イソップ・カール(納棺師)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
イロハが昏睡状態に陥り、医務室へと運ばれ早いもので1ヶ月が経過しようとしている。
その間も僕は時間が許す限りイロハの側へと居続けた。
いつ目覚めてもいい様に、寂しがりのイロハが目を覚ました時に悲しまない様に__
「イソップ君…そろそろきちんと睡眠と食事を摂らないと、イロハが目覚める前に君が倒れてしまうよ」
苦笑いを浮かべるイライ・クラーク。
「イライさん…」
気が付かない内にイライさんが部屋に入っていた様だ。
「僕のことは良いんです。それよりかもイロハが目覚めた時に悲しまない様に側に居ないといけないので…」
僕がそう言うと、イライさんは困った様に微笑み「そう…」と言い、僕の隣にある椅子へ腰掛けた。
「イソップ君、あの日イロハと何があったんだい」と僕に問いかけた。
「あの日イロハは試合の待機時間中ずっと泣きそうな顔で、知らず知らずの内に傷付けたと皆んなに相談していたよ。誰のことかまでは言ってなかったけれど…」
…話を聞いて驚いた。僕が彼女を傷付けたのに。彼女は何も悪くないのに……。
「実は__」
僕はあの日何があったのかをイライさんに話し始めた。
「イロハ」
「イソップどうしたの?」
「イロハは僕と一緒に居ない方がいいんじゃないですか?」
「どうしてそういう酷いことを言うの?」
「僕と居るよりかも他の方と一緒の方が楽しそうなので」
「は…?それ本気で言ってるの……?イソップなんか………イソップなんかもう知らない!」
__僕が話し終えると、イライさんは「そうだったんだね」と言い、こう続けた。
「イソップ君、私が言うべきことではないかもしれないけれどもイロハは一途に君のことだけを思っているよ。君が不在の時、イロハはずっと君の話だけをしている。今日は化粧をしてもらっただとか今日の試合は一緒に出れるだとか…そんな他愛もない話をよく私達にしてくれるんだ。
イソップ君がイロハのことを想っているのと同じくらいイロハも君のことを想っているんだね」とニッコリ笑って話してくれた。
そのことを聞いた僕は不覚にも泣き出しそうになってしまった。
「イロハが目を覚ましたら仲直りをしないとね。…じゃあ私はこれで失礼するよ」と言いイライさんは部屋から出て行った。
部屋には僕とイロハしか居ない。
また静寂が医務室を包み込んだ。
「そう言えば…イロハはこのおとぎ話がお気に入りで、よく僕に聞かせてくれていましたね。
今度は僕がイロハに読み聞かせしてみますね」
と言い、彼女がお気に入りのおとぎ話を丁寧にゆっくりと話し始めた。
「__昔々あるところに、白雪姫という美しい姫がいました____」
「__すると、白雪姫は王子様のキスで目覚めましたとさ。めでたしめでたし」
「本当は読み聞かせ何て恥ずかしいのでしないのですが、今回は特別ですよ」イロハの頬を愛おしそうに撫でながらそう話す。
「イロハ……早く目覚めて下さい…お願いします…貴女が居ないと僕は生きてる意味がないんです……」
ポタポタと目から涙が溢れ、イロハの頬を濡らした。
「…そういえば、お姫様にまだキスをしていませんでしたね」
と言いながら、眠りから目覚めないイロハの唇に願いを込めてキスをした。
__チュ__
唇にそっと触れただけの優しいキス。
__やっぱりキスなんかで目覚めるわけがないか…と諦めていた時_
「……ん、イソップ…?」
ずっと聞きたかった、最愛の人の声が聞こえた。
「イロハ?イロハ…?本当にイロハ…?」
幻聴なのでは…?と思い何度も名前を呼ぶ。
「イロハだよ。イソップの恋人のイロハ。
…って!どうして私、包帯ぐるぐる巻きなの!?」
ギャーギャー喚くイロハの姿を見て本物のイロハだと安心する。
「よかったです……本当に良かった…」
先程までの悲し涙とは違う涙がとめどなく溢れた。
「何で泣いてるのイソップ?」
泣いている僕を見てワタワタと慌てる彼女。
「何でもないです…それよりかもイロハ体調はどうですか?」
「体調は大丈夫だよ。それよりも聞いてほしいことがあるの!」
と興奮気味に話す彼女に「どうしたのですか」と相槌を打つと、
「あのね、夢の中でね、イソップが目覚めない私に優しくキスをしてくれたの!」
僕は驚き、目を見開きながら
「そうですか…それは良かったですね」
と言い、イロハの頭を優しく撫でた。
イロハはニコニコと太陽みたいな笑顔を僕に向け「夢の中のイソップは私が好きなおとぎ話を覚えていてくれたんだね!」なんて嬉しそうに話すので僕もつられて笑った。
(寡黙な王子様の魔法のキス)
(さぁ、早く彼女と仲直りしようか)
2/2ページ