第四十五訓
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とある早朝、もはや江戸に住まう男性の中ではアイドル的に人気を博する"朝の顔"が今日も元気にそれを伝えていた。
《――全国的にさわやかな秋晴れになるもようでございますが、女心と秋の空は移ろいやすいものでございますから、もし降ってきても、私のせいにしないでくださいませ》
天気予報のコーナーなのに、なんとも無責任な発言をする結野アナ。
毎朝一日の始まりを実に爽やかな笑顔で送り出してくれるのである。
《それでは、結野アナのブラック星座占いでございます。今日、一番ツイてない方は………乙女座のアナタです。今日は、何をやってもうまくいきません》
「なんだよ~。テンションさがるな~」
テレビの前で歯を磨く近藤がぼやくと、結野アナは明るい声で続ける。
《特に乙女座で顎髭をたくわえ、今、歯を磨いてる方、今日死にます》
乙女座で顎髭を生やす近藤は歯ブラシを動かす手を止めて絶叫した。
「え゙え゙え゙え゙え゙え゙!!」
《幸運を切り開くラッキーカラーは赤。何か赤いもので、血にまみれた身体を隠しましょう》
「どんなラッキー!?何にも切り開けてねーよ!!」
《それでは楽しい週末を~》
「送れるかァァァ!!」
笑顔で手を振る結野アナにつっこむ。
「なんちゅー不愉快な番組だ、こんなの見る奴いるか?」
残酷な未来を宣言された占いを斬り捨て、近藤はテレビの電源を切る。
「バカらしい、こんなものあたるわけがない。世の中の乙女座が全て消えてみろ、世の中、オッさんだらけになるぞ…な、総悟?」
隣で一緒にテレビを見ていた沖田に同意を求めると、赤い布が差し出された。
「ハイ、コレ、俺がガキの頃使ってた赤褌 。大丈夫、洗いやしたから」
清潔にしたから大丈夫だとの言葉をかけ、沖田はその場を去っていく。
「大丈夫って…何が大丈夫なんだよ。総悟の奴め、意外と心配性だな。なァトシ?」
「…コレ。俺が昔、使ってた赤マフラー」
すると、土方も赤いマフラーを渡してその場を離れる。
勿論、結野アナが乙女座のラッキーカラーが赤であると言っていた影響によるものだ。
「ちょっ…やめてよ~。何?俺が出張中に、何かあったんじゃないだろうな」
直後、廊下を走る慌ただしい足音が響き渡る。
サングラスをかけ、灰色の髪をオールバックにした男が障子を蹴破って部屋に入ってきた。
「この腐れゴリラァァァァァ!!」
「ぐわばっ!!」
飛び蹴りを食らった近藤は障子に激突し、ゲホゴホ、と咳き込む。
「まっ、松平のとっつァん!!」
反乱分子を取り締まる真選組を創設し、自身も警察庁長官である松平であった。
「…近藤 、立てコノヤロー。三秒以内に立たねーと頭、ブチ抜く」
その雰囲気は、あからさまに堅気 ではなかった。
身につけるのは、いかにも高級そうな服飾。
右手には拳銃、左手に持つ葉巻もおそらくは高級品。
凄みと威厳とヤクザくささが渾然一体になっている。
「ハイ、1…」
強引に数え始めて、引鉄を引いて発砲。
ズガン、と発射された弾丸は見事に、近藤の頬をギリギリ抜けて畳に直撃した。
「2と3はァァァ!!」
「しらねーな、そんな数字。男はなァ、1だけ覚えとけば生きていけるんだよ」
「さっき自分で3秒って言ったじゃねーか!!なんなんだよ!!いくら警察のトップだって、やってイイことと悪いことがあるぞ!!」
近藤の正直すぎる抗議は松平を不快にさせた。
「何言ってやがんでェ。お前のせいでなァ…オジさんは…オジさんは首が飛ぶかもしれねーんだよ」
「はァ!?何の話?」
全く見当がつかない話に困惑する。
しかし、近藤の困惑とは裏腹に思いつめた表情を空中にさまよわせる。
「路頭に迷うてめーらを拾ってやったのが、アレ…何年前だっけ?あー、てめーらみてーのを配下に置いたのが間違いだった。やり直してェ、ゼロからやり直してェ」
松平の口調は抑えられていて、あくまでも静かだ。
だが紡がれた言葉に、強い後悔の念が込められているのを感じる。
「言ったはずだ、無茶はするなと。前からバカな連中とは思っていたが、まさか煉獄関に手ェ、出すたーよ~」
上司の凄みに気圧され、近藤は苦労して首を横に振った。
「は?看護婦さん?看護婦さんは好きだが、手を出した覚えはないぞ!!」
『煉獄関』の単語を看護婦と変換する。
「看護婦さんじゃねーよ、看護婦さんならオジさんだって大好きさ!!」
聞き間違いをする近藤に対し、見事なノリツッコミを入れる。
「あー、もうまだ、マイホームのローンも残ってるのによォォォォ!!娘の留学も全部パーじゃねーか!どーしてくれんだァ!!!」
「ぎゃあああ!!」
叫びと共に、連続して三発の銃弾が飛び交った。
茶屋を訪れた沖田は、白いリボンで長く麗しい黒髪を結い、清楚な着物姿の響古に見惚れる。
黒羽織に膝丈の短い着物の時とは、一味違う魅力がある。
「松平のとっつァん?」
「へい。今朝方、慌ただしく屯所に来て近藤さんと出かけていきやした」
沖田は注文した団子を口に運ぶ。
「んむ。警察庁長官で、俺らの上司でさァ」
「――で、どんな人?」
「ん~。一言で言うとヤクザ?」
沖田にとっては大した意味はなかったが、警察とは無縁な人物を口にしたものだから、響古はたっぷり固まってしまった。
滅多に見ることのできない彼女の驚き顔に感嘆していると、笑みを漏らした。
「……ふふっ、チンピラ警察の上司がヤクザってのも納得できるわね」
すると、響古は座る沖田の耳元に近づき、ぐっと腰を屈めた。
「煉獄関のことで、何か動きはあった?」
少し声を潜めて訊ねる。
響古の美貌が近い。
「あ、へい」
沖田は頬を紅潮させ、ドキドキしながら頷いた。
「今日、二人呼んだ理由として、それ絡みだと思いまさァ」
「……近藤さんに悪いことしちゃったな」
「それを言われたら、俺だって同じでさァ。響古や旦那にあの場所を教えたのは俺ですし。謝んなきゃいけねーのはこっちの方でさァ」
沖田は両手を握り、もう片方の手を添え、まっすぐ響古の美貌を見つめてくる。
「総悟…」
ただ、手を握られただけというのに、響古の鼓動は高鳴った。
「随分、真面目な話をしてんじゃねーか」
すると、土方が話に入ってきた。
響古は握られた手を、沖田のそれごと振り払う。
「と…十四郎!いらっしゃい」
「オウ。いつもの頼むわ」
土方は沖田の隣に座る。
「土方さん、どーしてここに?」
「俺ァ、ここのコーヒーが好きでね。よく来るんだよ」
土方は茶屋だというのにコーヒーを注文し、煙草を吹かしている。
響古も土方に団子を勧めてみたが、元々そう得意ではないらしい。
トレイを抱えてやって来た響古が、ソーサーつきのコーヒーを土方の前に置いた。
不審そうな沖田の視線に気づいて、
「ホント」
と唇を動かす。
だが、本当にコーヒー目当てなのか、彼にとっては甚だ疑問であった。
「さっき総悟から聞いたんだけど……近藤さん、大丈夫?」
「表向きに処分を下すことはねーだろ」
その答えに、響古と沖田は疑問符を浮かべた。
「そんなマネしたら、天導衆と煉獄関が繋がっていたということが公 に広まることになる。表では、関わりがねーってことになってるからな」
その表情は無に近いが、眼光だけはまるで敵でも見ているかのように鋭い。
普通の人間ならばすくみ上ってしまうような場面のはずだが、響古は違った。
のしかかる緊張感をものともせず、涼しい顔で胸を撫で下ろす。
「そう……安心した」
その表情が妙に可憐だったため、土方と沖田は目を逸らす。
「だがな、響古、もう無茶なマネはすんじゃねーぞ」
「フフ、無理」
きっぱりと言った響古に、土方は軽い頭痛を覚える。
そこに、最後の一本を綺麗に食べ終えた沖田が指についたタレを舐めながら言う。
「まぁまぁ、土方さん。そんな言わなくても、割となんとかなるもんですぜ」
「おめーらは少し考えて行動しろ!」
「響古、みたらし団子、もう一皿」
「人の話を聞けェェェ!!」
さすがに真剣やバズーカを出すような真似はしないが、大声をあげて騒ぎ出す。
あんまり騒ぐと怒られるのに、と思いながら響古は視線を女店主へ向けた。
ところがどういう偶然か。
振り向いた響古と顔を上げた蓮の視線がバッチリ合わさってしまった。
慌てて言い訳を考え始めた響古に、蓮は困っているような笑みを浮かべて土方と沖田へ目線を動かした。
そして今度は、蓮から響古へ眼差しを送る。
優しい女店主の気持ちを察した響古はアイコンタクトで、
「どうしましょうか?」
と問いかけた。
というより、相槌を打った。
蓮は一度だけ、微かに首を左右に振って、
「どうしようもないわね」
と言わんばかりに再度、困惑の笑みを浮かべた。
出会いから三十分ほどで、近藤はすっかり憔悴した。
面構えもファッションも、どう見てもヤクザという上司に先導されて黒の高級車に乗り込む。
重厚かつシックな外観の高級車は、とても堅気の人が乗る車には思えない。
「え゙っ!?天導衆!?」
松平が車内で語った内容に、近藤は目を剥くほど仰天した。
「天導衆が関わってるヤマに、ウチが関わったっていうんですか?」
「しらじらしい、とぼけちゃってさ~。撃っちゃおーかな~。オジさん、撃っちゃおーかな~」
《――全国的にさわやかな秋晴れになるもようでございますが、女心と秋の空は移ろいやすいものでございますから、もし降ってきても、私のせいにしないでくださいませ》
天気予報のコーナーなのに、なんとも無責任な発言をする結野アナ。
毎朝一日の始まりを実に爽やかな笑顔で送り出してくれるのである。
《それでは、結野アナのブラック星座占いでございます。今日、一番ツイてない方は………乙女座のアナタです。今日は、何をやってもうまくいきません》
「なんだよ~。テンションさがるな~」
テレビの前で歯を磨く近藤がぼやくと、結野アナは明るい声で続ける。
《特に乙女座で顎髭をたくわえ、今、歯を磨いてる方、今日死にます》
乙女座で顎髭を生やす近藤は歯ブラシを動かす手を止めて絶叫した。
「え゙え゙え゙え゙え゙え゙!!」
《幸運を切り開くラッキーカラーは赤。何か赤いもので、血にまみれた身体を隠しましょう》
「どんなラッキー!?何にも切り開けてねーよ!!」
《それでは楽しい週末を~》
「送れるかァァァ!!」
笑顔で手を振る結野アナにつっこむ。
「なんちゅー不愉快な番組だ、こんなの見る奴いるか?」
残酷な未来を宣言された占いを斬り捨て、近藤はテレビの電源を切る。
「バカらしい、こんなものあたるわけがない。世の中の乙女座が全て消えてみろ、世の中、オッさんだらけになるぞ…な、総悟?」
隣で一緒にテレビを見ていた沖田に同意を求めると、赤い布が差し出された。
「ハイ、コレ、俺がガキの頃使ってた
清潔にしたから大丈夫だとの言葉をかけ、沖田はその場を去っていく。
「大丈夫って…何が大丈夫なんだよ。総悟の奴め、意外と心配性だな。なァトシ?」
「…コレ。俺が昔、使ってた赤マフラー」
すると、土方も赤いマフラーを渡してその場を離れる。
勿論、結野アナが乙女座のラッキーカラーが赤であると言っていた影響によるものだ。
「ちょっ…やめてよ~。何?俺が出張中に、何かあったんじゃないだろうな」
直後、廊下を走る慌ただしい足音が響き渡る。
サングラスをかけ、灰色の髪をオールバックにした男が障子を蹴破って部屋に入ってきた。
「この腐れゴリラァァァァァ!!」
「ぐわばっ!!」
飛び蹴りを食らった近藤は障子に激突し、ゲホゴホ、と咳き込む。
「まっ、松平のとっつァん!!」
反乱分子を取り締まる真選組を創設し、自身も警察庁長官である松平であった。
「…
その雰囲気は、あからさまに
身につけるのは、いかにも高級そうな服飾。
右手には拳銃、左手に持つ葉巻もおそらくは高級品。
凄みと威厳とヤクザくささが渾然一体になっている。
「ハイ、1…」
強引に数え始めて、引鉄を引いて発砲。
ズガン、と発射された弾丸は見事に、近藤の頬をギリギリ抜けて畳に直撃した。
「2と3はァァァ!!」
「しらねーな、そんな数字。男はなァ、1だけ覚えとけば生きていけるんだよ」
「さっき自分で3秒って言ったじゃねーか!!なんなんだよ!!いくら警察のトップだって、やってイイことと悪いことがあるぞ!!」
近藤の正直すぎる抗議は松平を不快にさせた。
「何言ってやがんでェ。お前のせいでなァ…オジさんは…オジさんは首が飛ぶかもしれねーんだよ」
「はァ!?何の話?」
全く見当がつかない話に困惑する。
しかし、近藤の困惑とは裏腹に思いつめた表情を空中にさまよわせる。
「路頭に迷うてめーらを拾ってやったのが、アレ…何年前だっけ?あー、てめーらみてーのを配下に置いたのが間違いだった。やり直してェ、ゼロからやり直してェ」
松平の口調は抑えられていて、あくまでも静かだ。
だが紡がれた言葉に、強い後悔の念が込められているのを感じる。
「言ったはずだ、無茶はするなと。前からバカな連中とは思っていたが、まさか煉獄関に手ェ、出すたーよ~」
上司の凄みに気圧され、近藤は苦労して首を横に振った。
「は?看護婦さん?看護婦さんは好きだが、手を出した覚えはないぞ!!」
『煉獄関』の単語を看護婦と変換する。
「看護婦さんじゃねーよ、看護婦さんならオジさんだって大好きさ!!」
聞き間違いをする近藤に対し、見事なノリツッコミを入れる。
「あー、もうまだ、マイホームのローンも残ってるのによォォォォ!!娘の留学も全部パーじゃねーか!どーしてくれんだァ!!!」
「ぎゃあああ!!」
叫びと共に、連続して三発の銃弾が飛び交った。
茶屋を訪れた沖田は、白いリボンで長く麗しい黒髪を結い、清楚な着物姿の響古に見惚れる。
黒羽織に膝丈の短い着物の時とは、一味違う魅力がある。
「松平のとっつァん?」
「へい。今朝方、慌ただしく屯所に来て近藤さんと出かけていきやした」
沖田は注文した団子を口に運ぶ。
「んむ。警察庁長官で、俺らの上司でさァ」
「――で、どんな人?」
「ん~。一言で言うとヤクザ?」
沖田にとっては大した意味はなかったが、警察とは無縁な人物を口にしたものだから、響古はたっぷり固まってしまった。
滅多に見ることのできない彼女の驚き顔に感嘆していると、笑みを漏らした。
「……ふふっ、チンピラ警察の上司がヤクザってのも納得できるわね」
すると、響古は座る沖田の耳元に近づき、ぐっと腰を屈めた。
「煉獄関のことで、何か動きはあった?」
少し声を潜めて訊ねる。
響古の美貌が近い。
「あ、へい」
沖田は頬を紅潮させ、ドキドキしながら頷いた。
「今日、二人呼んだ理由として、それ絡みだと思いまさァ」
「……近藤さんに悪いことしちゃったな」
「それを言われたら、俺だって同じでさァ。響古や旦那にあの場所を教えたのは俺ですし。謝んなきゃいけねーのはこっちの方でさァ」
沖田は両手を握り、もう片方の手を添え、まっすぐ響古の美貌を見つめてくる。
「総悟…」
ただ、手を握られただけというのに、響古の鼓動は高鳴った。
「随分、真面目な話をしてんじゃねーか」
すると、土方が話に入ってきた。
響古は握られた手を、沖田のそれごと振り払う。
「と…十四郎!いらっしゃい」
「オウ。いつもの頼むわ」
土方は沖田の隣に座る。
「土方さん、どーしてここに?」
「俺ァ、ここのコーヒーが好きでね。よく来るんだよ」
土方は茶屋だというのにコーヒーを注文し、煙草を吹かしている。
響古も土方に団子を勧めてみたが、元々そう得意ではないらしい。
トレイを抱えてやって来た響古が、ソーサーつきのコーヒーを土方の前に置いた。
不審そうな沖田の視線に気づいて、
「ホント」
と唇を動かす。
だが、本当にコーヒー目当てなのか、彼にとっては甚だ疑問であった。
「さっき総悟から聞いたんだけど……近藤さん、大丈夫?」
「表向きに処分を下すことはねーだろ」
その答えに、響古と沖田は疑問符を浮かべた。
「そんなマネしたら、天導衆と煉獄関が繋がっていたということが
その表情は無に近いが、眼光だけはまるで敵でも見ているかのように鋭い。
普通の人間ならばすくみ上ってしまうような場面のはずだが、響古は違った。
のしかかる緊張感をものともせず、涼しい顔で胸を撫で下ろす。
「そう……安心した」
その表情が妙に可憐だったため、土方と沖田は目を逸らす。
「だがな、響古、もう無茶なマネはすんじゃねーぞ」
「フフ、無理」
きっぱりと言った響古に、土方は軽い頭痛を覚える。
そこに、最後の一本を綺麗に食べ終えた沖田が指についたタレを舐めながら言う。
「まぁまぁ、土方さん。そんな言わなくても、割となんとかなるもんですぜ」
「おめーらは少し考えて行動しろ!」
「響古、みたらし団子、もう一皿」
「人の話を聞けェェェ!!」
さすがに真剣やバズーカを出すような真似はしないが、大声をあげて騒ぎ出す。
あんまり騒ぐと怒られるのに、と思いながら響古は視線を女店主へ向けた。
ところがどういう偶然か。
振り向いた響古と顔を上げた蓮の視線がバッチリ合わさってしまった。
慌てて言い訳を考え始めた響古に、蓮は困っているような笑みを浮かべて土方と沖田へ目線を動かした。
そして今度は、蓮から響古へ眼差しを送る。
優しい女店主の気持ちを察した響古はアイコンタクトで、
「どうしましょうか?」
と問いかけた。
というより、相槌を打った。
蓮は一度だけ、微かに首を左右に振って、
「どうしようもないわね」
と言わんばかりに再度、困惑の笑みを浮かべた。
出会いから三十分ほどで、近藤はすっかり憔悴した。
面構えもファッションも、どう見てもヤクザという上司に先導されて黒の高級車に乗り込む。
重厚かつシックな外観の高級車は、とても堅気の人が乗る車には思えない。
「え゙っ!?天導衆!?」
松平が車内で語った内容に、近藤は目を剥くほど仰天した。
「天導衆が関わってるヤマに、ウチが関わったっていうんですか?」
「しらじらしい、とぼけちゃってさ~。撃っちゃおーかな~。オジさん、撃っちゃおーかな~」