第九訓
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幕府に危害を加えるテロリストを取り締まるのが、武装警察・真選組。
そこに所属する男達の大声が屯所内に響く。
『副長ォォォォォ!!』
あからさまに堅気には見えない雰囲気で、やたら目つきが鋭い。
そんな男達は、噂の真相を確かめるために土方に詰め寄る。
「局長が女にフラれたうえ、女を賭けた決闘で、汚い手で負けたってホントかァァ!!」
「女にフラれるのはいつものことだが、喧嘩で負けたって信じられねーよ!!」
「銀髪の侍ってのは、何者なんだよ!!」
質問攻めされつつも冷静な土方は、煙草を吹かしながら言う。
「会議中にやかましーんだよ、あの近藤さんが、負けるわけねーだろが。誰だ、くだらねェ噂たれ流してんのは」
紫煙を吐き出す仕草のなんと堂に入り、威厳に満ちていることか。
それでも隊士達は指差した。
「沖田隊長が!」
「スピーカーでふれ回ってたぜ!!」
そして、平然と茶を飲む沖田はこう言った。
「俺は土方さんにききやした」
ニタァ、とサディスティックに笑うと、土方は己が墓穴を掘ってしまったことに今さらながら気づき、額に手を当ててうなだれる。
「コイツに話した俺がバカだった…」
「なんだよ、結局アンタが火種じゃねェか!!」
「偉そうな顔して、ふざけんじゃないわよ!!」
「って事は何?マジなのあの噂!?」
「うるせェェェぁぁ!!」
たじろぎながら問う隊士達に苛立ち、テーブルを蹴り飛ばすと刀を抜いた。
「会議中に私語した奴ァ、切腹だ。俺が介錯してやる、山崎…お前からだ」
横暴な命令に巻き添えを食らった監察・山崎が顔を青ざめて抗議する。
「え゙え゙え゙!?俺…何もしゃべってな…」
「しゃべってんだろうが、現在進行形で」
周りを見れば他の隊士達は口を手で塞ぎ、トラブルを切り抜ける。
涙を流す山崎の胸ぐらを掴んで刀を向けた途端、襖が開いた。
「ウィース。おお、いつになく白熱した会議だな。よ~し、じゃあみんな、今日も元気に市中見廻りに行こうか」
頬を腫らしながら言う近藤に、その場の全員が目を見張って、気まずい雰囲気に包まれる。
「ん?どうしたの?」
空気を読めていない張本人に、土方は深い溜め息を漏らした。
これから自分は何をすればいい?
口許に獰猛な笑みが浮かぶ。
決まっている、行動しなければ。
「なんですって?斬る!?」
すぐさま行動を起こすと決めた土方に、沖田は驚きの声をあげる。
〈白髪の侍へ!!てめェ、コノヤロー、すぐに真選組に出頭してこい、コラ!一族根絶やしにすんぞ。真選組〉
電柱に至るところに貼られた紙を剥がし、土方は頷く。
「あぁ、斬る」
「件 の白髪の侍ですかィ」
「真選組 の面子 ってものもあるが、あれ以来隊士どもが近藤さんの敵 とるって殺気立ってる。でけーことになる前に、俺が始末する」
極端な内容だったが、血の気の多い隊士達にはこれくらい単純な方がわかりやすいという配慮だろう。
土方は紙を丸め、沖田の持っているバケツに入れる。
バケツの中身は、たくさんの紙屑でいっぱいだった。
「土方さんは二言目には『斬る』で困りまさァ。古来、暗殺で大事 を成した人はいませんぜ」
「暗殺じゃねェ、堂々と行って斬ってくる」
「そこまでせんでも、適当に白髪頭の侍、見繕って連れて帰りゃ、隊士達も納得しますぜ。これなんてどーです。ホラ、ちゃんと木刀持ちな」
そうして連れてきたのは、ビン底眼鏡をかけ、褌姿にジャージを着た白髪頭の老人。
「ジーさん。その木刀でそいつの頭、かち割ってくれ」
「パッと見さえないですが、眼鏡とったらホラ、武蔵じゃん」
ビン底眼鏡の奥には、キリッとした凛々しい瞳があった。
「何その無駄なカッコよさ!!」
その凛々しい瞳を見た後で、彼を貧しいホームレスだなどと揶揄できる人間はいまい。
老人に手を振って別れながら、沖田は訊ねる。
「マジで殺 る気ですかィ?白髪頭って情報しか、こっちにはないってのに」
「近藤さん、負かすからにはタダ者じゃねェ。見ればすぐわかるさ」
見境なく斬りかかるような暴漢まがいはしないが、研ぎ澄まされた直感力で相手を見つける。
その時、頭上から声が降ってきた。
「おーい、兄ちゃん。危ないよ」
焦る言葉とは裏腹に呑気な声音に反応が遅れた頭上で、材木が落ちてきた。
「うぉわァアアアァ!!」
寸前のところで土方はかわし、梯子から降りてきた声の主につっこむ。
「あっ…危ねだろーがァァ!!」
「だから、危ねーつったろ」
「もっとテンションあげて言えや!!わかるか!!」
「うるせーな。他人からテンションのダメ出しまでされる覚えはねーよ」
安全第一の大工にはふさわしくない雰囲気で、男は被っていたヘルメットを取った。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
そして、二人は男の顔全体を見て驚愕した。
目を見張った表情の土方に対し、銀時は疑問符を浮かべる。
「てめーは…池田屋の時の…そぉか…そういや、てめーも銀髪だったな」
「…えーと、君誰?」
辻褄が合い、納得する土方。
それとは逆に、銀時はすっかり忘れている。
不意に屋根の上から、一本の細く束ねた黒髪が垂れてくる。
「銀~、どうかしたぁ?」
いわゆるポニーテールと呼ばれる髪と共に屋根から顔を覗かせた響古が現れて、またも驚く土方と、なんか嬉しそうな沖田。
「てめーは!あの時、銀髪と一緒にいた…」
「あっ、お姉さん!」
「げっ!」
乙女にあるまじき顔と言葉で、嫌そう(沖田限定)に反応する響古。
「えっ?何?響古、知り合い?」
「ううん、全然知らない」
「あ…もしかして、多串君か?アララすっかり立派になっちゃって」
「あぁ!大串君、久しぶり」
豪快に名前を間違えながら、銀時と響古はあっけらかんと語り始めた。
なんと応じたらいいのか迷っていると、いきなり予想外のことを言われる。
「なに?まだあの金魚、デカくなってんの?」
「まだあの子の笛、持ってんの?もー、好きな子の笛盗むなんて、多串君てば変態なんだから」
「――ぷっ!」
表情を引きつらせる彼の横に立つ沖田は、我慢できずに噴き出した。
その時、屋根の上から二人を呼ぶ声が届く。
「オーーイ!!銀さん、響古ちゃん。早く、こっち頼むって」
「はいよ。じゃ、多串君、俺ら仕事だから」
「じゃーね、多串君」
銀時は梯子を登っていき、響古は笑顔で手を振り、屋根から顔を引っ込める。
――ぷくく…笑い死ぬかと思ったぜ。
沖田は、想像していたよりも遥かに上回る美女の発言に胸中で感嘆する。
「いっちゃいましたよ。どーしやす多串君」
「誰が多串君だ。何、涙目になってやがる」
笑い過ぎて涙目になっている沖田の前髪を掴み、剣呑な眼光で睨みつける。
「あいつら、わずか二、三話で人のこと忘れやがって。総悟、ちょっと刀貸せ」
挑戦的な眼差しで屋根を見上げる突然の頼みに、沖田は疑問符を浮かべた。
銀時と響古は大工からの依頼を受けて、屋根の修理をしていた。
金槌を打つ力の入っていない銀時の労働を、依頼人の大工が愚痴をこぼす。
「バカヤロー。金槌はもっと魂こめてうつんだよ」
「おめーの頭にだったら、魂こめてうちこんでやるよ。ハゲ」
その横では、響古が意外な手際のよさで金槌を打っていた。
「銀、この屋根をハゲだと思ってうてば?」
「やってみるわ」
響古の毒のある提案に、銀時はやる気を示す。
思わぬアドバイスに言葉に詰まった大工は気を取り直して、二人に言い聞かせる。
「コノヤロー。響古ちゃんはともかく、人材不足じゃなかったら、てめーなんて使わねーのによォ。そこ、ちゃんとやっておけよ」
「はい」
「オメーもな、ハゲ」
最後まで口の悪い銀時と律儀に返事をする響古の後ろ、瓦の縁に手が伸びる。
「爆弾処理の次は、屋根の修理か?節操のねェ奴らだ。一体何がしてーんだ、てめェらは」
両手に二振りの刀を持って、屋根の頂 に土方が現れた。
「爆弾!?」
銀時の記憶が、剣尖を突き刺してきた男を思い出す。
「あ…お前あん時の」
同じくして、響古も不意討ちを食らったように、
「あ」
と声を漏らす。
「やっと思い出したか…」
「「あの時の瞳孔開き役人!!」」
二人揃って同じ発言に思わずコケそうになるが、なんとか体勢を立て直す。
「なんだよ、その覚え方!」
あちらのペースに巻き込まれ、いい加減疲れてきた土方は気合いを入れ直す。
「…あれ以来、どうにもお前らのことがひっかかってた。あんな無茶する奴、真選組 にもいないんでね」
――時限爆弾を回避するために、窓を突き破った銀時は空に向かって投げ、最悪の事態をやり過ごした(だが、そう実行させた差し金は響古と神楽である)。
「アンタ、バカ?無茶しなきゃ、死人が出るでしょーが」
「フン。油断してたとはいえ、気配を消して俺に気づかせなかったなんて芸当見せる奴も、なかなかいねーしな」
――土方の前に、天地を指して突き立った木刀と、漆黒の煌めきに舞い咲く響古が降り立った。
彼女の存在を感知できなかった彼は内心、屈辱的な気分になる。
「近藤さんを負かす奴がいるなんざ信じられなかったが、てめーなら、ありえない話でもねェ」
「「近藤さん?」」
「女とり合った仲なんだろ。そんなにイイ女なのか、俺にも紹介してくれよ」
そう言って持っていた刀を投げ渡し、銀時は未だ釈然としない面持ちで受け取る。
そこに所属する男達の大声が屯所内に響く。
『副長ォォォォォ!!』
あからさまに堅気には見えない雰囲気で、やたら目つきが鋭い。
そんな男達は、噂の真相を確かめるために土方に詰め寄る。
「局長が女にフラれたうえ、女を賭けた決闘で、汚い手で負けたってホントかァァ!!」
「女にフラれるのはいつものことだが、喧嘩で負けたって信じられねーよ!!」
「銀髪の侍ってのは、何者なんだよ!!」
質問攻めされつつも冷静な土方は、煙草を吹かしながら言う。
「会議中にやかましーんだよ、あの近藤さんが、負けるわけねーだろが。誰だ、くだらねェ噂たれ流してんのは」
紫煙を吐き出す仕草のなんと堂に入り、威厳に満ちていることか。
それでも隊士達は指差した。
「沖田隊長が!」
「スピーカーでふれ回ってたぜ!!」
そして、平然と茶を飲む沖田はこう言った。
「俺は土方さんにききやした」
ニタァ、とサディスティックに笑うと、土方は己が墓穴を掘ってしまったことに今さらながら気づき、額に手を当ててうなだれる。
「コイツに話した俺がバカだった…」
「なんだよ、結局アンタが火種じゃねェか!!」
「偉そうな顔して、ふざけんじゃないわよ!!」
「って事は何?マジなのあの噂!?」
「うるせェェェぁぁ!!」
たじろぎながら問う隊士達に苛立ち、テーブルを蹴り飛ばすと刀を抜いた。
「会議中に私語した奴ァ、切腹だ。俺が介錯してやる、山崎…お前からだ」
横暴な命令に巻き添えを食らった監察・山崎が顔を青ざめて抗議する。
「え゙え゙え゙!?俺…何もしゃべってな…」
「しゃべってんだろうが、現在進行形で」
周りを見れば他の隊士達は口を手で塞ぎ、トラブルを切り抜ける。
涙を流す山崎の胸ぐらを掴んで刀を向けた途端、襖が開いた。
「ウィース。おお、いつになく白熱した会議だな。よ~し、じゃあみんな、今日も元気に市中見廻りに行こうか」
頬を腫らしながら言う近藤に、その場の全員が目を見張って、気まずい雰囲気に包まれる。
「ん?どうしたの?」
空気を読めていない張本人に、土方は深い溜め息を漏らした。
これから自分は何をすればいい?
口許に獰猛な笑みが浮かぶ。
決まっている、行動しなければ。
「なんですって?斬る!?」
すぐさま行動を起こすと決めた土方に、沖田は驚きの声をあげる。
〈白髪の侍へ!!てめェ、コノヤロー、すぐに真選組に出頭してこい、コラ!一族根絶やしにすんぞ。真選組〉
電柱に至るところに貼られた紙を剥がし、土方は頷く。
「あぁ、斬る」
「
「
極端な内容だったが、血の気の多い隊士達にはこれくらい単純な方がわかりやすいという配慮だろう。
土方は紙を丸め、沖田の持っているバケツに入れる。
バケツの中身は、たくさんの紙屑でいっぱいだった。
「土方さんは二言目には『斬る』で困りまさァ。古来、暗殺で
「暗殺じゃねェ、堂々と行って斬ってくる」
「そこまでせんでも、適当に白髪頭の侍、見繕って連れて帰りゃ、隊士達も納得しますぜ。これなんてどーです。ホラ、ちゃんと木刀持ちな」
そうして連れてきたのは、ビン底眼鏡をかけ、褌姿にジャージを着た白髪頭の老人。
「ジーさん。その木刀でそいつの頭、かち割ってくれ」
「パッと見さえないですが、眼鏡とったらホラ、武蔵じゃん」
ビン底眼鏡の奥には、キリッとした凛々しい瞳があった。
「何その無駄なカッコよさ!!」
その凛々しい瞳を見た後で、彼を貧しいホームレスだなどと揶揄できる人間はいまい。
老人に手を振って別れながら、沖田は訊ねる。
「マジで
「近藤さん、負かすからにはタダ者じゃねェ。見ればすぐわかるさ」
見境なく斬りかかるような暴漢まがいはしないが、研ぎ澄まされた直感力で相手を見つける。
その時、頭上から声が降ってきた。
「おーい、兄ちゃん。危ないよ」
焦る言葉とは裏腹に呑気な声音に反応が遅れた頭上で、材木が落ちてきた。
「うぉわァアアアァ!!」
寸前のところで土方はかわし、梯子から降りてきた声の主につっこむ。
「あっ…危ねだろーがァァ!!」
「だから、危ねーつったろ」
「もっとテンションあげて言えや!!わかるか!!」
「うるせーな。他人からテンションのダメ出しまでされる覚えはねーよ」
安全第一の大工にはふさわしくない雰囲気で、男は被っていたヘルメットを取った。
「あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!」
そして、二人は男の顔全体を見て驚愕した。
目を見張った表情の土方に対し、銀時は疑問符を浮かべる。
「てめーは…池田屋の時の…そぉか…そういや、てめーも銀髪だったな」
「…えーと、君誰?」
辻褄が合い、納得する土方。
それとは逆に、銀時はすっかり忘れている。
不意に屋根の上から、一本の細く束ねた黒髪が垂れてくる。
「銀~、どうかしたぁ?」
いわゆるポニーテールと呼ばれる髪と共に屋根から顔を覗かせた響古が現れて、またも驚く土方と、なんか嬉しそうな沖田。
「てめーは!あの時、銀髪と一緒にいた…」
「あっ、お姉さん!」
「げっ!」
乙女にあるまじき顔と言葉で、嫌そう(沖田限定)に反応する響古。
「えっ?何?響古、知り合い?」
「ううん、全然知らない」
「あ…もしかして、多串君か?アララすっかり立派になっちゃって」
「あぁ!大串君、久しぶり」
豪快に名前を間違えながら、銀時と響古はあっけらかんと語り始めた。
なんと応じたらいいのか迷っていると、いきなり予想外のことを言われる。
「なに?まだあの金魚、デカくなってんの?」
「まだあの子の笛、持ってんの?もー、好きな子の笛盗むなんて、多串君てば変態なんだから」
「――ぷっ!」
表情を引きつらせる彼の横に立つ沖田は、我慢できずに噴き出した。
その時、屋根の上から二人を呼ぶ声が届く。
「オーーイ!!銀さん、響古ちゃん。早く、こっち頼むって」
「はいよ。じゃ、多串君、俺ら仕事だから」
「じゃーね、多串君」
銀時は梯子を登っていき、響古は笑顔で手を振り、屋根から顔を引っ込める。
――ぷくく…笑い死ぬかと思ったぜ。
沖田は、想像していたよりも遥かに上回る美女の発言に胸中で感嘆する。
「いっちゃいましたよ。どーしやす多串君」
「誰が多串君だ。何、涙目になってやがる」
笑い過ぎて涙目になっている沖田の前髪を掴み、剣呑な眼光で睨みつける。
「あいつら、わずか二、三話で人のこと忘れやがって。総悟、ちょっと刀貸せ」
挑戦的な眼差しで屋根を見上げる突然の頼みに、沖田は疑問符を浮かべた。
銀時と響古は大工からの依頼を受けて、屋根の修理をしていた。
金槌を打つ力の入っていない銀時の労働を、依頼人の大工が愚痴をこぼす。
「バカヤロー。金槌はもっと魂こめてうつんだよ」
「おめーの頭にだったら、魂こめてうちこんでやるよ。ハゲ」
その横では、響古が意外な手際のよさで金槌を打っていた。
「銀、この屋根をハゲだと思ってうてば?」
「やってみるわ」
響古の毒のある提案に、銀時はやる気を示す。
思わぬアドバイスに言葉に詰まった大工は気を取り直して、二人に言い聞かせる。
「コノヤロー。響古ちゃんはともかく、人材不足じゃなかったら、てめーなんて使わねーのによォ。そこ、ちゃんとやっておけよ」
「はい」
「オメーもな、ハゲ」
最後まで口の悪い銀時と律儀に返事をする響古の後ろ、瓦の縁に手が伸びる。
「爆弾処理の次は、屋根の修理か?節操のねェ奴らだ。一体何がしてーんだ、てめェらは」
両手に二振りの刀を持って、屋根の
「爆弾!?」
銀時の記憶が、剣尖を突き刺してきた男を思い出す。
「あ…お前あん時の」
同じくして、響古も不意討ちを食らったように、
「あ」
と声を漏らす。
「やっと思い出したか…」
「「あの時の瞳孔開き役人!!」」
二人揃って同じ発言に思わずコケそうになるが、なんとか体勢を立て直す。
「なんだよ、その覚え方!」
あちらのペースに巻き込まれ、いい加減疲れてきた土方は気合いを入れ直す。
「…あれ以来、どうにもお前らのことがひっかかってた。あんな無茶する奴、
――時限爆弾を回避するために、窓を突き破った銀時は空に向かって投げ、最悪の事態をやり過ごした(だが、そう実行させた差し金は響古と神楽である)。
「アンタ、バカ?無茶しなきゃ、死人が出るでしょーが」
「フン。油断してたとはいえ、気配を消して俺に気づかせなかったなんて芸当見せる奴も、なかなかいねーしな」
――土方の前に、天地を指して突き立った木刀と、漆黒の煌めきに舞い咲く響古が降り立った。
彼女の存在を感知できなかった彼は内心、屈辱的な気分になる。
「近藤さんを負かす奴がいるなんざ信じられなかったが、てめーなら、ありえない話でもねェ」
「「近藤さん?」」
「女とり合った仲なんだろ。そんなにイイ女なのか、俺にも紹介してくれよ」
そう言って持っていた刀を投げ渡し、銀時は未だ釈然としない面持ちで受け取る。