第三十二訓
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冷房の効いたパチンコ店から出ると、うだるような暑気、焼けつく日差しが突き刺さる。
ただでさえダメな雰囲気を増し、蒼白な表情となった長谷川はパチンコ店の前に突っ立つ。
すると、向こう側に建てられた店の自動ドアが開き、虚ろな目をした銀時が出てくる。
「よ…よォ」
「あ…ああ、アンタも来てたの」
そして、二人は顔を見合わせた。
「どーした?スゲー汗だぞ、負けたのか?」
どこかげっそりとした生気の薄れた表情で訊ねた。
「え?いや今日はあっついな~オイ」
途端、長谷川は気まずそうに顔をうつむかせ、誤魔化すようにつぶやく。
同じく冷や汗を掻く銀時にも同じ質問をする。
「そういうお前も汗だくだぞ、負けたのか」
「あつい!今日はあっついなァオイ!太陽!お前、有給とれバカヤロー!!」
こちらも図星の銀時は、真っ青な空をまぶしげに見上げてつっこむ。
視界の中は夏の高い空と南国を思わせる強い日差しだというのに、心の方には暗鬱とした気分がよみがえってくる。
「そうか。俺ァ、てっきり冷や汗かと…」
その時、近くの自販機でジュースを買おうとした男性が小銭を落とした。
「あ」
次の瞬間、目にも止まらぬ速さで二人は地を蹴り、雄叫びをあげる。
「「うがァァァァァ」」
男性が落とした小銭を拾うべく、勢いよく手を伸ばした。
その後、盗んだ小銭で買った棒アイスを食べながら辺りをぶらつく。
今は河川敷の階段に座り、時間が過ぎるのを待っていた。
「人間やっぱり、楽して儲けようとか、そういうこと考えちゃいけねーな」
パチンコで大勝ちを狙うべく、結局は散々な結果に終わってしまった自分を反省する。
「汗水たらして稼いだ金は、自然と身から離れねーもんだ」
「なんであそこで止 めなかったかな~、あそこで止めてりゃお前。ア~、勿体ねェ事しちまったよ。あそこで止めてりゃ…」
真面目に反省する長谷川とは裏腹に、銀時は狂乱でギャンブルに賭けた金額を未練がましく思い出す。
「人の話、きいてる?」
全く話を聞いていない銀時に呆れ、長谷川は胡乱な眼差しを向ける。
「夢と希望に満ち溢れた、ガキの頃の俺が今の俺を見たら、なんて言うんだろう?拾った金で棒アイスをむさぼるオッさんを見たら…」
「あそこで止めてりゃ、今頃パフェ食べ放題だったのにな~。あそこで止めてりゃ」
未だ、手持ちの現金以上の金額を投じた自分を恥じり、大好物のパフェを欲する。
「人の話、きいてる?」
銀時は大きな溜め息をついて、楽して稼げる夢のような方法を聞いてみた。
「ハァ~、長谷川さんよォ、どっかにイイ儲け話でも転がってねーもんか」
「最近は、みんな不景気で三食、棒アイスさ」
「三食は無理だな。昼に一度、うまい棒をはさみたい」
「ちょっと、いやだ、ばかん」
妙なこだわりを言い出したところで、ふと聞こえた女性の声。
そこには、一組のカップルが人目を気にせず抱き合ってイチャイチャしているではないか。
「もォ~。海つれてってくれるって言ったじゃん」
「いいなー、海いきてーなー」
それを聞いた長谷川は羨ましげなつぶやきを漏らす。
「私、もう水着買っちゃったのよん」
「いいな~、ビキニがいいな~、響古のビキニが見たいな~」
新しい水着と聞いた銀時は、ビキニ姿の響古を想像する。
だが、彼氏は首を横に振る。
「バーカ、お前、海なんて今いっても泳げねーよ」
この時期になると賑わう海で泳げないには理由があった。
「なんでも、謎の宇宙生物が出るらしいんだ。人食いザメだかイカだかタコだかしんねーけど危なくて泳げねーってんで、その化け物の首に懸賞金がかけられたらしーぜ」
近頃、海には謎の宇宙生物が出現するらしく、懸賞金がかかっているのだと言う。
「いやだ~、恐い~」
金もなく仕事もない二人にとって、懸賞金は絶対欲しい。
「今年の夏は」
「エイリアン一本釣りだ!」
いても立ってもいられなくなった二人は草むらから出て、腕を組んでエイリアン捕獲宣言をする。
「何…?この人達!?」
いきなり姿を現した見知らぬ二人に、カップルは唖然とする。
バイト先の帰り道、響古は棒アイスを食べている二人に遭遇した。
「二人とも、そんな所で何やってるの?」
声をかけられ、振り返った銀時は驚いたように目を見開く。
「響古、お前なんで…バイトは?」
「今日は早めに終わったのよ…それより」
響古はそう告げると、じろりと銀時を見やる。
ほとんど睨むような顔つきの脳内では、ある方程式ができていた。
(銀時と長谷川が一緒にいる→食べているものが質素なもの)
ならば、考えられることはただ一つ。
「アンタ、また無駄遣いしたろ」
すぅ、と響古の眉が平坦になった。
「え?」
キレた、と一目で察知した銀時は表情が一気に引きつる。
「やっぱり!またパチンコに金つぎ込んだ!そして、見事にすっからかん!そんな時間と金の余裕があるなら仕事しろや、コノヤロー!!」
慌てて制する間もない、木刀を振り上げた響古は銀時へ向かって、今にも撲殺しようとする。
「おちつけ!金のあてならある!だからおちついてェ、響古さんんん!!」
「また、そんなウソを!お前は一度、死んでこい!」
「響古ちゃん、ホントだから!」
力の限り怒鳴り声を張り上げる響古を、ようやく長谷川が止めに入る。
「なんだマダオ、かばうな。アンタもぶん殴るぞ」
きりきりとつり上がった凶暴な目つきに睨まれ、長谷川の頬を冷たい汗が伝い落ちる。
それまでゆるゆるだった空気が、一瞬にして凍りつく。
恐怖に固まる長谷川の隣で、銀時は自信満々に告げる。
「響古、今年の夏はエイリアン一本釣りだぜ」
「エイリアン?」
怪訝そうに眉を寄せる彼女に言い聞かせるように、銀時の言葉を引き継ぐ。
「なんでも、海に謎の生物が出現して、そいつに懸賞金がかけられてるらしーんだ」
「そこで、エイリアンをとっ捕まえて、棒アイスともおさらばってわけよ」
「最後の発言がよくわかんないわよ」
やる気満々な二人の男に、響古はじと目でつっこんだ。
青く澄んだ空と海、白い砂浜――海水浴にはぴったりの光景だというのに辺りには誰もおらず、空き缶と遊泳禁止の立て札があるだけ。
えいりあんが出るのはどうやら本当らしい。
にもかかわらず、だ。
どこからかソースの香りが漂い、神楽の腹が鳴る。
「は?えいりあん退治?え?ホントに来たの?」
『ビーチの侍』と看板を掲げた海の家を経営する男は、軽い口調で言い放った。
「あーそォ。アッハッハッ、いや~、助かるよ~。夏場はかき入れ時だってのにさァ、あの化け物のせいで客全然入らなくて、まいってたのよ~」
懸賞金の噂を頼りに立ち寄った海の家で、焼きそばを作りながら暑苦しい笑みを浮かべる。
「あの~、ひょっとして…えいりあんに懸賞かけたのって…」
「あ~。おじさんだよ、おじさん」
おそるおそるといった長谷川の質問に軽いノリで返し、笑い飛ばす。
「いや~、でもホント、来てくれるとは思わなかったよ。おじさんもさ~、酒の席でふざけ半分で発言したことだけに、まさかホントに来てくれるとは…」
どうやら懸賞金をかけたのはこの男だったらしく、それも飲み会のふざけ半分で発言したらしい。
何事も中途半端というのはいけない。
そうでなくては他の者に迷惑をかけてしまう。
例えば、パチンコで大負けした者に。
例えば例えば、三食棒アイスで過ごしている者に。
例えば例えば例えば、懸賞金のため全てをかけて海まで来た者に。
「ぎゃあああああああああ!!」
突如、顔面を熱々の鉄板に押しつけられ、焼け焦げる熱さに絶叫する。
それを見下ろす銀時と響古は、無表情の無言で熱々・鉄板の刑を実行する。
「「酒の席でふざけ半分?」」
まずは端正な美貌を冷え冷えとしたものに変えて、響古が口火を切る。
「おじさん、こっちは生活かかってるから真剣なのよ、わかる?」
「男は冗談いう時も命がけ、自分の言葉に責任とってもらおう」
焼きそばの具をくっつけた顔を上げ、男は必死に抗議する。
「待ってェェ!!おちついてェェ!!大丈夫!金ならちゃんとはらうから!ちゃんと用意してるから」
すると、いつもの番傘にタオル、サングラスと日光対策をした神楽がなんの詫 びれもなく焼きそばを食べていた。
「ウソつくんじゃねーヨ。こんな、もっさりした焼きそばしか焼けない奴、金もってるわけないネ。どーせお前の人生も、もっさりしてんだろ」
とはいえ、B級グルメの頂点を目指すわけでもない縁日の屋台。
そして、味よりコスト優先で仕入れたはずの食材。
旺盛な食欲という点では右に出る者はいない神楽――以上の三点を踏まえた感想であろう。
「ほら言ってみろヨ、モッサリって!はい、モッサリ~!」
焼きそばがまずいからと言って、人生までしょうもないと決めつけられる。
「ちょっとォォ、何、売り物勝手に食べてんのォォ!!」
遠慮なく言われた上に人生まで決めつけられてしまい、男は精一杯の気合いを入れる。
「おじさんだって、こう見えても海の男だぞ。金は確かに無いが、それ相応の品を礼として出すって!」
テンションは最低辺だが、懸賞金と同等の物があるというのなら話は別。
「ほぅ…じゃ、見せてもらおーじゃねーか」
「へぇ…もし、その品がくだらないものだったら、海の真ん中にはりつけの刑よ」
この言葉に、二人は面白いと言わんばかりに頷いた。
「えいりあん退治はその後だ」
「海の男でしょ?自分の言葉に責任もっての発言でしょ?」
ただでさえダメな雰囲気を増し、蒼白な表情となった長谷川はパチンコ店の前に突っ立つ。
すると、向こう側に建てられた店の自動ドアが開き、虚ろな目をした銀時が出てくる。
「よ…よォ」
「あ…ああ、アンタも来てたの」
そして、二人は顔を見合わせた。
「どーした?スゲー汗だぞ、負けたのか?」
どこかげっそりとした生気の薄れた表情で訊ねた。
「え?いや今日はあっついな~オイ」
途端、長谷川は気まずそうに顔をうつむかせ、誤魔化すようにつぶやく。
同じく冷や汗を掻く銀時にも同じ質問をする。
「そういうお前も汗だくだぞ、負けたのか」
「あつい!今日はあっついなァオイ!太陽!お前、有給とれバカヤロー!!」
こちらも図星の銀時は、真っ青な空をまぶしげに見上げてつっこむ。
視界の中は夏の高い空と南国を思わせる強い日差しだというのに、心の方には暗鬱とした気分がよみがえってくる。
「そうか。俺ァ、てっきり冷や汗かと…」
その時、近くの自販機でジュースを買おうとした男性が小銭を落とした。
「あ」
次の瞬間、目にも止まらぬ速さで二人は地を蹴り、雄叫びをあげる。
「「うがァァァァァ」」
男性が落とした小銭を拾うべく、勢いよく手を伸ばした。
その後、盗んだ小銭で買った棒アイスを食べながら辺りをぶらつく。
今は河川敷の階段に座り、時間が過ぎるのを待っていた。
「人間やっぱり、楽して儲けようとか、そういうこと考えちゃいけねーな」
パチンコで大勝ちを狙うべく、結局は散々な結果に終わってしまった自分を反省する。
「汗水たらして稼いだ金は、自然と身から離れねーもんだ」
「なんであそこで
真面目に反省する長谷川とは裏腹に、銀時は狂乱でギャンブルに賭けた金額を未練がましく思い出す。
「人の話、きいてる?」
全く話を聞いていない銀時に呆れ、長谷川は胡乱な眼差しを向ける。
「夢と希望に満ち溢れた、ガキの頃の俺が今の俺を見たら、なんて言うんだろう?拾った金で棒アイスをむさぼるオッさんを見たら…」
「あそこで止めてりゃ、今頃パフェ食べ放題だったのにな~。あそこで止めてりゃ」
未だ、手持ちの現金以上の金額を投じた自分を恥じり、大好物のパフェを欲する。
「人の話、きいてる?」
銀時は大きな溜め息をついて、楽して稼げる夢のような方法を聞いてみた。
「ハァ~、長谷川さんよォ、どっかにイイ儲け話でも転がってねーもんか」
「最近は、みんな不景気で三食、棒アイスさ」
「三食は無理だな。昼に一度、うまい棒をはさみたい」
「ちょっと、いやだ、ばかん」
妙なこだわりを言い出したところで、ふと聞こえた女性の声。
そこには、一組のカップルが人目を気にせず抱き合ってイチャイチャしているではないか。
「もォ~。海つれてってくれるって言ったじゃん」
「いいなー、海いきてーなー」
それを聞いた長谷川は羨ましげなつぶやきを漏らす。
「私、もう水着買っちゃったのよん」
「いいな~、ビキニがいいな~、響古のビキニが見たいな~」
新しい水着と聞いた銀時は、ビキニ姿の響古を想像する。
だが、彼氏は首を横に振る。
「バーカ、お前、海なんて今いっても泳げねーよ」
この時期になると賑わう海で泳げないには理由があった。
「なんでも、謎の宇宙生物が出るらしいんだ。人食いザメだかイカだかタコだかしんねーけど危なくて泳げねーってんで、その化け物の首に懸賞金がかけられたらしーぜ」
近頃、海には謎の宇宙生物が出現するらしく、懸賞金がかかっているのだと言う。
「いやだ~、恐い~」
金もなく仕事もない二人にとって、懸賞金は絶対欲しい。
「今年の夏は」
「エイリアン一本釣りだ!」
いても立ってもいられなくなった二人は草むらから出て、腕を組んでエイリアン捕獲宣言をする。
「何…?この人達!?」
いきなり姿を現した見知らぬ二人に、カップルは唖然とする。
バイト先の帰り道、響古は棒アイスを食べている二人に遭遇した。
「二人とも、そんな所で何やってるの?」
声をかけられ、振り返った銀時は驚いたように目を見開く。
「響古、お前なんで…バイトは?」
「今日は早めに終わったのよ…それより」
響古はそう告げると、じろりと銀時を見やる。
ほとんど睨むような顔つきの脳内では、ある方程式ができていた。
(銀時と長谷川が一緒にいる→食べているものが質素なもの)
ならば、考えられることはただ一つ。
「アンタ、また無駄遣いしたろ」
すぅ、と響古の眉が平坦になった。
「え?」
キレた、と一目で察知した銀時は表情が一気に引きつる。
「やっぱり!またパチンコに金つぎ込んだ!そして、見事にすっからかん!そんな時間と金の余裕があるなら仕事しろや、コノヤロー!!」
慌てて制する間もない、木刀を振り上げた響古は銀時へ向かって、今にも撲殺しようとする。
「おちつけ!金のあてならある!だからおちついてェ、響古さんんん!!」
「また、そんなウソを!お前は一度、死んでこい!」
「響古ちゃん、ホントだから!」
力の限り怒鳴り声を張り上げる響古を、ようやく長谷川が止めに入る。
「なんだマダオ、かばうな。アンタもぶん殴るぞ」
きりきりとつり上がった凶暴な目つきに睨まれ、長谷川の頬を冷たい汗が伝い落ちる。
それまでゆるゆるだった空気が、一瞬にして凍りつく。
恐怖に固まる長谷川の隣で、銀時は自信満々に告げる。
「響古、今年の夏はエイリアン一本釣りだぜ」
「エイリアン?」
怪訝そうに眉を寄せる彼女に言い聞かせるように、銀時の言葉を引き継ぐ。
「なんでも、海に謎の生物が出現して、そいつに懸賞金がかけられてるらしーんだ」
「そこで、エイリアンをとっ捕まえて、棒アイスともおさらばってわけよ」
「最後の発言がよくわかんないわよ」
やる気満々な二人の男に、響古はじと目でつっこんだ。
青く澄んだ空と海、白い砂浜――海水浴にはぴったりの光景だというのに辺りには誰もおらず、空き缶と遊泳禁止の立て札があるだけ。
えいりあんが出るのはどうやら本当らしい。
にもかかわらず、だ。
どこからかソースの香りが漂い、神楽の腹が鳴る。
「は?えいりあん退治?え?ホントに来たの?」
『ビーチの侍』と看板を掲げた海の家を経営する男は、軽い口調で言い放った。
「あーそォ。アッハッハッ、いや~、助かるよ~。夏場はかき入れ時だってのにさァ、あの化け物のせいで客全然入らなくて、まいってたのよ~」
懸賞金の噂を頼りに立ち寄った海の家で、焼きそばを作りながら暑苦しい笑みを浮かべる。
「あの~、ひょっとして…えいりあんに懸賞かけたのって…」
「あ~。おじさんだよ、おじさん」
おそるおそるといった長谷川の質問に軽いノリで返し、笑い飛ばす。
「いや~、でもホント、来てくれるとは思わなかったよ。おじさんもさ~、酒の席でふざけ半分で発言したことだけに、まさかホントに来てくれるとは…」
どうやら懸賞金をかけたのはこの男だったらしく、それも飲み会のふざけ半分で発言したらしい。
何事も中途半端というのはいけない。
そうでなくては他の者に迷惑をかけてしまう。
例えば、パチンコで大負けした者に。
例えば例えば、三食棒アイスで過ごしている者に。
例えば例えば例えば、懸賞金のため全てをかけて海まで来た者に。
「ぎゃあああああああああ!!」
突如、顔面を熱々の鉄板に押しつけられ、焼け焦げる熱さに絶叫する。
それを見下ろす銀時と響古は、無表情の無言で熱々・鉄板の刑を実行する。
「「酒の席でふざけ半分?」」
まずは端正な美貌を冷え冷えとしたものに変えて、響古が口火を切る。
「おじさん、こっちは生活かかってるから真剣なのよ、わかる?」
「男は冗談いう時も命がけ、自分の言葉に責任とってもらおう」
焼きそばの具をくっつけた顔を上げ、男は必死に抗議する。
「待ってェェ!!おちついてェェ!!大丈夫!金ならちゃんとはらうから!ちゃんと用意してるから」
すると、いつもの番傘にタオル、サングラスと日光対策をした神楽がなんの
「ウソつくんじゃねーヨ。こんな、もっさりした焼きそばしか焼けない奴、金もってるわけないネ。どーせお前の人生も、もっさりしてんだろ」
とはいえ、B級グルメの頂点を目指すわけでもない縁日の屋台。
そして、味よりコスト優先で仕入れたはずの食材。
旺盛な食欲という点では右に出る者はいない神楽――以上の三点を踏まえた感想であろう。
「ほら言ってみろヨ、モッサリって!はい、モッサリ~!」
焼きそばがまずいからと言って、人生までしょうもないと決めつけられる。
「ちょっとォォ、何、売り物勝手に食べてんのォォ!!」
遠慮なく言われた上に人生まで決めつけられてしまい、男は精一杯の気合いを入れる。
「おじさんだって、こう見えても海の男だぞ。金は確かに無いが、それ相応の品を礼として出すって!」
テンションは最低辺だが、懸賞金と同等の物があるというのなら話は別。
「ほぅ…じゃ、見せてもらおーじゃねーか」
「へぇ…もし、その品がくだらないものだったら、海の真ん中にはりつけの刑よ」
この言葉に、二人は面白いと言わんばかりに頷いた。
「えいりあん退治はその後だ」
「海の男でしょ?自分の言葉に責任もっての発言でしょ?」