第十九訓
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ヘッドホンから流れる歌を聴き、新八は思わず涙を流す。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!隊長が泣いたぞォ!!スゴイや!!」
「やっぱ、今回のお通ちゃんの曲、最高でしょ!!」
涙を流すほど感動する理由は、彼が愛するお通の発売された新曲だから。
喫茶店のボックス席で、新八は二人の隊員と向き合って熱く語る。
「うん、いつにもましてジーンとくるな。『お前の母ちゃん何人 』以来の名曲じゃないか?」
「今度『歌っていいとも』に出るらしーッスよ」
「どんどん有名になってくな、お通ちゃん!」
それをきっかけに、新八は寂しそうな声音で心情を吐露する。
「お通ちゃんが有名になるのは嬉しいけど、なんか反面、ちょっと寂しい気もす……」
すると、新聞に目を通していた一人の隊員が前触れもなく、
「ブホッ」
吐血する。
「軍曹ォォォ!!どうしたァァァ!!」
「た…隊員ォ、こっ…これを…」
テーブルに突っ伏した軍曹は新聞を渡す。
「!?GOEMON、熱愛発覚…お相手は新人アイドル、寺門 通…」
男性アイドルとお通の深夜のデートと書かれた見出し。
掲載された写真と記事を眺めて、新八ともう一人の隊員も、
「「ガハ」」
吐血する。
穏やかな昼下がり、響古は買い物袋を持って歩いていた。
その中には野菜や牛乳、鮮魚といった品々が収まっている。
そのどれもがスーパーの特売品で売られていた。
実に生活感溢れまくっていますが、こうして少しでも生活費を浮かせようとしているんですよ。
「――ん?」
ふと彼女は、万事屋の玄関前に来訪者を捉えた。
階段を登って近づくほどに、玄関前にある姿がはっきりしてくる。
少女だった。
可愛らしい膝丈のミニスカートにニーソックスという服装。
長い黒髪を片側で結っている。
「あの、もしかして万事屋に用が…」
声をかけた響古は、相手の顔を一目見て驚いた。
「お通ちゃん!?」
「きゃっ!?」
最近テレビで活躍し始めるアイドル――お通は飛び上がる。
「え、え……?」
真っ赤な顔に涙目、ドキドキしている胸を押さえているという初々しい少女の仕草に、くすりと笑う。
間近で響古の美貌を見たお通は、わぁ、と全く関係ないことで感嘆する。
アイドル顔負けな整った顔立ちと力強い覇気が宿り、きらきらと輝いている。
「ごめんなさい、驚かせてしまったみたいね。依頼かしら?」
「は……はい、そうです」
よく通るソプラノの声で訊ねられ、お通は頬を紅潮させて答えた。
そして上擦った声で、
「あっ、あの!」
と発した。
「あの時、助けてくれてありがとうございました!それで…お名前の方、教えてくれませんか?」
「篠木 響古よ、よろしくね」
響古はそう名乗って笑みを浮かべる。
魅入られてしまうような凛々しく美しい微笑みに、お通も笑顔で頷いた。
今、メディアを独占しているのはアイドル同士の熱愛報道。
テレビのチャンネルを変えても、お通が報道陣に囲まれているところしか映っていない。
「あんだっつーの。ガキの色恋なんざ、どーでもいいんだって」
多くの記者に囲まれながらも毅然としたその立ち振る舞いは彼女がしっかり者だからなのか、それともまだ芸能界の怖さに気づいていないからなのか。
おそらく後者だろうと思いながら、銀時はドラマの再放送に注目する。
「それより、ドラマの再放送はどーしたの?ピン子と春恵の対決はどーなったの?」
この問いかけに、向かいのソファに座る神楽が答える。
「ピン子と春恵、いよいよ決着かと思われた時、地球に恐怖の宇宙帝王襲来!ピン子と春恵が協力して帝王を倒し終わりヨ」
「マジでか!?なんで知ってんの!?」
「昨日で最終回だったもんね~定春」
膝の上に頭を置いて眠る定春を撫でる。
銀時は頭を抱え、絶望的な気分になった。
「んだよチクショー、見逃したぜ!!もうピン子に会えねーのか、俺は!?」
そこに、買い物から帰ってきた響古の声が聞こえてきた。
「な~に?銀ったら、ドラマの再放送見逃したの?そのうち、また放送するって」
「お帰りアル、響古」
「ただいま」
響古は台所に下がり、買ってきた品を冷蔵庫にしまっていく。
専業主婦さながらの手つきで片づけていくと、視線を居間にあるテレビへと移す。
そこで初めて、お通の熱愛報道が映っているのに気づく。
――もしかして、お通ちゃんの依頼って、この熱愛報道と関係してるのかな?
――……アレ、でもちょっと待って。
――お通ちゃんが恋愛してるということは……ワォ。
首を捻って考え、新八の方を振り向くと、やはり……というか、かなり重症だった。
「それより、新八の様子がおかしいアルヨ。ず~っと日めくりカレンダーめくり続けてるネ」
新八が愛してやまない寺門通。
そんな彼女に恋人ができたとなれば彼にとっては大事件である。
今も虚ろな目でビリビリとカレンダーを破っている。
「オーイ、んなことしても別の時空へはいけねーぞ。現実から逃げてんじゃねーよ!」
「そーよ。すぐ別れるんだから」
新八がこのような奇行にまで走ってしまうのは仕方ない。
正直何もしてやることはないが、銀時はあえて芸能人との恋愛の厳しさをぶつける。
「アイドルなんぞにほれるから、んなことになるの。分 をわきまえろ」
「銀ちゃんもわきまえた方がいいネ。どー見ても、響古とじゃつり合わないアル」
「響古もちゃんと俺を好きだから!それに、俺もお天気お姉さんのファンだけど、そのへんはわりきって…」
《…続いてのニュースです。お天気お姉さんとして人気をはくした結野アナが、先月結婚していたことが…》
人気のお天気お姉さんが結婚していたというニュースが流れる。
ビリビリとカレンダーを破る音が、もう一つ増えた。
「あらら。二人とも別の時空へ行ってしまったアル」
この男二人は、芸能人相手に少なからず本気になっていたが、それが叶わないという現実を目の当たりにし、諦め悪くもそれから逃避している。
「情けない……そういう夢は鏡見てから持ちなさいって。一般人の中でも中か下なんだから、付き合えるわけないでしょ」
「さすが響古。容赦ねーアル」
女二人が蔑んだ目で男二人を見ていると、響古がハッとした。
「――あ。お客さん、待たせてたわ」
慌てて玄関に向かう響古に続いて、新八も緩慢な動作で踵を返した。
「オッ、こんな状態でも身体には雑用係の習性が染みついてるネ」
「…つーか、よく考えたら俺には響古がいるじゃん!何も悲しくねーじゃん!」
銀時はブツブツとつぶやいていたかと思うと、居間から飛び出して廊下へ一直線。
「響古ーっ!!」
お通を連れて、ちょうど万事屋に入っていった響古と鉢合わせ。
そして、極上に柔らかそうな丸いふくらみに飛び込んだ。
ほのかな温かさと柔らかな感触を顔面で感じて、満面の笑みを浮かべる銀時。
視線を少し動かし、持ち主の顔を確認する。
氷のように冷たい目で、響古が見据えてくる。
勿論、この氷の内部には怒りが烈火のごとく渦巻いているはずだ。
「この……エロ天パ!!」
「ごふァ!!」
罵声と共に殴り飛ばされた銀時を、お通は心配そうに見やる。
「あの、響古さん、大丈夫なんでしょーか…」
「新八!可愛いお客さんよ」
廊下に倒れる銀時をスルーして、響古は声をあげる。
居間の先にいたのは、つい先程までテレビに映っていた人物。
寺門通その人だったのだ。
「おっ、お通ちゃん!?」
紹介されて、お通はたじろぐ新八にぎこちなく会釈した。
テーブルを囲んで、銀時の右には響古が座る。
正面には神妙な表情のお通がおり、一通の手紙を渡した。
その内容は『男と別れろ、さもなくば殺すトロベリー』。
「この知性のカケラもねー言いまわしは、アンタのファンの仕業か?」
お通の持ってきた依頼、それはあの熱愛報道に絡んでいた。
「こんな手紙が、事務所に何通も送られてくるの…恐くて父ちゃんに相談したら、アンタとあの別ぴんさんなら、なんとかしてくれるって」
「あの親父か…元気でやってんの?」
「ウン。この話したら、また脱獄するって大騒ぎしてた…」
「…充分、元気そーだね」
相槌を打ちつつも、脱獄の前科がある父親の行動に納得してしまう。
苦笑する響古の横で、銀時は鼻を鳴らす。
「フン。そりゃ親父がバカやる前に、なんとかしなきゃな」
「それじゃ、力になってくれるんだね」
表情を和らげるお通に対し、二人の表情は険しくなる。
「でも犯人の目星、つけるにしても」
「アンタのファン何人いるかって話になってくるな…」
犯人探しで悩んでいるところ、唐突に幼い声が割り込んだ。
「別れりゃいいじゃん!」
くちゃくちゃ、と酢昆布をしゃぶりながら神楽がやって来る。
「別れりゃ、全てまるくおさまる話じゃん」
だが勿論、お通はそれを望まず、受け入れようとしない。
眉をひそめ、心細げな表情をしてささやかな反論をする。
「い…嫌だよ。そんなの考えられない。あの人は芸能界で唯一、私に優しくしてくれたんだから」
「ケッ!男なんて女には皆、優しいもんなんだよ、娘が!!」
皮肉げに顔を歪める神楽はわざと、くちゃくちゃ音を立てて追いつめる。
少女の陰湿な囁きを遮るように、一人の人物が拳を振り上げた。
「い゙っ!!」
突如頭を殴られ、小さな悲鳴をあげる神楽。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!隊長が泣いたぞォ!!スゴイや!!」
「やっぱ、今回のお通ちゃんの曲、最高でしょ!!」
涙を流すほど感動する理由は、彼が愛するお通の発売された新曲だから。
喫茶店のボックス席で、新八は二人の隊員と向き合って熱く語る。
「うん、いつにもましてジーンとくるな。『お前の母ちゃん
「今度『歌っていいとも』に出るらしーッスよ」
「どんどん有名になってくな、お通ちゃん!」
それをきっかけに、新八は寂しそうな声音で心情を吐露する。
「お通ちゃんが有名になるのは嬉しいけど、なんか反面、ちょっと寂しい気もす……」
すると、新聞に目を通していた一人の隊員が前触れもなく、
「ブホッ」
吐血する。
「軍曹ォォォ!!どうしたァァァ!!」
「た…隊員ォ、こっ…これを…」
テーブルに突っ伏した軍曹は新聞を渡す。
「!?GOEMON、熱愛発覚…お相手は新人アイドル、寺門 通…」
男性アイドルとお通の深夜のデートと書かれた見出し。
掲載された写真と記事を眺めて、新八ともう一人の隊員も、
「「ガハ」」
吐血する。
穏やかな昼下がり、響古は買い物袋を持って歩いていた。
その中には野菜や牛乳、鮮魚といった品々が収まっている。
そのどれもがスーパーの特売品で売られていた。
実に生活感溢れまくっていますが、こうして少しでも生活費を浮かせようとしているんですよ。
「――ん?」
ふと彼女は、万事屋の玄関前に来訪者を捉えた。
階段を登って近づくほどに、玄関前にある姿がはっきりしてくる。
少女だった。
可愛らしい膝丈のミニスカートにニーソックスという服装。
長い黒髪を片側で結っている。
「あの、もしかして万事屋に用が…」
声をかけた響古は、相手の顔を一目見て驚いた。
「お通ちゃん!?」
「きゃっ!?」
最近テレビで活躍し始めるアイドル――お通は飛び上がる。
「え、え……?」
真っ赤な顔に涙目、ドキドキしている胸を押さえているという初々しい少女の仕草に、くすりと笑う。
間近で響古の美貌を見たお通は、わぁ、と全く関係ないことで感嘆する。
アイドル顔負けな整った顔立ちと力強い覇気が宿り、きらきらと輝いている。
「ごめんなさい、驚かせてしまったみたいね。依頼かしら?」
「は……はい、そうです」
よく通るソプラノの声で訊ねられ、お通は頬を紅潮させて答えた。
そして上擦った声で、
「あっ、あの!」
と発した。
「あの時、助けてくれてありがとうございました!それで…お名前の方、教えてくれませんか?」
「篠木 響古よ、よろしくね」
響古はそう名乗って笑みを浮かべる。
魅入られてしまうような凛々しく美しい微笑みに、お通も笑顔で頷いた。
今、メディアを独占しているのはアイドル同士の熱愛報道。
テレビのチャンネルを変えても、お通が報道陣に囲まれているところしか映っていない。
「あんだっつーの。ガキの色恋なんざ、どーでもいいんだって」
多くの記者に囲まれながらも毅然としたその立ち振る舞いは彼女がしっかり者だからなのか、それともまだ芸能界の怖さに気づいていないからなのか。
おそらく後者だろうと思いながら、銀時はドラマの再放送に注目する。
「それより、ドラマの再放送はどーしたの?ピン子と春恵の対決はどーなったの?」
この問いかけに、向かいのソファに座る神楽が答える。
「ピン子と春恵、いよいよ決着かと思われた時、地球に恐怖の宇宙帝王襲来!ピン子と春恵が協力して帝王を倒し終わりヨ」
「マジでか!?なんで知ってんの!?」
「昨日で最終回だったもんね~定春」
膝の上に頭を置いて眠る定春を撫でる。
銀時は頭を抱え、絶望的な気分になった。
「んだよチクショー、見逃したぜ!!もうピン子に会えねーのか、俺は!?」
そこに、買い物から帰ってきた響古の声が聞こえてきた。
「な~に?銀ったら、ドラマの再放送見逃したの?そのうち、また放送するって」
「お帰りアル、響古」
「ただいま」
響古は台所に下がり、買ってきた品を冷蔵庫にしまっていく。
専業主婦さながらの手つきで片づけていくと、視線を居間にあるテレビへと移す。
そこで初めて、お通の熱愛報道が映っているのに気づく。
――もしかして、お通ちゃんの依頼って、この熱愛報道と関係してるのかな?
――……アレ、でもちょっと待って。
――お通ちゃんが恋愛してるということは……ワォ。
首を捻って考え、新八の方を振り向くと、やはり……というか、かなり重症だった。
「それより、新八の様子がおかしいアルヨ。ず~っと日めくりカレンダーめくり続けてるネ」
新八が愛してやまない寺門通。
そんな彼女に恋人ができたとなれば彼にとっては大事件である。
今も虚ろな目でビリビリとカレンダーを破っている。
「オーイ、んなことしても別の時空へはいけねーぞ。現実から逃げてんじゃねーよ!」
「そーよ。すぐ別れるんだから」
新八がこのような奇行にまで走ってしまうのは仕方ない。
正直何もしてやることはないが、銀時はあえて芸能人との恋愛の厳しさをぶつける。
「アイドルなんぞにほれるから、んなことになるの。
「銀ちゃんもわきまえた方がいいネ。どー見ても、響古とじゃつり合わないアル」
「響古もちゃんと俺を好きだから!それに、俺もお天気お姉さんのファンだけど、そのへんはわりきって…」
《…続いてのニュースです。お天気お姉さんとして人気をはくした結野アナが、先月結婚していたことが…》
人気のお天気お姉さんが結婚していたというニュースが流れる。
ビリビリとカレンダーを破る音が、もう一つ増えた。
「あらら。二人とも別の時空へ行ってしまったアル」
この男二人は、芸能人相手に少なからず本気になっていたが、それが叶わないという現実を目の当たりにし、諦め悪くもそれから逃避している。
「情けない……そういう夢は鏡見てから持ちなさいって。一般人の中でも中か下なんだから、付き合えるわけないでしょ」
「さすが響古。容赦ねーアル」
女二人が蔑んだ目で男二人を見ていると、響古がハッとした。
「――あ。お客さん、待たせてたわ」
慌てて玄関に向かう響古に続いて、新八も緩慢な動作で踵を返した。
「オッ、こんな状態でも身体には雑用係の習性が染みついてるネ」
「…つーか、よく考えたら俺には響古がいるじゃん!何も悲しくねーじゃん!」
銀時はブツブツとつぶやいていたかと思うと、居間から飛び出して廊下へ一直線。
「響古ーっ!!」
お通を連れて、ちょうど万事屋に入っていった響古と鉢合わせ。
そして、極上に柔らかそうな丸いふくらみに飛び込んだ。
ほのかな温かさと柔らかな感触を顔面で感じて、満面の笑みを浮かべる銀時。
視線を少し動かし、持ち主の顔を確認する。
氷のように冷たい目で、響古が見据えてくる。
勿論、この氷の内部には怒りが烈火のごとく渦巻いているはずだ。
「この……エロ天パ!!」
「ごふァ!!」
罵声と共に殴り飛ばされた銀時を、お通は心配そうに見やる。
「あの、響古さん、大丈夫なんでしょーか…」
「新八!可愛いお客さんよ」
廊下に倒れる銀時をスルーして、響古は声をあげる。
居間の先にいたのは、つい先程までテレビに映っていた人物。
寺門通その人だったのだ。
「おっ、お通ちゃん!?」
紹介されて、お通はたじろぐ新八にぎこちなく会釈した。
テーブルを囲んで、銀時の右には響古が座る。
正面には神妙な表情のお通がおり、一通の手紙を渡した。
その内容は『男と別れろ、さもなくば殺すトロベリー』。
「この知性のカケラもねー言いまわしは、アンタのファンの仕業か?」
お通の持ってきた依頼、それはあの熱愛報道に絡んでいた。
「こんな手紙が、事務所に何通も送られてくるの…恐くて父ちゃんに相談したら、アンタとあの別ぴんさんなら、なんとかしてくれるって」
「あの親父か…元気でやってんの?」
「ウン。この話したら、また脱獄するって大騒ぎしてた…」
「…充分、元気そーだね」
相槌を打ちつつも、脱獄の前科がある父親の行動に納得してしまう。
苦笑する響古の横で、銀時は鼻を鳴らす。
「フン。そりゃ親父がバカやる前に、なんとかしなきゃな」
「それじゃ、力になってくれるんだね」
表情を和らげるお通に対し、二人の表情は険しくなる。
「でも犯人の目星、つけるにしても」
「アンタのファン何人いるかって話になってくるな…」
犯人探しで悩んでいるところ、唐突に幼い声が割り込んだ。
「別れりゃいいじゃん!」
くちゃくちゃ、と酢昆布をしゃぶりながら神楽がやって来る。
「別れりゃ、全てまるくおさまる話じゃん」
だが勿論、お通はそれを望まず、受け入れようとしない。
眉をひそめ、心細げな表情をしてささやかな反論をする。
「い…嫌だよ。そんなの考えられない。あの人は芸能界で唯一、私に優しくしてくれたんだから」
「ケッ!男なんて女には皆、優しいもんなんだよ、娘が!!」
皮肉げに顔を歪める神楽はわざと、くちゃくちゃ音を立てて追いつめる。
少女の陰湿な囁きを遮るように、一人の人物が拳を振り上げた。
「い゙っ!!」
突如頭を殴られ、小さな悲鳴をあげる神楽。