第四十六訓
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お登勢に呼び出されてスナックの前へ行くと、そこには大量のカニが積まれていた。
「オイオイオイオイ。どーしたんだ、コレ?」
真っ赤で鮮やかな甲羅を目の前に、銀時は驚きの声を漏らす。
「竜宮城にでもいってきたのか、バーさん。顔もシワだらけじゃねーか」
「殺すぞ若白髪」
銀時の皮肉なコメントに、お登勢は即座に切り返す。
「こいつァ、知り合いにもらったんだよ。冷蔵庫ぶっ壊れて、全部いたんじまってね」
こんなにたくさんのカニを全部傷ませるなんてもったいない。
「ちょっとアンタらも、捨てるの手伝っておくれよ」
滅多に見ることのできない高級食材を、銀時と響古は名残惜しげに見つめる。
「できることなら、食べるの手伝いたかったぜ。勿体ねーな」
「そうよねェ。カニって、なかなか食べれないし」
ぼってりとした身体に細かな毛を生やした、甘い身とカニみそのコクが嬉しい毛ガニ、真っ赤で鮮やかな甲羅に、濃厚な味わいの身を隠した花咲ガニ、そして長い脚に、カニかまじゃあない、本物の長い身を持ったタラバガニと。
まさにカニ・ロック・フェスティバルなカニ祭り状態であった。
「ちょっとアンタら、間違っても食べようなんて考えんじゃないよ。カニはアンタ、あたるとひどいからね」
お登勢の忠告にカニの入った箱を持ち上げて、四人は反論の言葉を並べる。
「いい加減にしてくださいよ。いくら僕らだってねェ、腐ったものにまで手ェ出しませんよ」
「そーですよ。そのくらいの常識はあります」
「カニは腐ると食えねーがな、侍は腐っても侍なんだよ」
「なめんなよ、ババー」
大仰な口調で、傷んだカニは食べないと語る。
「ハイハイ。じゃ、頼んだよ」
お登勢は呆れた口調で四人を送り出した。
数時間後……結局カニを食べてしまった四人は食中毒を起こし、救急車が駆けつける。
苦悶の表情で担架に運ばれる哀れな四人を、お登勢とキャサリンは煙草を片手に見送る。
「…だから食うなって言ったのに。まさか、響古まで…」
「意外ニ、意地汚イトコロアリマスカラ…ホントニ、馬鹿ナ連中デスネ…」
冷ややかに言った直後、キャサリンも腹を押さえて座り込む。
「ぐぉォォ」
「意地汚さなら、お前の方が上だろーが。オメーも早く病院行ってこい、バカ」
朝日がまだ残る時間帯。
日差しが病院の白々とした外観を照らし、清潔感を表す。
――今年はまるで厄年だ。
――思い出すのは、悪い思い出ばかり。
長谷川は果てしなく遠い目で今年の出来事を思い起こす。
これまでこなした職業はタクシーの運転手、祭りの屋台、海の家のえいりあん退治。
――もう何度、職を変えたかわからんし、ようやく見つけた仕事も、謎のオッさんの襲撃でオジャン、車は炎上。
(謎のオッさん襲撃事件は第四十五訓を読んでね)
「…ククク、なんか、もう笑けてくるな」
大江戸病院の窓から、長谷川は頭と首に包帯を巻き、右脇に松葉杖を挟んだ痛々しい姿で煙草を吸っていた。
「アッハッハッハー、殺せよォォォ!!俺のことが気にくわないんだろォ、神様ァ!!俺も、お前なんか大嫌いだ、バーカ!!」
人生の悲哀を感じさせるような雄叫びをあげ、サングラスから滂沱と涙を流す。
「長谷川さん」
そこへ、一人の看護婦が眉を下げて困ったふうに注意をする。
「もォーー、こんな所でタバコ吸っちゃダメって言ったでしょ
「あ…スマン…つい…」
「それから、まだあんまり出歩いちゃダメよ。ケガにさわるわ。さっ、部屋に戻りましょ」
彼女は松葉杖の身体を支え、甲斐甲斐しく介抱してくれる。
看護婦の名前は内野。
ショートカットの可愛らしい顔立ちで患者には優しく、そして甲斐甲斐しく接している。
――彼女はこの病院の看護婦、内野さん。
――気だてが良く、面倒見のいい娘で何かと世話を焼いてくれる。
――何よりもべっぴんさんだ。
――患者達のアイドルとして、みんなに慕われている。
長谷川の身体を支える内野さんは、お世辞抜きで可愛かった。
移動の途中、他の患者達から手を振られると内野さんも笑顔で手を振る。
――今年、俺の周りでいいことといえば、彼女と会えたことぐらいだろうか。
――だが、その夢も長くは続かない…何故なら夢とは、
やっとのことで到着すると、今まで長谷川一人だった病室に騒々しい声が届いた。
「なーにが、食べ物は腐る一歩手前が一番うまいだよ!完全に腐ってたじゃねーかァ!!」
「なんでも人のせいにしてんじゃねェ!!男は十六過ぎたら、自分の胃袋に責任持て、バーカ!」
「はぁ、カニ鍋、カニしゃぶ…って、お前らうるっさいわ!静かにしろォォ!!」
「看護婦サーン、おかわりィィ!!」
点滴器具で殴りかかる新八と枕で応戦する銀時、痛い目に遭ったのにもかかわらずカニを欲する響古と、病院食にがっつく神楽が相室になった。
「あっ、今日から入院 った人達。仲良くしてね」
――夢とはいつも、簡単に悪夢に変わるからだ。
新しく入院してきた四人の患者を紹介され、長谷川は顔を青ざめて愕然とした。
「へェー、じゃあ皆さん。長谷川さんのお友達なんだ」
大勢が余裕で収容される病室。
内野さんは四人と長谷川が知り合いだとわかり、笑みをこぼす。
「フフ、よかったね、長谷川さん。これで入院生活もさびしくないじゃない」
「止めてくれ、内野さん。コイツらとはただの腐れ縁」
「ちょいとちょいと。今、腐れだとかそうゆう言葉に敏感だから、やめてホント」
忌まわしい記憶が過ぎり、銀時は嫌そうに眉を寄せる。
不意に、内野さんは響古に視線を移すと頬をほのかに染める。
「あたしの顔に、何かついてますか?」
首元で緩く結った黒髪を揺らして首を傾げる。
いつものポニーテールではないので、髪型をちょっと変えるだけで印象が変わってしまう。
「いっ、いえ!!」
慌てて首を振った内野さんは言いにくそうに、ぼそぼそと答える。
「…あの……れい……で」
年齢不相応の幼さだ。
その表情はひどく愛らしい。
微笑ましく見つめる響古。
銀時はそれを、半分呆れ気味な視線で見つめる。
「なんていうか、その……綺麗な人だなーって…思って…」
途端、内野さんは恥ずかしそうに視線を落とした。
すると、響古は彼女を自分のベッドに座らせ、妖しい笑みを浮かべる。
「んっふふ、ありがと…でも、ウッチーも可愛いわよ?」
"ウッチー"なんて親しみを込めた呼び方で呼ばれ、怒ると思いきや。
「そっ、そんなことありません!響古さんと私なんて、月とスッポン程の差がありますよ!」
力強く言われ、響古は目を丸くするが、すぐに笑ってなだめる。
「ウッチー、落ち着いて」
ポンポンと肩を叩かれ、内野さんはさらに顔を真っ赤にする。
「え?アレ?何コレ?何この禁断っぽい光景」
「アレ?響古ちゃんって、こんなキャラだっけ?」
男子禁制の、女の子同士の会話には入っていけないので、新八と長谷川は真っ赤になりつつもチラチラ見る。
「オーイ、響古。いくら女が好きでもナースに手を出しちゃダメだぞー」
この中で一番冷静な銀時は頬杖をついている。
含みのある口調だった。
深く突っ込むべきかどうか。
「……………っ」
そして神楽は、ゴクリと唾を飲み込む。
真っ赤になりつつも興味津々に見ているのは、自分も混ざりたい感情なのか。
「しかし、アンタもつくづくツいてねーな。謎のオッさんに襲われたって?」
話の内容は長谷川の入院理由へと移行していく。
「この管理社会においてさァ、謎のオッさんに遭遇すること自体、稀有 だぜ」
「まァ、命に別状がなくてよかったじゃないですか。不幸中の幸いってことで」
銀時と響古はバナナをもっさもっさと食べる。
「ねェ、なんで人の見舞い品、あたり前のように食べてるの?」
新八と神楽もバナナをもっさもっさと食べていた。
「長谷川さん見てたら、食中毒如きで苦しんでた自分が、バカらしく思えてきましたよ」
「アリガトネ、バナナのオッサン」
「いや、バナナのオッサンじゃなくて、オッサンのバナナだから。それは」
人の見舞い品を食べるのを止めようとするが、もっさもっさと咀嚼する。
そして内野さんも、バナナをもっさもっさと食べていた。
「食中毒になった直後にもの食べれるなんて、元気な人達ね。長谷川さんも負けてられないわよ。いっぱい食べて、元気モリモリにならなくちゃ」
「なんで、元気モリモリの人が食べてんですか?」
些細なボケを残しつつ、内野さんは仕事に戻るため病室を後にする。
「じゃあ、私仕事戻るけど、みんな仲良くね」
病室を出ようとした途端、扉にぶつかった。
「いたた」
どこか天然な彼女は、やはり同じ女の響古から見ても可愛らしいと思う。
その証拠に、男性連中は骨抜き状態だ。
「…銀サン、やっぱりナースっていいですね」
「例えばさァ、7点の娘がいるだろ?だがナース服を着ることによって、これが10点になる」
看護婦が男にとって永遠の憧れであり、入院中には天使にも見えるというのは随分昔からの定説だ。
「マジすか。じゃあ、私がナースになったら大変アルヨ。一体、何点アルか?」
いつの間にかナース服装着の神楽に、銀時と新八は点数をつける。
「「3点」」
この辛辣な評価に、神楽は怒りを抑えきれない。
「コルァ、どーゆう事だ。ゼロからの出発点か?逆境からの出発か?コルァ」
「オイオイオイオイ。どーしたんだ、コレ?」
真っ赤で鮮やかな甲羅を目の前に、銀時は驚きの声を漏らす。
「竜宮城にでもいってきたのか、バーさん。顔もシワだらけじゃねーか」
「殺すぞ若白髪」
銀時の皮肉なコメントに、お登勢は即座に切り返す。
「こいつァ、知り合いにもらったんだよ。冷蔵庫ぶっ壊れて、全部いたんじまってね」
こんなにたくさんのカニを全部傷ませるなんてもったいない。
「ちょっとアンタらも、捨てるの手伝っておくれよ」
滅多に見ることのできない高級食材を、銀時と響古は名残惜しげに見つめる。
「できることなら、食べるの手伝いたかったぜ。勿体ねーな」
「そうよねェ。カニって、なかなか食べれないし」
ぼってりとした身体に細かな毛を生やした、甘い身とカニみそのコクが嬉しい毛ガニ、真っ赤で鮮やかな甲羅に、濃厚な味わいの身を隠した花咲ガニ、そして長い脚に、カニかまじゃあない、本物の長い身を持ったタラバガニと。
まさにカニ・ロック・フェスティバルなカニ祭り状態であった。
「ちょっとアンタら、間違っても食べようなんて考えんじゃないよ。カニはアンタ、あたるとひどいからね」
お登勢の忠告にカニの入った箱を持ち上げて、四人は反論の言葉を並べる。
「いい加減にしてくださいよ。いくら僕らだってねェ、腐ったものにまで手ェ出しませんよ」
「そーですよ。そのくらいの常識はあります」
「カニは腐ると食えねーがな、侍は腐っても侍なんだよ」
「なめんなよ、ババー」
大仰な口調で、傷んだカニは食べないと語る。
「ハイハイ。じゃ、頼んだよ」
お登勢は呆れた口調で四人を送り出した。
数時間後……結局カニを食べてしまった四人は食中毒を起こし、救急車が駆けつける。
苦悶の表情で担架に運ばれる哀れな四人を、お登勢とキャサリンは煙草を片手に見送る。
「…だから食うなって言ったのに。まさか、響古まで…」
「意外ニ、意地汚イトコロアリマスカラ…ホントニ、馬鹿ナ連中デスネ…」
冷ややかに言った直後、キャサリンも腹を押さえて座り込む。
「ぐぉォォ」
「意地汚さなら、お前の方が上だろーが。オメーも早く病院行ってこい、バカ」
朝日がまだ残る時間帯。
日差しが病院の白々とした外観を照らし、清潔感を表す。
――今年はまるで厄年だ。
――思い出すのは、悪い思い出ばかり。
長谷川は果てしなく遠い目で今年の出来事を思い起こす。
これまでこなした職業はタクシーの運転手、祭りの屋台、海の家のえいりあん退治。
――もう何度、職を変えたかわからんし、ようやく見つけた仕事も、謎のオッさんの襲撃でオジャン、車は炎上。
(謎のオッさん襲撃事件は第四十五訓を読んでね)
「…ククク、なんか、もう笑けてくるな」
大江戸病院の窓から、長谷川は頭と首に包帯を巻き、右脇に松葉杖を挟んだ痛々しい姿で煙草を吸っていた。
「アッハッハッハー、殺せよォォォ!!俺のことが気にくわないんだろォ、神様ァ!!俺も、お前なんか大嫌いだ、バーカ!!」
人生の悲哀を感じさせるような雄叫びをあげ、サングラスから滂沱と涙を流す。
「長谷川さん」
そこへ、一人の看護婦が眉を下げて困ったふうに注意をする。
「もォーー、こんな所でタバコ吸っちゃダメって言ったでしょ
「あ…スマン…つい…」
「それから、まだあんまり出歩いちゃダメよ。ケガにさわるわ。さっ、部屋に戻りましょ」
彼女は松葉杖の身体を支え、甲斐甲斐しく介抱してくれる。
看護婦の名前は内野。
ショートカットの可愛らしい顔立ちで患者には優しく、そして甲斐甲斐しく接している。
――彼女はこの病院の看護婦、内野さん。
――気だてが良く、面倒見のいい娘で何かと世話を焼いてくれる。
――何よりもべっぴんさんだ。
――患者達のアイドルとして、みんなに慕われている。
長谷川の身体を支える内野さんは、お世辞抜きで可愛かった。
移動の途中、他の患者達から手を振られると内野さんも笑顔で手を振る。
――今年、俺の周りでいいことといえば、彼女と会えたことぐらいだろうか。
――だが、その夢も長くは続かない…何故なら夢とは、
やっとのことで到着すると、今まで長谷川一人だった病室に騒々しい声が届いた。
「なーにが、食べ物は腐る一歩手前が一番うまいだよ!完全に腐ってたじゃねーかァ!!」
「なんでも人のせいにしてんじゃねェ!!男は十六過ぎたら、自分の胃袋に責任持て、バーカ!」
「はぁ、カニ鍋、カニしゃぶ…って、お前らうるっさいわ!静かにしろォォ!!」
「看護婦サーン、おかわりィィ!!」
点滴器具で殴りかかる新八と枕で応戦する銀時、痛い目に遭ったのにもかかわらずカニを欲する響古と、病院食にがっつく神楽が相室になった。
「あっ、今日から
――夢とはいつも、簡単に悪夢に変わるからだ。
新しく入院してきた四人の患者を紹介され、長谷川は顔を青ざめて愕然とした。
「へェー、じゃあ皆さん。長谷川さんのお友達なんだ」
大勢が余裕で収容される病室。
内野さんは四人と長谷川が知り合いだとわかり、笑みをこぼす。
「フフ、よかったね、長谷川さん。これで入院生活もさびしくないじゃない」
「止めてくれ、内野さん。コイツらとはただの腐れ縁」
「ちょいとちょいと。今、腐れだとかそうゆう言葉に敏感だから、やめてホント」
忌まわしい記憶が過ぎり、銀時は嫌そうに眉を寄せる。
不意に、内野さんは響古に視線を移すと頬をほのかに染める。
「あたしの顔に、何かついてますか?」
首元で緩く結った黒髪を揺らして首を傾げる。
いつものポニーテールではないので、髪型をちょっと変えるだけで印象が変わってしまう。
「いっ、いえ!!」
慌てて首を振った内野さんは言いにくそうに、ぼそぼそと答える。
「…あの……れい……で」
年齢不相応の幼さだ。
その表情はひどく愛らしい。
微笑ましく見つめる響古。
銀時はそれを、半分呆れ気味な視線で見つめる。
「なんていうか、その……綺麗な人だなーって…思って…」
途端、内野さんは恥ずかしそうに視線を落とした。
すると、響古は彼女を自分のベッドに座らせ、妖しい笑みを浮かべる。
「んっふふ、ありがと…でも、ウッチーも可愛いわよ?」
"ウッチー"なんて親しみを込めた呼び方で呼ばれ、怒ると思いきや。
「そっ、そんなことありません!響古さんと私なんて、月とスッポン程の差がありますよ!」
力強く言われ、響古は目を丸くするが、すぐに笑ってなだめる。
「ウッチー、落ち着いて」
ポンポンと肩を叩かれ、内野さんはさらに顔を真っ赤にする。
「え?アレ?何コレ?何この禁断っぽい光景」
「アレ?響古ちゃんって、こんなキャラだっけ?」
男子禁制の、女の子同士の会話には入っていけないので、新八と長谷川は真っ赤になりつつもチラチラ見る。
「オーイ、響古。いくら女が好きでもナースに手を出しちゃダメだぞー」
この中で一番冷静な銀時は頬杖をついている。
含みのある口調だった。
深く突っ込むべきかどうか。
「……………っ」
そして神楽は、ゴクリと唾を飲み込む。
真っ赤になりつつも興味津々に見ているのは、自分も混ざりたい感情なのか。
「しかし、アンタもつくづくツいてねーな。謎のオッさんに襲われたって?」
話の内容は長谷川の入院理由へと移行していく。
「この管理社会においてさァ、謎のオッさんに遭遇すること自体、
「まァ、命に別状がなくてよかったじゃないですか。不幸中の幸いってことで」
銀時と響古はバナナをもっさもっさと食べる。
「ねェ、なんで人の見舞い品、あたり前のように食べてるの?」
新八と神楽もバナナをもっさもっさと食べていた。
「長谷川さん見てたら、食中毒如きで苦しんでた自分が、バカらしく思えてきましたよ」
「アリガトネ、バナナのオッサン」
「いや、バナナのオッサンじゃなくて、オッサンのバナナだから。それは」
人の見舞い品を食べるのを止めようとするが、もっさもっさと咀嚼する。
そして内野さんも、バナナをもっさもっさと食べていた。
「食中毒になった直後にもの食べれるなんて、元気な人達ね。長谷川さんも負けてられないわよ。いっぱい食べて、元気モリモリにならなくちゃ」
「なんで、元気モリモリの人が食べてんですか?」
些細なボケを残しつつ、内野さんは仕事に戻るため病室を後にする。
「じゃあ、私仕事戻るけど、みんな仲良くね」
病室を出ようとした途端、扉にぶつかった。
「いたた」
どこか天然な彼女は、やはり同じ女の響古から見ても可愛らしいと思う。
その証拠に、男性連中は骨抜き状態だ。
「…銀サン、やっぱりナースっていいですね」
「例えばさァ、7点の娘がいるだろ?だがナース服を着ることによって、これが10点になる」
看護婦が男にとって永遠の憧れであり、入院中には天使にも見えるというのは随分昔からの定説だ。
「マジすか。じゃあ、私がナースになったら大変アルヨ。一体、何点アルか?」
いつの間にかナース服装着の神楽に、銀時と新八は点数をつける。
「「3点」」
この辛辣な評価に、神楽は怒りを抑えきれない。
「コルァ、どーゆう事だ。ゼロからの出発点か?逆境からの出発か?コルァ」