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部屋に入ると既にMichelの姿はなく
Lがぼーっと立っていた
「ククッ...Good morning~L~Good morning~」
と歌うとLの肩がビクッと震えた
「B...」
Lの躯には
無数に鬱血した痕がついていて
眼を背けたくなった
「どうだい?L」
「.....」
「Mは善かったかい?クククッ...」
「.....!」
明らかにLの瞳孔が開いた
やっぱり手遅れか...
「お前が...お前が仕組んだのか...!」
「クククッ...L、恐い顔しないでよ。僕はMにアドバイスをしただけさ」
Lは僕から眼を逸らした
「それに、抱いたのはLの意志だろ?
僕に当たるなよ」
「くっ....」
違うよL...
僕はこんな事
言いたくないんだ...
「服を着て降りてきて。もうこんな時間だ。
ワタリが変に思う」
と言うと脱ぎ捨ててある上着をLに投げ
僕は部屋を出た
きっとLは
こんな会話が最後だとは思っていなかっただろう
....ガチャッ!
ノックもせず
Michelの部屋に入る
「B...!びっくりするじゃない!」
「クククッ...驚いたのは僕の方さ...」
コンタクトを外した瞳に
Michelを映す
「なに...その眼...」
「あぁこれかい?皆は死神Bって言うんだ」
動揺しているMichelを無視し
話を続ける
「キミは、何か勘違いしていないかい?」
「え...?」
「Lはお前を愛してなどいないよ」
微かに震え出すMichelの躯
「Lはただ、お前に母の面影を感じているだけだよ」
「母の...面影...?」
「キミはLにとって最も危険な存在だ。だから僕と逃げよう」
「な...意味が分からない!何で私が...っ....はっ...ゲホッ....くっ...」
Michelは急に胸を押さえ座り込み
激しい咳を繰り返していた
呼吸も速い
「お前...心臓に病気もちか?」
「ほっ...といて...」
胸を押さえて苦しそうにもがくMichel
ベッドまで這って行き
大量に血を吐いた
「どうりで寿命が短いわけだ...」
血だらけになって悶えているMichelを抱えると
僕は窓から飛び降りた
抱えていてもMichelの口からはボタボタと血が流れ
久々に積もった雪に血痕を造った
まるで花だ
雪景色に咲く
無数の花...
ハウスを出る前に
自分の指にナイフで傷を付け
雪の上にメッセージを残した
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