんな…」
そんなのは迷信だと鼻で笑った後、えいりあんの死骸に星海坊主とかけたことを思い出す。
――あっ…。
あの時、堤防にいた響古も思い出し、胡乱そうに目を細める。
本当にミミズにかけたのかと、お登勢は疑いの顔を向ける。
「アンタ…まさか」
「いやいや、ミミズじゃねーよ…ミミズっぽい、えいりあんに…」
銀時は引きつった笑いで、お登勢の懸念を振り払った。
ところが、ずっと静観していたキャサリンが追い討ちをかける。
「エイリアンニ、小便カケタンデスカ?ア~~ア。モウ、ダメダソリャ。私ノ友達、ソレヤッテ今ハ、星ニナリマシタ」
「え?星になっちゃったの、何それ?どーなるの俺?俺っていうか、もう一人の俺」
銀時は衝撃的な発言に目を見開いて、己の下半身を見つめる。
つられて響古も覗き込み、遠い目でつぶやく。
「そのまま、星になったらどうかしら?」
――だから、その話はもういいっていってんだろーがァァ。
「俺のが星になったら、困るのはお前だろ」
「別に困らないわよ。ほら、女の子っていう方法もあるから」
下ネタの話が弾む面々。
神楽はそれを、冷ややかな眼差しで店内を窺う。
――股間の話しかしてないヨ、何?
――アイツら、私いない時はいつも股間の話しかしてないアルか。
するとスナックの戸が開かれ、一人の客が訪れた。
「こんばんは~」
やって来たのは妙だった。
――アネゴ!!
しかし、その格好は着物ではなく、袖なしチャイナ服にポニーテールの髪型を両側頭でお団子にしている。
彼女の格好を見た##NAME 2##が反応する。
「ワォ。今日の妙、着物じゃなくチャイナなのね。とても似合ってるわ。ところで、スリットと太ももの間に指入れてもいい?」
「まぁ、響古さんったら……!」
なかなかマニアックなお願いなのに、妙は満更でもなさそうに顔を赤らめる。
「姉上、なんですか、その格好?」
「ああ、今私の店、チャイナ娘強化月間で、みんなチャイナ服着て仕事してるのよ」
「チャイナ娘強化月間ってなんですか、何が強化されるんですか?」
「男の妄想よ」
聞き慣れない単語に新八は首を捻るが、妙はにこやかに断言する。
しかも、響古も賛同するように大きく頷いている。
「ナース服しかりメイド服しかり、いつもと違う姿を見たら、男は色々妄想するのよ」
「どーかしら、銀さん?」
ということで、華麗に着こなすチャイナ服を銀時に披露する。
「ヤベーよ。この年で星になっちゃうの俺、いやだよ」
「あー、今、何話しても無駄、理由はきくな」
ブツブツと独り言をつぶやく銀時に代わって、長谷川が返す。
その悲しげな様子から、妙は申し訳なさそうに眉を下げる。
「まァ、そんなに神楽ちゃんのこと…御免なさい。思い出させるような事して」
――そーそー、その話、さすが姐御アル。
「響古さん、御免なさい。あんなに神楽ちゃんのことを妹のように可愛がっていたのに……」
「あ…うん、平気よ」
そう答える響古の顔は暗いままで、微笑みも弱々しかった。
これぞ儚げといった風情ではあるが、少女としてはそんなことも言っていられない。
――響古…やっぱり、さびしいアルか……嬉しいヨ、私も大好きヨ!
自分のことを思ってくれている黒髪の美女に、ひそかに感激する。
「神楽ちゃんがいなくなってきいたものだから、みんなさびしがると思って、今日はコレ持ってきたんです」
妙は抱えていた荷物をおもむろに包みから剥ぎ、カウンターに置いた。
それは『鬼嫁』の酒瓶。
「こーゆう時はコレ、飲んで忘れましょ」
『鬼嫁』のラベルを見た途端、響古は目を輝かせる。
「ワォ!『鬼嫁』じゃん。まさか、二度目が来るとは思わなかったわ」
「うおっ。コレ高い酒だよ、どーしたの?」
「お店からパク…もらってきたんですぅ~」
店から盗んだとうっかり口を滑らしそうになる妙。
――アレ?
――姐御?
めったに手に入らない高級な日本酒への興味が大いに高まるのは、もはや必然であった。
――違う…違うヨ…忘れる?
――忘れちゃうの?
故郷に帰っていた少女との思い出を語り合ってしんみりになるどころか、アルコールの力を借りて飲んで忘れる。
予想外の事態に汗を一筋垂らす。
「忘れることで、前に進めることだってあるでしょ。嫌なことは、アルコールと一緒に流しましょう。ねっ、銀さん、響古さん」
酒瓶ごとドクドクとコップに注ぎ、銀時と響古に話しかける。
――嫌なこと?
――嫌なことアルか?
「いや、無理だろコレ。だって常に俺の股にぶらさがってるわけだからね」
――オメーは股のことしか頭にないアルか。
煙草を吹かしていたお登勢が帰っていった神楽を気遣うように口を開く。
「まァ、アイツだったら元気にやってくさ。生きてりゃ、また会えるよ」
お登勢のありがたい話を誰も聞いておらず、
「どーぞ」
「あ、スンマセン」
妙はニコニコと長谷川にお酌をする。
――ババァ、誰もきいてねェヨ。
「どうぞ、響古さん。あなたにそんな暗い顔は似合いませんよ」
ウンターに突っ伏した響古と消沈した様子の新八。
そこに、失業してしまった長谷川が同席する。
「そーかィ。あのチャイナ娘、ホントに星に帰っちまったのか」
「…ええ。僕も止めたんですけど…銀さんと響古さんが、やっぱり親の元にいるのが一番いいって」
「そーさな。あんな根無し草の所にいるよりは、マシだわな」
怠惰な銀髪の男を思い出して長谷川がぼやくと、まとめるようにお登勢は言う。
「フン、うるさいガキだったけど、いなくなったらいなくなったでさびしいもんがあるね。響古、大丈夫かィ?」
響古はカウンターに突っ伏したまま力なく答える。
「…だいじょーぶでーす」
「どこがだい。まったく、そんなに落ちこむんだったら、止めればよかったんじゃないか」
「そーですよ。響古さんが言えば……」
新八も同感だった。
確かに彼女が言えば、きっと考え直してくれるはず。
「い~の」
二人の意見を一蹴した響古はコップの酒を
「…………これで、よかったの」
そうして再び突っ伏すと、店の中は物悲しい雰囲気に包まれる。
いつもは飲みにくる中年の客達で賑わっているここも、今日ばかりは貸し切り状態。
響古達の沈んだ様子を窓から覗く、小さな影が一つ。
――ムフフ…みんな、スッカリおちこんじゃって。
――私がいないとそんなに、さびしいアルか。
――しばらくこのまま、捨て置いてくれるわ。
星海坊主と一緒に帰ることなく、神楽は帰ってきていた。
だが、なんとなく普通に帰るのは腹正しい。
――思いしるがいいネ、お前達にとって、私がいかに大切な存在であったかを!
――そうすれば…響古だって、もっと可愛がってくれるヨ!
自分の存在を思い知ればいいのだ。
耳に届く声、ひそかに見つめる先の沈んだ様子に笑みをこぼす。
神楽はにやける笑みをそのままに目線を動かしては、ある人物を探していた。
――それにしても、一番肝心な奴がいないネ。
――どこ行った、あのモジャモジャ?
そんな空気の中、ガラリと開いたのは厠の戸。
――厠か、さては…便所で一人、悲しみにうちひしがれ、泣いていたアルか。
厠から出てきた銀時は悲壮感に打ちひしがれる。
「あーーー。なんで、こんな事になっちまったかな」
――眼でも腫れたアルか?
ぷぷっ、と笑いを堪える神楽は次の瞬間、後ろにひっくり返った。
「やべーよ、オイ。やっぱ、あきらかに腫れてるみたいなんだけど、大事なとこが」
真剣な顔で股間を押さえる銀時に、新八は眉をひそめる。
「え~~。汚い手でさわったんじゃないスか、アンタ」
「お前と一緒にするな。年幾つだと思ってんだ」
「病気か?誰かにうつされたか、オイ」
「お前と一緒にするな、危ない橋は、俺は渡らねー。大体、俺は響古一筋だっつーの」
恋人がいる手前、銀時はすぐさま否定する。
すると、響古が微笑みながら言った。
「んっふふ。あたしの許可なく他の女に手を出すってことは、執行猶予抜きで超死刑即殺だからね」
艶やかで、悪魔的で、本能的な恐怖を刺激されて堪らない笑み。
その笑みと言葉に恐怖に打ち震えつつ、銀時は響古と長谷川の間に座る。
――あの
悲しみに暮れていると思いきや、大事な部分が腫れて悩む銀時。
神楽は柵を両手で握りしめ、怒気を剥き出しにする。
「気のせいじゃないスか?元々、そういう大きさだったとか」
――話を元に戻せ。
「違ーよ。アイツは、もっとこう、謙虚な奴だったよな。こんな大きさ、響古に突っ込んでる時しかなんねーよ」
故郷に帰った少女のことなどすっかり忘れ、股間の腫れで話が進む。
――オイ、いい加減にするアル。
――ってか、響古に振るな!
夜の情事を話に出され、響古は顔を歪めた。
「人が酒を飲んでる前で下ネタ言わないでちょうだい……あたしが思うに、そこそこある方だと思うけど」
――えぇぇ、答えちゃうのォ!!
昔からの言い伝えでは、ミミズに尿をかけると腫れると信じられている。
お登勢はそう思って訊ねた。
「どっかでミミズに小便でも、ひっかけてきたんじゃないかィ?腫れるっていうよね」
「何言っちゃってんの。迷信だろ、そんな…」
そんなのは迷信だと鼻で笑った後、えいりあんの死骸に星海坊主とかけたことを思い出す。
――あっ…。
あの時、堤防にいた響古も思い出し、胡乱そうに目を細める。
本当にミミズにかけたのかと、お登勢は疑いの顔を向ける。
「アンタ…まさか」
「いやいや、ミミズじゃねーよ…ミミズっぽい、えいりあんに…」
銀時は引きつった笑いで、お登勢の懸念を振り払った。
ところが、ずっと静観していたキャサリンが追い討ちをかける。
「エイリアンニ、小便カケタンデスカ?ア~~ア。モウ、ダメダソリャ。私ノ友達、ソレヤッテ今ハ、星ニナリマシタ」
「え?星になっちゃったの、何それ?どーなるの俺?俺っていうか、もう一人の俺」
銀時は衝撃的な発言に目を見開いて、己の下半身を見つめる。
つられて響古も覗き込み、遠い目でつぶやく。
「そのまま、星になったらどうかしら?」
――だから、その話はもういいっていってんだろーがァァ。
「俺のが星になったら、困るのはお前だろ」
「別に困らないわよ。ほら、女の子っていう方法もあるから」
下ネタの話が弾む面々。
神楽はそれを、冷ややかな眼差しで店内を窺う。
――股間の話しかしてないヨ、何?
――アイツら、私いない時はいつも股間の話しかしてないアルか。
するとスナックの戸が開かれ、一人の客が訪れた。
「こんばんは~」
やって来たのは妙だった。
――アネゴ!!
しかし、その格好は着物ではなく、袖なしチャイナ服にポニーテールの髪型を両側頭でお団子にしている。
彼女の格好を見た##NAME 2##が反応する。
「ワォ。今日の妙、着物じゃなくチャイナなのね。とても似合ってるわ。ところで、スリットと太ももの間に指入れてもいい?」
「まぁ、響古さんったら……!」
なかなかマニアックなお願いなのに、妙は満更でもなさそうに顔を赤らめる。
「姉上、なんですか、その格好?」
「ああ、今私の店、チャイナ娘強化月間で、みんなチャイナ服着て仕事してるのよ」
「チャイナ娘強化月間ってなんですか、何が強化されるんですか?」
「男の妄想よ」
聞き慣れない単語に新八は首を捻るが、妙はにこやかに断言する。
しかも、響古も賛同するように大きく頷いている。
「ナース服しかりメイド服しかり、いつもと違う姿を見たら、男は色々妄想するのよ」
「どーかしら、銀さん?」
ということで、華麗に着こなすチャイナ服を銀時に披露する。
「ヤベーよ。この年で星になっちゃうの俺、いやだよ」
「あー、今、何話しても無駄、理由はきくな」
ブツブツと独り言をつぶやく銀時に代わって、長谷川が返す。
その悲しげな様子から、妙は申し訳なさそうに眉を下げる。
「まァ、そんなに神楽ちゃんのこと…御免なさい。思い出させるような事して」
――そーそー、その話、さすが姐御アル。
「響古さん、御免なさい。あんなに神楽ちゃんのことを妹のように可愛がっていたのに……」
「あ…うん、平気よ」
そう答える響古の顔は暗いままで、微笑みも弱々しかった。
これぞ儚げといった風情ではあるが、少女としてはそんなことも言っていられない。
――響古…やっぱり、さびしいアルか……嬉しいヨ、私も大好きヨ!
自分のことを思ってくれている黒髪の美女に、ひそかに感激する。
「神楽ちゃんがいなくなってきいたものだから、みんなさびしがると思って、今日はコレ持ってきたんです」
妙は抱えていた荷物をおもむろに包みから剥ぎ、カウンターに置いた。
それは『鬼嫁』の酒瓶。
「こーゆう時はコレ、飲んで忘れましょ」
『鬼嫁』のラベルを見た途端、響古は目を輝かせる。
「ワォ!『鬼嫁』じゃん。まさか、二度目が来るとは思わなかったわ」
「うおっ。コレ高い酒だよ、どーしたの?」
「お店からパク…もらってきたんですぅ~」
店から盗んだとうっかり口を滑らしそうになる妙。
――アレ?
――姐御?
めったに手に入らない高級な日本酒への興味が大いに高まるのは、もはや必然であった。
――違う…違うヨ…忘れる?
――忘れちゃうの?
故郷に帰っていた少女との思い出を語り合ってしんみりになるどころか、アルコールの力を借りて飲んで忘れる。
予想外の事態に汗を一筋垂らす。
「忘れることで、前に進めることだってあるでしょ。嫌なことは、アルコールと一緒に流しましょう。ねっ、銀さん、響古さん」
酒瓶ごとドクドクとコップに注ぎ、銀時と響古に話しかける。
――嫌なこと?
――嫌なことアルか?
「いや、無理だろコレ。だって常に俺の股にぶらさがってるわけだからね」
――オメーは股のことしか頭にないアルか。
煙草を吹かしていたお登勢が帰っていった神楽を気遣うように口を開く。
「まァ、アイツだったら元気にやってくさ。生きてりゃ、また会えるよ」
お登勢のありがたい話を誰も聞いておらず、
「どーぞ」
「あ、スンマセン」
妙はニコニコと長谷川にお酌をする。
――ババァ、誰もきいてねェヨ。
「どうぞ、響古さん。あなたにそんな暗い顔は似合いませんよ」