page.07 母の面影
Mとは
なるべく目を合わせないようにして
逃げるように二階へ向かった
『L...I love you...』
あの時の恐怖が蘇るようだった
Mとは
なるべく関わらないようにしよう
彼女の声を聞かないようにしよう
彼女の香りに囚われないようにしよう
母を思い出して
闇へと堕ちてゆくのが恐かった
『ククッ...L...また楽しませてくれるのかい?クククッ...』
死神が呟いていた
Mがハウスに来てから数週間
私はMとの接触をなるべく避けた
不自然ではないように振る舞い
そしてMから離れる
旨く誤魔化せていると思っていた
Mを傷付けているつもりは全くなかったし
私の行動で
Mが傷付くとも思わなかった
私は気付いていないだけだったのだ
私がMの前から去る時に
彼女が悲しそうな顔をしていた事に
......コンコン
「はい?」
「私です」
二階にワタリが来るなんて
とても珍しい事だった
「ワタリ、どうしたのですか?」
「Lに少々お話が...」
「何でしょうか?」
「Mの件で...」
一瞬
心臓が大きく鳴った
「...Mがどうしたんですか?」
「はい...ここの所、少々塞ぎ込んでいるご様子で...」
「...それは..困りましたね...」
Mの話は
なるべくしたくない
あの声と香りを思い出すからだ
今張り詰めている糸が切れたら...
Mに心を開いてしまったら...
もう闇へは堕ちたくないのに
心を開いてしまいそうになる
矛盾だらけの気持ちに
自分自身ついてゆけない
「L、どうかMの話相手になってあげて下さい...」
「...何故私が?」
「Lならば、何に落ち込んでいるかすぐに聞き出せるでしょう?」
「...そんな理由で...」
いくらワタリの頼みとはいえ
ここで意見を曲げるわけには...
Mと関わるわけには...
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