第二十五訓
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珍しく万事屋の電話がけたたましく鳴ってから数時間後、仕事の依頼があるとのことで、四人はとあるファミレスを訪れた。
「私的にはァ~、何も覚えてないんだけどォ。前になんかシャブやってた時にィ、アンタらに助けてもらったことをパパからきいて~」
こんがりいい感じに焼けた肌。
染めているというよりは色がなくなったと言った方が近そうな、艶のない金髪のギャルが語尾を伸ばしながら話す。
「シャブ?覚えてねーな」
そこで待っていたのは、いつかの"転生郷"事件で助けたハム子もとい公子だった。
(詳しくは春雨編を読んでね)
「あー、アレですか?しゃぶしゃぶにされそーになってるところを助けたとか、なんかそんなんですか?」
だが、銀時は公子のことをすっかり忘れていた。
「ちょっとォ、マジムカつくんだけど~。ありえないじゃん、そんなん」
「そーですね、しゃぶしゃぶは牛ですもんね。じゃあ何ですか?ポークビッツか?ポークビッツなら満足かコノヤロー」
「何の話をしてんだよ!」
右隣に座る新八からツッコミが入り、左隣に座る響古が説明する。
「銀、忘れちゃったの?養豚場から連れていかれそーになってるところを助けたんだよ」
「あっ、そーか、そーだっけ?」
「ちげーだろ!何、納得してんだ、響古さんもウソつかないでください!」
改めて耳打ちして訂正を入れると、銀時と響古は気のない声を出す。
「アレですよ、春雨とやり合った時のシャブ中娘ですよ」
「あー、ハイハイ、あのハムの!」
「あー、思い出した、ハムね!」
「豚からハムに変わっただけじゃねーかよ!!」
万事屋の中ではハム子というあだ名がついていたが、本名はなんだったかと考えてしまう。
まあ、別にわからなくてもいいかと思い、ボケを続けることにした。
「ちょっと可愛くなったじゃん。よし、今日からアンタ"ハム子"ね」
「なってねーよ!アンタ、美人なくせに性格悪いな!ってか、勝手に変なあだ名つけてんじゃねー!!」
話で聞いた印象とはまるきり違ういい加減な態度に憤慨して、公子は声を荒げる。
「もうマジ、ありえないんだけど!頼りになるってきいたから、仕事もってきたのに、ただのムカつく奴じゃん!」
すると、ストローを唇につけてジュースを飲む神楽が一言申す。
「お前もな」
「何をををを!」
しかしその時、この言葉と共に静かな声が届いた。
「他に相談できる場所がなかったから……違う?」
公子を見据えて、漆黒の瞳を細める響古がいた。
「……っ」
どうやら図星のようだ。
公子の視線が宙をさまよう。
必死に脱出経路を探しているような仕草。
ある意味で、その通りだったのだろう。
「す…すんません。あのハム子さんの方は、その後どーなんですか?」
頭を掻いて話題を変える新八だが、名前を間違えている。
「アンタ、フォローにまわってるみたいだけど、ハム子じゃないから、公子だから!」
抗議しても無駄な気がするのだが。
公子はふて腐れた顔で頬杖をついて話を続ける。
「麻薬なら、もうスッカリやめたわよ。立ち直るの、マジ大変でさァ。未だに通院してんの…もうガリガリ」
「何がガリガリ?心が?」
「そりゃ、そーでしょ。どこらへんがガリガリ?」
「痛い目見たし、もう懲りたの。でも今度は、カレシの方がヤバイ事になってて~」
「彼氏?ハム子さんアンタ、まだ幻覚見えてんじゃないですか!!」
眼鏡のつるを押し上げて、疑いの眼差しを向ける。
これまでも他の三人にぶつけられた不躾な言葉の数々。
「オメーら、人を傷つけてそんなに楽しいか!!」
常識人の新八までも浴びせられた発言に、とうとう怒りを剥き出しにしてつっこむ。
「これ、カレシからのメールなんだけど」
仕切り直すように携帯電話を取り出して、彼氏から送られてきたメールを見せてくれた。
太助より
(件名)マジヤバイ
(本文)マジヤバイんだけどコレ。マジヤバイよ。どれくらいヤバイかっていうとマジヤバイ。
カタカナとひらがなの羅列が画面を埋めていた。
用件が全く伝わってこない彼氏からのメールを読む四人。
「あーホント、ヤベーな、こりゃ。俺達より病院にいった方が…」
「もう、手遅れじゃない?」
マジとヤバイしか連呼してない時点で頭の方が大丈夫かと心配になってくる。
「頭じゃねーよ!!」
彼女は一つ溜め息をつくと、観念した顔で口を開いた。
「実は私のカレシ、ヤクの売人やってたんだけど~、私がクスリから足洗ったのを機に、一緒にまっとうに生きようってことになったの~」
――郊外にある貨物コンテナが整然と積み上げられているうらぶれた場所。
――いくつも並び、佇む迷路を、鼻と下唇にピアスをつけたアフロ髪の男が走り回る。
――その後ろから、黒い外套を纏った天人達が追いかけてくる。
「けど~、深いところまで関わりすぎてたらしくて~、辞めさせてもらうどころか~なんかァ、組織の連中に狙われだして~」
麻薬の売人をやっていて辞めたいなんて、そりゃ狙われもするわと呆れてしまう。
抜けたそいつから情報が漏れて、自分達の安全が脅かされないのだから。
「とにかく超ヤバイの~、それでアンタたちに力が借りたくて~」
太助を追い、天人達は憎悪に燃えた双眸で周囲を見回す。
「どこいきやがった、アイツ!?」
コンテナに隠れた太助は慌てて携帯を取り出し、公子に連絡しようとボタンを押す。
「ヤベーよ、マジヤベーよ!公子の奴、何やってんだ?」
途端、携帯の画面が真っ二つに斬られた。
愉快そうな声が頭上で囁かれ、訳もわからぬままに焦燥する。
「誰だ公子って、てめーの女か?」
「ふーん。組織から抜けて、これからはその公子ちゃんと仲良く暮らすわけだ?」
「そいつァいいなァ太助」
コンテナの上に立つ三人の天人が、弱者をいたぶる蛇の顔をしてこちらを見下ろしていた。
そして、うろたえる彼の前に飛び降りる。
「ま…待ってくれ、見逃してくれ!!俺ァもうヤバイ仕事したくねーんだ、まっとうに生きてーんだよ!」
「まっとうだァ?仲間裏切った奴がよく言うぜ。俺達だって、てめーなんざ興味はねェ!アレがほしいだけだ」
一人の天人が歩み寄ってきて、下唇のピアスに指を引っかける。
恐怖に震える太助の顔に近づけ、押し殺した声で囁いた。
「おいしい汁だけすすって、トンズラなんざ許さねーよ。アレどこに隠した?さっさと言わねーと…」
「ま…ま…待ってくれ、俺、ホントにっ…」
天人は引っかけた指を引っ張り、力を込める。
必死の抗議も虚しく、下唇のピアスを引きちぎった。
「ぎゃああああ!」
激痛に悲鳴をあげる太助の顎から、血が溢れ出す。
「こういう事になるぜ!」
薄気味悪く笑い、大振りの鎌を抜いたと思うと、太助の頭に突きつける。
「まだしゃべれるよな?ハイ、次、ココいくよ~、ココ」
「待って!俺ホント、何も知らねーんだって!マジ持ってないから!」
「じゃ、死ね!」
残酷な宣言と共に、三日月形の刃を振り下ろす。
太助は強張った表情で振り下ろされる鎌を見る。
「うわァァァァァァァ!!」
直撃であることを脊髄が悟り、目をつむる。
突如、コンテナから降りてきた銀時の木刀が天人を蹴散らした。
最初、何が起こったのかわからなかったが、すぐに闖入者が現れたことに気づく。
「なっ…なんだ、テメー!?」
「なんだ、チミはってか?そーです。私が…」
その時"変なおじさん"ギャグを遮って公子が飛び降り、銀時の真上に着地した。
「太助ェェ!!」
「公子ォォ!!」
止める間もなく公子が戦地に赴いてしまい、縄を持つ手が小刻みに震えている。
ちらりと真下を一瞥すれば、公子に潰された銀時が倒れている。
さすがにかわいそうに見えた。
「ちょっとハム子、勝手な行動するんじゃないわよ!」
公子に続いて、響古もコンテナから飛び降りる。
「もう大丈夫よ、万事屋つれてきたから、アイツら金払えば、何でもやってくれんの!」
「何でもやるっつーか、もう何にもやれそーにねーぞ、大丈夫なのか?」
先程、公子の下敷きになってしまった銀時。
響古が肩を揺すったり声をかけるが、
「ぎーん!?」
白目を剥いてしまっている。
「…う…う、メス豚が邪魔しやがって」
意識を取り戻した銀時は顔を青ざめて作戦変更を告げる。
「オイ作戦変更だ、連中残して戦線離脱するぞ!」
「「あいあいさ~」」
それを受けて、コンテナの上で待機している新八と神楽が返事をする。
抱きついてくる響古を受け止めながら、腰に巻いてある縄が引っ張られた。
「!!あっ!!てめェ何自分達で逃げてんの!?」
公子は自分達を置いて逃げようとする二人を見上げて叫ぶ。
「悪いが豚二匹しょって逃げる作戦なんざ、用意しちゃいねェ」
「ハム子、アンタが勝手なマネするからよ!」
すると、二人は逃がさない、というふうに銀時の足にしがみつく。
「ふざけんな!!パフェ何杯食わせてやったと思ってんだよ!!」
「キッチリ働けや!!」
デブ二人の体重が一気に縄にかかり、子供達も思わず下方に引っ張られそうになった。
だが、この状況で一番きついのは銀時だ。
「うごっ!!」
上から引っ張られ下からも引っ張られ、響古は久しぶりに銀時がかわいそうに見えた。
「はっ…腹がしめつけられ…ぐふっ、やばいってコレ!なんか内臓的なものが出るって!!」
「なっ!?銀、しっかり!!」
混乱の中、響古は縄の結び目を緩くして公子と太助に抗いながら必死な様子。
「内臓的なもの?」
神楽はその言葉通り、口から臓器を吐き出す銀時を想像した。
「いやだヨそんな銀ちゃん!四六時中、そんなの出てたら気を使うヨ!関係ギクシャクしてしまうヨ!響古との関係もギクシャクして別れちゃうヨ!!」
「出るわけねーだろ、そんなもん!」
「新八、縄お願いアル」
「あっ、ちょっと!!」
銀時の言葉を真に受けて新八の制止も聞かず、縄を離して飛び降りる。
「ハム子ォォォ!!」
その大声に振り仰ぐと、コンテナから飛び降りた神楽が銀時の身体にしがみつく。
そして、公子を蹴り始めて振り落とそうとする。
「銀ちゃんから手を離すヨロシ!このままでは、銀ちゃんの内臓がァァァ!!」
「ちょっ…何すんの、マジムカつくんだけど、この小娘!!」
神楽も加わって余計に重さが増し、響古は落ちまいと必死に銀時にしがみつく。
「っていうか、テメーも降り…っ!?」
訴えの途中で、銀時は目の前の物体に困惑した。
眼前に胸がある。
ああ、その胸だ。
間違いなく乳だ。
極上に柔らかそうな丸い物体が二つも目の前にある。
視線を少しだけ動かし、胸の持ち主の顔を確認する。
「落ちる、落ちるぅぅぅ!!」
銀色の頭を抱きかかえるように、悲鳴をあげる響古がいた。
顔面から伝わる弾力と感触に、銀時の身体が一瞬、固まった。
(ちょっ、どうしよう…苦しいけと、嬉しいんだけどコレ。しかも今、夏服だし……)
脳みそが弾け飛びそうな銀時だったが、身体にある異変が起きて目を剥いた。
「あ゙っ!!出たァァ!!ケツからなんか出たぞ、コレ!新八ィ!!響古ォ!!見てくれ、コレ、なんか出てない?俺?」
「知るかっつーの!」
「大丈夫!出たのはウ○コだから!それしかないから!」
「そんな大声で下ネタ言うなァァ!」
周りが動くたびに揺れて、縄が手から滑る落ちそうになる