第十八訓
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都市として整備された江戸から離れれば、手つかずの自然が多い。
少し車を走らせれば、緑豊かな森もある。
滴を撒き散らしながら釣り上げられた魚は、異様なほど目玉が飛び出し、ひれが触覚というグロテスクな外見だった。
「うわっ!またコイツだ。やっぱ天人が来てから、地球の生態おかしくなってますね」
新八はやや怯えの入った視線で捕った魚を見つめる。
そして、生態系に多大な影響を与える外来種に懸念する。
「いいから、バケツ入れとけ」
「え゙え゙!?これも食べんの!?」
見た目にも不味そうな外見を味わおうとする銀時の言葉に耳を疑い、声が裏返る。
「あたりめーだろ。鮟鱇 然り、納豆然り、見た目がグロイもん程、食ったらうめーんだよ」
「銀…コレ、絶対不味そうだし」
響古も表情に不審を加えるが、銀時はなおも言い張った。
「どんな不細工にも、イイ所の一つや二つあるもんだ」
「それ、自分のこと言ってるの?」
「え。響古ちゃん、それどーゆー意味!?」
「大丈夫。銀にも少なくても、一つくらいイイところあるって」
「一つ!?ちょ…ひどォ!」
微笑む響古の毒舌にショックを受けていると、神楽が弾んだ声をあげる。
「銀ちゃん、銀ちゃん!響古、響古!コレ、スゴイの釣れたアル。見て見て」
「いだだだだだだだだだだだだ!!」
尖ったくちばしには釣り糸が引っかかり、暴れ回る緑色の物体。
背は甲羅で、手足には水かきがついている。
「アレ?痛くないかも?あ!!やっぱ痛い!!いだだだだだ!!」
神楽が釣ったのは魚ではなく、眼鏡をかけた水陸両棲の妖怪・河童だった。
「ねェねェ、これも食べれるアルか?」
これまで空想上の生物とされてきた妖怪。
響古は愕然として、銀時と新八は凄まじく顔を歪める。
たまらず、釣り糸にぶら下がる河童を蹴り飛ばす。
「あぱァ!!」
悲鳴をあげて、河童は池に落ちた。
「あ゙あ゙あ゙あ゙、夕食ぅぅ!!」
「神楽、諦めなさい。アレは食べ物じゃないわ」
神楽は悲痛な声をあげて嘆き、響古は無表情で言い含める。
「今見たことは忘れろ、いいな…」
「…銀さん、今の河童じゃありませんでした?」
「んなもん、いるわけねーだろ。アレだよ、池に住んでるただのハゲたおっさんだよ」
「池に住んでる時点で、ただのおっさんじゃねーよ」
「それになんか、緑色だったし」
この追究に対して銀時はしばらく逡巡した後、重い口を開いた。
「それはアレだよ………アルコール依存性」
「アルコールにそんな成分あったら、酒なんて誰も飲まんわ!!」
すかさずつっこんだ後、不意にぬめった感触を覚えて視線を下ろす。
「ん?」
すると、響古が自分の腕を抱いて叫んだ。
「ウソ!?だったらあたし達、肌が緑色になるじゃん!!」
「――あっ、そーか…ヤベェじゃん、俺達!!」
一瞬遅れて、己の失言に気づく銀時。
一方で、視線を下ろした新八は顔を蒼白にして固まる。
「てんめーら、眼鏡割れちゃったじゃねーかコノヤロー。親に電話しろォォォォ!!弁償してもらうからなァァ!!」
ひび割れた眼鏡をかけた河童が青筋を立てて、彼の足を掴んでいた。
「ぎゃああああ!!出たァァァ!!」
恐怖に顔を歪めて絶叫する新八。
「あああ!!待てェェお前ら!!」
助けを求めようと振り返ると、事態に気づいた三人は彼を置いて逃げていく。
「逃がさん、住所と名前を言え!!」
河童は舌を伸ばし、他の三人の足に絡めて捕まえた。
「「むごォォォォ!!」」
「いやァァァァ!!」
捕まえられた四人は一列に正座させられ、河童に説教されている。
「オッさんだってなァ、最初から謝れば怒んないよ、そんなに。悪いことしたら謝るのが筋だろ、違うか?ん?なんで逃げた?」
銀時はおずおずと、素直に逃げた理由を言う。
「…いや、河童だったから」
「河童ァ?なんじゃそりゃ。訳のわからんことを言って、ごまかそーとするな」
自分が河童だと認識していない妖怪は、さらに疑問をぶつける。
そんな河童に、響古と神楽が毒を吐く。
「おめーが一番訳わかんねーだヨ」
「どう見ても河童じゃねーか。鏡で自分 の顔見ろ」
「オッさんのどこが訳わかんねーんだ!!この小娘ェ!!それから、お前やてめーじゃなくて、海老名さんと呼べェ!!」
これ以上事態がややこしくなる前に、新八が三人の代わりに謝罪する。
「スンマセンでした、海老名さん、あの僕の眼鏡を割りますんで、勘弁してください…」
「よ~し、よく謝ったな、ボク。ごほうびにホラ、ビスケットだ」
河童――海老名は新八の手に、水分を吸収し過ぎて、もはや固体ではないビスケットを渡した。
掌にベチャッとした不快な感触を覚え、
「ありがた迷惑だよ、チクショー」
口の端を引きつらせる。
「まァ、割れたのが眼鏡の方で良かったよ。これで、お前もし皿が割れてたら、流石のオッさんもキレてたね。お前ら全員、ボコボコだったよ」
拳を掌に打ちつけて言い聞かせる海老名に、
「うぜーよ、このオッさん」
さすがの銀時も苛立つ。
こちらの苛立ちにも気づかず、海老名はしつこく続ける。
「いいか、俺の皿だけは。この皿だけは何人 たりとも触れさせね…ぐはっ」
注意しながら池に戻ろうとしたその時、いきなりゴルフクラブが飛んできて、頭の上にある皿が割れた。
「「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」」
銀時達が驚く先で気絶した海老名は背中から池に浮かぶ。
「皿割れたァァァァ!!」
「大変だァァァ!!皿割れたぞ!!何が大変なのかしらんけど!!」
「バカ銀!河童ってのは、皿が割れると死んじゃうのよ!」
頭の上にある皿が河童の力の源泉であり、水がなくなると同時に力も急速に衰える。
「あっ、ゴッメ~ン。ゴルフの素振りやってたら、手ェすべっちゃった~」
粘着質な笑みを含んだ声が、背後から聞こえた。
ガラの悪いヤクザや小柄な眼鏡を引き連れて、男がやって来る。
「だから、早く出てけって言ったじゃ~ん。ここは、あんたの家(ウチ)じゃない、俺の土地なんだよ~」
猫撫で声の裏に冷たくこちらを凝視する瞳があるのを敏感に感じ取られる。
「この池も、そこの草も土もぜ~んぶ、俺が買いとったんだからさァ」
「やかましーわ」
奇跡的に復活した海老名が否定の言葉で立ち上がり、ここは自分の土地だと主張する。
「こちとらなァ、てめーらが親父の金玉に入ってる頃から、ここに住んでんだ!!何で出てかなきゃならねェ!!っていうかあんま、こっち見んな、恥ずかしーから」
強く言い返した途端、急に恥ずかしそうにもじもじし始めた。
「ちょっ、カメラは勘弁して。ホントッ」
(皿が割れて、ちょっぴりシャイになってる。by.響古)
(っていうか、意味あんのかよ。あの皿…。by.新八)
「ここら一帯に、どでかーいゴルフ場つくりたいのよ。それには、この池が邪魔なんだってば!アンタの住む池なら、他に用意してやるから、ここからは出ていてくんない?」
話を要約すれば、男はゴルフ場を造るために土地一帯を買収したらしい。
だが、ずっと前にここを住処にしている海老名に退去するよう何度も説得。
しかし、海老名は池を離れようとはしなかったのだ。
「そうゆう問題じゃねーんだよ!!ここはなァ、俺だけの場所じゃねーんだ。ここはアイツの…」
海老名は池に潜ると顔だけ出し、言葉を濁す。
「なんかよくわかんないけど、これ以上、俺の邪魔するならそれ相応の覚悟しといてよ。どっからゴルフボールが飛んでくるか、わからないよ…」
怪しく笑みを絶やさずに忠告をすると、すぐに踵を返して去っていった。
拾い集めてきた枯れ木を焚き火の中に放ると、火勢が息を吹き返し、狂喜したようにオレンジ色の光を散乱させる。
釣った不気味な魚を串に突き刺し、焼いていく。
三人が魚を焼く傍ら、ゴルフクラブによって割られた皿は、神楽がテープで修理している。
「オラ、直ったアルヨ、オッさん」
最後に海老名の頭を叩くと、再び皿の割れる音がした。
「アレ?今、バリンって言わなかった?」
「気のせいですよ」
不吉な音を気のせいだとやり過ごし、海老名に話しかける。
「オッさんよォ引っこしするってんなら手伝うぜ」
「一人だと大変でしょ」
「余計なお世話だ、バカヤロー」
二人のお節介を憮然と吐き捨て、海老名は池の方を見るよう促した。
「………………アレ見ろ、妙なもんが見えるだろ。ありゃ、昔俺が乗ってきた船だ」
そこには、コケまみれで緑色になった船が先端部分だけ池から突き出ており、頂 には一輪の花が咲いている。
「海老名さん、アンタ天人なんですか」
「河童じゃなかったのね…」
今まで河童だと思い込んでいた正体が天人だったとは、想像できなかった響古と新八が言う。
海老名は感慨深げに、地球に訪れた経緯を語り始めた。
「俺達の種族は清 い水がねーと生きられねー。その昔、俺達の星は天変地異で水を失い、皆、新天地を求め、旅立った。そして俺がたどりついたのが、この水の星、地球よ」
――命の問題に関わると決断して次々と旅立つ仲間に続き、海老名が辿り着いた場所こそが、水の惑星ともいえる地球であった。
「たまげたよ、こんなキレーな星があったなんて。あの頃ぁ、天人もほとんどいなかったし、宝石一人占めした気分だった…」
――不時着した宇宙船の上から、霧雨が降る細かい水滴が当たるのにも気にせず、むしろ喜んで天を仰ぐ。
少し車を走らせれば、緑豊かな森もある。
滴を撒き散らしながら釣り上げられた魚は、異様なほど目玉が飛び出し、ひれが触覚というグロテスクな外見だった。
「うわっ!またコイツだ。やっぱ天人が来てから、地球の生態おかしくなってますね」
新八はやや怯えの入った視線で捕った魚を見つめる。
そして、生態系に多大な影響を与える外来種に懸念する。
「いいから、バケツ入れとけ」
「え゙え゙!?これも食べんの!?」
見た目にも不味そうな外見を味わおうとする銀時の言葉に耳を疑い、声が裏返る。
「あたりめーだろ。
「銀…コレ、絶対不味そうだし」
響古も表情に不審を加えるが、銀時はなおも言い張った。
「どんな不細工にも、イイ所の一つや二つあるもんだ」
「それ、自分のこと言ってるの?」
「え。響古ちゃん、それどーゆー意味!?」
「大丈夫。銀にも少なくても、一つくらいイイところあるって」
「一つ!?ちょ…ひどォ!」
微笑む響古の毒舌にショックを受けていると、神楽が弾んだ声をあげる。
「銀ちゃん、銀ちゃん!響古、響古!コレ、スゴイの釣れたアル。見て見て」
「いだだだだだだだだだだだだ!!」
尖ったくちばしには釣り糸が引っかかり、暴れ回る緑色の物体。
背は甲羅で、手足には水かきがついている。
「アレ?痛くないかも?あ!!やっぱ痛い!!いだだだだだ!!」
神楽が釣ったのは魚ではなく、眼鏡をかけた水陸両棲の妖怪・河童だった。
「ねェねェ、これも食べれるアルか?」
これまで空想上の生物とされてきた妖怪。
響古は愕然として、銀時と新八は凄まじく顔を歪める。
たまらず、釣り糸にぶら下がる河童を蹴り飛ばす。
「あぱァ!!」
悲鳴をあげて、河童は池に落ちた。
「あ゙あ゙あ゙あ゙、夕食ぅぅ!!」
「神楽、諦めなさい。アレは食べ物じゃないわ」
神楽は悲痛な声をあげて嘆き、響古は無表情で言い含める。
「今見たことは忘れろ、いいな…」
「…銀さん、今の河童じゃありませんでした?」
「んなもん、いるわけねーだろ。アレだよ、池に住んでるただのハゲたおっさんだよ」
「池に住んでる時点で、ただのおっさんじゃねーよ」
「それになんか、緑色だったし」
この追究に対して銀時はしばらく逡巡した後、重い口を開いた。
「それはアレだよ………アルコール依存性」
「アルコールにそんな成分あったら、酒なんて誰も飲まんわ!!」
すかさずつっこんだ後、不意にぬめった感触を覚えて視線を下ろす。
「ん?」
すると、響古が自分の腕を抱いて叫んだ。
「ウソ!?だったらあたし達、肌が緑色になるじゃん!!」
「――あっ、そーか…ヤベェじゃん、俺達!!」
一瞬遅れて、己の失言に気づく銀時。
一方で、視線を下ろした新八は顔を蒼白にして固まる。
「てんめーら、眼鏡割れちゃったじゃねーかコノヤロー。親に電話しろォォォォ!!弁償してもらうからなァァ!!」
ひび割れた眼鏡をかけた河童が青筋を立てて、彼の足を掴んでいた。
「ぎゃああああ!!出たァァァ!!」
恐怖に顔を歪めて絶叫する新八。
「あああ!!待てェェお前ら!!」
助けを求めようと振り返ると、事態に気づいた三人は彼を置いて逃げていく。
「逃がさん、住所と名前を言え!!」
河童は舌を伸ばし、他の三人の足に絡めて捕まえた。
「「むごォォォォ!!」」
「いやァァァァ!!」
捕まえられた四人は一列に正座させられ、河童に説教されている。
「オッさんだってなァ、最初から謝れば怒んないよ、そんなに。悪いことしたら謝るのが筋だろ、違うか?ん?なんで逃げた?」
銀時はおずおずと、素直に逃げた理由を言う。
「…いや、河童だったから」
「河童ァ?なんじゃそりゃ。訳のわからんことを言って、ごまかそーとするな」
自分が河童だと認識していない妖怪は、さらに疑問をぶつける。
そんな河童に、響古と神楽が毒を吐く。
「おめーが一番訳わかんねーだヨ」
「どう見ても河童じゃねーか。鏡で
「オッさんのどこが訳わかんねーんだ!!この小娘ェ!!それから、お前やてめーじゃなくて、海老名さんと呼べェ!!」
これ以上事態がややこしくなる前に、新八が三人の代わりに謝罪する。
「スンマセンでした、海老名さん、あの僕の眼鏡を割りますんで、勘弁してください…」
「よ~し、よく謝ったな、ボク。ごほうびにホラ、ビスケットだ」
河童――海老名は新八の手に、水分を吸収し過ぎて、もはや固体ではないビスケットを渡した。
掌にベチャッとした不快な感触を覚え、
「ありがた迷惑だよ、チクショー」
口の端を引きつらせる。
「まァ、割れたのが眼鏡の方で良かったよ。これで、お前もし皿が割れてたら、流石のオッさんもキレてたね。お前ら全員、ボコボコだったよ」
拳を掌に打ちつけて言い聞かせる海老名に、
「うぜーよ、このオッさん」
さすがの銀時も苛立つ。
こちらの苛立ちにも気づかず、海老名はしつこく続ける。
「いいか、俺の皿だけは。この皿だけは
注意しながら池に戻ろうとしたその時、いきなりゴルフクラブが飛んできて、頭の上にある皿が割れた。
「「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」」
銀時達が驚く先で気絶した海老名は背中から池に浮かぶ。
「皿割れたァァァァ!!」
「大変だァァァ!!皿割れたぞ!!何が大変なのかしらんけど!!」
「バカ銀!河童ってのは、皿が割れると死んじゃうのよ!」
頭の上にある皿が河童の力の源泉であり、水がなくなると同時に力も急速に衰える。
「あっ、ゴッメ~ン。ゴルフの素振りやってたら、手ェすべっちゃった~」
粘着質な笑みを含んだ声が、背後から聞こえた。
ガラの悪いヤクザや小柄な眼鏡を引き連れて、男がやって来る。
「だから、早く出てけって言ったじゃ~ん。ここは、あんたの家(ウチ)じゃない、俺の土地なんだよ~」
猫撫で声の裏に冷たくこちらを凝視する瞳があるのを敏感に感じ取られる。
「この池も、そこの草も土もぜ~んぶ、俺が買いとったんだからさァ」
「やかましーわ」
奇跡的に復活した海老名が否定の言葉で立ち上がり、ここは自分の土地だと主張する。
「こちとらなァ、てめーらが親父の金玉に入ってる頃から、ここに住んでんだ!!何で出てかなきゃならねェ!!っていうかあんま、こっち見んな、恥ずかしーから」
強く言い返した途端、急に恥ずかしそうにもじもじし始めた。
「ちょっ、カメラは勘弁して。ホントッ」
(皿が割れて、ちょっぴりシャイになってる。by.響古)
(っていうか、意味あんのかよ。あの皿…。by.新八)
「ここら一帯に、どでかーいゴルフ場つくりたいのよ。それには、この池が邪魔なんだってば!アンタの住む池なら、他に用意してやるから、ここからは出ていてくんない?」
話を要約すれば、男はゴルフ場を造るために土地一帯を買収したらしい。
だが、ずっと前にここを住処にしている海老名に退去するよう何度も説得。
しかし、海老名は池を離れようとはしなかったのだ。
「そうゆう問題じゃねーんだよ!!ここはなァ、俺だけの場所じゃねーんだ。ここはアイツの…」
海老名は池に潜ると顔だけ出し、言葉を濁す。
「なんかよくわかんないけど、これ以上、俺の邪魔するならそれ相応の覚悟しといてよ。どっからゴルフボールが飛んでくるか、わからないよ…」
怪しく笑みを絶やさずに忠告をすると、すぐに踵を返して去っていった。
拾い集めてきた枯れ木を焚き火の中に放ると、火勢が息を吹き返し、狂喜したようにオレンジ色の光を散乱させる。
釣った不気味な魚を串に突き刺し、焼いていく。
三人が魚を焼く傍ら、ゴルフクラブによって割られた皿は、神楽がテープで修理している。
「オラ、直ったアルヨ、オッさん」
最後に海老名の頭を叩くと、再び皿の割れる音がした。
「アレ?今、バリンって言わなかった?」
「気のせいですよ」
不吉な音を気のせいだとやり過ごし、海老名に話しかける。
「オッさんよォ引っこしするってんなら手伝うぜ」
「一人だと大変でしょ」
「余計なお世話だ、バカヤロー」
二人のお節介を憮然と吐き捨て、海老名は池の方を見るよう促した。
「………………アレ見ろ、妙なもんが見えるだろ。ありゃ、昔俺が乗ってきた船だ」
そこには、コケまみれで緑色になった船が先端部分だけ池から突き出ており、
「海老名さん、アンタ天人なんですか」
「河童じゃなかったのね…」
今まで河童だと思い込んでいた正体が天人だったとは、想像できなかった響古と新八が言う。
海老名は感慨深げに、地球に訪れた経緯を語り始めた。
「俺達の種族は
――命の問題に関わると決断して次々と旅立つ仲間に続き、海老名が辿り着いた場所こそが、水の惑星ともいえる地球であった。
「たまげたよ、こんなキレーな星があったなんて。あの頃ぁ、天人もほとんどいなかったし、宝石一人占めした気分だった…」
――不時着した宇宙船の上から、霧雨が降る細かい水滴が当たるのにも気にせず、むしろ喜んで天を仰ぐ。