第四十七訓
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ある日の朝。
神楽はこの世のものとは思えない絶叫をあげた。
「ぎゃああああ、助けてェェェェ!!ヘルス!ヘルスミー!!」
寝室である押し入れの襖を蹴破ると、洗面所にいる銀時と響古のもとへ疾走する。
「ヘルプミーな…どした」
「恐い夢でも見たの?」
髭を剃る銀時はまずつっこみ、響古は髪を梳 す手を止め、首を傾げた。
「ゴッ、ゴッ、ゴキブリぃぃ!!私っ…私の部屋!!」
切羽詰まった顔で見上げる少女の瞳には、もうはっきりと恐怖がある。
「何だお前、宇宙最強のくせにゴキブリだめなの?」
「ダメ!油ギッシュ!!シェイプ!シェイプアップ乱!!」
「ヘルプミーな。お前なァ、江戸で生きてくって事は、ゴキブリと共に生きていく事と同じだぜ」
すると、物凄い衝撃が響古の美貌に駆け抜けた。
まさか、嫌、うそ、とその顔に書いている。
「あ、あ……あたしもダメ!イニシャルGだけは絶対無理!」
Gと言ってその生物の名前を呼ぼうとしない響古。
涙目で訴える彼女にドキドキしつつ、銀時は思い出した。
「あぁ…お前、ゴキブリはアウトだったな。見とけ、江戸っ子の生き様を」
殺虫剤を片手に、Gが出現したという押し入れの襖を勢いよく開ける。
そして黒い物体が目に入った瞬間、
「うおおおおお!!」
不覚にも悲鳴をあげた。
その悲鳴は万事屋の外にも響き、ちょうど出勤してきた新八の耳に届いた。
「おはよーございまーす…どしたんですか?」
挨拶をしつつ不思議そうに玄関を開けると、腰の引けた銀時達がいた。
「ゴッ…ゴキブリ!ものっそいゴキブリ!」
「「パルプ!パルプフィクション!」」
「ヘルプミーな」
「ハァ?ゴキブリ?何を今さら…江戸で生きてくって事はねェ、ゴキブリと同じ部活に入るよーなもんですよ」
両手を腰に当てて、呆れた口調で言う新八は殺虫剤を持つ。
「見といてくださいよ。江戸っ子の心意気」
「オイ。志村、うしろ」
強気な態度で押し入れに向かう新八に、銀時が顔を青ざめて指差す。
そこには、普通ではあり得ない――人間とほぼ同じ大きさの黒いあいつが少年の背中に貼りついていた。
「ぎゃっふァアアア!!ヘッ…ヘルペス!ヘルペスミー!!」
「ヘルプミーな」
混乱しすぎてもう訳がわからない悲鳴が響き渡る中、銀時は冷静に訂正した。
いつもと様子が違うキャスターのニュース速報が報道される。
理由は現在、江戸が危機に瀕しているからだ。
「えー、今日は、通常の番組内容を変更しまして、江戸中で異常発生している、巨大ゴキブリについて徹底討論していきたいと思います」
江戸で異常発生されている巨大G はあちこちで目撃され、テレビではトップニュースとして特集された。
「それにつきまして、宇宙中の動物の権威であられる、央国星のハタ様に色々うかがいたいと思います。さっそくなんですが皇子、アレは本当にゴキブリなんですかね?」
キャスターの紹介で、コメンテーターとしてハタが出演していた。
声のトーンを落とし、しかつめらしい顔をつくる。
「ゴキブリには違いないが、地球産ではあるまい。恐らく地球に入ってきた異星の船と共に、江戸に入りこんだんだのじゃろう」
さすがはハタ、動物の知識は無駄に詳しい。
「宇宙ゴキブリというわけですか」
「スペースゴキブリじゃ」
「いや、宇宙ゴキブリでいいでしょ」
「スペースゴキブリって言ってんだろ、やんのかコラ。ちょっとカメラ止めろ」
何やら物々しい様子と、いつもとは違うキャスターのニュース速報。
お登勢とキャサリンはスナックに備えつけられたテレビでニュースを見ていた。
「宇宙ゴキブリデスッテ」
「いやだね~。まさかウチにはいないだろうね」
本来なら、こんな耳障りで最悪な単語が行き交うニュースなど点けもしないが……問題点は、江戸での大量発生。
もしかしたらウチにもいるかもしれないことを考えると、消すに消せない。
その時、スナックの頭上で、ガタガタ、という音が響いた。
江戸っ子の生き様も心意気もどこへ行ったのか、四人は居間へ逃げ込み、侵入口を遮断した。
「なんスか、アレ。なんであんなんいるんスか?」
「あれ、ホントにゴキブリアルか」
「なんであんなにデカイのよ」
もっともな意見を三人は口にする。
普段の銀時ならばそれを聞いて鼻で笑うだろう。
しかし、彼は顔を背けるだけだった。
「しらねーよ」
この投げやりなコメントに、三人の反応は全て辛辣なものだった。
「しらねーよって、アンタの家でしょ。アレはねェ、アンタがつくりだした化け物だ」
「君のだらしない生活が、あんな悲しいモンスターを生み出してしまったんだヨ、銀時君」
「そうだ。全てお前の責任だ、なんとかしろ」
「てめーらも住んでるよーなもんだろーが!!」
銀時が反論すれば、響古はそっと目を伏せた。
(そうは言っても、いくら掃除してもすぐ散らかすのはほとんど銀じゃないの。by.篠木)
「でも、おかしいですよね。この家、響古さんが掃除してるのに…」
新八の真摯な忠言に、響古は考え込んだ。
「もしかして、掃除が足りなかったとか?」
「こいつァ仮説だが、俺ァ、恐らくコレが関係してると思う」
銀時が取り出したのは、神楽の大好物である駄菓子の酢昆布。
「あ。私の酢昆布…食べられてる」
「恐らく、酢昆布を食することによって、奴らの中で何か予想できない超反応が起こり、あんなことに」
至極真面目な顔で語る彼の憶測に、本気で信じているらしい響古と神楽は驚愕する。
「「マジでか!!」」
「ヤバイよ。あんなモン誕生させた上、もしアレが街に逃げたら僕ら、袋叩きですよ」
「そうなる前に、俺達で駆除する。なんとしても、この家から出すな」
「そーいえば新八、殺虫剤はどーしたの?」
「恐らく効かねーだろうが、ないよりはマシだろう」
Gを撃退できる唯一の武器を求めて、新八に視線を移す。
「あっ、あっち置いてきちゃった」
彼のミスで殺虫剤は玄関に転がっていた。
「お前勘弁しろよ~。お前はホント、新八だな」
「だからお前は、いつまでたっても新八なんだヨ」
「全く、これだから新八は…いざという時に役に立たないんだから」
コイツ使えね~な~、という冷ややかな視線が突き刺さる。
「なんだァァ!!新八という存在そのものを全否定か!!許さん!許さんぞ!」
十人並みの気の強さしか持たない新八も、この態度にはさすがに少年としての誇りを傷つけられる。
怒りと共に声を張り上げた。
「とってきてやるよ、コノヤロー!巨大ゴキブリがなんだ、チキショー!!てめーのケツくらい、てめーでふくよ!血が出るまでふき続けてやるよ!」
新八は扉から顔を出すと、周りに何もないことを確認し、意味もなくゴロゴロと前転。
そして玄関まで到達、転がっている殺虫剤を掴んだ。
その時、ガササ、と不吉な物音が聞こえ、ハッとする。
「ぎゃああああああ」
刹那、殺到する小さな害虫の群れが襲いかかる。
引き続き、巨大Gの特集をテレビは克明に報道する。
「えー。宇宙ゴキブリの被害にあわれた方から、次々とFAX送られてきています」
次々と被害情報が寄せられ、司会者は読み上げる。
「中には、赤ん坊が襲われた、ペットが食べられた、などという、大変恐ろしい情報も入っているんですが…」
巨大Gは通りかかった森、山、自然を破壊し、そこに住む生き物も食らい尽くしていく。
江戸の住民は今のところ最小の被害で避難できているようだが、赤ん坊やペットは丸ごと蹂躙されていった。
「どーですか、皇子?」
「ゴキブリは肉食じゃからの~。皆さん、気をつけてたもれ。あと、絶対に殺してはいかん。さっき言った通り、大変なことになるぞ」
しみじみ言わないでほしい。
あんな黒くて足が速くて油ぎっしゅで地上最強級の生命力を持った生物が、宇宙レベルの強さに称さないでほしい。
「まったく厄介ですね。肉食怪虫ゴキブーリといったところでしょうか」
「肉食怪虫ゴッキブリじゃ」
「いや、ゴキブーリでいくから」
「ゴッキブリっていってんだろが。もっかいやるか、コラ」
番組の途中で乱闘の合図が鳴る中、お登勢とキャサリンは危うくGを殺そうとしていたらしく、胸を撫で下ろす。
「殺シチャダメナンダッテ」
「あぶない、あぶない。殺 るところだったよ…でも、一体何が起こるってんだィ」
窓の外で、何やら黒い物体が飛び交うのを横目で捉えながら、江戸の異変に訝しむ。
頭上から聞こえる騒がしい音に眉を寄せた。
「…さっきから何やってんだ、アイツら」
本日二回目の新八の悲鳴。
銀時達は飛び出すように廊下へ出ると彼の姿はなく、一匹の巨大Gがいるだけだった。
スリッパと言う名の強力な武器を装備すると渾身の力で叩きのめす。
「うらァァァァ!!」
「たかが、害虫の分際でェェェ!!」
「死ねェェ、コラァァ!!」
「てめっ、一人で大きくなったような顔しやがってよォォ!!誰が、ここまで育ててやったと思ってんだァァァ!?」
散々スリッパで叩きのめした後、Gは昇天したのか全く動かない。
おとなしくなったところで新八を探すが、やはり見当たらない。
「新八は?」
「見当たらないわ」
「銀ちゃん、響古…新八、まさかコイツに」
最悪な出来事を神楽は想像し、つぶやくが相手は巨大ながらもGだ。
そんなことはないと銀時は言う。
「バカ言っちゃイカンよ。たかだかデカイだけのゴキブリに…」
すると、Gの口から唾液と共に眼鏡が吐き出された。
『新八ィィィィ!!出せェェェェェ!!てめ、出せコラァァ!!』
銀時達はGの腹を一斉に蹴り上げる。
「何味だった!?新八は何味だった、コルァ!!コーンポタージュか!それとも、めんたい味なのかァ!!」
「銀ちゃん、響古。定春もいないヨ、キノコの回以来見てないヨ!」
「何味だった、コルァ!!たこ焼き味か!それともサラミ味なのかァ!!」
「ってか、なんでうまい棒の味なんだよコルァ!!」
執拗に腹部を蹴り続け、吐くよう訴えているとGは奇声をあげた。
「オヤオヤ。泣いちゃったよ、このぼっちゃん」
「泣いてすむならなァ、ポリスはいらねーんだ、バカヤロー」
「泣くんなら、新八と定春返してから泣けっつーんだよ」
これが仲間を呼ぶ鳴き声であると、テレビをつけていない万事屋では誰も知るはずもない。
「兄貴ィ、姐さん。マジ、こいつどーしてやりましょーか」
「とりあえず、事務所こい…」
次の瞬間、大量のGが編隊を組んで扉を押し破った。
かさかさと飛び跳ね、一部は羽を開き、空まで飛ぶ。
銀時と神楽は白目を剥き、響古は恐怖のあまり気絶してしまう。
神楽はこの世のものとは思えない絶叫をあげた。
「ぎゃああああ、助けてェェェェ!!ヘルス!ヘルスミー!!」
寝室である押し入れの襖を蹴破ると、洗面所にいる銀時と響古のもとへ疾走する。
「ヘルプミーな…どした」
「恐い夢でも見たの?」
髭を剃る銀時はまずつっこみ、響古は髪を
「ゴッ、ゴッ、ゴキブリぃぃ!!私っ…私の部屋!!」
切羽詰まった顔で見上げる少女の瞳には、もうはっきりと恐怖がある。
「何だお前、宇宙最強のくせにゴキブリだめなの?」
「ダメ!油ギッシュ!!シェイプ!シェイプアップ乱!!」
「ヘルプミーな。お前なァ、江戸で生きてくって事は、ゴキブリと共に生きていく事と同じだぜ」
すると、物凄い衝撃が響古の美貌に駆け抜けた。
まさか、嫌、うそ、とその顔に書いている。
「あ、あ……あたしもダメ!イニシャルGだけは絶対無理!」
Gと言ってその生物の名前を呼ぼうとしない響古。
涙目で訴える彼女にドキドキしつつ、銀時は思い出した。
「あぁ…お前、ゴキブリはアウトだったな。見とけ、江戸っ子の生き様を」
殺虫剤を片手に、Gが出現したという押し入れの襖を勢いよく開ける。
そして黒い物体が目に入った瞬間、
「うおおおおお!!」
不覚にも悲鳴をあげた。
その悲鳴は万事屋の外にも響き、ちょうど出勤してきた新八の耳に届いた。
「おはよーございまーす…どしたんですか?」
挨拶をしつつ不思議そうに玄関を開けると、腰の引けた銀時達がいた。
「ゴッ…ゴキブリ!ものっそいゴキブリ!」
「「パルプ!パルプフィクション!」」
「ヘルプミーな」
「ハァ?ゴキブリ?何を今さら…江戸で生きてくって事はねェ、ゴキブリと同じ部活に入るよーなもんですよ」
両手を腰に当てて、呆れた口調で言う新八は殺虫剤を持つ。
「見といてくださいよ。江戸っ子の心意気」
「オイ。志村、うしろ」
強気な態度で押し入れに向かう新八に、銀時が顔を青ざめて指差す。
そこには、普通ではあり得ない――人間とほぼ同じ大きさの黒いあいつが少年の背中に貼りついていた。
「ぎゃっふァアアア!!ヘッ…ヘルペス!ヘルペスミー!!」
「ヘルプミーな」
混乱しすぎてもう訳がわからない悲鳴が響き渡る中、銀時は冷静に訂正した。
いつもと様子が違うキャスターのニュース速報が報道される。
理由は現在、江戸が危機に瀕しているからだ。
「えー、今日は、通常の番組内容を変更しまして、江戸中で異常発生している、巨大ゴキブリについて徹底討論していきたいと思います」
江戸で異常発生されている巨大
「それにつきまして、宇宙中の動物の権威であられる、央国星のハタ様に色々うかがいたいと思います。さっそくなんですが皇子、アレは本当にゴキブリなんですかね?」
キャスターの紹介で、コメンテーターとしてハタが出演していた。
声のトーンを落とし、しかつめらしい顔をつくる。
「ゴキブリには違いないが、地球産ではあるまい。恐らく地球に入ってきた異星の船と共に、江戸に入りこんだんだのじゃろう」
さすがはハタ、動物の知識は無駄に詳しい。
「宇宙ゴキブリというわけですか」
「スペースゴキブリじゃ」
「いや、宇宙ゴキブリでいいでしょ」
「スペースゴキブリって言ってんだろ、やんのかコラ。ちょっとカメラ止めろ」
何やら物々しい様子と、いつもとは違うキャスターのニュース速報。
お登勢とキャサリンはスナックに備えつけられたテレビでニュースを見ていた。
「宇宙ゴキブリデスッテ」
「いやだね~。まさかウチにはいないだろうね」
本来なら、こんな耳障りで最悪な単語が行き交うニュースなど点けもしないが……問題点は、江戸での大量発生。
もしかしたらウチにもいるかもしれないことを考えると、消すに消せない。
その時、スナックの頭上で、ガタガタ、という音が響いた。
江戸っ子の生き様も心意気もどこへ行ったのか、四人は居間へ逃げ込み、侵入口を遮断した。
「なんスか、アレ。なんであんなんいるんスか?」
「あれ、ホントにゴキブリアルか」
「なんであんなにデカイのよ」
もっともな意見を三人は口にする。
普段の銀時ならばそれを聞いて鼻で笑うだろう。
しかし、彼は顔を背けるだけだった。
「しらねーよ」
この投げやりなコメントに、三人の反応は全て辛辣なものだった。
「しらねーよって、アンタの家でしょ。アレはねェ、アンタがつくりだした化け物だ」
「君のだらしない生活が、あんな悲しいモンスターを生み出してしまったんだヨ、銀時君」
「そうだ。全てお前の責任だ、なんとかしろ」
「てめーらも住んでるよーなもんだろーが!!」
銀時が反論すれば、響古はそっと目を伏せた。
(そうは言っても、いくら掃除してもすぐ散らかすのはほとんど銀じゃないの。by.篠木)
「でも、おかしいですよね。この家、響古さんが掃除してるのに…」
新八の真摯な忠言に、響古は考え込んだ。
「もしかして、掃除が足りなかったとか?」
「こいつァ仮説だが、俺ァ、恐らくコレが関係してると思う」
銀時が取り出したのは、神楽の大好物である駄菓子の酢昆布。
「あ。私の酢昆布…食べられてる」
「恐らく、酢昆布を食することによって、奴らの中で何か予想できない超反応が起こり、あんなことに」
至極真面目な顔で語る彼の憶測に、本気で信じているらしい響古と神楽は驚愕する。
「「マジでか!!」」
「ヤバイよ。あんなモン誕生させた上、もしアレが街に逃げたら僕ら、袋叩きですよ」
「そうなる前に、俺達で駆除する。なんとしても、この家から出すな」
「そーいえば新八、殺虫剤はどーしたの?」
「恐らく効かねーだろうが、ないよりはマシだろう」
Gを撃退できる唯一の武器を求めて、新八に視線を移す。
「あっ、あっち置いてきちゃった」
彼のミスで殺虫剤は玄関に転がっていた。
「お前勘弁しろよ~。お前はホント、新八だな」
「だからお前は、いつまでたっても新八なんだヨ」
「全く、これだから新八は…いざという時に役に立たないんだから」
コイツ使えね~な~、という冷ややかな視線が突き刺さる。
「なんだァァ!!新八という存在そのものを全否定か!!許さん!許さんぞ!」
十人並みの気の強さしか持たない新八も、この態度にはさすがに少年としての誇りを傷つけられる。
怒りと共に声を張り上げた。
「とってきてやるよ、コノヤロー!巨大ゴキブリがなんだ、チキショー!!てめーのケツくらい、てめーでふくよ!血が出るまでふき続けてやるよ!」
新八は扉から顔を出すと、周りに何もないことを確認し、意味もなくゴロゴロと前転。
そして玄関まで到達、転がっている殺虫剤を掴んだ。
その時、ガササ、と不吉な物音が聞こえ、ハッとする。
「ぎゃああああああ」
刹那、殺到する小さな害虫の群れが襲いかかる。
引き続き、巨大Gの特集をテレビは克明に報道する。
「えー。宇宙ゴキブリの被害にあわれた方から、次々とFAX送られてきています」
次々と被害情報が寄せられ、司会者は読み上げる。
「中には、赤ん坊が襲われた、ペットが食べられた、などという、大変恐ろしい情報も入っているんですが…」
巨大Gは通りかかった森、山、自然を破壊し、そこに住む生き物も食らい尽くしていく。
江戸の住民は今のところ最小の被害で避難できているようだが、赤ん坊やペットは丸ごと蹂躙されていった。
「どーですか、皇子?」
「ゴキブリは肉食じゃからの~。皆さん、気をつけてたもれ。あと、絶対に殺してはいかん。さっき言った通り、大変なことになるぞ」
しみじみ言わないでほしい。
あんな黒くて足が速くて油ぎっしゅで地上最強級の生命力を持った生物が、宇宙レベルの強さに称さないでほしい。
「まったく厄介ですね。肉食怪虫ゴキブーリといったところでしょうか」
「肉食怪虫ゴッキブリじゃ」
「いや、ゴキブーリでいくから」
「ゴッキブリっていってんだろが。もっかいやるか、コラ」
番組の途中で乱闘の合図が鳴る中、お登勢とキャサリンは危うくGを殺そうとしていたらしく、胸を撫で下ろす。
「殺シチャダメナンダッテ」
「あぶない、あぶない。
窓の外で、何やら黒い物体が飛び交うのを横目で捉えながら、江戸の異変に訝しむ。
頭上から聞こえる騒がしい音に眉を寄せた。
「…さっきから何やってんだ、アイツら」
本日二回目の新八の悲鳴。
銀時達は飛び出すように廊下へ出ると彼の姿はなく、一匹の巨大Gがいるだけだった。
スリッパと言う名の強力な武器を装備すると渾身の力で叩きのめす。
「うらァァァァ!!」
「たかが、害虫の分際でェェェ!!」
「死ねェェ、コラァァ!!」
「てめっ、一人で大きくなったような顔しやがってよォォ!!誰が、ここまで育ててやったと思ってんだァァァ!?」
散々スリッパで叩きのめした後、Gは昇天したのか全く動かない。
おとなしくなったところで新八を探すが、やはり見当たらない。
「新八は?」
「見当たらないわ」
「銀ちゃん、響古…新八、まさかコイツに」
最悪な出来事を神楽は想像し、つぶやくが相手は巨大ながらもGだ。
そんなことはないと銀時は言う。
「バカ言っちゃイカンよ。たかだかデカイだけのゴキブリに…」
すると、Gの口から唾液と共に眼鏡が吐き出された。
『新八ィィィィ!!出せェェェェェ!!てめ、出せコラァァ!!』
銀時達はGの腹を一斉に蹴り上げる。
「何味だった!?新八は何味だった、コルァ!!コーンポタージュか!それとも、めんたい味なのかァ!!」
「銀ちゃん、響古。定春もいないヨ、キノコの回以来見てないヨ!」
「何味だった、コルァ!!たこ焼き味か!それともサラミ味なのかァ!!」
「ってか、なんでうまい棒の味なんだよコルァ!!」
執拗に腹部を蹴り続け、吐くよう訴えているとGは奇声をあげた。
「オヤオヤ。泣いちゃったよ、このぼっちゃん」
「泣いてすむならなァ、ポリスはいらねーんだ、バカヤロー」
「泣くんなら、新八と定春返してから泣けっつーんだよ」
これが仲間を呼ぶ鳴き声であると、テレビをつけていない万事屋では誰も知るはずもない。
「兄貴ィ、姐さん。マジ、こいつどーしてやりましょーか」
「とりあえず、事務所こい…」
次の瞬間、大量のGが編隊を組んで扉を押し破った。
かさかさと飛び跳ね、一部は羽を開き、空まで飛ぶ。
銀時と神楽は白目を剥き、響古は恐怖のあまり気絶してしまう。