page.03 Beyond=Birthday
Petにはもっと
良い名前を付けてやれば良かった
Petの心臓が悪いなんて
全然気が付かなかった
定期的に
病院へ通わせていれば良かった
後悔とやり場のない怒りで
胸がいっぱいだった
「 I go to meet Beyond.」
九歳になったばかりのある日
ワタリはそう言い残し出掛けて行った
新しくハウスに入ってくる子供を
迎えに行ったのだろう
Beyondというその子供も
何かしら不幸に見舞われ
身寄りがなくなったんだろう
窓から
ワタリの車が去って行くのを見送ると
ベッドに身を沈めた
恐かった
自分の周りから
大事なモノが次々と消えてゆくのが
実は私こそが
死神なのではないかと思った
天井を見上げながら考える
死神が実在すると仮定してみよう
では死神は
どうやって人を殺すんだろうか
本や絵画に描かれている死神は
決まって手に鎌を持っている
その鎌を振り降ろし命を奪うか
向こうの世界から
常にこちらを観察していて
目に留まった人間を
只殺しているか
私は
大まかにこの二択に絞り込んでみた
なんて非現実的なんだろう
私は
死神の存在など信じていなかったし
心臓麻痺で死んだ人間が
死神に命を奪われたなんて
ゆき過ぎた妄想だ
「...Is out of the question.」
本当に死神がいたら
目で見ただけで
人を殺せるだろう
全く根拠はない
ただの直感だが
どれくらい考えていたんだろう
ハウスに人の気配がある
ワタリが
Beyondを連れて着たのだろう
部屋を出て
一階に繋がる階段を
いつもより少し軽い足取りで下った
.