第60話
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街の喧騒から離れた場所にある墓地。
故人が眠るという場所ということもあり、なんとなく話しかけがたい空気が満ちている。
父親の葬式の抜かりなく手配をしてくれたロイに、リザは感謝と申し訳なさを伝える。
「すみません、マスタングさん。父の葬儀の何から何までお世話になってしまって…」
「気にしないでいい。弟子として、師にできる事はなんでもするよ」
ロイは軍服の上に黒いコートを羽織り、リザは喪服姿で立っていた。
「…他の家族や親戚はいないのか?」
二人以外、今日この場所にいる人間など誰もいない。
その思いから、ロイは訊ねた。
だが、リザは首を横に振った。
「母はとっくに亡くなりました。父も母も、家族とは疎遠だったようで、親戚の話も聞いた事がありません」
「君はこれからどうする?」
「これから考えます。幸い父は、学校にだけはきちんと行かせてくれたので…一人でなんとか生きて行けると思います」
「…そうか」
すると、ロイは懐から一枚の紙を取り出し、リザに渡す。
「何か困った事があったら、いつでも軍部をたずねて来るといい。私はたぶん、一生軍にいるから」
「一生…ですか」
「ああ」
「死なないでくださいね」
「…不吉な事言うなぁ…」
リザの正直な答えに、ロイは思わず顔を青ざめた。
確かに、軍に在籍している以上、いついかなる時でも召集されて死んでもおかしくない。
そう考えると、今すぐにでも逃げたい。
だからこそ、ロイはあえて言い放つ。
「保証はできないよ。こんな職業だから、いつか路傍でゴミのように死ぬかもしれない。それでも、この国の礎 のひとつとなって、皆をこの手で守る事ができれば、幸せだと思ってるよ」
リザから視線を外し、まるで夢を見るように目を細めながら信条を吐露する。
国を守るために全力で戦う。
それは、自分が間違いなく、巻き込まれて死ぬ、ということだ。
彼が、自分が死んでも戦うと決意している、ということだ。
「そのために錬金術を学んだのだけれど…師匠 には、とうとう秘伝を教えてもらえなかった」
錬金術は人に夢や希望を与える、そう意気込んで語るが、急に照れくさくなったロイは頭をガリガリと掻いた。
「…いや、青臭い夢を話してしまったな」
「いいえ。素晴らしい夢だと思います」
その夢を笑い飛ばそうとせず、リザは微かな笑みで真剣に聞いてくれた。
「…………」
ほんの少しの躊躇を経て、まるで何かを準備するように、目線を合わせないまま、父の墓標を見やりながら口を開く。
「父の残した秘伝は、並の錬金術師には解読できない暗号で書かれていると言ってました」
「やはり師匠は秘伝の書物を残して逝かれたのか…」
「いいえ」
しかし、リザはいとも簡単に、ロイの答えを否定する。
「書物ではありません。生涯の研究が消失したり、部外者に持ち出されては困る…と」
「どうやって残したんだ?」
「マスタングさん」
訝しむロイに向けて、父親の想いを守る一縷の望みとして、彼が語った夢に救いを求めて、彼女は託した。
「その夢…背中を託して良いですか。皆が幸せに暮らせる未来を信じて良いですか」
慣れない戦場で心身共に疲弊したリザは、虚ろな瞳を地面に向けて語りかける。
後ろにはロイが立っていて、黙って耳を傾けている。
「信じていたのに、なぜこんな事になってしまったのでしょうか」
七年前、アメストリスの侵攻によりイシュヴァールの物質文明は崩壊の淵に立たされ、おびただしい人間の数が殺され、あるいは心を鬼にして殺した。
人々の顔にあったのは絶望とやり場のない憎悪だけだった。
たった七年、されど七年。
皆の幸せに暮らせる未来のために戦った軍人の成れの果て。
国民を守るなどという美名にそそのかされて地獄の釜に投げ込まれた愚か者たちの末路。
「『なぜ』?それが国家錬金術師の仕事だからです。なぜ国民を守るべき軍人が国民を殺しているのか?それが兵士 に与えられた任務だからです」
誰もが、繰り返される赤き戦場の答えに見つからない中、ただ一人、明確に告げる者がいた。
ロイを含め、全員の視線が彼に集まる。
「ちがいますか?」
キンブリーは目を細めて、満面の笑みともいえるほどの爽やかな表情を向けていた。
「割り切れと言うのか?この惨状を?」
ロイは、心底嫌そうに彼を睨む。
キンブリーは笑顔でその敵意に応えるだけだ。
「仕事として割り切れませんか?皆さんは?」
「できれば、こんな話はしませんよ」
話を振られ、近くにいた軍人は眉を下げて苦笑する。
「そうですね…たとえば……そこのお嬢さん」
彼が指差した先には、狙撃兵として戦場の前線に参入してきた、唯一の女性――リザ。
「『私は嫌々やっている』そういう顔ですね、あなた」
「それは…そうです。殺しは楽しくなんかありませんから…」
「そうですか?」
そう断言した彼が話してくれたのは、まあ、優しい人間なら、なんとも胸糞悪くなるような話だった。
「相手を倒した時『当たった!よし!』と自分の腕に自惚れ、仕事に達成感を感じる瞬間が少しでも無いと言いきれますか?狙撃手さん」
躁 めいた薄笑いを浮かべるキンブリーの言葉に、リザの顔が恐怖に強張る。
「………それ以上言うな!!」
ついに我慢できなくなったロイが襟元を掴み上げるが、キンブリーは平然とした様子で逆に訊ねる。
「私からすれば、あなたがたの方が理解できない。戦場という特殊な場に正当性を求める方がおかしい。錬金術で殺したら外道か?銃で殺したら上等か?それとも、一人二人殺す覚悟はあったが、何千何万は耐えられないと?」
思ってもいない説教を垂れるキンブリーに、話を聞いていた周りの軍人は下唇を噛んだ。
明らかな動揺が広がっている。
「自らの意思で軍服 を着た時に、すでに覚悟はあったはずではないか?嫌なら最初ならこんなもの着なければいい。自ら進んだ道で何を今更、被害者ぶるのか。自分を哀れむくらいなら、最初から人を殺すな」
その脅迫じみた物言いに、ロイはギチリと奥歯を噛みしめる。
キンブリーはロイに向き直り、眉間に皺を寄せて重々しく告げる。
「死から目を背けるな。前を見ろ。貴方が殺す人々の、その姿を真正面から見ろ」
殺したイシュヴァール人の濁った瞳。
耳元で銃声が鳴り響き、周りの味方が全滅していて敵に包囲されてしまった時のことが忘れなれない。
目を閉じていても見え、耳を塞いでも聞こえる。
「そして忘れるな。忘れるな、忘れるな。奴らも貴方の事を忘れない」
耳許で囁く男の威圧感に気圧されるロイ。
途端、遠くから鳴り響く召集の合図にキンブリーは立ち上がり、襟元を直す。
「おっと、時間ですよ。仕事に行かなければ」
返事を待たずして、キンブリーは担当する地区に歩き出す。
「俺も行かなきゃな。今日から第18区だ。じゃあな、ロイ」
「ヒューズ、おまえはなんで戦う」
「簡単だ。"死にたくねぇ"ただそれだけだ」
ロイの切実な問いかけに、ヒューズは簡潔に答えた。
「理由はいつだって単純だよ、ロイ」
躊躇することなく即答する親友の後ろ姿に、彼は地面に視線を落とす。
「なぜですか!?なぜ、こんな戦いを続けねばならんのですか!?」
その場にある者を物を、等しく激しく叩く衝撃の中、アームストロングは血と煤に塗れ、意識を失ったイシュヴァールの少年を腕に抱き、涙を流して叫んだ。
「黙れ!!立て、アームストロング!!貴様、この状況がわかっているのか!?」
地区部隊を統率するフェスラーが息を荒げ、血走った目を向けながら激昂する。
「立て!!戦え!!貴様が戦わなければ仲間が死ぬのだぞ!!!」
しかし、アームストロングは失われた目の前の命に、顔を強張らせて少年を抱きしめ、縮こまってしまった。
敵味方の蛮声と叫声、銃声と爆発音が混じり合う阿鼻叫喚の戦場に、彼の戦意は既に喪失していた。
「~~~~」
滂沱と涙を流すアームストロングを突き放し、フェスラーは怒りに身体を震わせる。
「もうよい!!腰抜けが!!代わりの国家錬金術師をよべ!!」
「そんな…急には!!」
「ええい…グンジャ地区は、もう片付いたというのに…」
別の殲滅地区の戦果を引き出し、悔しさに親指を噛むフェスラーを、軍人達が内心動揺して見る。
周りを見渡せば、仲間が味方もほとんど救助が必要としない状態になって転がっている遺骸を集めて、一つ一つ丁寧に死体袋に入れる作業を行っている。
絶望的な兵力の少なさに加え、アームストロングの離脱を考えると、戦果を上げろと言われても無理な話だった。
「敵と味方のこの兵差では仕方ありません、フェスラー准将…加えて、アームストロング少佐の抜けた今、もう一度作戦を練り直し…」
「突撃だ!!」
必死に止めようとする部下の言葉を遮り、強襲を敢行する。
「死ぬ気で行け!!反逆者どもに国軍の魂を見せてやれ!!」
軍人達が今度こそ驚愕にざわめきを交わし、ヒューズが顔を歪めて心中で罵る。
(…この能無しが!!)
(突撃で散る事が美だと思ってるんでしょうか?)
士官の身勝手な発言に、横にいる男もヒューズの罵倒に同意する。
軍人も舌打ちの聞こえてきそうな表情で悪態をつく。
「いや、今すぐ手柄が欲しいだけだ。モスキトー大佐のグンジャ地区は、もう殲滅終了して次に移ってるらしい。焦ってんのさ」
(冗談じゃねぇ)
(兵 を使い捨ての駒としてか思ってねぇのか)
彼の真意が理解できないで唖然とする軍人の中に、殲滅戦に参入するロアもいた。
「グラン隊、到着しました!!」
そこへ、無線を使って援軍を受け部隊が到着した。
故人が眠るという場所ということもあり、なんとなく話しかけがたい空気が満ちている。
父親の葬式の抜かりなく手配をしてくれたロイに、リザは感謝と申し訳なさを伝える。
「すみません、マスタングさん。父の葬儀の何から何までお世話になってしまって…」
「気にしないでいい。弟子として、師にできる事はなんでもするよ」
ロイは軍服の上に黒いコートを羽織り、リザは喪服姿で立っていた。
「…他の家族や親戚はいないのか?」
二人以外、今日この場所にいる人間など誰もいない。
その思いから、ロイは訊ねた。
だが、リザは首を横に振った。
「母はとっくに亡くなりました。父も母も、家族とは疎遠だったようで、親戚の話も聞いた事がありません」
「君はこれからどうする?」
「これから考えます。幸い父は、学校にだけはきちんと行かせてくれたので…一人でなんとか生きて行けると思います」
「…そうか」
すると、ロイは懐から一枚の紙を取り出し、リザに渡す。
「何か困った事があったら、いつでも軍部をたずねて来るといい。私はたぶん、一生軍にいるから」
「一生…ですか」
「ああ」
「死なないでくださいね」
「…不吉な事言うなぁ…」
リザの正直な答えに、ロイは思わず顔を青ざめた。
確かに、軍に在籍している以上、いついかなる時でも召集されて死んでもおかしくない。
そう考えると、今すぐにでも逃げたい。
だからこそ、ロイはあえて言い放つ。
「保証はできないよ。こんな職業だから、いつか路傍でゴミのように死ぬかもしれない。それでも、この国の
リザから視線を外し、まるで夢を見るように目を細めながら信条を吐露する。
国を守るために全力で戦う。
それは、自分が間違いなく、巻き込まれて死ぬ、ということだ。
彼が、自分が死んでも戦うと決意している、ということだ。
「そのために錬金術を学んだのだけれど…
錬金術は人に夢や希望を与える、そう意気込んで語るが、急に照れくさくなったロイは頭をガリガリと掻いた。
「…いや、青臭い夢を話してしまったな」
「いいえ。素晴らしい夢だと思います」
その夢を笑い飛ばそうとせず、リザは微かな笑みで真剣に聞いてくれた。
「…………」
ほんの少しの躊躇を経て、まるで何かを準備するように、目線を合わせないまま、父の墓標を見やりながら口を開く。
「父の残した秘伝は、並の錬金術師には解読できない暗号で書かれていると言ってました」
「やはり師匠は秘伝の書物を残して逝かれたのか…」
「いいえ」
しかし、リザはいとも簡単に、ロイの答えを否定する。
「書物ではありません。生涯の研究が消失したり、部外者に持ち出されては困る…と」
「どうやって残したんだ?」
「マスタングさん」
訝しむロイに向けて、父親の想いを守る一縷の望みとして、彼が語った夢に救いを求めて、彼女は託した。
「その夢…背中を託して良いですか。皆が幸せに暮らせる未来を信じて良いですか」
慣れない戦場で心身共に疲弊したリザは、虚ろな瞳を地面に向けて語りかける。
後ろにはロイが立っていて、黙って耳を傾けている。
「信じていたのに、なぜこんな事になってしまったのでしょうか」
七年前、アメストリスの侵攻によりイシュヴァールの物質文明は崩壊の淵に立たされ、おびただしい人間の数が殺され、あるいは心を鬼にして殺した。
人々の顔にあったのは絶望とやり場のない憎悪だけだった。
たった七年、されど七年。
皆の幸せに暮らせる未来のために戦った軍人の成れの果て。
国民を守るなどという美名にそそのかされて地獄の釜に投げ込まれた愚か者たちの末路。
「『なぜ』?それが国家錬金術師の仕事だからです。なぜ国民を守るべき軍人が国民を殺しているのか?それが
誰もが、繰り返される赤き戦場の答えに見つからない中、ただ一人、明確に告げる者がいた。
ロイを含め、全員の視線が彼に集まる。
「ちがいますか?」
キンブリーは目を細めて、満面の笑みともいえるほどの爽やかな表情を向けていた。
「割り切れと言うのか?この惨状を?」
ロイは、心底嫌そうに彼を睨む。
キンブリーは笑顔でその敵意に応えるだけだ。
「仕事として割り切れませんか?皆さんは?」
「できれば、こんな話はしませんよ」
話を振られ、近くにいた軍人は眉を下げて苦笑する。
「そうですね…たとえば……そこのお嬢さん」
彼が指差した先には、狙撃兵として戦場の前線に参入してきた、唯一の女性――リザ。
「『私は嫌々やっている』そういう顔ですね、あなた」
「それは…そうです。殺しは楽しくなんかありませんから…」
「そうですか?」
そう断言した彼が話してくれたのは、まあ、優しい人間なら、なんとも胸糞悪くなるような話だった。
「相手を倒した時『当たった!よし!』と自分の腕に自惚れ、仕事に達成感を感じる瞬間が少しでも無いと言いきれますか?狙撃手さん」
「………それ以上言うな!!」
ついに我慢できなくなったロイが襟元を掴み上げるが、キンブリーは平然とした様子で逆に訊ねる。
「私からすれば、あなたがたの方が理解できない。戦場という特殊な場に正当性を求める方がおかしい。錬金術で殺したら外道か?銃で殺したら上等か?それとも、一人二人殺す覚悟はあったが、何千何万は耐えられないと?」
思ってもいない説教を垂れるキンブリーに、話を聞いていた周りの軍人は下唇を噛んだ。
明らかな動揺が広がっている。
「自らの意思で
その脅迫じみた物言いに、ロイはギチリと奥歯を噛みしめる。
キンブリーはロイに向き直り、眉間に皺を寄せて重々しく告げる。
「死から目を背けるな。前を見ろ。貴方が殺す人々の、その姿を真正面から見ろ」
殺したイシュヴァール人の濁った瞳。
耳元で銃声が鳴り響き、周りの味方が全滅していて敵に包囲されてしまった時のことが忘れなれない。
目を閉じていても見え、耳を塞いでも聞こえる。
「そして忘れるな。忘れるな、忘れるな。奴らも貴方の事を忘れない」
耳許で囁く男の威圧感に気圧されるロイ。
途端、遠くから鳴り響く召集の合図にキンブリーは立ち上がり、襟元を直す。
「おっと、時間ですよ。仕事に行かなければ」
返事を待たずして、キンブリーは担当する地区に歩き出す。
「俺も行かなきゃな。今日から第18区だ。じゃあな、ロイ」
「ヒューズ、おまえはなんで戦う」
「簡単だ。"死にたくねぇ"ただそれだけだ」
ロイの切実な問いかけに、ヒューズは簡潔に答えた。
「理由はいつだって単純だよ、ロイ」
躊躇することなく即答する親友の後ろ姿に、彼は地面に視線を落とす。
「なぜですか!?なぜ、こんな戦いを続けねばならんのですか!?」
その場にある者を物を、等しく激しく叩く衝撃の中、アームストロングは血と煤に塗れ、意識を失ったイシュヴァールの少年を腕に抱き、涙を流して叫んだ。
「黙れ!!立て、アームストロング!!貴様、この状況がわかっているのか!?」
地区部隊を統率するフェスラーが息を荒げ、血走った目を向けながら激昂する。
「立て!!戦え!!貴様が戦わなければ仲間が死ぬのだぞ!!!」
しかし、アームストロングは失われた目の前の命に、顔を強張らせて少年を抱きしめ、縮こまってしまった。
敵味方の蛮声と叫声、銃声と爆発音が混じり合う阿鼻叫喚の戦場に、彼の戦意は既に喪失していた。
「~~~~」
滂沱と涙を流すアームストロングを突き放し、フェスラーは怒りに身体を震わせる。
「もうよい!!腰抜けが!!代わりの国家錬金術師をよべ!!」
「そんな…急には!!」
「ええい…グンジャ地区は、もう片付いたというのに…」
別の殲滅地区の戦果を引き出し、悔しさに親指を噛むフェスラーを、軍人達が内心動揺して見る。
周りを見渡せば、仲間が味方もほとんど救助が必要としない状態になって転がっている遺骸を集めて、一つ一つ丁寧に死体袋に入れる作業を行っている。
絶望的な兵力の少なさに加え、アームストロングの離脱を考えると、戦果を上げろと言われても無理な話だった。
「敵と味方のこの兵差では仕方ありません、フェスラー准将…加えて、アームストロング少佐の抜けた今、もう一度作戦を練り直し…」
「突撃だ!!」
必死に止めようとする部下の言葉を遮り、強襲を敢行する。
「死ぬ気で行け!!反逆者どもに国軍の魂を見せてやれ!!」
軍人達が今度こそ驚愕にざわめきを交わし、ヒューズが顔を歪めて心中で罵る。
(…この能無しが!!)
(突撃で散る事が美だと思ってるんでしょうか?)
士官の身勝手な発言に、横にいる男もヒューズの罵倒に同意する。
軍人も舌打ちの聞こえてきそうな表情で悪態をつく。
「いや、今すぐ手柄が欲しいだけだ。モスキトー大佐のグンジャ地区は、もう殲滅終了して次に移ってるらしい。焦ってんのさ」
(冗談じゃねぇ)
(
彼の真意が理解できないで唖然とする軍人の中に、殲滅戦に参入するロアもいた。
「グラン隊、到着しました!!」
そこへ、無線を使って援軍を受け部隊が到着した。