page.21 誤算
急に沈黙が訪れ明かりが消えたら
男と女は何をするか
そんな事
10歳の僕にだって
容易に想像出来た
耳を澄ませば
荒い息遣いまで聴こえる気がした
でもそんなの
勿論気のせい
ギシッ......
ベッドが軋む音を聞く度に躯が震える
耳を塞ぎたくなった...
でも僕は
二人の行為が終わるまで
ドアの前から離れる事が出来なかった
膝を抱え
自分が犯してきた罪を思い出していた
死刑囚の寿命を読み上げた時よりも
父を殺害した時よりも
今回の罪の方が重いだろう
それくらい
Lは僕にとって特別な存在
なのに...
何で大事に出来ないんだろう...
僕は...
益々闇に突き落とすだけ...
君にとっての僕の存在は...
未だに『死神B』のまま...
膝を抱えながら
涙が床を濡らす
僕が泣くなんて
赦されない...
ポケットの中のナイフを握ると
段々とズボンに血が滲む
痛みで忘れたい
いや、違う...
今の君の痛みはこれくらいかい?
こんなものじゃないだろう?
クククッ....
これぐらいかい...?
L...
また
僕の中の
死神が眼を醒ます
キミの中でBは
お前を苦しめるだけの存在であれば良い
泣く事は赦されない
黒い瞳は捨てたんだ
そして
薄笑いを浮かべながら一階へ向かい
ソファーで眠った
明日の朝
キミはどんな顔をしているだろう
想像するだけで愉快だよ
クククッ....
ククククッ.......
その夜は
夢を見なかった
唯一覚えているのは
暗いところをずっと歩いているイメージだけ
何処まで行っても真っ暗で
奈落の底まで堕ちているような
そんなイメージを残したまま
僕は目が醒めた
.