第三十六訓~三十七訓
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コンビニ『大江戸マート』に立ち寄った侍は弁当とジャンプをレジに置く。
「いらっしゃいませヨ~」
まだ年端もいかない少女らしき店員は、うまい棒を食べながら接客していた。
「……いや、いらっしゃいじゃなくて、おぬし勤務中であろう。何故、うまい棒を食べているのだ」
「うまいからでございますヨ~」
「…おぬし、私をナメてるだろう」
こめかみを引くつかせて注意するが、店員の神楽はお構いなしにサクサクと食べ続ける。
「オイッ!!ポロポロポロポロ、食べクズが袋に入ってるだろーが」
駄菓子の食べクズがレジ袋に入り、我慢の限界がきた客はとうとう怒り出して店長を呼びつける。
「ちょっ…店長ォォ!店長を呼べェ!!」
「店長の坂田です。お客様、何か不備でもございましたか?」
「管理人の篠木です。どうかされましたか、お客様」
すると、裏からチョコバーを食べながら現れた銀時と響古にたまらずつっこんだ。
「不備はお前らの頭だァァァ!!」
客の前でお菓子を食べるという、普通では考えられない接客態度。
勿論、そんなことをわかっちゃいない二人は神楽に事情を聞く。
「オイ、なんかエライ怒ってんじゃねーか」
「近頃の客はヒステリーで困るわね」
「わかりません。来た時からずーっと怒っているであります。店長、管理人」
三人はチョコバーとうまい棒を食べる、サクサクと音を響かせてレジの前にしゃがみ込む。
「オイ、そのサクサクを止めろって言ってんだよ、オイ!オイ!」
「すみませんお客様。僕ら臨時で入った者なんで難しいことわかんないっス。でも一生懸命やるんで、よろしくお願いします」
「一生懸命やらなくていいから、その棒とれっていってんだよ!」
未だ怒り続ける客をなだめていると、神楽は商品を、何故か袋ごと電子レンジに入れた。
スタートボタンを押すと、レンジが作動して温め始める。
「オイ、ちょっと、それ、何あっためてんの!?」
「自分わかんないっス、でも一生懸命やるっス!ウッス!」
「ウッスって、ちょっとジャンプとか入ってんだけど…あなたも何か言って!」
響古に助けを求めた瞬間、電子レンジの中で、パン、と弾ける音が鳴る。
「ワォ」
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙、爆発した!なんか爆発した!!」
絶叫をあげる客を尻目に電子レンジを開ける。
破裂したドレッシングでギトギトになったジャンプがあった。
「何するかァァ、貴様ァ、ジャンプがドレッシングまみれではないかァ!!」
「自分わかんないっス。でもこんな冷たい時代だから、こんなアットホームなコンビニあってもイイと思うっス」
ぎゃーぎゃーと騒ぐ客をいつものようにのらりくらりとかわす神楽。
もう怒り心頭である。
「いいわけねーだろ!てめェ、弁償しろ、コラァ!!」
騒がしいレジを遠目に、新八はモップで床掃除をしている。
「ハァーーー。だから、僕らには無理っていったんだよ」
深い溜め息をつく少年は、手を合わせる長谷川を思い浮かべて心の中で謝った。
(――「いや~、今、知り合いのツテでコンビニ任されてるんだけどさ、ヤボ用で出れない日ができちゃって。悪いけど、今日一日頼むわ」――)
長谷川の頼みで今日だけコンビニを受け持つことになった万事屋は、慣れない接客ながらもなんとか頑張っている。
だが、実際はこの通り。
勝手に店の商品を食べるわ、ジャンプを電子レンジでチンするわ。
接客としては効率性に欠ける、なんとも壊滅的な仕事ぶりだ。
「長谷川さんが帰ってくる頃には、店潰れてるよコレ」
しばらく掃除をしていると、商品の並ぶ棚の前で怪しく動く少年を見つけた。
「ん?」
派手な金髪リーゼントと特攻服。
いかにも「俺、今グレてます」といった風体の少年の手には商品の整髪料。
少年はそれを、あろうことか己の懐へ忍び込ませた。
万引き発生。
新八の目は、疑いから確信に変わる。
「何やってんの、君。おなか見せて、なんか盗 ったろ」
新八はすぐさま少年の腕を掴んで問いつめる。
「んだよ、何も盗って…」
振り返った少年は目を見開いた。
「しっ…新ちゃん?」
「タカチン?」
そして新八も、彼の顔を見て驚愕。
互いに見覚えがあったからだ。
第三十六訓
恥ずかしがらずに手を挙げて言え
万引き未遂で新八が連れてきた少年。
彼――八兵衛(通称・タカチン)は銀時、響古、新八からコンビニの事務室で尋問を受けていた。
「高屋八兵衛、十六歳、新八と同じ年か、いい年して恥ずかしくねーのか。母ちゃん泣くよ、お前」
テーブルには彼が盗んだ整髪料が並んでいる。
それを見た銀時は量の多さに眉を寄せた。
「大体オメー、こんなにたくさんの整髪料、どーするつもりなんだ」
「バカ銀、あのリーゼント維持するのに大変なのよ。気になって落ちつかないんだって」
「心配しないでもキマってるよ、お前、自分に自信をもて!」
二人のふざけたかけ合いは、いつも通り。
「そんなものに頼ってると、いつかハゲになるわよ」
「コレ全部、俺が使うわけねーだろ!」
「じゃあ、なんだ、ご飯か?ご飯にかけてサラサラいくつもりだったのか?」
「ダメよ、ふりかけにしときなさい」
八兵衛は的外れな発言をする響古の美貌に見惚れて目線を逸らした。
その様子から、本質まではグレられなかったのが窺えた。
新八はそれに気づき、思い切って口を開く。
「…タカチン、なんでこんなこと。タカチン、こんなことする奴じゃなかったじゃないか」
「うっせーよ、あれから何年たったと思ってんだ?もう俺は、オメーの知ってるタカチンじゃねーんだよ!」
反省する見込みはない。
はっきり言って相手するだけ無駄である。
高屋 八兵衛という出っ歯のこの少年は、どうやら新八と知り合いらしい。
「もういいから、奉行所でもどこでもつれてけや!はりつけ獄門上等だ、コノヤロー!!」
椅子にふんぞり返って開き直る八兵衛に、三人は顔を見合わせる。
とりあえず、今回は見逃すということで解放した。
「恩でも売ったつもりかテメー、また来てやっとやっかんな」
「その時は、また僕が止めるよ」
「ケッ。相変わらずのお人好しだな、新ちゃんよォ」
新八の返答が気に入らないのか、罵りを放つ。
「寺子屋、一緒に通ってた頃も、俺が苛められてピーピー泣いてたら、てめーら姉弟がよく助けてくれたもんだ」
――父親の教えで、弱い者いじめを許さなかった新八と妙は急いで駆けつける。
「まっ、ほとんどオメーの姉ちゃんが暴れてただけだけどよ」
――見事な飛び蹴りで悪ガキ共を退治する妙とは逆に、新八は返り討ちに遭い、いじめられていた。
「懐かしいもんだ。あの頃ァ、お前らに完全に頼りきってた。お前だけは何があっても友達だとは思ってた。あの時、裏切られるまではよォ」
八兵衛の口から発せられた、裏切りの言葉。
そこに込められた親友の悲痛な想いに、新八は気後れした顔になったのも束の間、意を決して訴える。
「タカチン、あれは…」
八兵衛はきつく眉をつり上げて新八の訴えを遮る。
「いいわけなんてききたかねーな。てめーの半端な優しさで、俺がどれだけ傷ついたと思ってんだ!」
大仰に両腕を広げて、怒りや憎しみを剥き出しにして声を荒げる。
いつの間にか、ではない。
はっきりとした区切りはある。
それはつまり、八兵衛が苦しみと悲しみに負け、あまりに大きすぎる絶望に押し潰された日でもある。
それが、あの事件だった。
「あんな真似すんならよォ、最初から俺なんてほっといてくれりゃよかったんだ。あれから、俺は…」
その辺りで、さすがに言い過ぎるのはまずいと気づいたのか、口をつぐんだ。
一体なんと言おうとしたのだろう、彼は。
その瞳に一瞬、嫌悪の色を浮かべて、一体何を。
「……チッ。まァ、いいさ。てめーのおかげで、俺も少しはたくましくなれた。もう誰もアテにしねー、自分自身が強くならねーってな」
八兵衛は不敵な笑みを浮かべ、出っ歯を覗かせる。
幼少時、彼と同じ寺子屋へ通っていた幼馴染は……その頃の面影はまるでなかった。
「今、俺、族に入ってんだ。知ってるか?『舞流独愚 』ってよ。今じゃ、俺を苛めてた連中も恐がって近寄ってこねー」
弱虫でいじめられっ子から脱却するために選んだ道は、暴走族の仲間入り。
それを聞いた新八の表情が強張る。
「もう、てめーの力なんて必要ねェ。俺は変わったんだ、俺は強くなったんだ」
結局、何も言えずに彼の背中を見送った。
勤務に戻り、交替でレジを担当する新八の前に一人の少女がやって来た。
「タカチンコ?だぁれ、それ?」
「いや、タカチンコじゃなくて、タカチンです。ホントに覚えてないんですか?」
聞き手によってはとても危ない言葉を発する妙に、忘れず修正。
姉に幼馴染みのことを話すが、彼のことを覚えてないらしい。
「昔のことは忘れたわ。私、前だけ見て生きてくことに決めたの」
やたらとかっこいい台詞を放ち、差し入れとおぼしき包みを取り出す。
「そんなことより、みなさんに差し入れもってきたんです。銀サンも響古サンも神楽チャンも食べてください」
「姐御ォォ!!」
「妙、ありがとう!」
「おっ、食いモン?何?」
商品の棚を整理していた彼らは一斉に目を輝かせ、妙が持ってきた差し入れを見やる。
「今回は新しい料理に挑戦してみたんです~。ハイ、だし巻き卵」
彼女の口から紡がれた不吉な言葉に、三人の表情は一気に青ざめる。
差し入れは、だし巻き卵という食べ物の黒焦げた物体だった。
「私、飲み物買ってくるヨ!」
「いいって!俺が買ってくるから座ってろ!」
「いらっしゃいませヨ~」
まだ年端もいかない少女らしき店員は、うまい棒を食べながら接客していた。
「……いや、いらっしゃいじゃなくて、おぬし勤務中であろう。何故、うまい棒を食べているのだ」
「うまいからでございますヨ~」
「…おぬし、私をナメてるだろう」
こめかみを引くつかせて注意するが、店員の神楽はお構いなしにサクサクと食べ続ける。
「オイッ!!ポロポロポロポロ、食べクズが袋に入ってるだろーが」
駄菓子の食べクズがレジ袋に入り、我慢の限界がきた客はとうとう怒り出して店長を呼びつける。
「ちょっ…店長ォォ!店長を呼べェ!!」
「店長の坂田です。お客様、何か不備でもございましたか?」
「管理人の篠木です。どうかされましたか、お客様」
すると、裏からチョコバーを食べながら現れた銀時と響古にたまらずつっこんだ。
「不備はお前らの頭だァァァ!!」
客の前でお菓子を食べるという、普通では考えられない接客態度。
勿論、そんなことをわかっちゃいない二人は神楽に事情を聞く。
「オイ、なんかエライ怒ってんじゃねーか」
「近頃の客はヒステリーで困るわね」
「わかりません。来た時からずーっと怒っているであります。店長、管理人」
三人はチョコバーとうまい棒を食べる、サクサクと音を響かせてレジの前にしゃがみ込む。
「オイ、そのサクサクを止めろって言ってんだよ、オイ!オイ!」
「すみませんお客様。僕ら臨時で入った者なんで難しいことわかんないっス。でも一生懸命やるんで、よろしくお願いします」
「一生懸命やらなくていいから、その棒とれっていってんだよ!」
未だ怒り続ける客をなだめていると、神楽は商品を、何故か袋ごと電子レンジに入れた。
スタートボタンを押すと、レンジが作動して温め始める。
「オイ、ちょっと、それ、何あっためてんの!?」
「自分わかんないっス、でも一生懸命やるっス!ウッス!」
「ウッスって、ちょっとジャンプとか入ってんだけど…あなたも何か言って!」
響古に助けを求めた瞬間、電子レンジの中で、パン、と弾ける音が鳴る。
「ワォ」
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙、爆発した!なんか爆発した!!」
絶叫をあげる客を尻目に電子レンジを開ける。
破裂したドレッシングでギトギトになったジャンプがあった。
「何するかァァ、貴様ァ、ジャンプがドレッシングまみれではないかァ!!」
「自分わかんないっス。でもこんな冷たい時代だから、こんなアットホームなコンビニあってもイイと思うっス」
ぎゃーぎゃーと騒ぐ客をいつものようにのらりくらりとかわす神楽。
もう怒り心頭である。
「いいわけねーだろ!てめェ、弁償しろ、コラァ!!」
騒がしいレジを遠目に、新八はモップで床掃除をしている。
「ハァーーー。だから、僕らには無理っていったんだよ」
深い溜め息をつく少年は、手を合わせる長谷川を思い浮かべて心の中で謝った。
(――「いや~、今、知り合いのツテでコンビニ任されてるんだけどさ、ヤボ用で出れない日ができちゃって。悪いけど、今日一日頼むわ」――)
長谷川の頼みで今日だけコンビニを受け持つことになった万事屋は、慣れない接客ながらもなんとか頑張っている。
だが、実際はこの通り。
勝手に店の商品を食べるわ、ジャンプを電子レンジでチンするわ。
接客としては効率性に欠ける、なんとも壊滅的な仕事ぶりだ。
「長谷川さんが帰ってくる頃には、店潰れてるよコレ」
しばらく掃除をしていると、商品の並ぶ棚の前で怪しく動く少年を見つけた。
「ん?」
派手な金髪リーゼントと特攻服。
いかにも「俺、今グレてます」といった風体の少年の手には商品の整髪料。
少年はそれを、あろうことか己の懐へ忍び込ませた。
万引き発生。
新八の目は、疑いから確信に変わる。
「何やってんの、君。おなか見せて、なんか
新八はすぐさま少年の腕を掴んで問いつめる。
「んだよ、何も盗って…」
振り返った少年は目を見開いた。
「しっ…新ちゃん?」
「タカチン?」
そして新八も、彼の顔を見て驚愕。
互いに見覚えがあったからだ。
第三十六訓
恥ずかしがらずに手を挙げて言え
万引き未遂で新八が連れてきた少年。
彼――八兵衛(通称・タカチン)は銀時、響古、新八からコンビニの事務室で尋問を受けていた。
「高屋八兵衛、十六歳、新八と同じ年か、いい年して恥ずかしくねーのか。母ちゃん泣くよ、お前」
テーブルには彼が盗んだ整髪料が並んでいる。
それを見た銀時は量の多さに眉を寄せた。
「大体オメー、こんなにたくさんの整髪料、どーするつもりなんだ」
「バカ銀、あのリーゼント維持するのに大変なのよ。気になって落ちつかないんだって」
「心配しないでもキマってるよ、お前、自分に自信をもて!」
二人のふざけたかけ合いは、いつも通り。
「そんなものに頼ってると、いつかハゲになるわよ」
「コレ全部、俺が使うわけねーだろ!」
「じゃあ、なんだ、ご飯か?ご飯にかけてサラサラいくつもりだったのか?」
「ダメよ、ふりかけにしときなさい」
八兵衛は的外れな発言をする響古の美貌に見惚れて目線を逸らした。
その様子から、本質まではグレられなかったのが窺えた。
新八はそれに気づき、思い切って口を開く。
「…タカチン、なんでこんなこと。タカチン、こんなことする奴じゃなかったじゃないか」
「うっせーよ、あれから何年たったと思ってんだ?もう俺は、オメーの知ってるタカチンじゃねーんだよ!」
反省する見込みはない。
はっきり言って相手するだけ無駄である。
高屋 八兵衛という出っ歯のこの少年は、どうやら新八と知り合いらしい。
「もういいから、奉行所でもどこでもつれてけや!はりつけ獄門上等だ、コノヤロー!!」
椅子にふんぞり返って開き直る八兵衛に、三人は顔を見合わせる。
とりあえず、今回は見逃すということで解放した。
「恩でも売ったつもりかテメー、また来てやっとやっかんな」
「その時は、また僕が止めるよ」
「ケッ。相変わらずのお人好しだな、新ちゃんよォ」
新八の返答が気に入らないのか、罵りを放つ。
「寺子屋、一緒に通ってた頃も、俺が苛められてピーピー泣いてたら、てめーら姉弟がよく助けてくれたもんだ」
――父親の教えで、弱い者いじめを許さなかった新八と妙は急いで駆けつける。
「まっ、ほとんどオメーの姉ちゃんが暴れてただけだけどよ」
――見事な飛び蹴りで悪ガキ共を退治する妙とは逆に、新八は返り討ちに遭い、いじめられていた。
「懐かしいもんだ。あの頃ァ、お前らに完全に頼りきってた。お前だけは何があっても友達だとは思ってた。あの時、裏切られるまではよォ」
八兵衛の口から発せられた、裏切りの言葉。
そこに込められた親友の悲痛な想いに、新八は気後れした顔になったのも束の間、意を決して訴える。
「タカチン、あれは…」
八兵衛はきつく眉をつり上げて新八の訴えを遮る。
「いいわけなんてききたかねーな。てめーの半端な優しさで、俺がどれだけ傷ついたと思ってんだ!」
大仰に両腕を広げて、怒りや憎しみを剥き出しにして声を荒げる。
いつの間にか、ではない。
はっきりとした区切りはある。
それはつまり、八兵衛が苦しみと悲しみに負け、あまりに大きすぎる絶望に押し潰された日でもある。
それが、あの事件だった。
「あんな真似すんならよォ、最初から俺なんてほっといてくれりゃよかったんだ。あれから、俺は…」
その辺りで、さすがに言い過ぎるのはまずいと気づいたのか、口をつぐんだ。
一体なんと言おうとしたのだろう、彼は。
その瞳に一瞬、嫌悪の色を浮かべて、一体何を。
「……チッ。まァ、いいさ。てめーのおかげで、俺も少しはたくましくなれた。もう誰もアテにしねー、自分自身が強くならねーってな」
八兵衛は不敵な笑みを浮かべ、出っ歯を覗かせる。
幼少時、彼と同じ寺子屋へ通っていた幼馴染は……その頃の面影はまるでなかった。
「今、俺、族に入ってんだ。知ってるか?『
弱虫でいじめられっ子から脱却するために選んだ道は、暴走族の仲間入り。
それを聞いた新八の表情が強張る。
「もう、てめーの力なんて必要ねェ。俺は変わったんだ、俺は強くなったんだ」
結局、何も言えずに彼の背中を見送った。
勤務に戻り、交替でレジを担当する新八の前に一人の少女がやって来た。
「タカチンコ?だぁれ、それ?」
「いや、タカチンコじゃなくて、タカチンです。ホントに覚えてないんですか?」
聞き手によってはとても危ない言葉を発する妙に、忘れず修正。
姉に幼馴染みのことを話すが、彼のことを覚えてないらしい。
「昔のことは忘れたわ。私、前だけ見て生きてくことに決めたの」
やたらとかっこいい台詞を放ち、差し入れとおぼしき包みを取り出す。
「そんなことより、みなさんに差し入れもってきたんです。銀サンも響古サンも神楽チャンも食べてください」
「姐御ォォ!!」
「妙、ありがとう!」
「おっ、食いモン?何?」
商品の棚を整理していた彼らは一斉に目を輝かせ、妙が持ってきた差し入れを見やる。
「今回は新しい料理に挑戦してみたんです~。ハイ、だし巻き卵」
彼女の口から紡がれた不吉な言葉に、三人の表情は一気に青ざめる。
差し入れは、だし巻き卵という食べ物の黒焦げた物体だった。
「私、飲み物買ってくるヨ!」
「いいって!俺が買ってくるから座ってろ!」