イソップ・カール(納棺師)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
___「イロハは僕と一緒に居ない方がいいんじゃないですか?」
「どうしてそういう酷いことを言うの?」
「僕と居るよりかも他の方と一緒の方が楽しそうなので」
「は…?それ本気で言ってるの……?イソップなんか………イソップなんかもう知らない!」バタン!
___あの時、僕がしょうもないことで嫉妬しなければ……素直に謝っていたならば……部屋を飛び出した彼女を追いかけていれば……こんなことになっていなかったのかも知れない。
…イロハ、イロハ、イロハ……もう1度目を開けて、僕に微笑みかけて、その美しい声で僕の名前を呼んで下さい……
イロハの手を握る力がギュッと強くなった。
しかし、そんなイソップの願いも虚しくイロハの瞳が今日も開くことはなかった___
イロハが部屋から出て行った数時間後、何やら部屋の外では忙しなくバタバタと廊下を駆けて行く数名の足音が耳に響いた。
「うるさいですね…」化粧箱の手入れをしていた僕は、扉の向こう側の騒音に顔を顰めた。
10分くらいで騒音は止み、やっと手入れに集中ができると思ったその時、トントンと誰かが僕の部屋をノックした。
(誰だろう?イロハは試合だとこの前言っていたはず…)
僕は不審に思いながら「はい…」と扉を開けると、大粒の涙を流しているウッズさんが立っていた。
「…カールさん、エマについて来てほしいなの…」
「…どうしてですか?」
ウッズさんの意図が汲み取ることが出来ない僕は疑問に思いそう尋ねた。
「……ついて来てほしいなの」
質問に対して回答はなかったが、ウッズさんの徒ならぬ様子から「分かりました…」と言い、ウッズさんの後ろを付いて行った。
数分ウッズさんの後ろを付いて行くと、〝ある部屋〟の前で彼女は立ち止まった。
「……入ってほしいなの」
ウッズさんは〝医務室〟と書かれている、プレートが掛けられた扉の部屋への入室を僕に勧めた。
……嫌な予感がする…とてつもなく嫌な予感だ。
ギィ…と建て付けの悪い扉を開くと白いカーテンの向こうには、医師であるダイアー先生、イライさん、ピアソンさんが1つのベッドを囲んで立っていた。
すると、僕に気が付いたイライさんとピアソンさんは席を外した。
去り際に「あ、あまり気を落とすんじゃないぞ」とピアソンさんが言った。
イライさんとピアソンさんが退室して、ベッドを遮る人が居なくなり、中心で眠る人物が見えた。
……そこには、痛々しく身体中に包帯を巻かれ、眠っている愛しの恋人の姿があった。
「は?……イロハ…?」
目の前の光景に頭が真っ白になり、僕はその場で崩れ落ち過呼吸に陥った。
「カールさん!」
ダイアー先生が僕の側にやってきて「しっかり!」と言い背中を撫でてくれた。
「…っ!どうしてですか?どうして!どうして!!…どうして…」
僕は人の目を気にする事なく叫んだ。
……するとウッズさんが重い口を開き、
「…イロハ、今日の試合中ずっとおかしかったなの…何かを考えている様な、悩んでいる様な…」
そこまで聞くと僕はハッとし、イロハが試合に行く前の言い争いを思い出した。
「僕のせいだ…僕のせいでイロハが…」
「とりあえず、1度落ち着きましょう」そう言いダイアー先生が椅子を1つ用意してくれた。
その椅子に座り、徐々に落ち着きを取り戻すとダイアー先生がポツポツと話し始めた。
「イロハは今、試合中に頭と身体を強く打って意識がない状態なの…所謂、昏睡状態ね……けれど、いつ目が覚めるかが分からないの。明日目を覚ますか、それとも一生このままなのか…出来る限りの治療は勿論したけれども…それでも目を覚ます確率は分からないの…」
「恋人である貴方には酷な話よね…ごめんなさい……けれど、恋人である貴方だからこそ伝えておかなければいけないと思って……」と話し目を伏せた。
……イロハが一生目を覚さない?
目の前の現実に僕はガクガクと震えながら、ダイアー先生の話を聞くことだけで精一杯だった。
そんな僕の様子を見たダイアー先生は、
「イロハのことは私に任せて、カールさんは部屋で休まれていて下さい。もし、目が覚めたらすぐに伝えに行きますから」と作り笑いをし僕の身を案じてくれた。
けれども僕は「……イロハのことは僕に任せてください。」とイロハの手を握りしめ2人に伝えた。
「……分かりました。イロハのことよろしくお願いしますね。もし容態が急変したようだったらいつでも呼んでくださいね」
「…じゃあ、エマ行きましょうか…」
「そうするなの…カールさんイロハをお願いしますなの」と言うと2人は部屋から出て行った。
静寂が部屋を包み込んだ。
とても静かだ。
そういえば、イロハと一緒に居る時は眠る時以外こんなに静かになることがなかったな……僕は寡黙だけれども彼女は煩いくらい元気だったから。
「イソップって言うの?私はイロハ!よろしくね!」
「…私と付き合って下さい!」
「ふふ、イソップだーいすき!」
彼女との思い出を思い返すと、知らぬ間に涙が溢れていた。
ポタポタと溢れる涙は止まることを知らない。
「お願いです…イロハ…目を覚ましてください…」
僕の願いは静寂が包む部屋へと溶け込んで消えた。
(寡黙な王子様)
(貴女が居ないと生きている意味がない)
1/2ページ