page.22 野良猫
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あれから5日
Michelとは一度も会う事はなかった
発作を起こしてたし
もしかしたら野垂れ死んでるかもね
でもそんなこと
僕にとって興味のカケラもない事だった
ハウスを出てみると
如何にあそこでの暮らしが良いものだったかを
思い知らされる
今の僕は
倉庫街にいた時に逆戻り
いや、あの時以下の生活かもしれない
暗い路地裏で1日の半分を過ごし
日が暮れるとパン屋さんやお惣菜屋さんに行き
残り物を分けて貰う毎日
まるで野良猫だ
今日もまた
長い長い1日が始まる
いつものように
路地裏で目を覚ます
ゴミ袋を枕にして
新聞紙を布団代わりにする
「これって、ホームレスってやつだよねぇ~...」
流石に11月のイギリスは寒い
雪が降ってきたら
それこそ凍死するだろう
お金は一銭も持ってないし
鞄に入っていた苺ジャムも
そろそろ底を尽きるところだ
「まいったなぁ~...」
建物の間から
空を眺める
「おい!いるんだろ?」
「ん?」
路地裏からひょっこり顔を出すと
いつも残り物を分けてくれる
パン屋のおばさんが立っていた
「...なんだい?」
「あんた、もう一週間くらい来てるけど...どこの子だい?」
「家なんてないよ」
「親は?」
「死んだ」
はぁと溜め息をつき
おばさんは一言
「おいで」
と言った
僕は無言でついて行く
これがClairとの初めての会話だった
僕は暫く
Clairが営む
パン屋さんの二階に住まわせて貰う事になった
どこでも良いよ
ゆっくり寝られる所なら...
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