第四十一訓
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仕事もない、することもない暇な万事屋はとある山にキノコ狩りでもして、あわよくば松茸なんかも採っちゃおうぜ的な軽いノリで訪れていた。
「いやいやいやいや、これは無理ですよ、どう見ても毒キノコですもん」
「銀…それは不味そうだよ。何か見ちゃいけないものが見えるよ」
木の根元に生えた不気味な色と形をしたキノコを見つけ、銀時達は論議する。
「何度も同じことを言わせるな。グロいもの程食ったらウメーんだよ。塩辛然 り、かにみそ然り」
「…バカ銀、忘れたの?アンタ、前にもそんなことあったでしょーが。あ、詳しくは第十八訓を読んでね」
響古さん、勝手に人の台詞を取らないでください。
「この奇怪な色は警戒色ですよ。『俺は毒もってるぜ、近よるな』っていう」
「そーゆー尖ったロンリーウルフに限って、根は優しかったりするんだよ」
新八の最もな意見に、不良が捨て猫を拾うという意外なギャップと例えて銀時は答える。
そして、怪しいキノコを定春に嗅がせた。
「どーだ、定春?」
途端、定春は嫌そうに顔を逸らし、クシッ、とくしゃみをした。
「クゥ~、いい香りだ。これは松茸に優 る極上品だぜ。さすが、銀さんだ」(銀サン裏声)
「定春、嫌がってるけど」
「何、勝手に訳してんの。明らかに拒絶してるでしょ」
響古と新八、当然のコメントだった。
銀時を見つめる眼差しがひどく冷たい。
「メガネうるせーよ、銀さんに逆らうな。どーせ椎茸しか食ったことねーんだろ?」(銀サン裏声)
「アンタもどーせ、なめこ汁が限界だろ。貧乏侍よ~」(新八裏声)
響古が定春を使って陰湿な口論をし始めた二人につっこむ。
「アンタ達、定春使って何してるの。てゆーか、その裏声気持ち悪い」
そういえば神楽はどこに行ったんだろう、と首を傾げる。
彼女が静かなんて珍しいことこの上ない。
「銀ちゃん、響古、新八、見て見て!」
噂をすれば、弾んだ声で名前を呼ばれる。
「コレ、スゴイの見つけたよ。コレも食べれるアルか?」
のっしのっし。
生きているのか死んでいるのかわからない、頭にキノコが生えた熊を担いで歩いてきた。
人間(銀時達)と動物(定春)の顔が一気に引きつった。
「なっ!?なァァァ!!どっ…どっから拾ってきたのよそんなモン」
「こっちに来んなァァ!!」
「そのまま故郷に帰れ!そのまま所帯をもて!そのまま幸せになれ!」
「アラアラ、三人ともはしゃいじゃって。大丈夫ですよ、みんなで平等にわけましょーね」
身の危険を感じた三人は叫ぶが、彼女には絶叫しているのがはしゃいでるように見えてるらしく、なんだか楽しそうに言ってくる。
無邪気って怖い。
「いらねーよそんなの…ってゆーか、何それ?しっ…死んでるの?それ」
思わず眼鏡を上げて訊ねると、響古はぼそりとつぶやいた。
「…熊鍋」
古来より熊肉は食用とされており、現在でも大量には出回らない食材である。
そして、熊肉を食材に使った経験はさすがにない。
「響古さん!?もしかして食べる気ですか!」
しかし、新八の反応はかんばしくなかった。
まさか、調理して食べるつもりなのかと愕然とする。
「わかんない。何かむこうに落ちてたアル」
神楽は担いだ熊を地面に降ろした。
「お前、なんでも拾ってくんのやめろって言ったろ。オイ響古、コレ食べんなよ」
四人は改めて、頭にキノコが生えた熊の死体を観察する。
「…コレ、熊ですよね?頭にキノコ生えてますよ」
「アレでしょ。あんまり頭、使わなかったから…」
「三丁目の岸辺さんっているじゃん、あそこのジーさんも生えてた」
キノコが生えている理由を、頭を使ってないからとそう語る。
「マジアルか。気をつけよ」
二人の言葉を神楽が真に受けていると、新八は憂慮の溜め息をついた。
「猟師にやられたのか…どのみち、そんなに長居できませんね。わざわざこんな遠いトコまで、キノコ狩りに来たのに…」
森の中にある立て札には『キケン 熊出没注意!』と書かれてある。
「バカヤロー、怖気づいてんじゃねーぞ。まだ松茸の一本も手に入れてねーんだぞ。虎穴に入らずんば、虎児を得ずだ」
危険を冒さなければ、大きな成功や功名は得られない故事に基づいて、虎穴に吹き込む銀時であった。
「熊が恐くて、キノコ狩りができるか、コンチキショー」
「コンチキショー」
二人は即興の松茸の歌を口ずさみながら、
「「ま~つ~た~け、ううう、ま~つ~た~け」」
まっすぐ進んでいく。
しかし、響古と新八は同時に目を見開いた。
「…ワォ」
「銀さん、うえ、うえ!」
彼らの目の前に、巨大な熊が立ちはだかっていた。
また、驚くべき点があった。
神楽が拾ってきた熊は体格がよく、体長二メートル前後はあろう大型の個体だった。
ところが、目の前にいるのは体長にして四、五メートルはありそうな、小山のごとき熊だった。
規格外の大物の出現に、しばらく固まっていた二人は息を呑み、
「「ぐふっ」」
その場に倒れ伏した。
俗に言う死んだフリである。
無謀もいいところではないかと、茂みに隠れる響古と新八は驚愕した。
「え?何アレ?死んだフリ?二人とも、それ迷信よー!」
「イカン、イカン、死んだフリはイカンよ!迷信だから、迷信だから、それ!」
ちなみに、定春も茂みに隠れている。
熊との遭遇時にやってはいけない行動の一つとして、有名な死んだフリ。
まず、根拠が全くわからないし、熊が臭いなんか嗅ぎにフガフガスリスリしてきたら、恐ろしさとくすぐったさのダブルパンチでピクっとしてしまうでしょう。
また、ホントに死んでるか確かめるために噛まれて振り回されるかもしれませんよ。
ああ、おそろしやおそろしや。
「…銀ちゃん、迷信だって…」
「………」
白目を剥き、口から涎を垂らす神楽は隣に突っ伏す銀時に声をかけるが、返事はない。
「あっ、ズルイよ!自分だけ本格的に死んだフリして!熊さーん、この人、生きてますヨ!」
次にやってはいけない大声を出した途端、頭を叩かれた。
「ホラ見ろ、生きてた!」
「ガタガタ騒ぐな。心頭滅却して死んだフリすれば、熊にも必ず通ずる。さあ目をつぶれ」
「うん。おやすみ、銀ちゃん」
銀時の訴えに頷きかけた瞬間、熊が動いた。
永遠のお休みをさせる勢いで前足を振り下ろす。
「「ぐはぶ」」
それを間一髪で避ける二人。
さすがに危険だと感じた新八は血相を変えた。
「銀さん、神楽ちゃん!」
「もう、なんで逃げないの!」
腰に提げた木刀を握り、響古が飛び出そうとした。
「オイオイ。今どき死んだフリなんて、レトロな奴らだねぇ」
その時、一人の男が忽然と姿を現した。
後ろ肢肢 で竿 立ちになる巨大熊に、二人は動物には通じないはずの『待った』をかける。
「「待て待て待て、タンマタンマ!」」
刹那、巨大熊に何かが着弾すると、辺りは白い煙に包まれた。
「煙幕!?」
「オーイ、こっちだァ」
今の一幕に銀時が驚いていると、茂みから男の声が聞こえた。
振り返ると、編み笠を深く被り、猟銃を持った男が手招きしていた。
「アレは"正宗"っていってなァ。いわば、この山のヌシよ」
見える一面、煙が覆い隠し、巨大熊――正宗は地響きを立てて去っていく。
「アンタ…」
「俺は摩理之介、奴を追う者だ」
猟師は自分の名前を名乗る。
「おかげで助かりました、ありがとうございます」
「あ…いや、気にするな」
礼を述べる響古を見やると、編み笠から覗く頬が赤く染まる。
正宗との遭遇の後、万事屋は摩理之介と共に森を離れ、人気のない草地に移動した。
「あ?キノコ狩り?」
摩理之介は川の水を汲みながら、キノコ採りにやって来たという四人の言葉に呆れる。
「今、この山がどれだけ危険か、しらんのか。お前らも見ただろう、あの奇妙なキノコ」
万事屋は大きめの鍋で、採れたばかりのキノコを煮込む。
大量の湯気がふわっと立ちのぼり、出来上がった料理を口に運びながら摩理之介は話し始める。
「近頃、この山ではアイツの被害が広まっててな。どこかの星からきた亜種かもしらんが」
先程、神楽が持ってきた熊の死体。
頭にキノコが生えているという奇妙な現象。
「アイツに寄生された奴は、みーんなキノコを育てるための生きた肥料になる。自我を失い栄養をキノコに送るためだけに狩猟を続ける化物になっちまう」
この山で起きている不可解な現象は全て、他の生物に寄生して生きるキノコの仕業なのだ。
一般に寄生者が利益を得るのに対し、宿主は種々の損害を受ける。
「さっきの巨大熊…確か、正宗でしたよね?」
響古の問いかけに、摩理之介は整然と答えてくれる。
「…あぁ。さっきの巨熊 、正宗も、かつては山のヌシとも呼ばれた賢い奴だったが、アレにやられた後は文字どおりの化物よ」
キノコに寄生される以前の正宗は山で暮らし、面構えには威厳さえ宿っていた。
「下の里じゃ、畑は荒らされるわ、人は喰われるわで、壊滅的な被害を受けてるそうだ」
それが今では猛獣のごとく里を荒らし、人を襲う化け物にまで成り下がっているわけだ。
「そこで俺の出番ってわけだ。俺は銃 の名手でな。巨熊ごときにひけはとらねぇ」
「報酬目当てか?」
「そんなんじゃねーさ。まァ、奴とは少しいろいろあってな…」
摩理之介は口の端をつり上げ、言葉を濁した。
かぶき町から遠路はるばる来たというのに憧れの松茸どころか、出てくるものは毒キノコやら熊やらいらないものばかりで、銀時は深い溜め息をついた。
「…ハァー。あんな化物がいるんじゃ、松茸なんていってる場合じゃねーな」
「仕方ないわよ。あたし達は山をおりるとしますか」
山を降りるという彼の意見に同意し、響古は頷く。
突然、新八が二人の頭を凝視して叫んだ。
「いやいやいやいや、これは無理ですよ、どう見ても毒キノコですもん」
「銀…それは不味そうだよ。何か見ちゃいけないものが見えるよ」
木の根元に生えた不気味な色と形をしたキノコを見つけ、銀時達は論議する。
「何度も同じことを言わせるな。グロいもの程食ったらウメーんだよ。塩辛
「…バカ銀、忘れたの?アンタ、前にもそんなことあったでしょーが。あ、詳しくは第十八訓を読んでね」
響古さん、勝手に人の台詞を取らないでください。
「この奇怪な色は警戒色ですよ。『俺は毒もってるぜ、近よるな』っていう」
「そーゆー尖ったロンリーウルフに限って、根は優しかったりするんだよ」
新八の最もな意見に、不良が捨て猫を拾うという意外なギャップと例えて銀時は答える。
そして、怪しいキノコを定春に嗅がせた。
「どーだ、定春?」
途端、定春は嫌そうに顔を逸らし、クシッ、とくしゃみをした。
「クゥ~、いい香りだ。これは松茸に
「定春、嫌がってるけど」
「何、勝手に訳してんの。明らかに拒絶してるでしょ」
響古と新八、当然のコメントだった。
銀時を見つめる眼差しがひどく冷たい。
「メガネうるせーよ、銀さんに逆らうな。どーせ椎茸しか食ったことねーんだろ?」(銀サン裏声)
「アンタもどーせ、なめこ汁が限界だろ。貧乏侍よ~」(新八裏声)
響古が定春を使って陰湿な口論をし始めた二人につっこむ。
「アンタ達、定春使って何してるの。てゆーか、その裏声気持ち悪い」
そういえば神楽はどこに行ったんだろう、と首を傾げる。
彼女が静かなんて珍しいことこの上ない。
「銀ちゃん、響古、新八、見て見て!」
噂をすれば、弾んだ声で名前を呼ばれる。
「コレ、スゴイの見つけたよ。コレも食べれるアルか?」
のっしのっし。
生きているのか死んでいるのかわからない、頭にキノコが生えた熊を担いで歩いてきた。
人間(銀時達)と動物(定春)の顔が一気に引きつった。
「なっ!?なァァァ!!どっ…どっから拾ってきたのよそんなモン」
「こっちに来んなァァ!!」
「そのまま故郷に帰れ!そのまま所帯をもて!そのまま幸せになれ!」
「アラアラ、三人ともはしゃいじゃって。大丈夫ですよ、みんなで平等にわけましょーね」
身の危険を感じた三人は叫ぶが、彼女には絶叫しているのがはしゃいでるように見えてるらしく、なんだか楽しそうに言ってくる。
無邪気って怖い。
「いらねーよそんなの…ってゆーか、何それ?しっ…死んでるの?それ」
思わず眼鏡を上げて訊ねると、響古はぼそりとつぶやいた。
「…熊鍋」
古来より熊肉は食用とされており、現在でも大量には出回らない食材である。
そして、熊肉を食材に使った経験はさすがにない。
「響古さん!?もしかして食べる気ですか!」
しかし、新八の反応はかんばしくなかった。
まさか、調理して食べるつもりなのかと愕然とする。
「わかんない。何かむこうに落ちてたアル」
神楽は担いだ熊を地面に降ろした。
「お前、なんでも拾ってくんのやめろって言ったろ。オイ響古、コレ食べんなよ」
四人は改めて、頭にキノコが生えた熊の死体を観察する。
「…コレ、熊ですよね?頭にキノコ生えてますよ」
「アレでしょ。あんまり頭、使わなかったから…」
「三丁目の岸辺さんっているじゃん、あそこのジーさんも生えてた」
キノコが生えている理由を、頭を使ってないからとそう語る。
「マジアルか。気をつけよ」
二人の言葉を神楽が真に受けていると、新八は憂慮の溜め息をついた。
「猟師にやられたのか…どのみち、そんなに長居できませんね。わざわざこんな遠いトコまで、キノコ狩りに来たのに…」
森の中にある立て札には『キケン 熊出没注意!』と書かれてある。
「バカヤロー、怖気づいてんじゃねーぞ。まだ松茸の一本も手に入れてねーんだぞ。虎穴に入らずんば、虎児を得ずだ」
危険を冒さなければ、大きな成功や功名は得られない故事に基づいて、虎穴に吹き込む銀時であった。
「熊が恐くて、キノコ狩りができるか、コンチキショー」
「コンチキショー」
二人は即興の松茸の歌を口ずさみながら、
「「ま~つ~た~け、ううう、ま~つ~た~け」」
まっすぐ進んでいく。
しかし、響古と新八は同時に目を見開いた。
「…ワォ」
「銀さん、うえ、うえ!」
彼らの目の前に、巨大な熊が立ちはだかっていた。
また、驚くべき点があった。
神楽が拾ってきた熊は体格がよく、体長二メートル前後はあろう大型の個体だった。
ところが、目の前にいるのは体長にして四、五メートルはありそうな、小山のごとき熊だった。
規格外の大物の出現に、しばらく固まっていた二人は息を呑み、
「「ぐふっ」」
その場に倒れ伏した。
俗に言う死んだフリである。
無謀もいいところではないかと、茂みに隠れる響古と新八は驚愕した。
「え?何アレ?死んだフリ?二人とも、それ迷信よー!」
「イカン、イカン、死んだフリはイカンよ!迷信だから、迷信だから、それ!」
ちなみに、定春も茂みに隠れている。
熊との遭遇時にやってはいけない行動の一つとして、有名な死んだフリ。
まず、根拠が全くわからないし、熊が臭いなんか嗅ぎにフガフガスリスリしてきたら、恐ろしさとくすぐったさのダブルパンチでピクっとしてしまうでしょう。
また、ホントに死んでるか確かめるために噛まれて振り回されるかもしれませんよ。
ああ、おそろしやおそろしや。
「…銀ちゃん、迷信だって…」
「………」
白目を剥き、口から涎を垂らす神楽は隣に突っ伏す銀時に声をかけるが、返事はない。
「あっ、ズルイよ!自分だけ本格的に死んだフリして!熊さーん、この人、生きてますヨ!」
次にやってはいけない大声を出した途端、頭を叩かれた。
「ホラ見ろ、生きてた!」
「ガタガタ騒ぐな。心頭滅却して死んだフリすれば、熊にも必ず通ずる。さあ目をつぶれ」
「うん。おやすみ、銀ちゃん」
銀時の訴えに頷きかけた瞬間、熊が動いた。
永遠のお休みをさせる勢いで前足を振り下ろす。
「「ぐはぶ」」
それを間一髪で避ける二人。
さすがに危険だと感じた新八は血相を変えた。
「銀さん、神楽ちゃん!」
「もう、なんで逃げないの!」
腰に提げた木刀を握り、響古が飛び出そうとした。
「オイオイ。今どき死んだフリなんて、レトロな奴らだねぇ」
その時、一人の男が忽然と姿を現した。
後ろ肢
「「待て待て待て、タンマタンマ!」」
刹那、巨大熊に何かが着弾すると、辺りは白い煙に包まれた。
「煙幕!?」
「オーイ、こっちだァ」
今の一幕に銀時が驚いていると、茂みから男の声が聞こえた。
振り返ると、編み笠を深く被り、猟銃を持った男が手招きしていた。
「アレは"正宗"っていってなァ。いわば、この山のヌシよ」
見える一面、煙が覆い隠し、巨大熊――正宗は地響きを立てて去っていく。
「アンタ…」
「俺は摩理之介、奴を追う者だ」
猟師は自分の名前を名乗る。
「おかげで助かりました、ありがとうございます」
「あ…いや、気にするな」
礼を述べる響古を見やると、編み笠から覗く頬が赤く染まる。
正宗との遭遇の後、万事屋は摩理之介と共に森を離れ、人気のない草地に移動した。
「あ?キノコ狩り?」
摩理之介は川の水を汲みながら、キノコ採りにやって来たという四人の言葉に呆れる。
「今、この山がどれだけ危険か、しらんのか。お前らも見ただろう、あの奇妙なキノコ」
万事屋は大きめの鍋で、採れたばかりのキノコを煮込む。
大量の湯気がふわっと立ちのぼり、出来上がった料理を口に運びながら摩理之介は話し始める。
「近頃、この山ではアイツの被害が広まっててな。どこかの星からきた亜種かもしらんが」
先程、神楽が持ってきた熊の死体。
頭にキノコが生えているという奇妙な現象。
「アイツに寄生された奴は、みーんなキノコを育てるための生きた肥料になる。自我を失い栄養をキノコに送るためだけに狩猟を続ける化物になっちまう」
この山で起きている不可解な現象は全て、他の生物に寄生して生きるキノコの仕業なのだ。
一般に寄生者が利益を得るのに対し、宿主は種々の損害を受ける。
「さっきの巨大熊…確か、正宗でしたよね?」
響古の問いかけに、摩理之介は整然と答えてくれる。
「…あぁ。さっきの
キノコに寄生される以前の正宗は山で暮らし、面構えには威厳さえ宿っていた。
「下の里じゃ、畑は荒らされるわ、人は喰われるわで、壊滅的な被害を受けてるそうだ」
それが今では猛獣のごとく里を荒らし、人を襲う化け物にまで成り下がっているわけだ。
「そこで俺の出番ってわけだ。俺は
「報酬目当てか?」
「そんなんじゃねーさ。まァ、奴とは少しいろいろあってな…」
摩理之介は口の端をつり上げ、言葉を濁した。
かぶき町から遠路はるばる来たというのに憧れの松茸どころか、出てくるものは毒キノコやら熊やらいらないものばかりで、銀時は深い溜め息をついた。
「…ハァー。あんな化物がいるんじゃ、松茸なんていってる場合じゃねーな」
「仕方ないわよ。あたし達は山をおりるとしますか」
山を降りるという彼の意見に同意し、響古は頷く。
突然、新八が二人の頭を凝視して叫んだ。