第二十四訓
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濃い顔立ちに猫耳をつけたキャサリンが訪れ、家賃の回収にやって来た。
「坂田サーン。オ登勢サンノ代ワリニ、家賃ノ回収ニ参リマシタ」
彼女は窃盗で御用となったはずだが、お登勢によって再び雇われた。
「開ケテクダサーイ、イルノハワカッテマスヨ。坂田サーン、アホノ坂田サーン」
呼びかけ方がヤクザの取立てじゃねーか、とツッコミを入れたい心境だ。
何故、彼らが居留守を使っているのか……それは家賃を滞納しているから。
玄関の外から聞こえてくるキャサリンの声に、万事屋一同は机の下でひっそりしていた。
「いいわね絶対動かないこと。気配を殺して、自然と一体になるのよ」
「お前は宇宙の一部であり、宇宙はお前の一部だ…」
神楽、響古、銀時、新八の順に机の下に潜る。
すると、神楽がガタガタと机を揺らして興奮し出した。
「宇宙は私の一部?スゴイや!小さな悩みなんてフッ飛んじゃうヨ!」
「うるせーよ、静かにしろや!」
「アンタが一番うるさいよ!」
神楽の騒がしさに銀時がつっこみ、それに新八もつっこむ。
「いや、お前が一番うるせーよ!」
また銀時がつっこみ、背筋に悪寒が駆け抜けた。
隣からドス黒いオーラが発散されている。
さすがの二人も事態を悟ったらしく、おそるおそる視線を移すと、青筋を立てる響古は微笑んで言った。
「アンタ達、いい加減にしなさい」
『スンマセンでしたァ!!』
顔を真っ青に染めて謝罪すると、これ以上大声を出さないように口をつぐむ。
急に呼びかけが止まり、銀時と響古は首を傾げる。
「静かになったな」
「帰ったのかしら?」
「ナンカ修学旅行ミタイデ、ドキドキスルネ」
いきなり背後から、この家の中では絶対聞くはずのない声が届く。
全員思うところは色々あった。
なんでそこにいるだとか、どうやって入ったとか。
『………………』
何秒か黙り込んだ後、一気に悲鳴が爆発する。
『ぎゃああああああ!!』
四人の叫び声は一階のスナックお登勢にまで聞こえたそうな。
結局、居留守を使ったことがバレてしまった万事屋一同は罰としてスナックの店で雑用をすることとなった。
こんなことでは家賃分の足しにもならないが、何もしないよりはましだろう。
「キャサリンは、鍵開けが十八番 なんだ。たとえ金庫にたてこもろーが、もう逃げられないよ」
銀時と新八がモップで床を掃き、神楽が雑巾がけをする。
響古はカウンター席に座り、優雅に眺めている。
「でも、金庫が開けられても、中身が空じゃ仕方ないですよ」
「ウチには、もうチクワと小銭しかねーぞ。さァどーする」
「どーするって、お前らがこれからの生活、どーするんだァ!!」
自慢顔で言い切る銀時に対してお登勢はつっこんだ。
「お登勢さん、やっぱりあたしも掃除しましょーか?」
「何言ってんだィ。アンタはバイトで金貯めてんだから、余計なことはしなくていーんだよ」
響古は椅子を半回転させて、銀時達に身体を向けた。
膝丈の浴衣を緩く着ていて、その下は黒いタンクトップ、後ろ髪を紅色のバレッタでまとめ上げてと、涼しさと運動効率を重視した格好だ。
しかし、艶やかな黒髪の隙間から見える、透けるような白いうなじ。
黒いタンクトップを包む、豊かな胸。
腰に巻かれた革のベルトが、その腰を美しく引き立たせている。
短い丈から覗く、すらりとした白い脚。
露出の多さとスタイルの良さに、新八と神楽は真っ赤になって掃除をする手が止める。
だが、銀時は気づいていた。
「……何笑ってんだよ」
「え?別にー」
彼女の口許がニヤニヤ笑いを堪えているのを。
「ただ、普段から怠けてる人の働いてる姿を見るのって、とっても気持ちのいいものねェ…って」
そう言うと、響古はよりいっそう笑みを深くする。
なんというか、雰囲気はもはや女王様。
「とにかく、金が無いなら働いて返してもらうよ」
銀時達の心は乱れるが、抗いたがいお登勢の一声が響く。
男達が、足取りに微妙な未練の重さを見せつつ掃除に取りかかる。
途端、雑巾がけを再開した神楽が勢いあまってテーブルに突っんだ。
「チャイナ娘ェェ!!雑巾がけはいいから、お前はおとなしくしてろォ!!バーさんからのお願い!」
「ソレガ終ワッタラ、私ノタバコ買ッテキナ」
「てめーも働けっつーの!」
偉そうに煙草を吹かすキャサリンの頭を、お登勢はスリッパ(W.C)で叩く。
「しかしバーさん、アンタも、もの好きだねェ。店の金かっぱらったコソ泥をもう一度雇うたァ、更生でもさせるつもりか?」
銀時はモップで床を吹くキャサリンを見やる。
どういう経緯で再度働くようになったのかは、響古は勿論知らない。
「そんなんじゃないよ。人手が足りなかっただけさーね…」
お登勢は煙草に火をつけ、核心部分をはぐらかした。
それは二人の個人的やり取りであり、特に聞き出してどうにかしようとも思わない。
「盗み癖は天然パーマなみにとり難いって話だ。ボーッとしてたらまた足元すくわれるぜ、バーさん」
「………大丈夫さ。あの娘はもうやらないよ、約束したからね。それより、お前も働…」
「お登勢さん。銀なら、とっくに逃げちゃいました」
説教しようと口を開いたところを響古が遮る。
一瞬の隙をついて銀時は逃げていた。
「……………」
「逃げ足だけは速いわね~」
逃げ足の速さに絶句するお登勢の横で、響古はわざとらしく頬に手を当てる。
だらだらとゴミ置き場のある裏道へ行く中で、子供達の他に響古も加わった。
「ズルイヨ銀ちゃん、一人だけ逃げるなんて…おかげで、私たち仕事量倍ネ。結局、響古まで働くはめになったアル」
空のビール瓶が入った容器を頭に乗せる神楽が愚痴をこぼすと、響古はけらけらと笑う。
「銀がそう真面目に働くわけないから、気にしないで」
だが、いつも彼女ばかり働かせていると自覚がある。
新八は悄然とうつむき、申し訳なさそうに告げる。
「本当にスミマセン、響古さん…もう部屋は貸さないってお登勢サン、怒り狂ってたよ。僕らどーなるんだろ?」
すると、キャサリンは持っていた段ボールを差し出した。
「コノダンボール、アゲマショーカ?」
「住めってか!ソレに住めってか!」
ホームレスの必需品でもある段ボール。
河原や橋の下で野宿でもしろと言われた気がして、新八は激怒する。
「ふざけるなヨ!こんなものに住めるわけない!Lサイズにしてヨ!!」
神楽も段ボールに身体を突っ込んで反論する。
「アレいいのかコレ!?間違ってねーのかコレ!?」
「オ登勢サンニ迷惑カケル奴ハ私、許シマセン。響古サンハトモカク、家賃モ払ワナイオ前ラナンテ、ダンボールト一緒ニ廃品回収サレレバイイ」
「んだとォォォ、確かに響古には苦労かけて悪いと思ってるネ!」
この発言に、神楽が瞳を怒りの炎で燃やして猫耳を掴む。
「でも、お前なんか泥棒やってたじゃねーか、このメス豚ァァ!!その耳ちぎって、ただの団地妻にしてやろーかァァ!!」
どこでそんな言葉を覚えてきたのか、幼い少女の口から飛び出す団地妻。
昼ドラの定番的なテーマや官能小説などで描写される、夫の留守中に不倫するといった、フィクションの世界で独特のイメージを形成している。
「ナニヲー!!オ前コソ語尾カラ『アル』チギッテ凡庸 ナキャラニシテヤローカァ!?」
負けじと、キャサリンも少女の特徴的な語尾をなくして、ただのモブキャラに降格させようと頬を引っ張る。
「あぁ、もうおちついて、二人とも!」
女同士の口論は掴み合うほどにヒートアップし始め、慌てた新八が仲裁に入る。
「二人とも、もっとキャラの特徴を大切にしなさい!」
「響古さん、言ってる意味がよくわかりませんが…」
「ウルサイアル!お前も顔から眼鏡ちぎりとってさらに、影うすくしてやろーか!!」
「んだとォォォォォ、コラァァァァ!!」
この不用意な一言が彼の逆鱗に触れ、眼鏡を外す。
目の怖さがぐんぐん増し、仲裁していた喧嘩に参加してしまった。
「てめーらは、この世界におけるツッコミ役の大切さをわかってねーんだよ!」
ツッコミどころの多い物語の中で、唯一のツッコミ役として存在する新八の主張が響き渡る。
「オゥオゥ、元気そーだな、キャサリン!」
そこにやって来た男が彼女に声をかけた。
「探したぜ~」
「……クッ…クリカン…」
振り返ったキャサリンは驚いた顔で、頭頂部に猫耳がついた男を見る。
響古はキャサリンの反応に疑問符を浮かべたが、未だ続く喧嘩を止めることに決めた。
(まっ、ほとんど新八がやられちゃってるけどね。by.響古)
「ぎゃああああ!!ゴメンナサイ!ゴメンナサイ!」
今のところ、神楽が馬乗りになって殴りかかり、新八がひたすら謝るという一方通行な光景が広がっていた。
クリカンと呼ばれた男は陰険な笑みを浮かべ、話があるといってキャサリンを呼び出す。
神社に続く石段を登っていく二人。
石段の最上段にキャサリンは腰を下ろし、クリカンは境内に立つ。
「しばらく会わねェーうちに、変わったなお前?」
「…野暮ネ。変ワッタナンテ言葉ハ若イ女シカ喜バナイ。大人ノ女ニハ『昔と変わらないね』ッテ言ウモノヨ」
「ハン。そーゆーところは相変わらずだ…だが、俺達とつるんでいた頃のお前はもっと、パンチきいてたぜ」
それを聞いたクリカンは不敵に笑い、かつて盗賊として名を馳せていたキャサリンの過去を語る。
「銀河中のお宝を荒らし回り、どんな厳重な金庫の鍵も容易にこじ開ける"鍵っ娘キャサリン"といえば、知らねー奴はいなかった」
「止メテヨ、私ハモウ泥棒カラ足洗ッタノ」
「そうだな。そう言って、お前は俺達から去っていった」
そこで改めて、キャサリンへ眼差しを向けた。
青ざめた表情に警戒を浮かべるキャサリンだったが、どこか力ない。
「だが、風の噂できいたが、お前…地球(ココ)でブタ箱ブチ込まれたらしいじゃないの?」
クリカンの嘲りの口調に、平静な表情を努める。
悪行ほど、簡単に自分と縁を切れないということを、キャサリンは自覚している。
「盗み癖ってのは、カレーうどんの汁よりとり難い。洗っても洗っても、落ちやしないぜ。今さら無理して堅気になったところで、どうなるってんだ?」
思いがけない話を突きつけられ、キャサリンが衝撃を受けたふうに表情を揺らす。
「それより、どうだ…また俺達、キャッツパンチに入らないか?」
クリカンはやはり、泥棒という悪しき職業から辞めた自分を誘いに来たのだ。
「実は俺達、江戸で一山狙っててな。ここは天人と金が銀河から集まってる…働きがいがあるぜ。そこで、お前の力が借りたいのさ、キャサリン」
「止メテヨ!今ノ女将サンニハ、世話ニナッテルノ…モウ裏切ルコトナンテデキナイ」
警察に捕まった自分をもう一度拾ってくれたお登勢のために、本気で泥棒をやめようと思っている。
「坂田サーン。オ登勢サンノ代ワリニ、家賃ノ回収ニ参リマシタ」
彼女は窃盗で御用となったはずだが、お登勢によって再び雇われた。
「開ケテクダサーイ、イルノハワカッテマスヨ。坂田サーン、アホノ坂田サーン」
呼びかけ方がヤクザの取立てじゃねーか、とツッコミを入れたい心境だ。
何故、彼らが居留守を使っているのか……それは家賃を滞納しているから。
玄関の外から聞こえてくるキャサリンの声に、万事屋一同は机の下でひっそりしていた。
「いいわね絶対動かないこと。気配を殺して、自然と一体になるのよ」
「お前は宇宙の一部であり、宇宙はお前の一部だ…」
神楽、響古、銀時、新八の順に机の下に潜る。
すると、神楽がガタガタと机を揺らして興奮し出した。
「宇宙は私の一部?スゴイや!小さな悩みなんてフッ飛んじゃうヨ!」
「うるせーよ、静かにしろや!」
「アンタが一番うるさいよ!」
神楽の騒がしさに銀時がつっこみ、それに新八もつっこむ。
「いや、お前が一番うるせーよ!」
また銀時がつっこみ、背筋に悪寒が駆け抜けた。
隣からドス黒いオーラが発散されている。
さすがの二人も事態を悟ったらしく、おそるおそる視線を移すと、青筋を立てる響古は微笑んで言った。
「アンタ達、いい加減にしなさい」
『スンマセンでしたァ!!』
顔を真っ青に染めて謝罪すると、これ以上大声を出さないように口をつぐむ。
急に呼びかけが止まり、銀時と響古は首を傾げる。
「静かになったな」
「帰ったのかしら?」
「ナンカ修学旅行ミタイデ、ドキドキスルネ」
いきなり背後から、この家の中では絶対聞くはずのない声が届く。
全員思うところは色々あった。
なんでそこにいるだとか、どうやって入ったとか。
『………………』
何秒か黙り込んだ後、一気に悲鳴が爆発する。
『ぎゃああああああ!!』
四人の叫び声は一階のスナックお登勢にまで聞こえたそうな。
結局、居留守を使ったことがバレてしまった万事屋一同は罰としてスナックの店で雑用をすることとなった。
こんなことでは家賃分の足しにもならないが、何もしないよりはましだろう。
「キャサリンは、鍵開けが
銀時と新八がモップで床を掃き、神楽が雑巾がけをする。
響古はカウンター席に座り、優雅に眺めている。
「でも、金庫が開けられても、中身が空じゃ仕方ないですよ」
「ウチには、もうチクワと小銭しかねーぞ。さァどーする」
「どーするって、お前らがこれからの生活、どーするんだァ!!」
自慢顔で言い切る銀時に対してお登勢はつっこんだ。
「お登勢さん、やっぱりあたしも掃除しましょーか?」
「何言ってんだィ。アンタはバイトで金貯めてんだから、余計なことはしなくていーんだよ」
響古は椅子を半回転させて、銀時達に身体を向けた。
膝丈の浴衣を緩く着ていて、その下は黒いタンクトップ、後ろ髪を紅色のバレッタでまとめ上げてと、涼しさと運動効率を重視した格好だ。
しかし、艶やかな黒髪の隙間から見える、透けるような白いうなじ。
黒いタンクトップを包む、豊かな胸。
腰に巻かれた革のベルトが、その腰を美しく引き立たせている。
短い丈から覗く、すらりとした白い脚。
露出の多さとスタイルの良さに、新八と神楽は真っ赤になって掃除をする手が止める。
だが、銀時は気づいていた。
「……何笑ってんだよ」
「え?別にー」
彼女の口許がニヤニヤ笑いを堪えているのを。
「ただ、普段から怠けてる人の働いてる姿を見るのって、とっても気持ちのいいものねェ…って」
そう言うと、響古はよりいっそう笑みを深くする。
なんというか、雰囲気はもはや女王様。
「とにかく、金が無いなら働いて返してもらうよ」
銀時達の心は乱れるが、抗いたがいお登勢の一声が響く。
男達が、足取りに微妙な未練の重さを見せつつ掃除に取りかかる。
途端、雑巾がけを再開した神楽が勢いあまってテーブルに突っんだ。
「チャイナ娘ェェ!!雑巾がけはいいから、お前はおとなしくしてろォ!!バーさんからのお願い!」
「ソレガ終ワッタラ、私ノタバコ買ッテキナ」
「てめーも働けっつーの!」
偉そうに煙草を吹かすキャサリンの頭を、お登勢はスリッパ(W.C)で叩く。
「しかしバーさん、アンタも、もの好きだねェ。店の金かっぱらったコソ泥をもう一度雇うたァ、更生でもさせるつもりか?」
銀時はモップで床を吹くキャサリンを見やる。
どういう経緯で再度働くようになったのかは、響古は勿論知らない。
「そんなんじゃないよ。人手が足りなかっただけさーね…」
お登勢は煙草に火をつけ、核心部分をはぐらかした。
それは二人の個人的やり取りであり、特に聞き出してどうにかしようとも思わない。
「盗み癖は天然パーマなみにとり難いって話だ。ボーッとしてたらまた足元すくわれるぜ、バーさん」
「………大丈夫さ。あの娘はもうやらないよ、約束したからね。それより、お前も働…」
「お登勢さん。銀なら、とっくに逃げちゃいました」
説教しようと口を開いたところを響古が遮る。
一瞬の隙をついて銀時は逃げていた。
「……………」
「逃げ足だけは速いわね~」
逃げ足の速さに絶句するお登勢の横で、響古はわざとらしく頬に手を当てる。
だらだらとゴミ置き場のある裏道へ行く中で、子供達の他に響古も加わった。
「ズルイヨ銀ちゃん、一人だけ逃げるなんて…おかげで、私たち仕事量倍ネ。結局、響古まで働くはめになったアル」
空のビール瓶が入った容器を頭に乗せる神楽が愚痴をこぼすと、響古はけらけらと笑う。
「銀がそう真面目に働くわけないから、気にしないで」
だが、いつも彼女ばかり働かせていると自覚がある。
新八は悄然とうつむき、申し訳なさそうに告げる。
「本当にスミマセン、響古さん…もう部屋は貸さないってお登勢サン、怒り狂ってたよ。僕らどーなるんだろ?」
すると、キャサリンは持っていた段ボールを差し出した。
「コノダンボール、アゲマショーカ?」
「住めってか!ソレに住めってか!」
ホームレスの必需品でもある段ボール。
河原や橋の下で野宿でもしろと言われた気がして、新八は激怒する。
「ふざけるなヨ!こんなものに住めるわけない!Lサイズにしてヨ!!」
神楽も段ボールに身体を突っ込んで反論する。
「アレいいのかコレ!?間違ってねーのかコレ!?」
「オ登勢サンニ迷惑カケル奴ハ私、許シマセン。響古サンハトモカク、家賃モ払ワナイオ前ラナンテ、ダンボールト一緒ニ廃品回収サレレバイイ」
「んだとォォォ、確かに響古には苦労かけて悪いと思ってるネ!」
この発言に、神楽が瞳を怒りの炎で燃やして猫耳を掴む。
「でも、お前なんか泥棒やってたじゃねーか、このメス豚ァァ!!その耳ちぎって、ただの団地妻にしてやろーかァァ!!」
どこでそんな言葉を覚えてきたのか、幼い少女の口から飛び出す団地妻。
昼ドラの定番的なテーマや官能小説などで描写される、夫の留守中に不倫するといった、フィクションの世界で独特のイメージを形成している。
「ナニヲー!!オ前コソ語尾カラ『アル』チギッテ
負けじと、キャサリンも少女の特徴的な語尾をなくして、ただのモブキャラに降格させようと頬を引っ張る。
「あぁ、もうおちついて、二人とも!」
女同士の口論は掴み合うほどにヒートアップし始め、慌てた新八が仲裁に入る。
「二人とも、もっとキャラの特徴を大切にしなさい!」
「響古さん、言ってる意味がよくわかりませんが…」
「ウルサイアル!お前も顔から眼鏡ちぎりとってさらに、影うすくしてやろーか!!」
「んだとォォォォォ、コラァァァァ!!」
この不用意な一言が彼の逆鱗に触れ、眼鏡を外す。
目の怖さがぐんぐん増し、仲裁していた喧嘩に参加してしまった。
「てめーらは、この世界におけるツッコミ役の大切さをわかってねーんだよ!」
ツッコミどころの多い物語の中で、唯一のツッコミ役として存在する新八の主張が響き渡る。
「オゥオゥ、元気そーだな、キャサリン!」
そこにやって来た男が彼女に声をかけた。
「探したぜ~」
「……クッ…クリカン…」
振り返ったキャサリンは驚いた顔で、頭頂部に猫耳がついた男を見る。
響古はキャサリンの反応に疑問符を浮かべたが、未だ続く喧嘩を止めることに決めた。
(まっ、ほとんど新八がやられちゃってるけどね。by.響古)
「ぎゃああああ!!ゴメンナサイ!ゴメンナサイ!」
今のところ、神楽が馬乗りになって殴りかかり、新八がひたすら謝るという一方通行な光景が広がっていた。
クリカンと呼ばれた男は陰険な笑みを浮かべ、話があるといってキャサリンを呼び出す。
神社に続く石段を登っていく二人。
石段の最上段にキャサリンは腰を下ろし、クリカンは境内に立つ。
「しばらく会わねェーうちに、変わったなお前?」
「…野暮ネ。変ワッタナンテ言葉ハ若イ女シカ喜バナイ。大人ノ女ニハ『昔と変わらないね』ッテ言ウモノヨ」
「ハン。そーゆーところは相変わらずだ…だが、俺達とつるんでいた頃のお前はもっと、パンチきいてたぜ」
それを聞いたクリカンは不敵に笑い、かつて盗賊として名を馳せていたキャサリンの過去を語る。
「銀河中のお宝を荒らし回り、どんな厳重な金庫の鍵も容易にこじ開ける"鍵っ娘キャサリン"といえば、知らねー奴はいなかった」
「止メテヨ、私ハモウ泥棒カラ足洗ッタノ」
「そうだな。そう言って、お前は俺達から去っていった」
そこで改めて、キャサリンへ眼差しを向けた。
青ざめた表情に警戒を浮かべるキャサリンだったが、どこか力ない。
「だが、風の噂できいたが、お前…地球(ココ)でブタ箱ブチ込まれたらしいじゃないの?」
クリカンの嘲りの口調に、平静な表情を努める。
悪行ほど、簡単に自分と縁を切れないということを、キャサリンは自覚している。
「盗み癖ってのは、カレーうどんの汁よりとり難い。洗っても洗っても、落ちやしないぜ。今さら無理して堅気になったところで、どうなるってんだ?」
思いがけない話を突きつけられ、キャサリンが衝撃を受けたふうに表情を揺らす。
「それより、どうだ…また俺達、キャッツパンチに入らないか?」
クリカンはやはり、泥棒という悪しき職業から辞めた自分を誘いに来たのだ。
「実は俺達、江戸で一山狙っててな。ここは天人と金が銀河から集まってる…働きがいがあるぜ。そこで、お前の力が借りたいのさ、キャサリン」
「止メテヨ!今ノ女将サンニハ、世話ニナッテルノ…モウ裏切ルコトナンテデキナイ」
警察に捕まった自分をもう一度拾ってくれたお登勢のために、本気で泥棒をやめようと思っている。