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page.22 野良猫




「えー.....」


『ワタリ・L 元気ですか?僕も元気だよ!』


違うねぇ
もっとこう...
「B」って感じの文章にしたいなぁ...


『やぁ...久しぶりだね。元気かい?』


これも違うねぇ...
手紙なんて書いた事ないから
変な感じだ...



それからは何枚も書いては破って
僕は手紙と格闘していた

そしてやっと一枚の手紙が完成した
もうすっかり夜だったので
明日出しに行く事にして早めに寝た




朝起きるとうっすらと雪が積もっていて
ちょっと出掛けるのが嫌になる

「面倒だなぁ...」
着替えて一階まで降りていくと
パンの焼ける美味しそうな香りがしてきた

「おはよう!これ食べてから行きな!」
「うん」


今日の朝ご飯は
Clair特製のクロワッサンとクリームパンだった

「ジャムパンはないんだねぇ...」
「そっか、Beyondはジャムが好きなんだよね!夜はジャムパンにするからね!」


...夜ご飯もパンなんだ...
と、心の中で呟き
僕は出発した




Clairの家からハウスまでは
大体歩いて一時間くらいだろうか

「住所が分かれば楽なのにねぇ~...」


ハウスに近付く度に景色が懐かしく感じられ
以前ワタリの車で通った場所を過ぎた頃だろうか
『隔離された土地』が見えてきた

今もLはあのハウスで普通に暮らしているんだ



漸くハウスの前に着くと
躊躇う事なくポストに手紙を入れた

たったこれだけの事に片道一時間だ
また同じ道を戻る事を考えると急に面倒くさくなってきたが
ワタリに送って貰えるわけでもないので
ダラダラと元来た道を引き返した



Clairの店の近くに着いたのが三時過ぎだった
帰るにはまだ早すぎる
第一帰っても暇疲れするだけだろう

寄り道がてら
久々に一週間前に生活していた路地裏に行ってみた

そこは相変わらず荒んでいて
ゴミ袋と新聞紙が点々と置いてある



「ニャー....」


何処からか鳴き声が聞こえてきた

「ニャー.....」


匂いで分かるのか
鳴き声は段々と大きくなる


「ここだ...」


大きなゴミ袋の下から
鳴き声が聞こえている

袋をどけてやると
そこには黒い子猫がいた
首輪はしていない
















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